土壌凍結と環境因子との関係を把握することは,寒冷地域における冬季の水文現象を予測する上で重要である.著者らは中部山岳地域の森林流域内に設定した試験地において,土壌凍結とそれに関連する環境因子を1996~2003年にかけてほぼ毎月観測した.各年の最大凍結深(
Dmax)と最大積雪深の間には,積雪の断熱効果に起因する明瞭な負の相関が見られた.積雪の影響を考慮した修正凍結指数も
Dmaxと強い相関を示し,この値が現在より約8割低下すると凍結が生じなくなること,この程度の低下は積雪深の増加によって容易に生じることが示された.2001-2002年冬季に実施した多点調査の結果,これらの関係は斜面方位によって大きく異なっていた.土壌中で生成されたCO
2の大気中への放出が抑制された結果,凍結層下ではCO
2濃度の上昇が見られた.冬季における深度別の最大CO
2濃度は
Dmaxとともに増加したが,
Dmaxが10cmを超えると相関が見られなくなった.近い将来における土壌凍結現象の予測には,冬季の気温上昇とともに積雪深の変化が重要である.
抄録全体を表示