山地域での水・土砂流出予測精度向上のためには流出観測データが必要であるが,面積10 km
2以下の流域についてはまとまったデータベースが存在しない.そこで,日本の山地域の10 km
2以下の流域で得られてきた降雨流出データを文献から収集して数値データ化し,観測流域の位置,地形,地質,土地被覆などの特性を整理したのでその概要を報告する.また,データ収集から見えた観測の課題を整理する.流域面積0.0045~10.4 km
2の126個の流域から302の降雨流出データが集まった.集まった出水の降雨規模は総降雨量13~416 mm,最大1時間雨量2~70 mmであった.観測流域は地理的に偏って存在し,特に降雨量や強度が大きく水・土砂災害を防ぐ上でデータが必要な地域で観測データが少なかった.流域面積0.1~10 km
2での観測データが少なく,この規模の流域のデータは重要であるにもかかわらず観測が容易でない現状があった.大きな降雨時の流出データが少なく,大きな降雨時には流出ピーク時のデータ取得が難しい実態を示した.以上の観測の課題を克服するためにはこれまでと違う観測方法を検討する必要があるかもしれない.
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