凹凸の大きな森林樹冠上における乱流の性質を調べるため,樹高30mをこえる高木が多数存在するタイ北部の丘陵性常緑林上において乱流観測を行った.乱流変動法により風速3成分(
u,
v,
w)の変動成分は求められた.本研究では乱流の性質は各変動成分の正の生起割合と歪度,摩擦速度に対する各標準偏差の比(σ
u ⁄
u* , σ
v ⁄
u* , σ
w ⁄
u*), および各変動成分の間にある相関係数を用い,これらの分布特徴および大気安定度とσ
u ⁄
u* , σ
v ⁄
u* , σ
w ⁄
u*の関係を調べた.
その結果,安定度が中立な条件(|(
z−d ) ⁄
L|<0.05)における乱流の性質はばらつきが大きいものの,摩擦速度に対する各標準偏差の比において風向や風速の条件により系統的な分布が認められた.風向依存性を持つ風上直近の樹木との距離など局所的な影響は,強風時のσ
w ⁄
u*とσ
v ⁄
u*に強く,σ
u ⁄
u*では弱い傾向を示した.σ
w ⁄
u*は強風時よりも弱風時の方が1.25程度と一般的な乱流の性質を反映していた.大気安定度が中立な条件においてσ
u ⁄
u* , σ
v ⁄
u* , σ
w ⁄
u*の平均値と標準偏差は,それぞれ1.94±0.32,1.72±0.49,1.31±0.22であった. σ
w ⁄
u*は他の植生面上の値とほぼ同じであるが,σ
u ⁄
u* は背丈の低い植生などに比べて小さい傾向を示した.
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