神宮の森と同じ植物生理特性を有する人工緑地を関東の各地域に配備した場合に,その緑地が潜在的にどの程度の大気保全効果を有するかを,神宮の森で観測された植物生理特性(神田他,1997a,b)と地域気象モデルのアウトプット(福田他,1997)に基づいて,定量的に見積もり,その地域的差異について論じた.大気保全効果として,ここでは,(1)蒸散量(気候緩和効果),(2)光合成量(CO2同化機能) (3)O3吸収量(大気浄化機能) (4)テルペン放出量(森林浴機能)の4項目を扱った.夏季晴天日を想定した算定結果によれば,都市域では主に飽差の影響(乾燥)により,気孔閉塞が生じやすい傾向にあり,そのため光合成量O3吸収量は山岳域に比べて低くなる.一方,テルペン放出量は葉温が支配的であるため,都市域で大きくなる.蒸散量は,気孔閉塞があるものの,ドライビングフォースとしての飽差が効いて,都市域で若干大きくなる.
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