水文・水資源学会誌
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35 巻, 2 号
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巻頭言
原著論文
  • 渡辺 恵, 伊藤 舜将, 馬 文超, 山崎 大
    2022 年 35 巻 2 号 p. 104-121
    発行日: 2022/03/05
    公開日: 2022/03/05
    ジャーナル オープンアクセス

     アンサンブル洪水予測は長いリードタイムを確保でき,不確実性も表現できるため,早期警報としての活用が期待される.一方,この予測方法は確率的情報を扱うなど従来型の予測とは性質が異なり,効果的な活用ノウハウが確立されていない.本研究では,運用中の海外先行システムを調査し,予報者側とユーザーとのコミュニケーションに着目して分析した.まず,予測情報の伝達手段となる可視化手法を4つに分類し,特徴と利用法を整理した.これにより,ユーザーの要望も反映しつつ,システム不確実性を考慮し流量等の絶対値からリターンピリオド等の危険度に変換する,危険度予測一貫性の確認を可能にするなど,警報発令等の判断を支援する可視化方法を利用していることが分かった.またワークショップ等を通してユーザーと意見交換することにより,空振りの可能性のある低確率大規模災害の適切な予報が行われたり,予測情報を早期警戒に活用する際の法制度の課題が顕在化したり,ユーザーフィードバックはシステム運用改善に繋がった.アンサンブル洪水予測の効果的活用には,予測技術の高度化だけでなくユーザーとの双方向コミュニケーションが重要である点が明らかとなった.

  • −愛媛県西条市を対象として−
    辻岡 義康, 中村 晋一郎, 木村 匡臣, 乃田 啓吾, 西原 是良, 田中 智大, 渡部 哲史
    2022 年 35 巻 2 号 p. 122-133
    発行日: 2022/03/05
    公開日: 2022/03/05
    ジャーナル オープンアクセス

     近年頻発する自然災害や農業従事者の減少等により,ため池の維持管理の在り方が課題となっている.本研究では,既存の防災面に合わせて,社会状況を考慮したため池の維持管理に資する統合的評価指標を提案する.具体的には,①ため池の決壊時の被害リスク(Exposure値),②ため池の将来の維持管理負担量(Maintenance値),そして ③ため池の灌漑水源としての将来的な需要(Resource値)の3つの指標を提示した.そして,これらの指標を用いて対象地域内のため池を分類し,各分類の維持管理方針について考察を行った.最後に,ため池の管理優先度の評価を可能とするImportance値を提案し,管理シナリオにもとづく評価を行うことで,本指標の利用可能性と有効性を検証した.

研究ノート
  • 葛葉 泰久, 水木 千春
    2022 年 35 巻 2 号 p. 134-147
    発行日: 2022/03/05
    公開日: 2022/03/25
    ジャーナル フリー

     本報は,葛葉・水木(2021a)(前報)を補足するものである.前報では,T年確率水文量の算定手順に関し,修正SLSC法を用いた手法を提示した.しかし,その手法では,そこで問題にした「2重の規準の問題」は解決できない.通常,我々は,A-規準(L-moment,対数尤度など)によって母数を推定し,B-規準(SLSC,AICなど)によって確率分布間の優劣を評価して最適な確率分布を選定する.しかし,A-規準とB-規準が異なるのは問題である.これを解決するために,最尤法で母数を推定してAICなどの情報量による規準値で確率分布間の比較をすればよいことは,最尤法とAIC等の情報量規準の関係ゆえ,おそらく多くの研究者が気づいていると考える.

     本報では,前報に引き続いて,中小河川計画の手引き(案)について考えた.上述のように最尤法とAICを用い,安定性評価と称したリサンプリング法による評価を行わないのが良いと考える.

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