本研究では,現在でも多くの水問題を抱えている低平地の水システムと内水排除について,数値シミュレーションを行い考察を加えた.感潮河川は潮位変動の影響を受けるので,流下能力の算定など河道計画の策定に際しては,非定常性を考慮する必要があること,内水の排除先(海域,感潮河川下流域,河川)は経済性を考慮して総合的に選定する必要があること,ピーク流量の抑制効果を有する水路網を内水排除に活用することによって,調整池や機械排水の規模を縮小できることを示した. 低平地の水システムは,感潮河川,機械排水,調整池,水路網から構成され,この水システムを構築するためには利水・水質保全・親水を含めた総合水管理ならびに,技術・制度・財政システムの確立が必要不可欠である.わが国においては,今後,水管理計画策定や政策分析を支援する数値計算モデルの開発や,治水事業による保全効果に加えて高度化便益を評価できる手法の開発,さらには政策分析手法の確立が急務の課題である.
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