水文・水資源学会誌
Online ISSN : 1349-2853
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26 巻, 5 号
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総説
  • 谷 誠
    2013 年 26 巻 5 号 p. 245-257
    発行日: 2013/09/05
    公開日: 2014/04/07
    ジャーナル フリー
     斜面土層は,降雨に対する洪水流出応答を作り出す準定常システムとして機能する.そこでは,洪水流の応答は,降雨が十分に与えられることで土壌内に湿潤な部分がつながって成立する水理学的連続体における圧力伝播によってもたらされ,一段タンクモデルで再現される単純さを特徴とする.しかし,この連続体を構成する流出経路は,不飽和帯の鉛直浸透流,斜面方向への地下水流で構成され,不均質で多様である.こうしたコントラストは,活発な地殻変動に支配されている急斜面上の土層発達過程から必然的にもたらされている可能性がある.洪水流出予測の研究手法は,こうした圧力伝播の観点から洪水流出応答を捉え直すことにより変革を余儀なくされるであろう.
原著論文
原著
  • 水谷 司, 藤野 陽三, 猪又 憲治, 辻田  亘, 長山 智則
    2013 年 26 巻 5 号 p. 258-268
    発行日: 2013/09/05
    公開日: 2014/04/07
    ジャーナル フリー
     日本国内に既に広く設置されている通信用アンテナである漏洩同軸ケーブル(LCX)を応用し,従来の気象レーダーなどでは困難であった地上での豪雨をモニタリングする技術を提案した.そしてLCXの電界の乱れの信号から,雑音に埋もれた降雨による信号の変化を検知するための信号処理を行った.周波数フィルタリングと統計的フィルタリングに基づいて雑音を除去する従来のアルゴリズムでは,1分間降雨強度でおよそ30 mm/h以下の降雨の検知が困難であった.そこで,既往研究によって示唆されている降雨強度の時間的変動にマルチフラクタル性があることを利用して降雨の検知を試みた.実降雨実験の結果得られた信号を約15分間ごとのデータに分割し,それぞれの区間についてWTMM法を使ってマルチフラクタル解析を行った.マルチフラクタル性を本論文で定義した指標により定量的に評価した結果,降雨が発生している区間のマルチフラクタル性が無降雨時のそれに比べて強くなる傾向があることを確認した.これにより,従来のアルゴリズムでは検知が困難であったおよそ30 mm/h以下の降雨についてもLCXの電界の乱れの信号から検知できる可能性を示した.
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