水文・水資源学会誌
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24 巻, 4 号
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原著論文
  • -狭山茶園地帯を対象に-
    山崎 秀太朗, 中山 大地, 松山 洋
    原稿種別: 原著論文
    2011 年 24 巻 4 号 p. 202-215
    発行日: 2011/07/05
    公開日: 2011/08/19
    ジャーナル フリー
     本研究では,これまで硝酸態窒素に関する研究が行われていない狭山茶園地帯において,高頻度かつ増水時を加味した採水調査を行った.調査地域は荒川水系霞川流域の本流・支流5地点であり,期間は2008年9月~2009年10月である.分析の結果,茶畑が広がる支流2地点で環境基準値(10 mg・l-1)を超える値が観測され,最高値は36.5 mg・l-1にも及んでいた.すなわち,日本国内で茶に対する施肥基準値が最も低い狭山茶園地帯(450 kg・ha-1・y-1)においても,硝酸態窒素汚染は深刻であることが分かった.
     本流では増水時に窒素流出負荷量が有意に増加していた.しかしながら,茶畑が広がる支流2地点では,平常時と増水時の窒素流出負荷量に有意な差はみられなかった.窒素収支式の残差から求めた茶畑からの窒素流出負荷量は53~154 kg・ha-1・y-1となり,硝酸態窒素濃度の最高値が観測された流域では53 kg・ha-1・y-1と小さかった.しかしながら,ここでは河川流量も小さいため,結果として高濃度の硝酸態窒素が流出していた.また,この流域における硝酸態窒素濃度が環境基準値を下回るためには,窒素施肥量を390 kg・ha-1・y-1まで減らす必要があることも明らかになった.
  • 大西 暁生, 石 峰, 森杉 雅史, 田中 広樹, 井村 秀文
    原稿種別: 原著論文
    2011 年 24 巻 4 号 p. 216-234
    発行日: 2011/07/05
    公開日: 2011/08/19
    ジャーナル フリー
     21世紀は水の世紀である.水資源の少ない地域,とりわけ乾燥・半乾燥地域では,水資源のさらなる枯渇が経済成長の足枷となることが懸念されている.1972年から頻発した「中国黄河の断流」は,こうした世界各地の水不足の代表としてあげられる.この断流は,急速な社会経済の成長に伴い水需要が増加した結果,水需給のアンバランスが発生し深刻化していったと言われている.さらに,こうした水不足の可能性は,乾燥・半乾燥地域といった限られた地域の現象に留まらず,温暖化の影響や発展途上国の急激な経済成長に伴って,こうした影響を受けるであろう地域の共通の課題として広がっている.そのため本研究では,中国を対象に,社会経済成長と水需要の関係を明らかにしつつ,水需給ギャップを0.5度格子単位で把握することを目的とした.はじめに,人口・経済といったマクロな空間情報を用い,地域のセクター別(農業,工業,生活)の水需要量を推計した.次に,観測された気象データを用い,地域の水資源量を推計した.最後に,上記で得られた水需要と水供給の関係を「水需給ギャップ」として評価した.また,2大主流である黄河流域と長江流域を対象に,カスケード方式の簡便な流出モデルを作成することによって,人間活動の違いによって生じうる河川流出量の変化を定量的に明らかにした.
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