水文・水資源学会誌
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28 巻, 2 号
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巻頭言
原著論文
  • 葛葉 泰久
    2015 年 28 巻 2 号 p. 59-71
    発行日: 2015/03/05
    公開日: 2015/08/12
    ジャーナル フリー
     100年以上の年最大日降水量が算定できる51地点の気象庁の観測点のデータを解析した.「すべての観測点で,既往最大値の再現期間が1,000年オーダーにならないこと」を目標に12の確率分布を当てはめ,SLSCによって適合度を評価した.12の確率分布には,今まで日本の水文学のコミュニティーではあまり使われてこなかったLévy分布を含んでいる.この分布は,確率密度関数のすそ(tail)が厚いことが特徴であり,既往最大値の再現期間を小さくすることが期待できるためである.この種の解析では,しばしば(パラメータの多い確率分布を用いた場合には適合度が良くて当然なので)できるだけパラメータの少ない分布が良い分布形であるとされてきた.しかし,本研究では,前述のような目標を達成するために,パラメータの数にはこだわらず,3~5個のパラメータを持つ分布形,特に前述のすその厚いLévy分布も用いた.その結果,すべての観測点で既往最大日降水量の再現期間が数百年以下になった.また,それぞれの点で石原の提唱する120年確率降水量をもとめ,等値線図を示した.
  • 中山 幹康 , 佐々木 大輔, 伊藤 園子
    2015 年 28 巻 2 号 p. 72-83
    発行日: 2015/03/05
    公開日: 2015/08/12
    ジャーナル フリー
     水力発電による電力を外国に新規に売電する場合に,電力を輸出しようとする国が直面し得る内政および外政上の困難について,アイスランドとタジキスタンの事例よりその本質を明らかにし,適用可能と思われる対策を提言することを研究の目的とした.文献調査および当事者と有識者からのヒアリングより得られた知見は以下の通りである.アイスランドからの新規売電を阻害する要因としては,国内の家庭用および産業用の電力料金値上げへの懸念と,英国などの欧州諸国からの政治的な干渉を招く事への懸念がある.タジキスタンについては,ログン水力発電所建設による国内での国威発揚を政府が志向していることが障害となり,また,ウズベキスタンの反対も阻害要因である.これらの障害への対処として,アイスランドについては,電力料金の値上げにはつながらないことを政府が確約すること,情報の透明性と対称性の改善に努めること,国内外での「政治案件化」を防ぐことが肝要である.タジキスタンについては,売電による経済的実利を主眼とし,ウズベキスタンに対抗するためにログンダム建設に固執しないこと,が重要である.本研究からの提言としては,何が国民にとっての利益かを政府が明示すること,政治と経済を明確に分離すること,「勝ち組」と「負け組」を作らないことが挙げられる.
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