水文・水資源学会誌
Online ISSN : 1349-2853
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16 巻 , 4 号
Jul.
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原著論文
  • 濱田 浩正, 岸 智
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年 16 巻 4 号 p. 325-330
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/21
    ジャーナル フリー
    中山間地帯では, ため池からの浸透水が地すべりを誘発する場合があり, その防止のためには浸透水の存在を明らかにする必要がある. しかし, 現在用いられている手法は, 地表水の流入と流出を測定するだけで, 地下水の流入や流出を同時に把握することはできなかった. そこで, 河川において有効性が確認されているラドン収支と水収支を用いた手法を小規模ため池へ適用した. 水から大気へのラドンの飛散については, 水と空気の境界にStagnant filmを仮定し, 実験によってその厚さを求めた. 実験の結果, Stagnant filmの厚さは820μmとなった. 現地には長野県のF池を選定し, 予備調査によって, 池水が十分に混合されていることを確認した. 現地調査から得られた結果を基に, 水収支式とラドン収支式をたて, それらを解くことにより, ため池への地下水浸入が0.67×10-3 m3 s-1, 貯水の地下浸出が0.41×10-3 m3 s-1と算出された. この手法は, 地すべり防止だけでなく, ため池の有効利用や水質予測にも役立つものと期待される.
  • 島村 雄一, 泉 岳樹, 中山 大地, 松山 洋
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年 16 巻 4 号 p. 331-348
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/21
    ジャーナル フリー
    林床積雪の判別が可能な積雪指標S3 (斎藤·山崎, 1999) をLANDSAT-5/TM画像に適用し, 積雪水当量·融雪量を推定した. 積雪指標の適用を想定したADEOS-II/GLIが未稼働なので, 衛星データへの適用は本研究が初めてである. 1986年の融雪期の黒部湖集水域を対象として, 積雪指標を用いて積雪域を抽出した. ここでは, この地域における標高と積雪水当量の関係 (関西電力株式会社工務部, 1960) と山地積雪モデル (小池ほか, 1985) に基づき算出した2時期 (1986年4月14日と4月30日) の積雪水当量の差を融雪量とした.
    推定された融雪量は, 同じ期間の黒部第四ダムでの観測流量と相対誤差—8.2%で一致した. 植生の影響を考慮せずに可視波長帯から抽出した積雪域を使った場合の推定誤差は—23.8%であり, この差は積雪指標が林床積雪を判別できているためと考えられる. 以上から, 積雪指標による積雪域の抽出は妥当であり, 植生の影響を考慮しない方法よりも優れていると言える.
  • 張 祥偉, 山本 直樹, 竹内 邦良, 石平 博, 中津川 誠, 羽山 早織
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年 16 巻 4 号 p. 349-367
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/21
    ジャーナル フリー
    広域の地下水流動は, 広域水収支, 地形·地質, 河川取排水及び水利用などに支配されている. しかしながら, 多くの要因に関連しており, 実測情報も少ないため, これ等諸量の特定は非常に困難である. 従って広域地下水流解析のためには, 情報不足条件下で適用可能な手法を開発する必要がある. 本研究では, 地質統計手法, 融雪推定と広域地下水流動解析の融合を行うことで, 充分な情報が不足しているなかで融雪を考慮した広域地下水流れの解析手法を提案する. 最初に観測情報の不足に伴う地下水位空間分布の推定精度の低下を抑えるために, 地形標高を補助的な情報として, 広域地下水位の空間分布を推定するROKMT法 (Residual Ordinary Kriging with Modified Trend) を提案する. これより, 推定した地下水位空間分布に, 定常有限要素地下水流動モデルを適用することにより, 広域の透水係数を同定することができる. さらに, 融雪による地下水への影響を考慮するために, 広域の積雪水量, 融雪水量の空間分布を推定し, 三角形メッシュ差分法 (TFDM) 法を用いて, 非定常地下水流動をシミュレーションする方法を提案する. ケースタディとしては, サロベツ湿原の非定常地下水流動解析を行った. まず1997年のサロベツ湿原地下水位の空間分布を推定するとともに, 透水係数の空間分布を同定し, 1998年1月—2000年12月の期間に, その非定常地下水流動の解析を行い, 本手法の妥当性を確認した.
  • 牛山 素行, 寶 馨
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年 16 巻 4 号 p. 368-374
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/21
    ジャーナル フリー
    各地域ごとの簡便な豪雨推定手法として, 気象庁AMeDAS観測所の20年間のデータ (1979∼1998年, 1148ヶ所) を用いて, 暖候期降水量と極値降水量 (20年最大1時間·日降水量) の関係について調べた. 暖候期降水量と極値降水量の間には, 暖候期の期間の取り方にかかわらず統計的に有意な相関が認められ, 4月∼10月積算降水量との相関が最も高かった. 暖候期を4月∼10月として, 暖候期降水量と極値降水量を線形回帰したところ, 統計的に有意な回帰式が得られた. 暖候期降水量による極値降水量推定値より実測値が小さい観測所を, 最近20年間の最大規模豪雨が比較的弱い観測所と考え, このような観測所が集中している地域を「豪雨空白域」として抽出したところ, 秋田·岩手県境付近, 長野県西部·岐阜県北部·北陸付近, 広島県, 福岡県, 熊本県南部, 鹿児島県東部などが抽出された. また, 暖候期降水量と極値降水量の散布図から作成した包絡線によって暖候期降水量に応じた可能最大雨量 (PMP) を推定したところ, 日降水量については154箇所の気象官署 (平均統計年数66年) 中150箇所の実測最大値が推定値の範囲内となった.
  • 大上 博基
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年 16 巻 4 号 p. 375-388
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/21
    ジャーナル フリー
    この一連の研究では, 食糧生産のための有効な水資源利用の観点から水利用効率の高い作物生産を目的とし, 与えられた気象条件下で水田の水利用効率を高くするイネの葉面積密度を検討する. 本報では, 作物生育, 群落内の微気象, 気孔コンダクタンス, および個葉の光合成速度を水田で観測し, 多層モデル (Oue, 2001) への組み込みを考慮したイネの気孔コンダクタンス  (gs) モデルと個葉光合成 (CERl) モデルを構築した. gsとCERlに影響を及ぼす要因を検討し, gsモデルのパラメータとして個葉に入射する光合成有効放射 (PARl) 以外に葉齡や葉位と関連する高度およびその高度におけるVPDが有効であり, CERlモデルのパラメータとしてPARlとgsが有効であることがわかった. 高度とVPDはgsに対して互いに逆の影響を及ぼすので, 本研究で適用したモデル化は非常に有効であると考えられる. このgsモデルは, 群落内の高度とその高度における気象条件によってgsを推定するので, 多層モデルに組み込むのに適している. また, このCERlモデルはgsモデルで推定されたgs値をパラメータとするので, 光合成のプロセスと水利用効率を一貫して表現するのに適している.
  • 大上 博基
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年 16 巻 4 号 p. 389-407
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/21
    ジャーナル フリー
    前報 (大上, 2003) で構築したイネの気孔コンダクタンスモデルと個葉光合成モデルを組み込み, 既報の多層微気象モデル (Oue, 2001) を改良した. 改良点の一つは, 植物体の陽側と陰側の熱収支を表現したことである. モデルによる計算の結果, 日射の透過率, 風速, 気温, 湿度, 植物体表面温度の鉛直分布は, 水田群落内部と上部におけるそれらの観測値をよく再現できた. イネ群落における熱収支の特徴の一つ, すなわち, 主として夕方の時間帯に顕熱フラックスがマイナス値となり, それが潜熱フラックスのエネルギー源となることが, モデルで再確認された. また, 陰葉の顕熱フラックスはほとんどのケースでマイナス値であったことがモデルによる計算で示され, 水田におけるマイナスの顕熱フラックスには陰になった葉が大きく貢献することが明らかになった. 層別水利用効率 (WUEc) の鉛直分布を検討した結果, 葉面に入射する日射が十分に大きい場合と逆に十分に小さい場合に, WUEcが比較的低くなった. したがって, 葉面積密度がある程度小さい場合と大きい場合に, WUEcが低くなると予測された. すなわち, WUEcを最大にする葉面積密度の存在も示唆された.
  • 本谷 研
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年 16 巻 4 号 p. 408-419
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/21
    ジャーナル フリー
    1998年の観測後に改修された2001年航空機搭載型分光走査放射計 (AMSS) の観測データについて, 各種地表面に対応するスペクトラム, 3波長 (可視1近赤外2) による植生·積雪指標の代表値を求めた. また検証のための詳細な植生密度観測を行い, 指標や積雪のある森林におけるアルベドと植生密度との関係を求めた. さらに, 2高度における観測の比較から大気補正の問題と指標に与える影響について, 放射伝達モデルの理論値と比較して考察した.
    高度3960m (13200ft) での観測では490nmよりも短波長側ではレイリー散乱による影響が無視できないが, 植生·積雪指標に用いる可視 (625nm) , 近赤外1 (865nm) では大気の影響は少なく, 近赤外2 (165nm) も水蒸気により若干減衰するが指標への影響は少ない. さらに, 2高度について近紫外 (380nm) , 可視 (625nm) , 近赤外1 (865nm) , 近赤外2 (165nm) のセンサのViewing Angle依存性を調べたところ, 1000nmより短い波長帯ではViewing Angle依存性は1998年のデータの半分程度になった. これはセンサの瞬時視野角 (IFOV) を2.5mradから5mradに大きくしたためと考えられる.
研究ノート
  • 濱田 浩正
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年 16 巻 4 号 p. 420-422
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/21
    ジャーナル フリー
    ラドン, 水収支式から小規模ため池への地下水浸入と貯水の地下浸出を定量することが可能である. ラドン収支式をたてる際には, 水中から大気中へのラドンの飛散が重要な要素となる. 大気中への飛散率は, 水と空気の境界にStagnant filmを仮定し, 飛散率はfilmの厚さに反比例するものとし計算する. 現在, ため池の貯水のような静水におけるStagnant filmの厚さに関しての報告は少ない. そこで, 本研究では, 静水におけるStagnant filmの厚さと風速の関係を実験によって明らかにした. Stagnant filmの厚さは水中のラドンの濃度低下から算出した. 実験の結果, 風速が1.5 m s-1以下の時, Stagnant filmの厚さは風速の影響を受けず, 750∼920μmとなった. 風速がそれよりも大きくなると, 風速の増大に対して, Stagnant filmの厚さは薄くなる傾向を示した.
  • 小松 光
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2003 年 16 巻 4 号 p. 423-438
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/21
    ジャーナル フリー
    乖離率 (decoupling factor) Ωは, Penman-Monteith式における放射項, 移流項それぞれの蒸発散速度に対する貢献度合いを表現する指標であり, 植物群落における蒸発散速度の計測·モデル化の効率化に示唆を与える. 森林群落においてΩは一般に0.1から0.2 (つまり, 森林の蒸発散はおもに移流項によって生じる) と言われているが, 実際には, その一般性は明らかでない. そこで, 既存の文献に報告されているΩの値をまとめることを通じて, 森林のΩは0.1から0.2である, という理解の一般性を検証した. 既存の文献から, 広葉樹林15例, 針葉樹林20例, 合計35例のΩの値が得られた. 針葉樹林において, Ωが0.2を超えるものは, 20例中4例 (20%) と少なかった. これに対して, 広葉樹林において, Ωが0.2を超えるものは, 15例中9例 (60%) と多く, 畑地の一般的な値であるΩ=0.4∼0.7となるものも, 15例中4例 (27%) と珍しくなかった. このように, 森林のΩは0.1から0.2である, という理解は, 針葉樹林において一般性が高いものの, 広葉樹林において一般性が低いことが明らかとなった. このことから, Ωが小さいことを前提に行われる計測·モデル化の簡略化は, 広葉樹林へ適用された場合, 蒸発散速度, あるいは, 表面コンダクタンスの算定に大きな誤差を生む可能性があることを指摘し, こうした簡略化の広葉樹林への適用に注意を促した.
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