森林内外における消雪日の差が何によって説明されるのかといった森林と雪との関係について理解することは,森林の貯雪・融雪遅延機能を評価するための基本的な知見となる.本研究では,林内と林外の消雪日を観測した論文・資料を収集して,プラス(マイナス)であれば林内(林外)の積雪の方が長く残ることを表す,消雪日の差(ΔSDD;Difference in snow disappearance date)を決める要因をメタ解析によって分析した.その結果,ΔSDDは,0~+10日に多く分布しており,平均は+6日であった.また,ΔSDDと冬期平均気温に負の相関が見られた.全球スケールの ΔSDDと冬期平均気温との関係とわが国におけるその関係を比較したところ,日本はΔSDDがプラスにもマイナスにもなり得る気候帯であった.また,全球スケールの同じ気温帯と比較すると,森林の貯雪・融雪遅延機能は比較的発揮されているが,将来的には貯雪・融雪遅延機能は低下する可能性が示唆された.さらに,貯雪・融雪遅延機能を比較検討する際には,消雪日の情報に加えて,融雪初期の積雪水量から求められる林外に対する林内の積雪水量の比(係数a)と林外に対する林内の平均融雪速度の比(係数b)を用いることが重要であることが分かった.
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