水文・水資源学会誌
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34 巻, 3 号
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巻頭言
原著論文
  • 瀬戸 里枝, 鼎 信次郎
    2021 年 34 巻 3 号 p. 161-180
    発行日: 2021/05/05
    公開日: 2021/06/15
    ジャーナル フリー

     地球水循環の把握において,衛星マイクロ波から推定される雲水量は貴重な情報である.しかし,既存の推定手法の多くは,対象の雲降水粒子の種類を一つに限定している.一方,雲降水粒子種類の違いは,雲の寿命や降水特性を左右するため,その同時推定が望まれている.更に,既存の手法は海洋上のみに適用されるものがほとんどであり,陸域雲水量の推定法の確立は,重要課題の一つである.本研究では,まずSeto et al.,(2018)で提案された, 89.0 GHzを主とする複数周波数のマイクロ波を活用した陸域雲水量の推定手法を基に,36.5 GHzを用いる手法を新たに構築し評価した.そして,両手法の推定値と衛星雲レーダープロダクトとの比較から「マイクロ波と雲降水粒子の相互作用の周波数・偏波依存性の活用によって,粒子種類ごとに陸域雲水量を推定するアルゴリズムの可能性」を検討した.結果,液相の陸域雲水量は36.5 GHzからでも精度よく推定できることが示されたとともに,36.5と 89.0 GHzの観測の差から雲氷の雲水量を推定し,更に36.5 GHzの偏波特性から,雲水と雨粒の雲水量を区別して推定できる可能性が示された.

研究ノート
  • 平岡 透, 中川 啓, 野中 尋史, 廣田 雅春, 鈴木 祥広
    2021 年 34 巻 3 号 p. 181-191
    発行日: 2021/05/05
    公開日: 2021/06/15
    ジャーナル フリー

     地下水中の硝酸性窒素濃度を密に把握するために,空間的に分布した観測地点の時系列の硝酸性窒素濃度を用いて未観測地点の硝酸性窒素濃度を補間する方法が提案されている.従来法は,既観測地点の硝酸性窒素濃度を用いて未観測地点の硝酸性窒素濃度を補間する際,既観測地点の硝酸性窒素濃度の影響度を既観測地点と未観測地点の空間的距離,既観測時点と未観測時点の時間的間隔,既観測時点と未観測時点の硝酸性窒素濃度の相関係数の三つの要素を用いて計算している.本稿では,従来法の三つの要素に各時点の既観測地点と未観測地点の周辺の土地利用状況の差異を加えることで補間の精度を向上させる方法を提案する.提案法の有効性を評価するために,都城盆地において808箇所の浅井戸で観測された2007年から2016年までの2月と8月の硝酸性窒素濃度を用いて数値実験を行った.数値実験の結果,提案法は従来法よりも高い精度で硝酸性窒素濃度の補間を行えることがわかった.

総説
  • 内田 太郎, 浅野 友子, 平岡 真合乃, 横尾 善之, 五味 高志, 水垣 滋, 丹羽 諭, 勝山 正則
    2021 年 34 巻 3 号 p. 192-204
    発行日: 2021/05/05
    公開日: 2021/06/15
    ジャーナル フリー

     本稿では,山地流域を対象とした水や土砂の流出現象に関する数値予測モデルの予測精度向上のために重要であると考えられる,現象を規定するプロセス(支配プロセス)の抽出と,そのプロセスを規定する場や外力の条件(規定要因)の把握手法について考察した.流域内の多地点での水・土砂流出量の観測に基づき明らかとなる流域面積と水・土砂流出量の関係が,支配プロセスやその規定要因の空間分布様式によって類型化できることを示した.このことから,流域内の多地点で流域面積と水・土砂流出量の関係を把握することが,水・土砂流出現象の支配プロセスやその規定要因の抽出につながる可能性を示した.その上で,流出量の空間分布の観測の成果を数値予測モデルに反映させるための課題やアプローチについて検討し,①水・土砂流出特性の空間分布情報を把握するための面的調査の重要性,②場の条件に関する空間分布情報のカタログ化の重要性,③地形のみによって表現可能なプロセスと表現できないプロセスの分類,④地形のみによって表現できないプロセスのモデル化手法について議論した.

記録・報告
書評
発想のたまご
  • Rajendra KHANAL
    2021 年 34 巻 3 号 p. 210-211
    発行日: 2021/05/05
    公開日: 2021/06/15
    ジャーナル フリー

     Doing a research is by no means a solitary venture. It is indeed a collaborative effort of all the stakeholders involved. An onus lies with the principal investigator to generate the innovative research idea, for which one needs to be aware of the knowledge gap, known and unknowns, resources available ? the time, budget and physical resources. To understand the knowledge gap, one needs to understand the scientific implication, social needs, policy aspects, and fundamentals of implementation. In this essay, I am discussing my experiences on changing the research field, which in fact is both a challenge and opportunity, and my experiences of transferring scientific knowledge to policy synthesis.

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