水文・水資源学会誌
Online ISSN : 1349-2853
Print ISSN : 0915-1389
21 巻 , 2 号
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原著論文
  • 伊藤 江利子, 小野 賢二, 清水 貴範, 竹中 千里, 服部 重昭, 荒木 誠
    2008 年 21 巻 2 号 p. 100-113
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/12
    ジャーナル フリー
    森林の適切な管理を行うためには,森林域からの窒素負荷を簡便かつ広域的に推定する手法が必要である.そのため,矢作川流域の森林域1,340 km2を対象とし,森林土壌から渓流水を通じて流出する窒素負荷の可能性を,以下の3つの過程で推定した.1)森林表層鉱質土壌(0-5 cm)の窒素無機化・硝化速度を室内培養法で測定する.2)立地環境特性から流出窒素ポテンシャル(培養期間中の硝酸態窒素生成量を面積あたりに換算;Mg N・km-2)を予測する多変量回帰モデルを作成する.3)モデルに既存のGISデータを入力して,流域全体の流出窒素ポテンシャルを推定する.
    さらに,広域的な水質予測を行うため,簡易蒸発散量推定式を用いたGISモデルによって年流出量(mm・yr-1)を推定した.実測流入量と比較して,流出量推定モデルの精度を検証した.最後に,広域的な水質予測の指標としての渓流水窒素濃度ポテンシャル(流出窒素ポテンシャル/年流出量;mg N・L-1)を推定した.既往の渓流水窒素濃度測定値と比較して,本稿で試みた手法が広域的な傾向を再現できることを確認した.
  • Mohamed A. M. Abd Elbasit, 安田 裕, 安養寺 久男
    2008 年 21 巻 2 号 p. 114-125
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/12
    ジャーナル フリー
    降雨時には,ミクロスケール土壌表面形状が土と水の相互作用に大きな影響を与える.本研究の目的は,自動数値写真計測システムによる数値標高モデル(DEM)を修正し,降雨時のミクロスケール土壌表面形状の変化をモニタリングに寄与することである.DEMの標高誤差を除去し,調整するため,2つの方法を用いた.一番目の方法は基準表面法(RSM)であり,内挿前にDEMの誤差を除去するため,この研究の一環として開発した.二番目の方法は,パラメータ統計法(PSM)であり,内挿後にDEMの誤差を除去し,修正するものである.DEMの精度は実験装置上にあるチェックポイントの座標とエレベーション(x,yとz)の測定値と写真測量値の差異によって評価された.チェックポイントのx, y, z方向の平均二乗誤差(RMSE)は,それぞれ2.08,2.59,1.96 mmであった.3つの粗度指標を用いて,土壌表面の変化を評価した. 土壌表面ランダム粗度(RR),制限標高差(LD),制限斜面長(LS)は,時間とともに減少した.これらの方法により,自動デジタル写真測量的システムは修正され,降雨中に正確な土微地形の三次元の(3D)ビジョンを生成した.この修正は,ミクロスケール土壌表面形状のモニタリングと土と水の相互作用の影響解明に新たな方向を示したものである.
  • 篠宮 佳樹, 吉永 秀一郎
    2008 年 21 巻 2 号 p. 126-139
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/12
    ジャーナル フリー
    高知県西部の天然林斜面の中~下部において,大規模な降雨イベント時における雨水の土壌中における動態を明らかにした.総雨量642 mm(2005/9/4-7),355 mm(2006/8/16-19)の2つの降雨イベントを主な対象に,樹冠通過雨,地表流,深さ0~50 cmの土壌水分貯留量,深さ50 cmのテンションフリーライシメーター(TFL)流出を,試験地近傍で流域流量,林外雨量を観測した.その結果,樹冠通過雨量に対する地表流流出率は低く,土壌水分貯留の増加量(ΔS)に上限(60 mm程度)が認められた.また,ΔSが約40 mmを超えて以降,TFL流出は樹冠通過雨量とほぼ同じ強度で,時間差も30分以内と鋭敏に応答し,樹冠通過雨量の約70 %を50 cmより深い土層へ排水した.流域流量の直接流出率(2006/8/16-19)は55 %であり,ピーク発生時間は樹冠通過雨,TFL流出のそれと概ね一致した.以上より,河道から離れた斜面中~下部においても,大規模降雨イベント時には降雨強度に対応した下方への早い地中流が卓越することが明らかになり,斜面から浸透した雨水が直接流出の形成に寄与していると考えられた.このことは,地中流による迅速な排水が崩壊の発生を抑制する可能性,ならびに大規模な降雨イベント時の渓流水の水質変化において土壌・基岩と反応の乏しい地中流の流出する可能性を示唆している.
総説
  • 今村 能之
    2008 年 21 巻 2 号 p. 140-157
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/12
    ジャーナル フリー
    我が国は国連中心主義を掲げ多額の国際援助を行ってきたが,残念ながらその貢献に相応しい評価を受けていない.日本の主導により2000年8月に設立された国連世界水アセスメント計画(WWAP)は,2003年3月に世界水発展報告書(WWDR)を発表し,水に関する史上初の国連システム全体の取り組みとして,先進国,途上国の双方から高い評価を受けながら発展を続け,水分野における日本のリーダーシップの確立に大きく寄与している.このような日本主導の水に関する国連の取り組みが有効に機能するための要件として,(1)政治的リーダーシップ,(2)マルチ・ドナー体制,(3)国連システム全体による推進体制,(4)政府主体の実施,(5)適切な広報戦略,を挙げることができ,特に政治的リーダーシップが重要である.
  • 檜山 哲哉, 阿部 理, 栗田 直幸, 藤田 耕史, 池田 健一, 橋本 重将, 辻村 真貴, 山中 勤
    2008 年 21 巻 2 号 p. 158-176
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/12
    ジャーナル フリー
    水の酸素・水素安定同位体(以下,水の安定同位体)を用いた水循環過程に関する重要な研究および最近の研究のレビューを行った.海水の同位体組成(同位体比)に関する知見,同位体大循環モデルを用いた全球スケールの水循環研究,降水形態による同位体比の差異や局域スケールの降水過程に関する研究,流域スケールでの流出過程,植生に関わる蒸発散過程(蒸発と蒸散の分離)の研究をレビューした.加えて,幅広い時間スケールでの気候変動や水循環変動に関する研究として,氷床コアや雪氷コアを利用した古気候・古環境復元とそれらに水の安定同位体を利用した研究についてもレビューした.最後に,水の安定同位体を利用した水循環研究の今後の展望をまとめた.
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