利水ダムの貯水管理では, 極力需要に応えながらも, 同時に, 貯水が空になるなどの事態を回避しうるような渇水対応策を含む計画手法が要求される. 本研究では,紀の川水系の主要な農業用ダムである大迫ダム, 津風呂ダムを対象とし, 利水上安全な貯水管理を行いうる実用的な指標として, 「渇水要貯水量曲線法」にもとづく各ダムのルールラインを作成した. また, ダム間の放流配分操作についても言及し, ダム群へ要請される放流量, 各ダムの現在貯水量, 貯水回復のし易さ, 貯水回復の目標となる貯水量レベルなどといった因子を反映しうる放流配分方式として「供給欠損高法」を提案した. シミュレーションの結果から, 第一に, ルールラインを貯水管理の根拠とし, 段階的かつ計画的な放流制限による渇水対策を実施することによって, 実際の管理事例よりも低レベルの制限で渇水を乗り切れること, 第二に, 供給欠損高法は, 貯水の有効利用の観点からは現状の統合管理よりも有利であることが例証された.
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