水文・水資源学会誌
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24 巻, 3 号
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原著論文
  • 工藤 亮治, 近森 秀高, 永井 明博
    原稿種別: 原著論文
    2011 年 24 巻 3 号 p. 137-148
    発行日: 2011/05/05
    公開日: 2011/06/23
    ジャーナル フリー
     本研究では,河道への流出量を求める集中型流出モデルと河道内の流れを追跡する河道流モデルを組み合わせた流出モデルに,状態修正法として拡張カルマンフィルタと粒子フィルタを用いた実時間洪水予測システムを構築するとともに,流量観測値の無い河道任意地点を対象として洪水予測精度の検証を行った.河道任意地点の予測精度を検証するため,流域内の流量観測点をモデルの最適同定や状態修正に用いる参照地点と,これらに用いない検証地点に分け,検証地点を任意地点として扱った.状態修正法として用いる粒子フィルタは非線形のモデルにも直接適用できるため,kinematic waveモデルなどの河道流モデルが組み込まれていても容易に適用できるといった利点がある.このモデルを江の川流域に適用した結果,参照地点で行った状態修正の効果が検証地点にも及び,検証地点の予測精度も向上させること,検証地点においても参照地点と同様に良好な予測精度が得られていることが示され,今回構築した実時間洪水予測システムにより河道任意地点でも良好な予測精度が得られることがわかった.
  • 鈴木 洋之, 谷口 友梨, 河村 陽一
    原稿種別: 原著論文
    2011 年 24 巻 3 号 p. 149-158
    発行日: 2011/05/05
    公開日: 2011/06/23
    ジャーナル フリー
     河川に複数ダムが並ぶダム群では,ダムの放流量と直下流に位置するダムの流入量に整合性の取れる正確な流量推定が求められる.しかし,筆者らは過去に神通川の小容量ダムで構成されるダム群でP-Q曲線の精度に起因した発電放流量の誤差,および小容量貯水池への洪水流入で生じる流れの速度水頭を無視した算定に起因する洪水吐き放流量の誤差というこれまで認識されなかった2つの放流量誤差の存在を明らかにした.また,この放流量誤差が上下流のダム間で生じる流量不整合の要因であることを示している.本稿では,神通川ダム群を構成するダムと同規模のダムで構成された庄川のダム群で,毎秒水位計測データを用いた流入量推定による平水時流量の精査,および洪水時の放流量データの接近流速による補正と検証を通じて,神通川ダム群で確認した放流量誤差の問題が庄川ダム群でも生じることを確認した.放流量誤差の問題が複数のダムで確認できたことで,この問題が神通川ダム固有でなく,一般的な問題であることを示すに至ったと考える.
  • 下島 栄一, 玉川 一郎, ジェフリー・V・ ターナー
    原稿種別: 原著論文
    2011 年 24 巻 3 号 p. 159-169
    発行日: 2011/05/05
    公開日: 2011/06/23
    ジャーナル フリー
     乾燥地域での日周期的な気象条件による土中の水蒸気の挙動特性を明らかにするために,西オーストラリアの塩分を含む砂質土壌によるカラム実験を,制御された大気条件下で実施した.砂柱の上表面は,一定温度(25 ℃)であるが,熱照射付与の有無の条件で,相対湿度が20 %から65 %へ,あるいは逆の方向に階段的に変化する一定湿度をもつ大気に開放して実験を行った.さらに,相対湿度65 %の大気条件下,照射条件のみ階段的に与えた後,停止するという実験ケースも同様に行ったが,それぞれは昼間及び夜間に対応している.
     大気の湿度のみ階段的に変化させるとき,土壌中の水蒸気密度ρvx/√tx:深さ,t:経過時間)の関数に従って変化する.この特性やこれと関係する結果は,本論文で提案されるρvに関する等温条件下の修正水蒸気拡散方程式を介して説明された.実験的に評価された水蒸気拡散係数とモデル計算との比較によって,土壌層内の蒸発と凝結により破過曲線としての水蒸気密度分布の移動は顕著に遅延されることが分かった.実験を通して明らかにされた水蒸気の挙動特性は,乾燥地での地面と大気間のみならず地中での水分輸送の挙動を理解する上で重要となる.
研究ノート
  • 伊藤 祐二, 郡山 益実, 宮本 英揮, 梅谷 知弘, 筑紫 二郎
    原稿種別: 研究ノート
    2011 年 24 巻 3 号 p. 170-176
    発行日: 2011/05/05
    公開日: 2011/06/23
    ジャーナル フリー
     本報では,沿岸帯水層における淡水の水位hfw と電気伝導度(EC)σfw,淡塩水境界位hiの計測システムを開発するために,それら3者の計測方法を紹介するとともに,同システムの有効性を室内実験によって評価した.各計測には,対象媒質中におけるマイクロ波の伝播特性を評価できる時間領域反射法(TDR)を利用した.2つのTDRプローブのうち,一方をhfwfw計測,他方をhi計測に供し,1台のケーブルテスターからマイクロ波ステップパルスを各プローブのロッド部に送り,得られたTDR波形に基づいてhfw,σfwhiを決定した.地下水観測井戸を模擬した円筒カラムにTDRプローブを垂直に設置し,異なるσfw条件において淡水面または淡塩水境界面を創出することで,hfwまたはhiの上昇過程におけるTDR波形を計測した.その結果,hfwの上昇過程の波形からロッドの根端-先端間を往復するパルスの伝播時間ttとプローブ周囲のトータルEC(σt)を,hiの上昇過程の波形から淡水中のパルスの往復伝播時間tfwを得た.さらに,hfwttの,σfwはσtの,hitfwの各1次式に基づいて,それぞれ高精度で計測できることを確認した.hfwhiの間に挟まれた淡水層厚を淡水領域,σfwを淡水の塩分濃度の指標とすることにより,提案したシステムは沿岸の地下淡水資源の質的および量的評価に有効に活用できるものと推察する.
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