わが国での堤防システムは,計画洪水を想定して,計画高水位をもとに整備・管理されている.そして,一つの河川ではその計画洪水のもとで,一連区間では左右岸,上下流の安全度は確率的に一様とされている.しかし,現実には,計画で想定している状態とは乖離しており,河川の安全性は上下流等で異なっている場合が多い.
そのような堤防システムの整備・管理においては,堤防システムの決壊等に係わる水理的な検討とともに,堤防システムの破綻(決壊)時の被害からの検討が必要である.
本研究は,堤防システムの破綻(決壊.破堤)によって生じる被害を推定することで,その河川の被害特性分析を行ない,被害からみた河川堤防システムの管理の方向性について,諸外国の場合とも比較検討しつつ,基本的な考察を行った.その検討・考察は,日本最大級の河川である利根川を対象として定量的に行ったが,その方法は,他の河川流域にも適用しうるものである.
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