この論文は,山腹を主体とする山地小流域における保水機能の評価方法について検討したものである. この研究では,流出解析用のモデルとしてできるだけ簡単で,しかも降雨遮断及び蒸発散を考慮した3段のタンクモデルを採用した. 評価法は,まず,対象とする流域における中短期の代表的な流出についてモデルを同定する.つぎに,同定したモデルを用いて,代表的な基準降雨状態における流出計算を行い,流量と流出時間で表わされる保水機能の評価指標値を算出し,この値を用いて,広島県江田島町にある山地小流域間の機能を比較した. その結果,提示した手法によれば,流域間の保水機能の比較が可能であり,また,この被災流域は除々にではあるが,保水機能が回復してきていることが明らかになった.
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