水文・水資源学会誌
Online ISSN : 1349-2853
Print ISSN : 0915-1389
ISSN-L : 0915-1389
19 巻, 2 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
原著論文
  • 蔵治 光一郎, 市栄 智明
    2006 年 19 巻 2 号 p. 95-107
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル フリー
    北ボルネオ(マレイシア・サバ州及びサラワク州)の10地点においてマレイシア気象サービスにより過去最長51年間にわたり観測された一般気象データを用いて,北ボルネオ一般気象の季節変動について検討した.その結果,気温,湿度,降水量,風速,風向,日射量,蒸発量などが明瞭な季節変動をすることが明らかになった.特に降水量にはかなり顕著な季節変動があることが見出された.これまでの研究では,この地域は明瞭な季節変動がない地域と認識されてきたが,それは変動の振幅が温帯や他の熱帯の振幅と比較して相対的に小さいためであると考えられる.降水量については,月降水量100mmを下回る月が3ヶ月に満たないがゆえに,季節変動がないと解釈されていたと考えられる.
  • 渡邉 浩, 虫明 功臣
    2006 年 19 巻 2 号 p. 108-118
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル フリー
    我が国の多目的ダムの利水操作は, 流量低減時に過少なダム貯留や過大な用水補給が行われ, 効率的なものとなっていない.その理由は利水操作の判断基準が下流基準点における未来事象の流量であるのに, この流量を予め把握して操作を行うことが無いからである. もし, ダム貯留や用水補給が適切に行われれば, 洪水期が終了した後の貯水量の回復を現実の操作に比べ格段に早めることができることが判った. また, ダム建設後ダム下流では, 生態系の保全に重要な非洪水期の中小出水の流下が見られなくなっている. これは中小出水の流下の重要性が認識されず, 実害の無い範囲で最大限の洪水流下を図ろうとすることが無いからである. ダム操作によって低減している中小出水の最大流量を自然状態まで回復できれば, 下流基準点においても最大で2倍の流量になることが判った. 以上の課題を解決するため, 再現した自然流量の時系列から得られる予測流量を正常流量と比較しながら利水操作を行い, また下流河道が安全である限り流量増が続いてもダム貯留をしない低水管理法を提案した. これを基に現実のダム操作の修正を試算し, この方法が有効かつ実現可能であることを検証した.
  • 王 康, 安田 裕, 安養寺 久男, Mohamed Abd Elbasit Mohamed Ahmed
    2006 年 19 巻 2 号 p. 119-127
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル フリー
    本研究はランダムカスケードモデルを土壌中の移動現象の解析に用いたものである。砂丘砂を対象として染料トレーサー実験を実施し,染料浸透パターンをデジタル解析した.染料浸透による染色パターンは3つの実験スケール,0.25,0.50および1.00mすべてにおいて不均一性を示していた.ランダムカスケードモデルを染料浸透パターンに対して応用し,不均一な染色パターンがランダムカスケードモデルにより説明可能であることを明らかとした.ランダムカスケードジェネレーターの分布型として対数正規分布を用い,実験結果に対して適合性があることが示された.各実験における最大染料浸透深はスケールに比例していた.推定されたランダムカスケードモデルパラメターの標準偏差σは,実験スケールに依存する傾向を示していた.
  • 五名 美江, 蔵治 光一郎
    2006 年 19 巻 2 号 p. 128-138
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル フリー
    熱帯を気候学的に区分する際,東南アジア熱帯雨林地域は乾季がない年中多雨な地域とみなされ,降雨量の季節変動が不明瞭とされてきた.しかし最近の研究成果から,東南アジア熱帯雨林地域においても,降雨量に明瞭な季節変動が存在し,そのパターンは空間的に多様であることが分かってきた.本研究では,ボルネオ島マレーシア・サラワク州を対象とし,17地点において41年間にわたり観測された日降雨量データセットを用いて降雨季節変動パターンとその空間分布特性を把握し,降雨季節変動を指標とした気候学的地域区分を試みた.2種類の分類基準を設けた結果,17地点は5パターンに分類された.得られた季節変動パターンから,1年を5つの季節に区分し,それぞれの季節における各グループの降雨量変動の特徴について検討した.
  • 舛谷 敬一, 赤井 計之, 馬籠 純
    2006 年 19 巻 2 号 p. 139-150
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル フリー
    高解像度の擬河道網をどのような低解像度にもスケール変換できる簡単な方法を提案する.この方法で低解像度の河道を求めるには,大格子中で最大の集水面積をもつ小格子から出発し,隣接大格子の中の小格子まで河道を追跡するだけでよい.さらに大格子間に中継領域を導入すると,低解像度の擬河道網は高解像度の擬河道網の形状をより良く再現できる.提案した方法を早川流域に適用し,50m解像度の擬河道網から250m及び500m,1km解像度の粗いスケールの擬河道網を作成する.これらの擬河道網は,河道長や勾配,河道長度数分布等の地形的特性を良く再現する.黄河については,30×30小格子をまとめた大格子での擬河道網でも,元の1km解像度の擬河道網の特性を精度良く保持することがわかる.
feedback
Top