地表面の非一様性が大気-地表面過程にどのような影響を与えるかが,本論文の主題である,非一様な地表面が乱流統計値に影響を与えるか否か,また影響があるとしたらどの程度かについては,未だに研究者間の論点である,そこで本論文では,局所自由対流に関する相似則理論を用いて,チェスボード型の地表面フラックス分布を仮定した理論的解析を行い,地表面の非一様性の乱流統計値に与える影響を定量化した.解析の結果,平均値の無次元鉛直勾配および無次元分散値のいずれもが,非一様な地表面上では一様な地表面上とは異なる値を取ることが明らかにされた.また,温位(能動的スカラー)と比湿(受動的スカラー)では,乱流場における役割の違いから地表面の非一様性に対して異なる反応をし,比湿の方が地表面におけるフラックス分布に対する感度が高い.さらに,分散は平均値の無次元鉛直勾配よりも感度が高い,具体的には,本論文で扱った非一様性の程度の範囲内においては,平均値の無次元鉛直勾配は一様地表面における値とほとんど変わらなかった.比湿は,潜熱フラックスと顕熱フラックスの各々の非一様性に依存するだけでなく,両者のフラックス分布の位相の違いにも影響を受けることがわかった.このような能動的スカラーと受動的スカラーの地表面の非一様性に対する反応の違いは,両者の相似性が崩れることを意味し,さらに受動的スカラー同士もそのフラックスの起源の地表面分布によっては,相似性が崩れることを示唆している.
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