水分移動が水蒸気体でのみ行われる乾燥表層(DSL)が形成された後の蒸発過程における温度勾配の役割が考察される.温度勾配が水蒸気輸送に影響を及ぼす機構は2種類ある.すなわち熱拡散と飽和水蒸気密度の温度依存性である.DSL内においては,前者は無視できるが,後者は,日蒸発量が0.1mmを下回るようになると,無視できない.一方,地表面直上の空気薄層内では,日中,極めて大きな温度勾配が存在しうる.そのとき接地薄気層内の水蒸気は熱拡散によって強力に上方へ押しやられる.したがって,接地薄気層内で湿度逆転が生じている場合でも,水蒸気は勾配に逆らって同層を通過し,上方へ移動することができる.
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