水文・水資源学会誌
Online ISSN : 1349-2853
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22 巻, 6 号
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原著論文
  • 萩原 清子, 萩原 良巳, 柴田 翔, 河野 真典
    原稿種別: 原著論文
    2009 年 22 巻 6 号 p. 441-455
    発行日: 2009/11/05
    公開日: 2009/11/25
    ジャーナル フリー
    本研究は水辺環境マネジメントのための参加型水辺環境評価システムを構築することを目的とする.そのため,まず水辺のジオ・エコ・ソシオ環境に着目して社会調査を実施し,主観的認識項目の時空間別特徴を把握する.ついで,クラメールの関連係数によって主観的認識項目とGES環境項目の関連を明らかにする.さらに,印象項目のプロフィールを示すとともに印象項目に因子分析を適用して得られる共通因子により対象水辺のイメージ(像)を得る.以上のプロセスにより参加型階層的水辺環境評価システムの構造を示す.
  • 中田 達, 塩沢 昌, 吉田 貢士
    原稿種別: 原著論文
    2009 年 22 巻 6 号 p. 456-465
    発行日: 2009/11/05
    公開日: 2009/11/25
    ジャーナル フリー
    氾濫源や河岸湿原は,高い生物多様性と水質保全機能を持つとされるが,これにかかわる水位変化と河川との間の水交換を調べた研究は少ない.本研究は,霞ヶ浦最大のヨシ原である妙岐ノ鼻湿原において水位の空間的分布と時間変化を年間観測した結果,次の3段階のメカニズムによって水位変化が生じることを明らかにした.1)霞ヶ浦の水位が湿原地盤高を超えると湿原内に河川・湖から水が流入し,湿原全体が冠水する洪水ピーク時には湿原内の水位は湖・河川に一致し,湿原水位は湖の水位で決まる.2)その後,水位が河岸以下に低下すると,湖の水位が速やかに低下しても湿原内の水位は緩やかに逓減し,また,湿原内の地形・標高により水位低下速度に差が生じる.3)さらに,湿原水位が地盤高を下回ると,蒸発散のみで水位低下が生じるが,地下水面が土中のために水位低下速度は速くなる.氾濫時における水収支から,2006年における湿原と湖・河川との間の水の流入・流出の水交換の量を求めたところ,増水時の湿原水位上昇において河川からの水の浸入が58~78 %を占め,4回の氾濫による流入・流出量はほぼ年間の降雨量に匹敵する1300 mmであった.この氾濫時の湿原と河川との間の水交換が物質交換をもたらし,湿原の水質と生態に影響すると推察される.
  • 井芹 慶彦, 水本 真輝, 神野 健二, 西山 浩司
    原稿種別: 原著論文
    2009 年 22 巻 6 号 p. 466-478
    発行日: 2009/11/05
    公開日: 2009/11/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,1901年1月から2004年12月を解析対象期間として,日本全国51地点における月降水量の非超過確率に対してパターン分類手法を適用し,月降水量分布の変動特性を調べた.月降水量分布パターンの抽出には,多次元データの情報を圧縮して2次元平面上にパターンの相互関係を表示できる,自己組織化マップ(SOM;Self-Organizing Maps)手法を用いた.解析対象期間の1901年から2004年を4期間に分けて,日本全国の月降水量分布と太平洋十年規模振動との対応を調べたところ,太平洋十年規模振動が負の相(正の相)である期間は,東日本(特に太平洋側)を中心とした多雨となる月の発生頻度が高い(低い)傾向があった.また,1977年から2004年はそれ以前に比べ,沖縄を除く全国規模で多雨となる月の出現頻度が低い一方で,北海道・沖縄を除く全国規模で少雨または厳しい少雨となる月の出現頻度が高い傾向にあった.更に,SOMマップ上に分類された月降水量の非超過確率分布の遷移を追跡することで,列島渇水の発生した1994年から1995年にかけての月降水量分布のおおよその挙動を,視覚的に容易に把握できた.
研究ノート
  • 諸泉 利嗣, 小村 拓也, 三浦 健志
    原稿種別: 研究ノート
    2009 年 22 巻 6 号 p. 479-483
    発行日: 2009/11/05
    公開日: 2009/11/25
    ジャーナル フリー
    可能蒸発量は蒸発計蒸発量に代わるものとしてしばしば利用される.可能蒸発量の推定式としてはPenman式が代表的であるが,気温,湿度,風速,日照率の気象データを必要とし,発展途上国など十分な気象データが存在しない地点においては必要な気象データをすべて利用できるとは限らない.本研究は,Penman式よりも少ない気象データで可能蒸発量を推定できる式としてMakkink式に着目した.Penman式による可能蒸発量に適合するように世界の300地点におけるMakkink式中の2定数を同定し,Makkink 式による可能蒸発量の推定精度について検討した.その結果,推定精度は各地点の地域定数を用いた場合が最も良かったが,気候区分ごとの地域定数を用いてもある程度の精度で推定できることがわかった.また,2定数間の関係は,既往の研究と同様に負の相関を示した.
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