全球スケールでの合成開口レーダ(SAR)によるモニタリングが実用化段階に入り,水文学の領域では表層土壌水分量と積雪内水分量の定量的把握が期待されている.本研究では能動型マイクロ波リモートセンシングによる表層土壌水分量に焦点を当て,地上計測用マイクロ波Cバンド散乱計を製作し,これを用いて重要な各種特性について室内実験を行なった.まずアンテナ特性などのシステム特性を電波暗室で調べる実験を行なった.さらに,この実験システムを用いて,マイクロ波土壌侵入深,土壌水分感度,入射角依存性,地表面粗度の影響について室内実験を行ない,以下の点が明らかとなった.(i)Cバンドマイクロ波の土壌への侵入深は,それが最も大きくなる乾燥時の鉛直入射状態でも10cm程度であり,SARの様なサイドルッキングレーダーでは土壌侵入深はより浅くなる.(ii)散乱計で観測される後方散乱係数と表層土壌水分量の関係を定式化する場合に実用的な表層土壌深は2.5cmである.(iii)後方散乱係数の入射角依存性は入射角が小さいほど顕著である.ただし,本室内実験システムでは30°以上の入射角については良い実験結果が得られなかった.(iv)HV偏波よりもHH偏波の方が後方散乱係数の土壌水分感度が高い.(v)対象土壌面が滑面と粗面とでは,後方散乱係数に非常に大きな差が生じる.
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