多くの途上国で長年問題となっている貧困は洪水がその一因と考えられることもあり,洪水の削減が貧困の軽減につながる可能性についても議論されている.洪水被害の大きさは,教育年数や性別といった個人属性の違いなどに起因する脆弱性にも影響を受けると考えられるが,近年高い関心が払われているジェンダーとの関連についてはまだ十分な知見を得られていない.そこで本稿では,洪水が常襲する途上国における教育年数や性別といった個人属性と洪水被害との関連性を明らかにすることを試みた.対象地域はミャンマー,タイ,スリランカ,ニカラグアの4カ国を選定し,既存の世帯訪問調査データを統合することにより同一の指標で比較した.本稿では,大都市と郊外/農村の二地域に分けて,貧困研究で着目されることが多い教育年数と性別という2つの個人属性に着目し,浸水深,浸水期間,収入損失という3つの洪水被害指標との関連性について,クロス集計と統計的検定により分析した.その結果,全体的に郊外/農村の方が収入損失の割合が大きいこと,郊外/農村の男性や大都市の男女で教育年数や収入が大きいほど収入損失の割合が小さくなる傾向があることの2つが示された.
土壌水分欠損量と土壌水分の静水圧平衡の仮定を用いることにより,根の分布を考慮して蒸散量を推定できるモデルを開発した.このモデルは,改良した神田・日野のモデルを用いて根からの吸水を計算し,Makkinkの式を用いて葉の水分要求を計算する.また,ガンマ分布を導入して,根の鉛直分布を表現している.さらに,入力には気象と土壌のオープンデータのみを必要とする.森林総合研究所竜ノ口山森林理水試験地にモデルを適用して解析を行った結果,遮断蒸発と蒸散をあわせて,概ね10 %の誤差で蒸発散量推定を行うことができた.モデルから,土壌水分量の減少によって蒸散が抑制されない場合であっても,根の水分供給能の限界によって蒸散の制約が生じ,蒸散が頭打ちになることが示された.また,根が深層の土壌水分を利用するために,裸地面と比較して,蒸発散の効率が低下しにくいことを,モデルが定量的に表現できることが示された.
局所慣性方程式は,効率よく洪水氾濫解析を実行できる基礎方程式として2010年頃に提案されて以来,数多くの数値モデルに使われている.著者らは,局所慣性方程式がなぜ高い数値安定性を有するのか,また,その安定性条件はどのように決定されるのかについて,数学的解析とモデル実装の両面から研究に取り組んできた.本稿は,約10年間に渡り取り組んできた一連の研究をレビューし,拡散波方程式との比較,摩擦項の離散化手法による安定性への影響,安定性と精度を両立する離散化手法の提案,という3つの視点で成果を整理する.数理解析の概要を説明するとともに,局所慣性方程式をモデルに実装するユーザー視点での要点をまとめることを目的とする.さらに,水文・水資源学会の研究グループ発足といった原著論文では記すことが難しい共同研究進展の契機についても,時系列で振り返って研究ノートの形で記録する.
学際交流の場としての水文・水資源学会のありがたさを実感するとともに,やっぱり農業水利の専門性を身に付けておくことの方が重要か,などと悩む今日この頃です.
漕艇部での活動を通じて学んだ河川・気象・水環境に関する体験を紹介する.
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