水文・水資源学会誌
Online ISSN : 1349-2853
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原著論文
  • 小椋 崇弘, 陸 旻皎, 岡 滋晃, 鬼束 俊一, 河村 直明
    2024 年 37 巻 1 号 p. 38-53
    発行日: 2024/02/05
    公開日: 2024/02/22
    [早期公開] 公開日: 2023/08/24
    ジャーナル オープンアクセス

     土壌水分欠損量と土壌水分の静水圧平衡の仮定を用いることにより,根の分布を考慮して蒸散量を推定できるモデルを開発した.このモデルは,改良した神田・日野のモデルを用いて根からの吸水を計算し,Makkinkの式を用いて葉の水分要求を計算する.また,ガンマ分布を導入して,根の鉛直分布を表現している.さらに,入力には気象と土壌のオープンデータのみを必要とする.森林総合研究所竜ノ口山森林理水試験地にモデルを適用して解析を行った結果,遮断蒸発と蒸散をあわせて,概ね10 %の誤差で蒸発散量推定を行うことができた.モデルから,土壌水分量の減少によって蒸散が抑制されない場合であっても,根の水分供給能の限界によって蒸散の制約が生じ,蒸散が頭打ちになることが示された.また,根が深層の土壌水分を利用するために,裸地面と比較して,蒸発散の効率が低下しにくいことを,モデルが定量的に表現できることが示された.

研究ノート
  • 田中 智大, 山崎 大, 吉岡 秀和, 木村 匡臣
    2024 年 37 巻 1 号 p. 54-62
    発行日: 2024/02/05
    公開日: 2024/02/22
    [早期公開] 公開日: 2023/08/31
    ジャーナル オープンアクセス

     局所慣性方程式は,効率よく洪水氾濫解析を実行できる基礎方程式として2010年頃に提案されて以来,数多くの数値モデルに使われている.著者らは,局所慣性方程式がなぜ高い数値安定性を有するのか,また,その安定性条件はどのように決定されるのかについて,数学的解析とモデル実装の両面から研究に取り組んできた.本稿は,約10年間に渡り取り組んできた一連の研究をレビューし,拡散波方程式との比較,摩擦項の離散化手法による安定性への影響,安定性と精度を両立する離散化手法の提案,という3つの視点で成果を整理する.数理解析の概要を説明するとともに,局所慣性方程式をモデルに実装するユーザー視点での要点をまとめることを目的とする.さらに,水文・水資源学会の研究グループ発足といった原著論文では記すことが難しい共同研究進展の契機についても,時系列で振り返って研究ノートの形で記録する.

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