日本臨床免疫学会会誌
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37 巻, 4 号
第42回日本臨床免疫学会総会抄録集
選択された号の論文の193件中1~50を表示しています
特別講演
  • 谷口 維紹
    2014 年 37 巻 4 号 p. 250
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/07
    ジャーナル フリー
      免疫応答系は自然免疫系と適応免疫系に大別されるが,近年両免疫系の連携とそのメカニズムの解明が大きな注目を浴びており,アレルギー性免疫応答や自己免疫,更には発がんとの関係においても注目を浴びている.病原体やがん細胞の排除に関与する免疫系の調節機構といった生体防御系の根幹を担う個々のシステムの破綻が細胞のがん化やがん細胞の異常増殖につながることは広く知られているところであるが,そこでは両免疫系の連携の重要性が指摘されている.そもそも,免疫学の歴史において,免疫システムは病原体等が持つ特有の分子を非自己として認識・応答し,自己由来分子には免疫寛容が成立しており応答しないことが基本とされてきた.しかしながら,近年自己由来の分子も免疫システムを活性化しうることが認識されるようになり,いわば自己分子の質的な変化に加え,その量的な変化なども「免疫原性」に影響を与えることが注目されている.この文脈において,死細胞などから放出されるとされているHMGBタンパクなどのDanger-associated molecular pattern(DAMP)分子群による免疫系の調節が注目されている.我々の研究室ではこれまで,サイトカインの研究を推進し,その発現機構の解析を通して,IFN(interferon)や他のサイトカインの発現を制御する因子としてIRF(IFN regulatory factor)ファミリー転写因子を見いだし,免疫系の制御におけるその機能を主軸として研究を進めてきた.シンポジウムでは,自然免疫系によるがん細胞の認識とIRF転写因子を介した新しいがん抑制機構について,最近の成果を報告するとともに,死細胞等が放出するHMGB1タンパクによる炎症・免疫の制御機構についてコンデショナルノックアウトマウスの作製・解析を通して得られた知見などを総合して紹介し,その医学への応用についても考察したい.
6 学会合同シンポジウム
  • 西川 博嘉
    2014 年 37 巻 4 号 p. 251
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/07
    ジャーナル フリー
      腫瘍抗原特異的な抗体反応から腫瘍抗原を同定する試みは,自己の腫瘍細胞株を自己血清にてスクリーニングするautologous typing法にはじまり,腫瘍細胞株からファージライブラリーを作製してがん患者血清でスクリーニングするSEREX法(serological analysis of recombinant cDNA expression libraries)へとつながり,数々の有望な高免疫原性の腫瘍抗原が同定されてきた.しかしこれらの方法は手技の煩雑性から,より簡便で網羅的にがん患者の抗体反応を解析する手法の開発が望まれていた.我々は約9000個の自己抗原を搭載した蛋白アレイシステムを用いたヒト抗体の網羅的解析方法を開発した.本法を用いて成人T細胞性白血病(ATLL)患者の抗体反応を広範にモニタリングし,がん・精巣抗原に対する抗体反応がATLL患者で認められることを明らかにした.同定されたがん・精巣抗原(腫瘍抗原)に対してはCD8+T細胞応答も確認され,現在抗CCR4抗体療法との併用によるがん免疫療法の臨床試験が計画されている.また本網羅的抗体モニタリング法を用いることにより,新規腫瘍抗原を同定するのみならず,近年がん治療に応用されている包括的免疫賦活化製剤の治療前後での患者の抗体反応の変動を網羅的に解析することができる.これにより,がん免疫療法で重要視されているバイオマーカー同定につながる可能性があり,今後の展開について議論したい.
  • 山村 隆, 荒木 学, 中村 雅一
    2014 年 37 巻 4 号 p. 252
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/07
    ジャーナル フリー
      多発性硬化症(MS)の治療薬の開発は盛んであるが,現在利用可能な治療薬の有効例は限られ,MS病態の多様性を示唆している.近年,抗アクアポリン4抗体の上昇を伴う視神経脊髄炎(NMO)がMSから分離され,インターフェロンβで悪化したMS症例の多くが,実はNMOであったことが明確になった.我々の研究グループは,NMO病態におけるIL-6依存性プラズマブラストの重要性を示し(Chihara et al 2011; 2013),難治性NMOに対するtocilizumabの有効性を報告した(Araki et al 2012; 2014).免疫性神経疾患においても,病気のメカニズムを詳細に解析し,その結果に基づいた精密な医療(いわゆるPrecision Medicine)を実践する時代が到来したことを意味している.我々は最近,インターフェロンβが無効なMS症例の多くで,プラズマブラスト増加が見られることに着目し,このような症例における詳細な解析を開始した.NMOとの類似性を認めるため,tocilizumab治療も開始している.インターフェロン無効MSが,新たなオーファン疾病として分離され,医薬品開発の対象になる可能性がある.Drug non-responderの治療法開発研究は,次の10年の重要課題である.
  • 石原 俊治, 木下 芳一
    2014 年 37 巻 4 号 p. 253
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/07
    ジャーナル フリー
      腸管免疫の恒常性は多様な細胞の機能によって担われているが,免疫を負に制御するB細胞サブセットである“制御性B細胞(Breg)”の機能は十分に明らかにされていない.これまでの報告から,Bregを規定する細胞表面マーカーやサイトカイン産生能は様々であり,臓器や病態によってBregのタイプや機能が異なる可能性がある.我々は,CD1dhighCD19highでIL-10を産生するB細胞分画がBregの1つのサブセットであると考え,クローン病モデルマウス(SAMP1/Yit)やヒトのクローン病の病態に,本サブセットの機能異常が関与する可能性を報告した.また,SAMP1/Yitマウスから分離したCD4陽性T細胞をSCIDマウスへ移入した腸炎モデルを作製し,同時移植したBregが腸炎発症や増悪に影響を与えるかを実験的に評価した.本モデルでは,全B細胞移入を共移入した群に比べて,Bregを除去したB細胞を共移入した群において,有意に腸炎の程度が増悪した.本結果は,Bregが腸炎の発症や増悪に関わる可能性を示唆する所見である.さらに我々は,体外で調整したアポトーシス細胞を経静脈的に投与すると腸管炎症が抑性されることを見出し,その抗炎症効果にBregの機能が関与することを明らかにした.本シンポジウムでは,腸管におけるBregの機能について,これまでの報告と我々の研究成果の要点を紹介する.
  • 天谷 雅行
    2014 年 37 巻 4 号 p. 254
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/07
    ジャーナル フリー
      天疱瘡は,デスモグレイン1,3(Dsg1, Dsg3)に対する自己抗体によって生じる自己免疫疾患である.同一患者の経過の中で,抗体価と病勢は平行して推移する.しかし,異なる患者間で,抗体価は重症度と必ずしも相関しない.患者毎に病原性の強度が異なり,デスモグレイン分子上のエピトープが異なるためである.細胞接着活性上重要な部位を認識する抗体は,効率よく水疱を形成し,高い病的活性を示す.近年,患者末梢血より,ファージライブラリーを作成し,一本鎖モノクローナル抗体が単離されるようになり,さらに詳細に病的活性とエピトープの関係が明らかになってきた.得られた病的モノクローナル抗体の多くは,デスモグレイン分子のN末にある接着面を認識し,抗体のCDR3領域の配列に,D/E-X-X-X-Wという共通の配列を有することが明らかになった.また,Dsgは,細胞内の小胞体で前駆体(preDsg)として生成され,細胞表面に運ばれる間にプロペプチドがはずれて成熟タンパク(matDsg)となる.チュニジアに見られる風土病型落葉状天疱瘡において,健常人からpreDsg1に対する自己抗体が検出されることが示され,発症前段階における病態解明の手がかりとなることが期待されている.天疱瘡モデルマウスにおいて,抗体産生に関与するDsg3反応性T細胞が単離され,抗体産生のみならず,Interface Dermatitisをも誘導することが示された.天疱瘡をモデル疾患として明らかにされる自己免疫疾患の病態はまだまだ隠れたままであり,その最新知見を紹介したい.
  • 田中 良哉
    2014 年 37 巻 4 号 p. 255
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/07
    ジャーナル フリー
      関節リウマチ(RA)や全身性エリテマトーデス(SLE)などの全身性自己免疫疾患の病態形成過程で,B細胞は自己抗体産生,サイトカイン産生,抗原提示機能等を介して中心的な役割を担う.斯様なB細胞の機能や分化の異常はT細胞,単球,樹状細胞によって誘導・制御される.SLE患者の末梢血では活性化されたエフェクターメモリーB細胞が,Tfh細胞や樹状細胞サブセットの活性化,自己抗体の産生と相関して出現する.一方,B細胞の活性化制御あるいは活性化B細胞の除去による治療効果を期待して,B細胞標的治療が開発されてきた.欧米ではCD20に対する抗体リツキシマブはRAに対して使用され高い臨床効果を示し,本邦でも血管炎症候群等へ使用され,SLEに対してもCD20抗体療法が報告される.また,欧米ではリンパ球活性化抑制を目的とした抗BAFF抗体がSLEに承認された.現在,RA,SLEやループス腎炎に対してBAFF抗体,CD20抗体,CD22抗体,IFN抗体,CTLA4-Ig,TACI-Igなどの多彩なB細胞標的治療が開発段階にある.一方,CD20抗体の使用により日和見感染症の併発等の問題点も露呈したと同時に,分子標的治療の効果は,新たな病態解明や治療開発に繋がる可能性も示唆されてきた.ベッドサイドとベンチ間の双方向のトランスレーション研究により,病態解明や新規治療応用の展望が開けるものと期待される.
シンポジウム
  • 杉田 直
    2014 年 37 巻 4 号 p. 256
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/07
    ジャーナル フリー
      人工多能性幹細胞(iPS細胞)は,多種類の細胞・組織に分化する事が可能な細胞として注目され,現在様々な再生医療のための基礎研究および臨床試験が取り組まれている.我々の研究所では,ヒトiPS細胞由来の網膜色素上皮細胞(retinal pigment epithelial cells: RPE)の分化・誘導に成功し,本年度内に滲出性加齢性黄斑変性患者数名にiPS細胞由来RPE細胞シートが移植される計画がある.現在,このRPEシートの多項目の品質規格試験および動物を用いた安全性試験が行われ,現時点では大きな問題なく移植治療に向けた準備が行われている.また,近い将来には加齢性黄斑変性症だけではなく網膜色素変性症など他の網膜疾患にも移植の構想があり,その場合iPSバンクを利用した他家移植で行われる予定である.本シンポジウムではiPS細胞由来RPE細胞の分化・誘導方法,品質規格試験の結果,安全性試験の結果,その網膜下への移植方法,また,他家移植に向けた拒絶反応試験の解析結果などを報告する.
  • 大津 真
    2014 年 37 巻 4 号 p. 257
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/07
    ジャーナル フリー
      人工多能性幹細胞(iPS細胞)技術の確立は医学研究に革新をもたらしている.iPS細胞の登場によって,再生医療への応用が現実のものとして期待され認識され始めているが,また疾患患者におけるモデル研究の推進にも大きな期待が寄せられている.すなわち,iPS細胞は患者体細胞からゲノム情報を維持したまま樹立することが可能な多能性幹細胞であり,特に遺伝性疾患においては個々の研究対象である体細胞へと再度分化誘導することで,患者特有の病因・病態を細胞レベルで再現することが期待できる.一方で,T細胞から樹立するiPS細胞(T-iPS細胞)は,T細胞受容体の遺伝子再構成を変えることなくT細胞へと再分化を誘導することで,他にない新たな研究モデルを提供する.可能性のある応用例は,ウイルスやがんに対する抗原特異的T細胞を標的とする免疫再生療法から,自己免疫疾患において抗原特異的に免疫寛容を誘導する新規の細胞治療法の開発まで,多岐に渡る.そこで本講演においては,疾患/抗原特異的T細胞にiPS細胞技術を応用して行う研究について概説し,現状抱える問題点や今後の方向性,進展の可能性等につき私見を交えて紹介する.
  • 田中 良哉, 園本 格士朗, 張 香梅, 福輿 俊介, 近藤 真弘, 尾下 浩一, 山岡 邦宏
    2014 年 37 巻 4 号 p. 258
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/07
    ジャーナル フリー
      関節リウマチは進行性関節破壊を必発するが,破壊された関節機能は不可逆的で,修復を目指した治療の開発が必須である.我々は,多分化能を有するヒト骨髄由来間葉系幹細胞(MSC)の炎症性関節炎への治療応用を目指してきた.まず,ヒトMSCはIL-1等の炎症性サイトカインの存在下でも骨芽細胞,骨細胞への分化が強力に誘導された.その過程には,Wnt5a/ROR2の誘導およびその下流のシグナル経路の関与が示された.脂肪組織由来間葉系幹細胞もIL-6刺激で骨芽細胞様の分化を呈した.また,IL-1で刺激したMSCはRANKLよりOPG産生が優位で,破骨細胞の分化抑制を介して関節破壊を制御した.一方,MSCから軟骨細胞への分化は,IL-6/Stat3リン酸化を介して誘導され,IL-17/Sox9リン酸化制御を介して抑制され,異なる刺激調節系の存在が示された.さらに,ナノファイバーシートに播種したヒトMSCをラット関節近傍に移植すると,関節炎,骨破壊が臨床的,構造的,病理学的に抑制された.ナノファイバー播種MSC治療群では関節局所のIL-1やIL-6発現や所属リンパ節腫大,脾腫,血清II型コラーゲン抗体産生が抑制され,リンパ節のT細胞の増殖,サイトカイン産生が阻害され,局所の治療効果と全身性免疫応答の抑制作用を有した.さらに,GFPで標識したMSCは移植部に留まり,局所で産生されるTGF-等の産生を介して免疫応答が抑制された.以上,ナノファイバーに播種したヒトMSCは,骨芽細胞や軟骨細胞への分化,破骨細胞の分化制御,全身性免疫応答の抑制作用を有し,炎症性関節炎の疾患制御,関節機能の再生・修復を目指す上で有効なツールである事が示された.
  • 辻 孝
    2014 年 37 巻 4 号 p. 259
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/07
    ジャーナル フリー
      外分泌腺である唾液腺や涙腺は,水分やタンパク質成分をはじめとする分泌液により口腔や眼の湿潤環境,その機能や恒常性を維持する役割を担っている.老化や自己免疫疾患などにより外分泌腺の腺房細胞が委縮すると乾燥症が発症して口腔や眼の機能障害が発生するため,抜本的な治療法の開発が期待されている.
      私たちは,次世代再生医療としての「器官再生医療」の基盤技術として,単一化上皮性幹細胞と間葉性幹細胞から器官原基を再生するための「器官原基法」を開発し,歯や毛包の器官原基を再生して同所的に移植することにより機能的な器官再生が可能であることを示した.唾液腺の再生では,胎児の唾液腺上皮性幹細胞と間葉性幹細胞から唾液腺原基を再生し,唾液腺全摘出マウスモデルの耳下腺導管に再生唾液腺原基を接続し,生体内で唾液腺の再生を可能とした.再生唾液腺は,クエン酸刺激により口腔内へ再生唾液を分泌し,唾液腺摘出に伴う口腔内の洗浄機能や嚥下障害を機能的に回復可能であることを明らかにした(Nature Commun. 4, 2498, 2013).また同様の方法により,涙腺の機能的な再生も可能であることを実証し(Nature Commun. 4, 2497, 2013),分泌腺の器官再生により口腔や角膜乾燥症に対する新たな治療法の実現可能性を示した.
      本シンポジウムでは,次世代再生医療としての外分泌腺の再生を目指した研究の進展について紹介し,その現状と課題を考察したい.
  • 佐藤 俊朗
    2014 年 37 巻 4 号 p. 260
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/07
    ジャーナル フリー
      炎症性腸疾患は粘膜免疫の制御異常を病態とする慢性炎症性疾患である.腸管上皮細胞は100兆個におよぶ腸内細菌や多様な食餌抗原に対する防御壁となっており,そのバリアー機能の破綻は病態悪化に関与している.さらに,炎症性腸疾患の長期寛解維持における粘膜治癒の重要性が認識され,腸管上皮機能を標的とした治療が期待されている.腸管上皮幹細胞は体内で最も高い自己再生能力を有しているが,最近になるまでその単離培養が困難であった.我々は,基底膜に類似した細胞外基質とWnt, R-spondin, EGF, Nogginから構成される幹細胞ニッチを培養皿で再現することにより,腸管上皮幹細胞の培養技術を開発した.本培養法では,腸管上皮幹細胞が生体内上皮組織を擬似したオルガノイドを形成し,永続的にゲノムの完全性を維持した幹細胞増幅が可能であることがわかった.さらに,オルガノイドはマウス炎症性腸疾患モデルにおいて,粘膜損傷部に生着することが示され,その治療効果が確認実証された.本シンポジウムでは,腸管上皮幹細胞を用いた培養技術とその再生医療応用について発表したい.
  • Sergio E. BARANZINI
    2014 年 37 巻 4 号 p. 261
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/07
    ジャーナル フリー
      Autoimmune disorders arise when physiological tolerance to “self” antigens is lost. Although several mechanisms may be involved in this pathogenic process, dysregulation of T-cell and B-cell activation and of pathways leading to inflammation are logical candidates. Susceptibility to autoimmune diseases has been associated with multiple factors including genetics, epigenetics, and the environment. While the modest concordance rate in monozygotic twins suggests that environmental factors are major players in most autoimmune diseases, increased heritability within families and the decrease in risk with the degree of relatedness all argue in favor of genetic factors. With the advent of high-throughput genomics, massive amounts of genetic data are being produced and reported on a monthly basis. Although considerable insight has been gained from each of these individual studies, a detailed comparative analysis will likely identify both unique and common pathways operating in autoimmunity.
      More than 40 genome-wide association studies (GWAS) have been published to date in several autoimmune diseases (AID) and hundreds of common variants have been identified that confer risk or protection. While statistical adjustments are essential to refine the list of potential associations with each disease, valuable information can be extracted by the systematic collection of moderately significant variants present in more than one trait. While involvement of the MHC region in chromosome 6p21 is not in question for most AID, the complex genetic architecture of this locus poses a significant analytical challenge. On the other hand, by considering the contribution of non-MHC-related genes, similarities and differences among AID can be readily computed thus gaining insights into possible pathogenic mechanisms. For example, statistically significant excess sharing of non-MHC genes was found between type I diabetes (T1D) and all other AID studied, a result also seen for RA. A smaller but significant degree of sharing was observed for multiple sclerosis (MS), Celiac disease (CeD) and Crohn's disease (CD).
      We have developed a bioinformatics tool called iCTNet (integrated Complex Traits networks), that enables downloading and visualization of large volumes of data and the relationships among the different data types, information that is not typically available for the general user. The most recent version of iCNet (scheduled to be released in Spring 2014) includes data from genome-wide association studies, OMIM, protein interactions, tissue expression, drug targets, drug side effects, and miRNA targets among other data types. During my presentation I will describe practical examples of how this tools may facilitate the biological interpretation of large throughput data in human immune-related diseases and how this can help to generate new hypotheses for drug repositioning strategies.
      Using this class of approaches the unique genetic landscape for each autoimmune disease can start to be defined. Furthermore, this kind of analysis may set the basis for more targeted and rational therapeutic approaches.
  • 山村 隆, 能登 大介
    2014 年 37 巻 4 号 p. 262
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/07
    ジャーナル フリー
      近年開発された分子・細胞標的医薬のインパクトは多方面に及んでいるが,ヒト免疫病およびヒト免疫系の理解の深化における貢献についての認識が高まっている.我々の研究室では,NKT細胞を標的とする糖脂質医薬OCH(Miyamoto et al. Nature 2001)の多発性硬化症に対する医師主導臨床治験(First in Human試験)およびトシリズマブの視神経脊髄炎に対する臨床研究において,被験者血液リンパ球を用いて免疫系バイオマーカーの解析を進めている.研究によって得られる情報量はきわめて膨大であり,動物実験では想像できなかったような結果が得られつつある.
      ヒト自己免疫疾患に対するNKT細胞標的医薬の開発は,当該医薬品のbioavailabilityが低い点や,ヒトではマウスに比較してNKT細胞が少ないということが懸念材料とされて来た.しかし健常者15名に対するOCH単回投与試験および患者対象投与の結果,GM-CSF産生T細胞の有意な減少や自己反応性T細胞のTh2偏倚などが確認された.ヒトNKT細胞を刺激する少量のリガンド物質がヒト免疫系を大きく偏倚させるという結果は予想を超えるものであり,First-in-Human試験の意味があらためて確認されることになった.免疫難病に対する現在の治療薬の効果は限定的であるが,患者試料解析を薬剤開発早期から取り入れ,病態に即したPrecision Medicineの開発を目指す我々のアプローチについて紹介したい.
  • 平家 勇司
    2014 年 37 巻 4 号 p. 263
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/07
    ジャーナル フリー
      現在,抗CTLA-4抗体や抗PD-1抗体をはじめとする,免疫制御抗体を用いたがん治療が注目を集めている.既に,欧米の大手製薬会社が,複数の免疫制御抗体の臨床試験を行っており,化学療法抵抗性の癌を対象とした早期試験において,高い抗腫瘍効果を示唆するデータが得られている.一方,免疫制御抗体の多くは自己免疫反応を誘導し,皮膚炎,下痢,肝機能障害,さらには内分泌障害等の深刻な有害事象を引き起こす.これらの試験では,GCPに基づいた臨床評価と共に,客観的な手法を用いた免疫評価が行われ,科学的にも質の高い試験と評価されている.これらの臨床的,科学的背景のもと,免疫制御抗体の一部はすでに承認或いは承認間近となっている.
      がんに対する免疫療法開発において,Proof of Conceptの確立や治療効果・有害事象のバイオマーカー探索のために,客観的な免疫評価法を確立し使用することは必須である.欧米では,その重要性にはやくから着目し,アカデミア,産業界,規制当局が一緒になって免疫評価法の標準化を行ってきた.Cancer Immunotherapy Consortium(CIC)やThe Association for Cancer Immunotherapyが中心となり,FACS解析,ELISPOT解析に加え免疫染色の評価方法の標準化を行い,その成果を免疫治療開発に応用している.免疫制御抗体の臨床開発が成功した背景の一つに,それらの点があげられる.
      振り返って,わが国では,免疫評価法の標準化の議論は今まで行われてこなかった.今後,わが国発の免疫療法の臨床開発を進める上で,国際的に標準と認められた免疫解析法の確立は必須である.
  • 石川 文彦
    2014 年 37 巻 4 号 p. 264
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/07
    ジャーナル フリー
      私たちは,ヒトの免疫システムを理解するとともに,白血病など造血器悪性疾患が,どのようにして免疫監視を逃れ,発症・再発するかを明らかにすることを目的に研究を進めている.
      免疫細胞が分化・成熟する組織,骨髄・脾臓・胸腺・リンパ節は,ヒトの場合,直接解析することが容易ではないことから,私たちは,臍帯血由来ヒト造血幹細胞を,免疫不全マウス(NSGマウス)の新生仔期に経静脈的に移植することで,高率なヒト細胞の生着を得ることに成功した.また,ヒト造血幹細胞は,レシピエントマウスの組織を利用しながら,T, B, NK, myeloid系細胞を供給していることが確認された.一方,免疫細胞の成熟に重要な役割を果たす微小環境はマウス由来であることから,マウス体内で,ヒトの免疫システムを完全には再現できない.そこで,微小環境を構成する分子として,マウス・ヒトの間の相同性が低いものについて,遺伝子組換え技術でヒト化して,あたらしいヒト化マウスの開発を行っている.本シンポジウムでは,ヒト化マウス開発の進捗とともに,ヒト疾患の再現におけるヒト化マウスの利用について紹介したい.
  • 河本 宏
    2014 年 37 巻 4 号 p. 265
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/07
    ジャーナル フリー
      特定の抗原特異性を有するリンパ球を取り出して増やす事(クローニング)が自在にできれば,免疫反応の関与するさまざまな病気の治療に応用できるであろう.実際にB細胞については随分以前からB細胞をハイブリドーマという形でクローニングし,その抗体を好きなだけ得る技術が可能となっていた.T細胞でも不死化によるクローニング法は随分以前に樹立されているが,T細胞の場合は生体で「細胞」として働くから,不死化したような細胞は臨床応用に適さなかった.そこで我々は,iPS細胞技術を用いてT細胞をクローニングしようと考えた.まず抗原特異的なT細胞からiPS細胞を作製する(T-iPS細胞).T-iPS細胞には元のT細胞が有していた再構成されたT細胞レセプター遺伝子の構造が受け継がれているので,そのiPS細胞からT細胞を分化誘導すると,元のT細胞と同じ特異性のT細胞だけが生成する.この方法でクローニングすると,T-iPS細胞の段階で好きなだけ増やすことができる一方で,分化誘導して正常なT細胞を得ることができる.すなわち,患者に投与できるT細胞を好きなだけ得ることができる.我々はこの方法をがんの免疫細胞療法に応用できないかと考え,最近,ヒトのメラノーマに特有のMART-1抗原に反応できるキラーT細胞からiPS細胞を作製すること,さらにそのiPS細胞からMART-1抗原特異的なT細胞を再生することに成功した(Vizcardo et al, Cell Stem Cell, 12: 31, 2013).現時点では自家移植の系を想定して研究を進めているが,一方で他家移植の系も想定している.
  • 岡田 随象
    2014 年 37 巻 4 号 p. 266
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/07
    ジャーナル フリー
      ゲノムワイド関連解析(genome-wide association study; GWAS)とは,ヒトゲノムの全領域におけるゲノム配列の個人間の違い(多型)と疾患との因果関係を網羅的に検討する遺伝統計解析手法の一つである.ヒトゲノム解析技術の発展に伴い,2000年代前半より世界中の研究施設で実施され,関節リウマチや全身性エリテマトーデスといった自己免疫疾患を含む多数のヒト疾患の感受性遺伝子の同定に貢献してきた.
      近年では,(1):国際共同研究コンソーシアムを通じた複数人種,数万人に対する大規模なゲノムワイド関連解析の実施,(2):次世代シークエンサーによるレアバリアント解析との統合,(3):HLA遺伝子アミノ酸多型における罹患リスク解析,(4):疫学的に非独立な関係が推定される疾患群(例:自己免疫疾患と精神疾患)のゲノムレベルでの関わりの解明など,より広い範囲での知見が得られるようになってきている.さらに,得られたゲノムワイド関連解析の成果を,多様な生物学的データベースや創薬標的遺伝子情報と統合することにより,単に疾患感受性遺伝子領域を同定するのみでなく,新たな疾患病態の解明や新規創薬に貢献できることも明らかとなってきた.
      本講演では,関節リウマチを中心とした筆者らのこれまでの成果について報告すると共に,自己免疫疾患におけるゲノムワイド関連解析の今後の可能性について論じたい.
  • 森尾 友宏
    2014 年 37 巻 4 号 p. 267
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/07
    ジャーナル フリー
      原発性免疫不全症は,自然免疫系あるいは獲得免疫系に関与する分子の異常により発症する免疫異常症でその多くは遺伝疾患である.今までに250以上の責任遺伝子が同定され,9つのカテゴリーに分類されている.免疫不全症ではいわゆる易感染性の他に,自己免疫疾患や悪性腫瘍を合併するもの,自己免疫や炎症を主体とするもの,特定の微生物に脆弱性を示すもの,など多彩な疾患群が含まれ,その解析から様々な疾患の分子基盤が明らかになることが期待されている.
      近年は,遺伝子解析技術の進歩と低価格化,基盤遺伝情報の充実などから,毎年10前後の新しい責任遺伝子が明らかになっている.特に両親や同胞を含めた全エキソン解析からはPGM3,TWEAK,MALT1などの異常による新しい免疫不全症が次々と報告されている.さらに今まで知られていた表現型と異なる既知遺伝子異常症(例えばEBVリンパ増殖症候群を呈するCORO1A異常症)なども報告されている.また体細胞モザイクの高精度検出により,モザイクによる自己炎症性疾患なども容易に同定されるようになっている.
      一方,複数以上の責任遺伝子変異が検出されたり,機能未知の遺伝子変異が捕まったりすることも稀ではなく,遺伝子解析から機能解析,機能検証につなげる方策について工夫・技術革新が必要である.ここでは私たちの実際の解析データを示しながら,原発性免疫不全症の遺伝子解析・遺伝子探索の現況と将来像について議論を進めたい.
  • 金井 隆典, 三枝 慶一郎, 筋野 智久, 竹下 梢, 水野 慎大, 松岡 克善, 久松 理一
    2014 年 37 巻 4 号 p. 268
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/07
    ジャーナル フリー
      【目的】慢性腸管炎症の免疫病態のエフェクターT細胞ではTh1細胞とTh17細胞が重要だが,その優位性,連関性に関して不明な点が多い.最近,我々はマウス腸炎腸管にはTh17細胞からTh17/Th1細胞を経由して分化するRORγt依存的alternative Th1(aTh1)細胞の病因意義を明らかにした.一方,本研究ではナイーブ細胞から直接的に分化し発生するclassical Th1(cTh1)細胞の腸炎病態関与について検討を行なった.【方法/結果】in vitroで分化誘導したRORγt欠損マウス由来Th1細胞をRAG−/−マウスに移入したところ腸炎を発症した.Wild type(WT)マウス(Ly5.1+),RORγt欠損マウス(Ly5.2+)由来,ナイーブ細胞を同数RAG−/−マウスに移入したところ腸炎を発症し,WTマウス由来Th1(aTh1+cTh1)細胞だけでなく,RORγt欠損cTh1細胞も著明に増加した.一方,RORγt欠損マウス由来ナイーブ細胞のみをRAG−/−マウスに移入しても腸炎は発症しなかった.さらに,共移入によってin vivoで誘導されたRORγt欠損cTh1細胞を分離し,再度RAG−/−マウスに移入したところ腸炎を発症したが,WTマウス由来Th1細胞移入マウスに比し腸炎スコアは減弱した.【考察】aTh1,cTh1細胞いずれも腸炎惹起能を有すること,さらに,in vivoにおいてcTh1細胞分化にはRORγt依存的aTh1細胞のサポートが必須であることが明らかとなった.以上,これまでTh1細胞,Th17細胞いずれも腸炎病態に重要であるかというさまざまな矛盾した結果を説明し得る重要なTh1-Th17連関がin vivoに存在することを示唆された.
  • 三宅 幸子
    2014 年 37 巻 4 号 p. 269
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/07
    ジャーナル フリー
      腸管の表面積はテニスコートの約1.5倍にものぼり,そこに存在するリンパ球は1011個にもおよぶ最大の免疫組織である.また,腸管は常に食物の摂取などを通して外来抗原に接するうえに,500種以上の100兆個にも達する腸内細菌叢と共存するなど独特な環境にある.腸内細菌叢が免疫反応に与える影響については,免疫組織の発達はもとより,アレルギー疾患との関連も示唆されてきた.近年では,シークエンスベースの解析が飛躍的に進み,肥満,糖尿病,癌など様々な疾患において腸内細菌の関与が示唆されている.自己免疫疾患においては,動物モデルを用いた研究では無菌飼育,抗生剤経口投与,プロバイオテイックス投与などにより病態が軽減することが示されている.我々は多発性硬化症患の腸内細菌叢の解析を行っている.腸疾患でみられるような多様性の消失はみられなかったが,Unifrac解析では健常人と有意差がみられた.門レベルではActinbacteriaが多くBacteroidesとFirmicutesは少ない傾向があったが,有意差はみられなかった.さらに解析をすすめると,42クラスターについて健常人と有意差がみられたので,他の疾患とも比較しながら紹介する.
  • 椛島 健治
    2014 年 37 巻 4 号 p. 270
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/07
    ジャーナル フリー
      皮膚は接触皮膚炎,アトピー性皮膚炎など多彩な免疫反応を誘導する免疫臓器です.これらの免疫応答は,皮膚に存在するT細胞や樹状細胞などが重要な役割を果たします.免疫機構は1011に及ぶ多数の免疫細胞が体内を移動し,相互作用し合うことによって誘導される複雑な動的システムであります.したがって,免疫応答誘導プロセスにおいて皮膚免疫担当細胞の相互作用は必須であり,これらの時空間的動態を検証することは,今後の皮膚免疫学の発展における重要課題であります.我々は,樹状細胞を特異的に欠失させる遺伝子改変マウスや,二光子励起顕微鏡による皮膚免疫細胞のリアルタイムイメージングシステムにより,皮膚の三次元構造,多様な皮膚免疫応答誘導における樹状細胞やT細胞の役割を検証してきました.本セミナーでは,当研究室で得られた新知見を紹介します.皮膚免疫の理解を深める基礎医学的見地からのみならず,皮膚科以外の臨床医の方にとっても有意義な内容になるように心がけたいと思います.
Rising Star Symposium
  • 沖山 奈緒子, KATZ Stephen I., 藤本 学
    2014 年 37 巻 4 号 p. 271
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/07
    ジャーナル フリー
      我々は,皮膚粘膜卵白アルブミン発現(K14-mOVA)マウスが,1×106 OT-I細胞移入後にびらんを伴う皮膚粘膜症状を発症するマウスモデルを構築した.皮膚病理像では,GVHDなどの苔癬型反応に特徴的な液状変性を認める.活性化T細胞に発現するPD-1は免疫制御分子とされ,リガンド(PD-Ls:PD-L1/L2)は広範囲の細胞に発現する.GVHD様マウスモデルを用いPD-1-PD-Ls機構を解析した.
      K14-mOVAマウスに野生型(WT)OT-I細胞移入しGVHD様症状が起こると,OT-I細胞は増殖活性化しPD-1を発現,リンパ節細胞はPD-Lsを,表皮細胞もPD-L1を発現する.K14-mOVAマウスは,WT OT-I細胞ではGVHD様症状を起こさない少数(5×104)のPD-1-KO OT-I細胞移入で発症した.以前我々は,K14-mOVA×OT-I DTgマウスでは,Fas-FasL機構を介しOT-I細胞を抑制するCD3+CD4CD8 OT-I-TCR+細胞が増殖し,OT-I細胞移入に抵抗性であると報告した.しかし,Fas-KO OT-I細胞移入ではDTgマウスは発症せず,PD-1-KO OT-I細胞移入で発症した.以上より,PD-1は自己反応性CD8 T細胞制御性皮膚粘膜疾患の重要な抑制機構である.
      一方,PD-L1を発現するK14-mOVA表皮細胞との共培養で,WT OT-I細胞は増殖活性化するが,OT-I細胞でのPD-1-KOは反応を促進した.加えて,PD-L1-siRNA移入K14-mOVA表皮細胞との共培養でも,WT OT-I細胞増殖は促進された.このことより,標的表皮細胞はPD-L1を介した自己防御機構を有すると示唆される.
  • 小林 拓
    2014 年 37 巻 4 号 p. 272
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/07
    ジャーナル フリー
      人体は消化管の広大な粘膜面を介して莫大な数の細菌と共存している.通常腸管マクロファージ(Mϕ)は腸内細菌に対し炎症性応答をきたさないように制御されている反面,この免疫寛容の破綻が炎症性腸疾患(IBD)の原因であり,抑制性サイトカインIL-10と炎症性サイトカインIL-12p40がこの寛容と破綻の主役であると考えられている.我々は腸管Mϕにおいて転写因子NFIL3がIL-10によって誘導されることを見出しその機能を解析したところ,NFIL3はMϕにおけるIL-12p40の抑制因子であることが判明し,さらに興味深いことにNfil3−/−マウスはTh1/Th17型腸炎を自然発症することを見出した.Nfil3−/−マウスリンパ球を欠損させると腸炎を発症しないが,野生型CD4+ Nfil3+/+ T細胞を移入することで腸炎を発症することから,自然免疫細胞のNFIL3欠損が原因であると思われた.また腸炎はNfil3/Il12b二重欠損マウスや無菌マウスでは起きないため,NFIL3欠損Mϕが腸内細菌に反応してIL-12p40を過剰産生することが腸炎の本態であると考えられた.さらにヒト炎症性腸疾患患者の腸管Mϕにおいても同様にNFIL3の発現が低下していることを確認した.最近新たにIBDの疾患感受性遺伝子として同定されたことからも,NFIL3はIBDの病態解明のために重要なターゲットであると考えられる.
  • 一瀬 邦弘, 古賀 智裕, 川上 純, TSOKOS George C.
    2014 年 37 巻 4 号 p. 273
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/07
    ジャーナル フリー
      全身性エリテマトーデス(SLE)は自己抗体と免疫複合体の血管壁,組織の沈着により,種々の臓器障害を引きおこす自己免疫疾患である.ループス腎炎の進行に免疫学的側面が関与していることは理解されているが,どのような機序で腎臓糸球体内部に作用しているかについてはよく分かっていない.SLEのヒトT細胞の核内ではCalcium/calmodulin-dependent protein Kinase Type IV(CaMKIV)の発現が亢進しており,転写因子制御を介したT細胞機能異常を引き起こすことが報告されている.我々はSLEのモデルマウスであるMRL/lprマウスを用い,CaMKIVのB細胞におけるCD80, CD86発現制御によるIFN-γ,TNF-α産生及びmTORシグナルや転写因子CREM-αを介したTh17細胞制御の機序を明らかにした.さらにループス腎炎のCaMKIVによるメサンギウム細胞や糸球体上皮細胞(ポドサイト)の機能的制御について検討を行った.メサンギウム細胞ではその増殖はCaMKIVによるCDK2やcyclin-D1のcell cycleおよびIL-6産生亢進によってもたらされ,ポドサイトでは糸球体濾過フィルターの役割だけでなく,CaMKIVを介したCD86発現制御により免疫担当細胞としての機能を有する可能性があることが示された.このようにCaMKIVは種々のSLEの病態に関与すると思われ,今後の分子標的薬としての役割を担う可能性がある分子である.本シンポジウムではSLEにおけるCaMKIVの意義について討論したい.
  • 加藤 将
    2014 年 37 巻 4 号 p. 274
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/07
    ジャーナル フリー
      滑膜線維芽細胞(SF)の過増殖は関節リウマチ(RA)の病態において中心的役割を担っている.活性化したSFは大量の炎症性サイトカイン,マトリックス分解酵素を産生し,関節の炎症,破壊に寄与する.故に,このSFを細胞死に誘導することはRAに対する治療戦略の一つである.今回我々は,RA患者由来のSFにおいて1)オートファジー活性が高いこと,2)アポトーシス抵抗性であるが,ある種の非アポトーシス性細胞死に感受性が高いこと,3)p62/sequestosome 1陽性ユビキチン凝集体と巨大空胞が形成されやすいこと,4)Autophagy-linked FYVE proteinの発現が低下していることを示し,この非アポトーシス性細胞死はAutophagic Cell Deathの定義と合致した(Kato M, et al. Arthritis Rheumatol. 2014).次に我々は,このAutophagic Cell Deathの感受性を更に高める方法を模索した.p97/valosin containing proteinはユビキチン-プロテアソーム系を制御し,この変異は封入体筋炎とかかわる.RA患者由来のSFをp97 siRNAまたはp97阻害剤で処理すると,ユビキチン凝集体と巨大空胞の形成を伴った細胞死が促進され,この細胞死はオートファジー阻害により抑制された.以上の結果より,Autophagic Cell Deathが関節リウマチ滑膜線維芽細胞の“アキレス腱”である可能性,p97阻害がAutophagic Cell Deathを誘導する有力な手段であることが示唆された.
  • 中野 和久, 田中 良哉
    2014 年 37 巻 4 号 p. 275
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/07
    ジャーナル フリー
      近年,代表的な自己免疫疾患である関節リウマチ(RA)の発症や重症度にもエピジェネティクスの異常が深く関わることが示唆されるようになってきた.DNAメチル化はエピジェネティクスの代表的な機構の一つであるが,ゲノム網羅的なDNAメチル化解析により,RA患者に由来する滑膜線維芽細胞(FLS)には疾患に特有なDNAメチル化パターンが存在することが明らかとなった.RA滑膜においては,炎症環境の持続自体がその場に存在する細胞をより攻撃的でかつ治療抵抗性な表現型に変質させるという仮説のもとに,我々は,代表的な炎症性サイトカインであるTNFやIL-1が,FLSにおけるDNAメチル化酵素(DNMT)の発現を低下させ,受動的脱メチル化を促進することを示し,疾患特有のDNAメチル化パターン形成の分子機構の一端を明らかにしてきた.2010年にTet(Ten-Eleven translocation)タンパク質ファミリーがDNA脱メチル化酵素として同定されて以来,DNAメチル化・脱メチル化のダイナミズムに関する研究はさらなる進展を見せており,本発表では,炎症性サイトカインによるFLSのDNAメチル化異常の誘発機構,またそれに基づくFLSの表現型の変質,および今後の研究課題について紹介する.
専門スタディーフォーラム
  • 黒崎 知博, 松本 真典, 大海 雄介, 高橋 宜聖, 古川 鋼一, 馬場 義裕
    2014 年 37 巻 4 号 p. 276
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/07
    ジャーナル フリー
      従来,Bリンパ球の一番重要な仕事は,プラズマ細胞へと分化し,抗原特異的な抗体を産生し外来抗原を速やかに生体から除去することと考えられてきた.しかし最近の研究は,B系列細胞が,IL-10を産生し,樹状細胞・Tリンパ球に働きかけ,免疫応答をnegativeに,又,Fc部位にシアル酸が結合した抗体は,抗炎症作用があることが明らかにされつつある.このような制御性細胞・制御性抗体の存在は,B細胞を介する自己免疫疾患・移植免疫の治療に新しい視点を与えるものである.
      このフォーラムでは,抗体の機能発現機構,Bリンパ球を介する免疫制御機構に関して,最近の進歩を概説したい.
  • 中村 雅一, 千原 典夫, 山村 隆
    2014 年 37 巻 4 号 p. 277
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/07
    ジャーナル フリー
      自己免疫疾患におけるプラズマブラスト(PB)は自己抗体,あるいはサイトカイン産生により病態形成に寄与すると考えられる.実際に,全身性エリテマトーデスなどいくつかの自己免疫疾患では,末梢血PBの増減と病勢との関連が報告されている.また,PBはCD20の発現を欠くためRituximabの標的外であり,関節リウマチや特発性血栓性紫斑病などにおける同薬抵抗性例の存在は,自己免疫疾患におけるB細胞除去治療の標的としてのPBの重要性を示唆する.
      私達は,中枢神経系の自己免疫疾患である視神経脊髄炎(NMO),及び多発性硬化症(MS)の臨床検体を用いてPBと病態との関連を検討してきた.NMOでは,CD138+ PBがCXCR3介在性に中枢神経系に浸潤し,IL-6依存性の生存,及び自己抗体産生により病態形成に寄与することを明らかにするとともに,Tocilizumab治療の有効性を確認した.また,古くから自己抗体介在性亜群の存在が指摘されるMSにおいても,一部の患者で末梢血IL-6依存性PBの増加を認め,これらの患者は既存治療抵抗性であることを見出した.従って,MSにおいてもPBは有力な治療標的になる可能性があり,MSにおけるPB研究は,これまでのランダム化比較試験結果に基づく画一的な治療薬選択から病態に応じたテーラーメイド治療への発展の契機となることが期待される.
  • 岩田 慈, 中山田 真吾, 新納 宏昭, 福與 俊介, 久保 智史, 好川 真以子, WANG Sheau-Pey, 赤司 浩一, 田中 良 ...
    2014 年 37 巻 4 号 p. 278
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/07
    ジャーナル フリー
      自己免疫病態におけるB細胞の機能発現と活性化にはT細胞との相互作用が極めて重要である.我々は,in vitro実験,患者末梢血リンパ球のFACS解析により自己免疫疾患での役割を検討した.ヒト末梢血B細胞を用いたin vitro解析により,BCR/CD40/TLRおよび濾胞性ヘルパーT(Tfh)細胞により産生されるIL-4,IL-21などの刺激が,Syk,Btk,Jakなどのチロシンキナーゼを介したシグナルの活性化を齎し,サイトカイン産生,分化誘導・クラススイッチに重要なgene network,抗体産生などを多様に制御していることを明らかにした.さらに,RA患者末梢血B細胞ではSyk,Btkのリン酸化が健常人に比し有意に亢進しており,特にACPA,RFなどの自己抗体陽性例において顕著であった.RA患者に対するT細胞共刺激調節剤CTLA-Ig療法は,ヘルパーT細胞サブセットにおけるTfh細胞の割合を特異的に減少させるとともに,B細胞でのSykのリン酸化を有意に抑制した.以上,B細胞はT細胞との相互作用により自己抗体産生を介した病態形成に重要な役割を担うが,これらを標的とした生物学的製剤やキナーゼ阻害剤は自己免疫異常の制御に有用である可能性が示唆された.今後,T細胞-B細胞の相互作用に関与する細胞内外のシグナル伝達異常が特定されることで新規治療法の開発が期待される.
  • 新納 宏昭
    2014 年 37 巻 4 号 p. 279
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/07
    ジャーナル フリー
      関節リウマチをはじめとした自己免疫疾患の病態におけるB細胞の重要性は,近年のB細胞除去療法の臨床効果によって再認識された.ただここで着目すべき点として,B細胞は,抗体産生のみならず,抗原提示,共刺激,サイトカイン産生などといった抗体非依存性の多彩なエフェクター機能を営んでいることが判明した.また,エフェクターB細胞とは異なった制御性B細胞の存在も近年明らかとなり,自己免疫疾患の病態におけるB細胞の役割は,我々が予想していた以上にきわめて複雑なものと思われる.
      一方,B細胞には表面マーカー等に基づいた種々のサブセットが存在することが知られているが,上記したB細胞における抗体非依存性のエフェクター機能は特定のサブセットに特化したものなのか,または全てのサブセットが可塑性をもって機能しうるものなのか不明な部分が多い.
      本講演では,ヒトB細胞における抗体非依存性のエフェクター機能としてRANKL(Receptor Activator of NF-κB Ligand)とgranzyme B産生能に着目し,B細胞サブセット間での機能ポテンシャルの相違とその分子メカニズム,さらには関節リウマチや全身性エリテマトーデスの病態におけるこれらのエフェクターB細胞の機能的役割について紹介したい.
  • 宮垣 朝光
    2014 年 37 巻 4 号 p. 280
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/07
    ジャーナル フリー
      これまでB細胞は,B細胞受容体を介して抗原を認識して活性化し,形質芽細胞や形質細胞に分化し,抗体を産生することにより,免疫応答を正の方向に制御することが広く知られてきた.また,B細胞は抗原提示,副刺激分子(CD80,CD86,OX40Lなど)を介するT細胞の活性化,サイトカイン産生などの機能も有しており,免疫反応において,多彩な役割を果たしている.一方,以前より複数のマウスモデルでB細胞の中には免疫応答を負の方向に制御するサブセットが存在することが証明されてきた.近年になり,B細胞が抑制性サイトカインであるIL-10やTGF-βを産生することにより免疫反応を制御することが明らかになり,それらのB細胞は総称してレギュラトリーB細胞(制御性B細胞)と呼ばれている.その中でIL-10を産生するB細胞はCD1dhiCD5+CD19hiという独特の表現型を有しており,一つのサブセットを構成している.本講演ではこのIL-10産生レギュラトリーB細胞について,免疫反応抑制メカニズムについての最新の知見を交えながら紹介したい.
  • 横田 和浩, 佐藤 浩二郎, 秋山 雄次, 三村 俊英
    2014 年 37 巻 4 号 p. 281
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/07
    ジャーナル フリー
      関節リウマチ(RA)の罹患関節において,滑膜組織から産生される炎症性サイトカインは滑膜線維芽細胞に作用しRANKLを発現・誘導する.誘導されたRANKLは単球・マクロファージ系破骨細胞前駆細胞に作用し,破骨細胞が分化・誘導される.誘導された破骨細胞は,骨吸収を引き起こし骨破壊が生じることが知られている.我々は最近,マウス骨髄由来マクロファージをTNFαとIL-6で刺激することにより骨吸収能を有する細胞(破骨細胞様細胞)へ分化・誘導出来ることを明らかにした.興味深いことにこの細胞の分化はRANKL非依存的であった.また,マウス頭蓋部皮下へのTNFαとIL-6の投与により,頭蓋骨で骨吸収の促進が確認された.一方,培養ヒト末梢血CD14陽性細胞をTNFαとIL-6で刺激することで破骨細胞様細胞へ分化誘導出来ることが確認された.このことから,慢性炎症病態にあるRA関節腔内において,滑膜組織由来の炎症性サイトカインによりRANKL非依存的にマクロファージやCD14陽性細胞が,破骨細胞様細胞へ分化し,骨破壊を引き起こしている可能性が示唆された.
      今後,炎症性サイトカインによりマクロファージから分化・誘導された破骨細胞様細胞と従来の破骨細胞との相違について検討が必要であり,破骨細胞様細胞の分化・誘導を抑えることが,炎症性関節炎における骨破壊の制御に発展していくことが期待される.
  • 長谷川 均
    2014 年 37 巻 4 号 p. 282
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/07
    ジャーナル フリー
      自己免疫疾患では,より選択的で副作用が少なく長期間寛解を維持できる治療として,自己反応性T細胞を標的とした免疫寛容を導くTreg細胞や寛容型樹状細胞(tDCs)を用いた抗原特異的な治療が注目されている.また,がんと違って,自己免疫疾患などの慢性炎症に対しては,より高い安全性が求められるため,現時点では遺伝子操作による治療の適応はなく,生理活性物質や薬剤を用いて,安定性のあるtDCsの誘導が現実的である.tDCsの誘導には,IL-10,VitD3,Dex, rapamycinなどにより誘導されるが,いずれも一長一短があり,臨床的に有効かは十分解析されていない.そこで我々は,生理活性脂質,キナーゼ阻害剤などのライブラリーから,Cキナーゼ阻害剤(PKCI)がヒトtDCsを効率よく誘導することを見出した.ヒトPKCI-tDCsは炎症環境下で安定であり,CCR7の発現も比較的高く維持されており,IL-10,Foxp3の発現細胞を有意に誘導した.PKCIと他の誘導物質によって作成したtDCsを比較したところ,T細胞の抑制能,抑制性のサイトカインの産生,遊走能を満たす物質として,単独ではPKCIが最も有力であった.マウスPKCI-tDCsもヒトと同様の性質を持ち,GVHDマウスモデルマウスに投与したところ,GVHDは有意に抑制でき,生存期間の延長が確認できた.現在,自己免疫疾患患者から抗原特異的Treg細胞の誘導能について研究しており,臨床応用の可能性について報告する.
  • 千住 覚, 春田 美和, 池田 徳典, 西村 泰治
    2014 年 37 巻 4 号 p. 283
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/07
    ジャーナル フリー
      我々は,ヒトのiPS細胞から樹状細胞を作成する分化誘導法を開発している.iPS細胞由来の樹状細胞(iPS-DC)は,抗原提示能力やT細胞活性化能力等の樹状細胞としての機能を有している.しかしながら,ヒトのiPS細胞から樹状細胞を作成する場合,分化に長期間(40日前後)を要し,得られる樹状細胞数は,用いたiPS細胞の10~20倍程度でしかない.iPS-DCを癌に対する免疫療法において実用化するためには,これらの問題を解決する必要がある.まず,iPS-DC作成効率を改善するために,iPS細胞から増殖性ミエロイド細胞ライン(iPS-ML)を作成する方法を開発した.iPS-MLは,M-CSF + GM-CSF + IL-4の存在化で樹状細胞(iPS-ML-DC)へ分化する.iPS-MLを経由することにより,ヒトiPS細胞から樹状細胞を作成する効率が飛躍的に改善した.また,iPS-MLは,生理的なミエロイド系血液細胞と同様にがん組織に対する指向性を有している.そこで,iPS-MLにインターフェロンβを発現させ,これを用いてがんを治療する研究も行っている.scidマウスを用いた胃がんの腹膜播種あるいは肝転移のゼノグラフトモデルにおいて,顕著な治療効果を観察しており,数年以内に臨床試験を開始したいと考えている.
  • 門脇 則光
    2014 年 37 巻 4 号 p. 284
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/07
    ジャーナル フリー
      臨床に用いられる薬剤には樹状細胞(DC)に強い影響を及ぼすものがあり,DC biologyの探究や新規治療の開発に応用することができる.
      多発性骨髄腫に対するプロテアソーム阻害薬ボルテゾミブ,および慢性骨髄性白血病に対するチロシンキナーゼ阻害薬ダサチニブは,TLR9リガンドCpG DNAの刺激を受けた形質細胞様DC(pDC)によるIFN-αの産生を抑制した.これらの機序として,ボルテゾミブ,ダサチニブはそれぞれTLR9の小胞体からエンドソームへの移動,およびCpG DNAの早期エンドソームへの滞留(IFN-αの産生に重要)を阻害することがわかった.したがって,pDCにおける小胞(小胞体,エンドソーム)機能が新たな抗炎症薬の標的になると考えられる.
      また,活性型ビタミンD3(VD3)はさまざまな免疫担当細胞に作用して過剰な免疫反応を抑制するが,VD3はCD1c陽性の骨髄系DC(mDC)に作用してレチノイン酸(RA)の高産生を誘導することがわかった.この“VD3 – CD1c+ mDC – RA”の系は,ヒトの免疫ホメオスタシスの維持に重要な新規のコンポーネントと考えられる.
      以上のように,ヒトDCサブセットの機能を選択的に制御する小分子化合物を見いだすことは,さまざまな免疫関連疾患の治療開発,およびDC機能制御の分子メカニズムの解明に寄与すると期待される.
  • 佐藤 荘
    2014 年 37 巻 4 号 p. 285
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/07
    ジャーナル フリー
      マクロファージは,自然免疫において中心的な役割を果たしている.病原体の感染の際に活性化する細胞をM1マクロファージ,一方でアレルギー,メタボリックシンドローム及び癌のような多くの疾患に関与する細胞をM2マクロファージと呼称している.しかしながら,今までの研究では多くの疾患に関わるこのM2マクロファージが,実際にどのようにして生まれ,どのように生体内で働いているのかについては殆ど分かっていなかった.そこで,このM2マクロファージと疾患との関係性に焦点を当てて研究を行った.
      最初に,M2マクロファージ分化とアレルギー応答との関係性に焦点をあてた研究を行った結果,エピジェネティックな遺伝子制御に関わるJmjd3が,IRF4の発現を制御し,アレルギー応答の際に活性化するM2マクロファージの分化に必須である事を解明した.
      また,私達の研究からJmjd3非依存的な経路で分化するM2マクロファージも存在していることが明らかとなった.この新規M2マクロファージを探索した結果,脂肪組織の様な抹消組織にTrib1によって分化の制御をうけるM2マクロファージが存在しており,この細胞が脂肪組織等のメンテナンスを行っていることを突き止めた.また,興味深い事にこのTrib1−/−マウスは,高脂肪食下ではメタボリックシンドロームを発症した.
      以上の結果から,我々の体内には病気ごとの“疾患特異的M2マクロファージ”が存在していることが推測される.したがって,これらの病気ごとのM2マクロファージの研究が,様々な疾患に対する効果的な治療薬の開発に繋がると考えられる.
  • 大津 真, 西村 聡修
    2014 年 37 巻 4 号 p. 286
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/07
    ジャーナル フリー
      山中博士らによる人工多能性幹細胞(iPS細胞)技術の確立は,再生医療の可能性を広げるのみならず,疾患研究において新たな研究プラットホームを開拓することで医学研究に多大な貢献をもたらすことが期待されている.すなわち,体細胞からゲノム情報を保持したまま多能性幹細胞を樹立できるため,特に遺伝性疾患においては研究対象細胞へと分化誘導することで,患者に特有の病因・病態を再現し詳細な解析を可能にする.一方で,T細胞から樹立するiPS細胞(T-iPS細胞)は,T細胞受容体の遺伝子再構成を保持したまま,再度T細胞へと分化誘導することでかつてないユニークな研究モデルを提供する.自己免疫疾患においては,現在のところ非特異的な免疫抑制による治療が主であるが,近年,病気の発症,増悪に関与する抗原特異的T細胞についての研究に進捗がみられ,より副作用の少ない抗原特異的な治療法の開発が期待されている.そこで本フォーラムにおいては,疾患特異的T細胞にiPS細胞技術を応用し行う難病研究について概説し,実際に進行中の自己免疫疾患における応用研究例に触れつつ,本スキームにおける問題点,今後の可能性等につき私見を交えて紹介する.
  • 河上 裕
    2014 年 37 巻 4 号 p. 287
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/07
    ジャーナル フリー
      近年,T細胞応答を利用したがん免疫療法で明確な治療効果が示され,世界中で開発が進められ,Cancer immunotherapyはScience誌のBreakthrough of the Year 2013に選ばれた.がん形成過程では,T細胞は免疫監視機構として働き,免疫編集過程を経てがん細胞の免疫逃避が起こり,診断されたがんの微小環境では,がん細胞増殖浸潤促進的・免疫抑制的な病態が構築されている.がんの免疫病態はがん細胞の性質・患者免疫体質・環境因子に規定されて個体差が大きく,治療反応性に関与する.がん免疫病態の制御により抗腫瘍T細胞を作動させるために,がん免疫応答機構の重要ポイントを制御する各種技術を併用する複合的免疫療法の開発が進められている.現在までに,進行がんでも治療効果の認められる免疫療法として,がん免疫抑制系のCTLA-4とPD-1/PD-L1経路阻害により,生体内で抗腫瘍T細胞を作動させる免疫チェックポイント阻害療法と,培養腫瘍浸潤T細胞や腫瘍抗原認識T細胞受容体(TCR)やキメラ抗原受容体(CAR)遺伝子を導入した末梢血T細胞を用いた養子免疫療法があり,悪性黒色腫,腎癌,肺癌,滑膜肉腫,白血病,リンパ腫など多様ながんで治療効果が示されている.しかし,効果が得られない症例やがん種もあり,さらなるヒトがん免疫病態の解明とその制御法の開発が期待されている.
  • 桑名 正隆
    2014 年 37 巻 4 号 p. 288
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/07
    ジャーナル フリー
      T細胞は抗原特異性と免疫学的記憶を発揮することで病原微生物や腫瘍に対する生体防御システムを構築している.一方,これらの過剰な活性化は全身性エリテマトーデス(SLE)など自己免疫疾患の発症につながる.T細胞の生存には自己抗原との結合によるシグナルが必要なため,理論上全てのT細胞が自己反応性を有する.そのため,免疫システムには過剰反応を防ぐためのブレーキ役として数々の免疫制御機構が存在する.私たちは長年に渡って,多くの技術的制約の中でヒト検体を用いた自己免疫病態の解析を行ってきた.ヒト末梢血から樹立した自己反応性T細胞クローン株の解析では,抗原エピトープ,HLA拘束性,T細胞受容体超可変領域,エフェクター活性は患者,非患者由来で差がなく,これらT細胞の活性化を誘導する自己抗原の修飾,抗原提示細胞の機能変化などの自己免疫疾患発症における重要性を示した.一方,多くの自己免疫疾患患者ではFoxp3を発現する制御性T細胞(Treg)の減少,免疫抑制機能の低下が報告されている.それに加え,最近私たちはSLE患者活動期にエフェクター活性を有するFoxp3+Treg(exFoxp3+Treg)が増加し,病態形成に関わることを見出した.以上より,自己反応性T細胞の活性化とそれを抑制する制御機構の破綻が自己免疫疾患発症の誘因となる仮説が示されたが,ヒトT細胞の解析ツールのさらなる充実が望まれる.
分子標的治療薬のアニュアルエビデンスレビュー
  • 珠玖 洋
    2014 年 37 巻 4 号 p. 289
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/07
    ジャーナル フリー
      この数年間でがん免疫療法の開発に大きな成果が生まれつつある.所謂免疫チェックポイント阻害療法と抗原受容体遺伝子を改変したT細胞療法である.前者についてはT細胞の負の制御分子であるCTLA4,PD1及びそのリガンドであるPD-L1に対する阻害抗体の目覚ましい臨床的効果が挙げられる.メラノーマを対象に,これら3種の抗体は,明らかな臨床的効果を示すことが相次いで報告され,中には完全寛解が長期に続き疾患の治癒が期待できる症例も含まれている.抗PD1抗体については,メラノーマのみならず肺がんや腎臓がんなどでも臨床的効果が認められ,治療法の適応が大きく広がることが期待される.さらにこれら複数の抗体を組み合わせて使用することが臨床効果を大きく広げる可能性も示されつつある.一方で,後者の抗原受容体改変のT細胞輸注療法も,極めて明確な臨床効果を示しつつある.患者T細胞に,抗体の抗原認識部位とT細胞の活性化シグナル担当部分から構成されるキメラ抗原受容体(Chimeric Antigen Receptor; CAR)遺伝子を導入したT細胞輸注が注目を集めている.標的抗原CD20の場合,各種B細胞性腫瘍で完全寛解を含む明らかな臨床効果が報告され続けている.また,がん抗原特異的TCRを遺伝子導入したT細胞療法の発展も著しい.本講演ではこれらの治療法を中心として最近のがん免疫療法の成果の新しい展開について話す.
  • 多田 弥生
    2014 年 37 巻 4 号 p. 290
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/07
    ジャーナル フリー
      本邦においては2010年にTNF阻害剤(アダリムマブ,インフリキシマブ)が関節リウマチに続いて,乾癬に対して適応追加になったのを皮切りに,2011年には抗IL-12/23p40阻害剤(ウステキヌマブ)が乾癬にのみ使える生物学的製剤として登場し,いまや生物学的製剤は皮膚科医にもなじみのある薬剤となった.海外では長期使用のデーターも蓄積され,その効果の安定性や安全性,バイオスイッチの成績も明らかになり,併存疾患など患者の状態を加味した生物学的製剤の選択なども提唱されてきている.また,乾癬患者の特定の遺伝子多型と生物学的製剤に対する反応性の相関も一部明らかになり,将来的には,患者遺伝子から効果の高い生物学的製剤を推測することで,選択の無駄をなくし,医療費軽減につなげることも期待されている.この他,現在治験進行中のIL-23p19阻害剤,IL-17阻害剤はいずれも乾癬に対して高い効果を示しており,乾癬の病態におけるTh17系免疫反応の重要性も確認された.乾癬以外にはモガリズマブ(抗CCR4抗体)がCCR4陽性の皮膚T細胞リンパ腫に対して適応が追加となり,国内では進行期悪性黒色腫に対するイピリマブ(抗CTLA-4抗体)の治験や重症アトピー性皮膚炎に対するウステキヌマブの治験も進められている.本講演においてはこれら皮膚科を取り巻く生物学的製剤の現状を国内外の報告を中心にまとめてお話ししたい.
  • 佐野 統, 東 直人
    2014 年 37 巻 4 号 p. 291
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/07
    ジャーナル フリー
      本邦において関節リウマチ(RA)に対して生物学的製剤が使用されるようになり昨年で早や10年が経過した.生物学的製剤の登場によりそれまでは考えることができなかった劇的な関節炎症状の改善や骨・関節破壊の抑制効果を得ることができるようになった.このRA治療の飛躍的な進歩は「より早期から(window of opportunityと早期診断),明確な治療目標を目指して(Treat to Target(T2T)と寛解),より効果的な治療を(tight control)標準的に行うべき」という概念に基づいたRA診療全体の変革を推し進める大きな要因となった.現在,本邦ではTNF阻害薬,IL-6阻害薬,T細胞選択的共刺激調整薬の合計7剤の生物学的製剤を使用することができる.それぞれの薬剤の実臨床における効果や注意点,さらには病態への影響などに関して種々の膨大な量のエビデンスが国内外より発信され,それらに基づき生物学的製剤治療の最適化が日々刻々と図られている.本講演ではこの1年で報告され,実臨床において注目したいエビデンスに加え,生物学的製剤未治療のRA患者におけるT細胞選択的共刺激調整薬アバタセプトの評価(ABROAD試験)など我々の取り組んでいる研究内容を紹介し,RA治療における生物学的製剤の適正使用や新しい可能性について概説したい.
  • 渡辺 守
    2014 年 37 巻 4 号 p. 292
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/07
    ジャーナル フリー
      過去25年間ほとんど変化がなかった炎症性腸疾患に対する内科治療の考え方が,この5年間で劇的に変わった.その変化をもたらしたのは,初めての生物学的製剤である抗TNF-α抗体である.炎症性腸疾患の病態解明が直接的に治療に結びついた結果として,過剰な免疫応答を制御する抗TNF-α抗体が臨床へ登場した.炎症性腸疾患に対する抗TNF-α抗体の治療効果は予想を大きく上回る驚くべきものであり,全世界で汎用されるに至った.抗TNF-α抗体が炎症性腸疾患治療に与えたインパクトは単にその治療効果に止まらなかった.最も大きなインパクトは,「粘膜治癒」効果,即ち潰瘍を治す事が病気の再燃を防ぐ上で大切だという考え方の導入であった.これまでの炎症性腸疾患治療は臨床的効果のみを考えていたが,抗TNF-α抗体はこの考え方を大きく変え,炎症性腸疾患を本当に治すには内視鏡的に良くする事が必要であるという考え方が出てきたのである.これは治療目標に対する劇的な考え方の変化であり,早く強力に治療すれば炎症性腸疾患のnatural historyが変えられ,完全治癒させる可能性があるのではという考え方に繋がっている.現在,炎症性腸疾患に対しては新しい生物学的製剤が凄まじい勢いで開発されており,今後の炎症性腸疾患治療は更なる高い目標になる事が予想され,治癒が期待できる可能性がある疾患である事を理解して戴きたい.
ビギナーズセミナー
  • 保田 晋助
    2014 年 37 巻 4 号 p. 293
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/07
    ジャーナル フリー
      全身性エリテマトーデス(SLE)は,免疫異常を背景として,発熱・皮疹・関節炎にはじまり漿膜炎・血液障害・糸球体腎炎・中枢神経障害などの多彩な臓器病変を合併する全身性自己免疫疾患のプロトタイプである.病態については,複数の疾患感受性遺伝子を背景に環境因子が作用して発症し,T細胞シグナル分子異常,B細胞活性化と自己抗体の産生,抗原提示細胞の機能異常,インターフェロンシグネチャーといったサイトカイン産生異常が知られている.治療に関しては,個々の患者で重症度が大きく異なること,若年女性に好発するため妊娠・出産などのライフイベントへの影響を考慮しながら診療に当たることが求められる.ループス腎炎に対する寛解導入療法に関しては,世界的にはIVCYまたはミコフェノール酸モフェチルが選択されるが,本邦では後者が使用できず,またカルシニューリン阻害剤の位置づけも曖昧である.中枢神経ループスについては診断・治療法がさらに曖昧であり,ステロイド治療開始後の発症についても対応に難渋することがある.最重症の肺胞出血では早期に免疫抑制療法と血漿交換療法を導入することが必要である.難治性の血球貪食症候群では感染症との鑑別が最も予後を左右する.米国では新規治療薬としてベリムマブが承認されたが,他の治験薬はことごとくエンドポイントを達成せず,今後の症例選択を含めた治験デザインの改善が望まれる.
  • 佐藤 和貴郎
    2014 年 37 巻 4 号 p. 294
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/07
    ジャーナル フリー
      多発性硬化症(Multiple Sclerosis: MS)は病変の空間的多発・時間的多発を特徴とする中枢神経の炎症性脱髄性疾患である.視神経炎による視機能障害,四肢体幹の運動・感覚障害,膀胱直腸障害,高次脳機能障害,精神障害などが出現しうる.病初期は一般に再発と寛解を繰り返し,ステロイドパルス等の免疫療法が有効で症状の回復が期待できるが,経過中に明確な再発なく障害が進行する病態へ移行する例が多い.再発にはヘルパーT細胞とくにTh1細胞やTh17細胞の病原性が示唆され,リンパ球を標的とした治療が再発抑制に有効である.しかし進行性の病態に対する良い治療法は未だない.MSの一卵性双生児における同胞一致率は約30%で,遺伝因子とともに環境因子の役割が注目される.本邦での有病率が欧米白人のそれに徐々に近づきつつあることから,生活習慣・食習慣の欧米化の関与が推定される.実験的自己免疫性脳脊髄炎(experimental autoimmune encephalomyelitis; EAE)はMSの動物モデルとして汎用され,MSの病態解明・治療薬開発に大きく寄与してきた.MSは多様性の高い疾患で,これまで視神経脊髄型MSとされた病型が,アクアポリン4に対する自己抗体の発見を契機に視神経脊髄炎としてMSから独立した.しかしなおMSの臨床像は多様であり,テーラーメイド医療へ向けた研究が重要である.
  • 久松 理一
    2014 年 37 巻 4 号 p. 295
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/07
    ジャーナル フリー
      炎症性腸疾患は潰瘍性大腸炎とクローン病に分類され,日本を含めた東アジアで増加傾向にある.遺伝的素因や食事や衛生環境などの環境因子,腸内細菌と宿主との免疫学的恒常性の破綻などが病因として関与していると考えられている.本セミナーでは消化管を専門としていない人を対象にIBDの病態総論,両疾患の相違点,生物学的製剤をはじめとした治療概論,そして臨床免疫学会の特色を考えて腸管外合併症にも触れてみたい.
  • 藤田 英樹
    2014 年 37 巻 4 号 p. 296
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/07
    ジャーナル フリー
      乾癬は表皮角化細胞の増殖亢進による著明な表皮肥厚を特徴とする慢性炎症性皮膚疾患であり,炎症性角化症に分類される.表皮肥厚を特徴とするがゆえに1970年代頃までは乾癬は専ら角化細胞の面から病態研究がされており,当初免疫学的側面はあまり注目されていなかった.しかし,現在ではT細胞を中心とする細胞性免疫の異常が乾癬の病態においてきわめて重要であることが明らかになっており,治療薬の開発も免疫系をターゲットとしたものが中心となっている.かつてT細胞免疫応答はTh1/Th2パラダイムの中で議論されておいたが,病変部でのIFN-γの高発現より乾癬はTh1疾患と考えられてきた.しかし,21世紀に入りIL-17産生を特徴とするTh17と呼ばれる新しいT細胞サブセットが発見され,最新の病態理論では乾癬はT細胞応答の中でもIL-23/Th17の経路が最も重要であると考えられている.それに伴い,治療の面ではこの経路の上流から下流に位置する様々な関連サイトカインの阻害剤が競って開発され,一部は既に市場に上梓されているが,逆にそれらがどの程度効果を発揮するかということそのものが病態理論を検証し,病態の理解を深めることにつながっている.本講演では現在の乾癬の免疫学的病態がどのように明らかにされてきたかを解説する.
  • 西小森 隆太, 中川 権史, 横山 宏司, 平家 俊男
    2014 年 37 巻 4 号 p. 297
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/07
    ジャーナル フリー
      哺乳動物の免疫系には自然免疫系と獲得免疫系が存在し,獲得免疫系が軟骨魚類から現れるのに対し,自然免疫系は昆虫,植物等のより原始的な生物から存在する免疫系である.病原体認識機構において遺伝子組み換えを利用した多様性をもつ獲得免疫系に対して,自然免疫系ではゲノムにコードされた遺伝子数に限定された多様性をもち,病原体特有の共通分子構造物Pathogen associated molecular patterns(PAMPs)を認識して,炎症,貪食等の生体反応が惹起される.これらのPAMPsを認識する受容体としてパターン認識受容体が存在し,ヒトではToll like receptors(TLR),NOD like receptors(NLR),RIG-I like receptors(RLR),C-type lectin receptors(CLR)が知られている.
      近年,自然免疫系の機序解明がすすみ,そのパターン認識受容体のシグナル伝達系,炎症惹起機構が解明されてきている.特に,炎症性サイトカインIL-1βを産生する炎症惹起蛋白複合体としてインフラマソームという概念が提出されている.インフラマソームは,クリオピリン関連周期熱症候群等の自己炎症性疾患の病態において重要であり,さらに尿酸塩,ATPなどの内因性炎症惹起物質danger associated molecular patterns(DAMPs),細胞内dsDNA,細菌由来鞭毛蛋白フラジェリン,による炎症に関与していることが知られている.本レビュートークでは,インフラマソームの生理学的な意義およびヒト疾患における関わりについてこれまでわかっていることについて概説する.
  • 浅野 善英
    2014 年 37 巻 4 号 p. 298
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/07
    ジャーナル フリー
      全身性強皮症(SSc)は血管障害と皮膚および内臓諸臓器の線維化を特徴とする膠原病で,その発症には免疫異常の関与が示唆されている.本症の病因は未だ不明であるが,近年ゲノムワイド関連解析やエピジェネティック解析により様々な疾患感受性遺伝子が同定され,また新規動物モデルの開発も進み,その複雑な病態が徐々に明らかになりつつある.一方,治療面ではボセンタン(エンドセリン受容体拮抗薬)がSScに伴う指尖潰瘍の新規発症を有意に抑制することが明らかとなり,同薬が本症の血管病変に対して疾患修飾作用を発揮している可能性が示唆されている.また,リツキシマブ(キメラ型抗CD20抗体)によるB細胞除去療法がSScの皮膚硬化・間質性肺疾患・血管障害に対して有用である可能性が複数の非盲検試験により示されている.リツキシマブなどの抗体医薬をはじめとし,疾患修飾作用が期待される数々の新規治療薬に対して,現在欧米を中心に無作為化二重盲検試験が行われており,近い将来これらの新規薬剤がSScの治療に大きなパラダイムシフトをもたらすと期待されている.一方,抗体医薬による治療は各種標的分子が病態に及ぼす作用を理解する上でも非常に有用であり,治療の進歩とともにSScの病態理解が進むことが期待される.本講演では,基礎研究や臨床試験のデータを基に,SScの基礎から展望まで最新の知見を含めて幅広く解説する.
  • 塚原 智英
    2014 年 37 巻 4 号 p. 299
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/07
    ジャーナル フリー
      癌免疫は,癌に対する免疫応答の理解と癌の免疫制御を目指す学問であり,癌抗原の同定によって飛躍的に発展した.よって癌免疫の理解には癌抗原の理解が重要である.癌免疫の存在は1990年代に自家細胞傷害性T細胞(CTL)クローンに認識されるヒト癌抗原のクローニングにより,主にメラノーマで証明された.これらの発見にはforward immunology approachといわれる腫瘍反応性ヒト自家CTLクローンの樹立とcDNAライブラリ発現クローニング法の開発が大きく貢献した.さらに既知の候補抗原からCTLエピトープを求めるreverse immunology approachも盛んに行われ,メラノーマ以外からも多くの抗原が同定された.これらの知見はペプチドワクチンや抗原特異的リンパ球大量輸注療法の開発につながっている.また昨年は抗CTLA-4抗体や抗PD-1抗体などのチェックポイント抗体による活性化T細胞制御がメラノーマに対して有効性を示して一世を風靡した.チェックポイント抗体がメラノーマでよく効いた理由として(1)癌抗原が皮膚のランゲルハンス細胞に取り込まれてCTLを効率よくプライムできる,(2)高い免疫原性を持つ変異抗原が多く発現してる点が重要と考えられる.今後は高い腫瘍特異性をもち,かつ造腫瘍能を制御する癌の根源に迫る癌抗原の同定が重要となる.また自家CTLが認識する抗原の同定は,時に我々の想像がおよばないようなセレンディピティを与えてくれる.
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