現象学が社会学に対してなんらかの積極的な意義をもつと考える社会学者にとって、その意義がメタ理論的なものかそれとも理論的なものかという問題は、きわめて重大な争点となるように思われる。
本稿ではこの問題に一定の解答を与えるために、次のような一連の分析をおこなう。
(1) この問題をシュッツの学問体系のなかに位置づけること。この結果、この問題が生じる原因がシュッツの体系のなかにあることがあきらかになる。
(2) シュッツの学問体系のなかでは、現象学が社会学を含む社会科学に対して理論的な意義をもつとした場合には、ある矛盾した事態が生じざるをえないことをあきらかにすること。この結果、現象学がシュッツの体系内で社会科学に対してもちうる意義は、メタ理論的なものに限定されることになる。
(3) (2) 分析の結果がフッサールの体系と矛盾しないことをあきらかにすること。
そして以上の分析の結果、現象学は社会学を含む社会科学に対してメタ理論的な意義だけをもつことが確認される。
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