二重構造とは、近代性と伝統性といった、相反する二つの特質が、ひとつの社会的範疇の中に共存する社会構造を意味する。それが、最も基本的な、社会的インスティテユーションのひとつである家族に関しいえるのが、日本社会の独自性といえる。
つまり、日本の家族を、外的および、内的両側面から分析した結果、それは、近代的とも、伝統的とも断言することはできず、むしろ、近代性と伝統性の両者が、共存していると考えるのが妥当であることが判明した。例えば、本稿で分析した、日本の家族の外的あるいは、人口学的要素のことごとくが、日本の家族の近代性を顕著に示していた。一方、今日の日本の家族の内的あるいは、構造的特質には、伝統性が失われることなく存続している事実が浮き彫りにされた。
これらの結果は、今日の日本の家族には、外的近代性と、内的伝統性の双方の特質が共存していることを示唆しているといえる。家族の中に見られる、この伝統性と近代性の共存は、ある意味では、日本社会の近代化の歴史と同様の意味合いを持つといえよう。つまり、日本社会の近代化の過程で、西洋の先進産業技術が熱心に取り入れられた反面、日本の伝統的文化は棄却されることなく、依然として堅持されているのである。その二重構造が、とりもなおさず、日本社会の現状の、さらにまた、今日の日本の家族の独自性として特徴づけられる点なのである。
抄録全体を表示