引張り荷重を受ける異種材料中実円柱段付き重ね合せ,および中空円筒段付き重ね合せ接着継手の応力分布を軸対称有限要素法を用いて解析し,被着体の縦弾性係数比,接着層の縦弾性係数,接着層厚さ,スカーフ角,段数などが最大主応力分布に及ぼす影響を調べた。その結果,異種材料中実円柱段付き重ね合せ継手の場合,接着界面の外径端部で最大主応力が特異性を示した。また中空円筒段付き重ね合せ接着継手の場合は,外径端および内径端で最大主応力が特異性を示し,内径端の方が大きくなった。両継手の場合とも最大主応力の値は被着体の縦弾性係数比が小さくなるほど大きく,さらに接着層の厚さが小さくなるほど,また接着層の弾性係数,スカーフ角が大きくなるほど、小さくなる。段数は内径端と外径端で逆の影響を示す。FEM計算による継手強度は実験結果とよく一致し,異種材料中実円柱継手の方が中空円筒継手よりも,やや強度が大きくなることが示された。
本研究では,異種材料接着板の V 曲げ加工に及ぼす加工速度と加工温度の影響について実験およびFEM解析により詳細に調べた。とくに,接着板に生じる形状不良(カモメ折れ現象)と,接着層に生じるずれ変形(せん断ひずみ)とに注目した。本研究により得られた主な結論は,以下のとおりである。(1)異種材料接着板のV 曲げ加工後の形状は,各被着体の引張強さの影響を強く受ける。被着体の組み合せとしては,曲げの内側に引張強さの大きな材料,外側に引張強さの小さな材料を用いる方がカモメ折れを小さく抑えることができる。ただし,その違いは僅かである。(2)異種材料接着板のV 曲げ加工は同種材料接着板の場合と同様に,高速かつ低温環境で行うことが望ましい。本実験範囲内では加工速度 V =500mm/min,加工温度 T =10℃の場合に,SPCC/Cu板と Cu/SPCC板のいずれも接着板の形状不良がほとんど見られないくらいに良好な曲げ加工が確認できた。解析結果も同様である。(3)異種材料接着板のV 曲げ加工における接着層のずれ変形は,カモメ折れと同様に曲げの内側に引張強さの大きな材料,外側に引張強さの小さな材料の被着体の組み合せの方が小さい。ただし,その違いは僅かである。