日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
31 巻, 5 号
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  • 齊藤 寿一
    1994 年 31 巻 5 号 p. 353-359
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 橋詰 謙, 長崎 浩, 伊東 元, 古名 丈人, 杉浦 美穂, 衣笠 隆, 丸山 仁司
    1994 年 31 巻 5 号 p. 360-365
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    リズム運動の加齢変化の特性を詳しく調べるため, 一定周期 (2, 3, 4および5Hz) の音刺激に合わせる指タッピング試験を, 18歳から85歳までの健康成人ボランティア380名 (グループ1) に施行した. また高齢者のリズム運動についての平均像を求めるため, 無作為に抽出した65歳から89歳までの在宅高齢者1,134名 (グループ2) に4Hzでのタッピングを施行した. 両グループともタップ間隔の平均値が刺激間隔より3ms以上短い加速タップの出現が認められた. グループ1では主として4Hzと5Hzタッピングで加速タップが出現し, 60~70歳代で35%以上と高齢になるほど出現率が高くなっていた. グループ2の4Hzタッピングにおける加速タップの出現率は, グループ1の65歳以上の4Hzタッピングにおける出現率と同程度であった. 加齢により加速タップの出現率は増加し, 80歳代では50%以上に達すると推定された. 逆にタップ間隔が刺激間隔より3ms以上長い遅延タップも高齢者では高頻度でみられた. 加速タップはパーキンソン氏病患者などに見られる加速現象と類似のもので, 手指の運動スピードの低下を示す遅延タップとは逆方向のリズム運動の異常と考えられる. この2つのリズム運動の異常が平行して出現することが高齢者の特徴と言える.
  • 人間ドック受診高齢者の retrospective study
    新村 健, 海老原 良典, 川村 昌嗣, 谷 正人, 中村 芳郎
    1994 年 31 巻 5 号 p. 366-373
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    加齢に伴い心電図に変化が生じることは, 異なる各年代からの抽出標本を用いた比較から推測されているが, 同一個体での長期間の追跡調査を多数例で行った報告はほとんどない. 我々は生理的老化による心電図変化とこれを修飾する病的因子を検討する目的で同一個人の心電図の経時的比較を多数例で行った. 対象は慶應健康相談センター人間ドックを15年以上の期間にわたって複数回受診し, 1992年時点で60歳以上の心疾患を持たない500名 (男性406名, 女性94名) である. 初回受診時の心電図と1992年の心電図を比較し, 臨床指標の変化と対比した. (1)加齢に伴い高齢者では, 電気軸はより左軸方向へ変化し (43±32→32±37°), QTc時間は短縮 (410±26→401±24msec), PR時間は延長 (165±23→170±23msec) した. 0.02秒以上の変化をもって有意と判断するとPR時間は30%の症例で延長し, QTc時間は35%で短縮した. 電気軸は10°以上の変化をもって有意と判断すると42%が左軸方向へ変化した. STの変化は16%に, 左右房負荷の出現は8%に, 脚ブロックの出現は7%に認められた. (2)心電図変化におよぼす臨床背景因子の影響を検討した. 電気軸偏位, PR間隔, QTcの短縮は, 今回検討した病的因子と有意な関係を認めず主に生理的老化に伴う変化と推測された. 一方, QTcの延長, ST変化の出現は, 高血圧, 耐糖能異常, 眼底動脈硬化を持つ群に高率に出現した. 脚ブロックの出現は男女間で差を認めた. 耐糖能異常群では加齢に伴うPRの延長, QTcの短縮を認めず, これらの現象を抑制する可能性が示唆された. (3)更に現在の年齢が65歳未満の群と80歳以上の群とで観察期間中の心電図各所見の変化の出現頻度の相違を検討した. 80歳以上群は16例のみであったがST変化の出現率は有意に高かった. 以上より心電図各成分の加齢に伴う変化は, それぞれ異なった時相をもち, 病的因子により異なった修飾を受けていると推測された.
  • とくに内視鏡検査時に発症したと思われる症例を中心に
    北川 隆, 高野 英哉, 相馬 光宏, 武藤 英二, 武田 章三
    1994 年 31 巻 5 号 p. 374-379
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    Mallory-Weiss 症候群は上部消化管出血の原因として重要視されている. その好発年齢は30~50歳代であるが, 時には高齢者にもみられる. 今回, 75歳以上を高齢者とした場合の Mallory-Weiss 症候群症例の臨床的特徴について検討した.
    最近の5年間に当院で経験した Mallory-Weiss 症候群症例は48例で, そのうち高齢者は9例19%であった. 裂創の発生原因は4例が嘔気・嘔吐によるものであり, 5例は内視鏡検査中に軽度の嘔吐反射を伴う程度か, またはほとんど嘔吐反射を伴わずに裂創をきたしたものである.
    その5例についてみると, 裂創の部位・数・形はいずれも胃噴門部小彎・1条・紡錐形を呈し, 出血量も軽度であった. 5例とも体格的に痩せ型で, 3例に慢性萎縮性胃炎の所見を認めたことから, 粘膜の脆弱性は高度と思われ, これらは過度の送気が加わった場合に本症を引き起こす重要な要因と考えられる.
  • 首都圏在住百寿者を対象としたアンケート調査
    本間 聡起, 石田 浩之, 広瀬 信義, 中村 芳郎
    1994 年 31 巻 5 号 p. 380-387
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    首都圏1都3県の百寿者を対象に郵送によるアンケート調査を行い, 389名 (男性81, 女性308) の生存百寿者からの回答を得た. 対象の約3割が入院または施設入居者であったが, その比率は男性15%に対し, 女性34%で女性に多い傾向であった. 日常行動範囲では, 散歩もできるとの回答は男性38%に対し, 女性10%であり, 逆にほとんど寝たきり, または寝たきりは男性19%に対し女性28%で, 男性の方が活動度が高い傾向がみられた. この男女差は, 在宅者に限った検討でも同様であった. 現病歴・既往歴では, 高血圧症が有効回答の22%にみられ, 以下, 呼吸器疾患, 心疾患がともに16%であった. 骨折も31%に認められたが, 男性20%に対し, 女性34%で女性に多くみられ, 日常の活動範囲における男女差の一因となっている可能性が示唆された. 百寿者の最終学歴については男性の27%, 女性の8%が高等教育レベルであり, 高学歴の傾向であった. また, 百寿者の両親の死亡年齢は, 父親69.6±15.7歳, 母親71.2±17.2歳で, 同時期の生命表と比較すると長寿の傾向であった. また同胞についても, 全同胞の死亡ないし生存年齢がすべて記載されている203家系について検討した結果, 65歳以上の老人の中で90歳を達成した人の割合は, 17.3%であり, 百寿者家系に長寿者が集積している可能性が示唆された.
  • 羽生 春夫, 中野 正剛, 阿部 晋衛, 新井 久之, 岩本 俊彦, 高崎 優
    1994 年 31 巻 5 号 p. 388-395
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    アルツハイマー型痴呆 (DAT) におけるMRIの診断的意義を明らかにする目的で, DAT31例 (平均年齢74.7歳) と老年者コントロール (C) 24例 (平均年齢74.1歳) のMRI所見を比較検討した.
    各領域の面積測定からDAT群では有意な萎縮性変化を認めたが, C群とはある程度の重複がみられた. この中で側脳室下角の面積測定が両群の判別に最も有用であり, 痴呆の程度とも有意な相関が得られた. 側頭葉内側部の一次元的計測から, 側脳室下角横径-側頭葉内側径-鉤間距離による計測パターンを比較すると, DAT群の84%は側頭葉内側径が相対的に短縮する∨パターンを示したのに対しC群ではわずか8%にみられたにすぎなかった. また側脳室下角の有意な拡大を示さなかった軽度または中等度痴呆例の一部でもこの∨パターンが確認された. 下角面積測定と側頭葉内側部の一次元的計測パターンから感度71~94%, 特異性88~100%となり, これらはDATの診断に有用な評価法と考えられた.
    深部白質病変のうち側脳室周囲高信号域 (PVH) はDAT群の高度痴呆例で多くみられ, 重症度との相関から病像の進行過程を反映していることが示唆された. しかし, 白質高信号域 (WMH) はDATとの直接的な関連は認められず動脈硬化性危険因子との関連が推測された.
    以上から, DATの診断には側頭葉内側部の萎縮の評価が有用であり, 深部白質病変のうちPVHは病態との関連が推測された.
  • 荻原 俊男, 森本 茂人, 中橋 毅, 島本 和明, 松本 正幸, 大内 尉義, 松岡 博昭, 日和田 邦男, 藤島 正敏
    1994 年 31 巻 5 号 p. 396-403
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    本邦における高血圧専門家が老年者高血圧の治療方針に関していかなる考え方をしているかについてアンケート法によりその実態を把握することを目的とした. 治療対象について50%の専門家は年齢の上限を考慮しないとしたが, 残り50%は80歳まで, あるいは85歳までを上限としている. 治療対象血圧値は収縮期血圧は60歳代160mmHg以上, 70歳代160~170mmHg以上, 80歳代では170~180mmHgと高齢者程治療対象血圧は上昇, 拡張期血圧は90~95mmHg以上とするものが大部分を占めた. 降圧目標は60歳代では150/90mmHg未満, 70~80歳代では160/90mmHg未満とするものが多く, 80歳代では170~180/95~100mmHg未満と高めに設定するものが20数%あった. 用いる降圧薬ではCa拮抗薬を第一次薬とするものが大部分でありACE阻害薬がこれに次いだ. 一方, サイアザイド, β遮断薬, α1遮断薬を第一次薬とするものは少数であった. 合併症を有する場合の降圧目標や選択降圧薬は疾患によりきめ細かく考慮され, 脳梗塞慢性期, 閉塞性動脈硬化症, 腎障害合併症は70歳代, 80歳代で154~159/89~90, 160~164/90~91mmHgとやや高め, 脳出血慢性期, 虚血性心疾患, 糖尿病, 高脂血症では各々152~153/88, 158~159/89mmHgとやや低めに設定している. Ca拮抗薬はいずれの合併症にもよく用いられ, とくに腎障害, 閉塞性動脈硬化症で高頻度に用いられる. 腎障害ではACE阻害薬が用いられる頻度が低い. β遮断薬は虚血性心疾患で用いられる以外は一般的に用いられない. サイアイド, α1遮断薬は一般的に合併症のある場合にあまり用いられていない. 本邦においても長期介入試験によりこれらを正当化する証明が待たれる.
  • 高橋 龍太郎, 深沢 久子, 出雲 祐二, 冷水 豊, 荒木 厚, 井上 潤一郎, 井藤 英喜
    1994 年 31 巻 5 号 p. 404-410
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    地域で生活している高齢糖尿病患者の生活実態を調べるため, 岩手県沢内村国保沢内病院, 宮城県鶯沢町国保鶯沢町医院を受診中の60歳以上の糖尿病患者109例を対象に訪問面接調査を行った. 東京都板橋区東京都老人医療センター受診中の糖尿病患者に行われた調査 (計383例) の中から年齢, 性を一致させたランダム・サンプル (109例) を得, 2地域と比較検討した. 3地域を比べると, 家族構成の類型, 学歴, 収入といった社会的条件が大きく異なり, それに応じてソシアルサポート (人からの援助) のあり方も地域特性がみられた. 糖尿病の療養に関しては, 東京地区では, 治療の重要性の理解, 順守度とも高いが家族・社会生活上の負担が大きく, 療養生活の満足度も低い, という結果であった. 沢内地区では治療の負担感, 順守度の両方とも低く, 固執的行動傾向が弱い特徴が認められた. 3地域でモラール (志気) スコアの差はみられなかったが, これを目的変数とする多元配置分散共分散分析をそれぞれの地域について行ってみると, 東京地区でのみADLレベル, 固執的行動傾向の有意な関与が認められた. 一方, 全ての地域で, 家庭・社会生活上の負担感の増加はモラールスコアを低下させる因子であることが示された. 糖尿病という慢性疾患をもつ高齢者のQOL (生活の充実感) には, 生活の“場”(居場所, 社会的環境) の変化と, それへの順応性の差が大きく影響するであろう.
  • 鳥山 和宏, 鳥居 修平, 長谷川 守正, 岡田 恒良, 奥田 直人, 舘 祐二
    1994 年 31 巻 5 号 p. 411-414
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    最近褥瘡の局所外用剤が各種開発されて, 褥瘡の保存的療法が積極的に行われるようになってきた. われわれは, 仙骨部巨大褥瘡に対して各種の保存的治療を続けたが治癒せず, 13年間入院を余儀なくされていた患者 (67歳男性) を経験した. 原疾患は脊椎カリエスからきた下半身対麻痺で車椅子の生活だった. 18×13cmの死腔を持つ褥瘡を大殿筋筋膜皮弁にて再建し, 術後2カ月で退院させることができた. 手術前後の医療費について調べると, 手術から退院までの累計が, 保存的治療をしていた1カ月間の約5倍であった. さらに手術での褥瘡の治療期間が2~3カ月であることを考え合わせると, 手術が可能な症例では, 褥瘡を保存的に治療する期間の目安は, 長くとも半年間以内とすべきだと思われる.
  • 池田 幸雄
    1994 年 31 巻 5 号 p. 415-417
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    症例は73歳女性. バセドウ病の治療中に, 右眼の霧視および充血が出現. 近医眼科にて, ぶどう膜炎の診断を受け, 原因精査の為, 当科へ紹介された. 精査の結果, サルコイドーシス, ベーチェット病, その他の自己免疫疾患を疑わせる所見は認められなかった. 一方, EIAおよび Western blot 法による抗HTLV-I抗体が陽性であり, HTLV-I関連ぶどう膜炎 (HAU) の可能性が考えられた. 近年,バセドウ病の発生におけるHTLV-I関連遺伝子の関与が報告されていることや, 高齢者バセドウ病において抗HTLV-I抗体の陽性率が有意に高いという報告もあり, 本例におけるバセドウ病の発生にHTLV-I感染が関与している可能性が考えられた.
  • 1994 年 31 巻 5 号 p. 418-434
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
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