過去5年間 (1969年5月~1974年12月) に国立がんセンター病院で取り扱った肺癌の内, 放射線治療と気管支動脈内抗癌剤投与法の併用を行なった原発性肺癌111例の治療経過について放射線治療の立場から報告する.その内訳は, 扁平上皮癌51例, 腺癌27例, 大細胞型未分化癌9例, 小細胞型未分化癌24例, である.1974年UICC・TNM病期分類を使用して, 肺癌111例を分類すると, Stage I4例, Stage II15例, Stage III92例である.3年粗生存率は67例中10例 (14.9%) であり, 組織型別では扁平上皮癌32例中3例 (9.4%), 腺癌17例中4例 (23.5%), 大細胞型未分化癌4例中2例 (50.0%), 小細胞型未分化癌14例中1例 (7.1%) の3年生存率を示す.治療成績は当然のことであるが, 病期により大いに相違がある.症例の病期別にその3年粗生存率をみると, Stage I3例中2例 (66.7%), Stage II8例中3例 (37.5%), Stage III56例中5例 (8.9%) である.気管支動脈造影法を併用することの利点は, 無気肺部分, 肺門を中心にした縦隔内病巣の把握が可能で, 照射野決定に役立つ.又, 選択的に抗癌剤を投与した場合は, その効果によって, 肺門, 縦隔部病巣に対する放射線投与量の減少が期待できる.すなわち, 気管支動脈内抗癌剤投与の際の薬剤分布状態は肺門縦隔部に著明であり, 肺癌放射線治療における問題点の一つである肺門・縦隔への照射線量の減少が期待できる.このことは肺門・縦隔に対する大線量照射による照射後, 心肺機能不全, 放射線肺炎の発生頻度を低下せしめうるものと思われる.
抄録全体を表示