肺癌
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51 巻, 3 号
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原著
  • 岡野 義夫, 日野 弘之, 吉田 光輝, 畠山 暢生, 篠原 勉, 大串 文隆
    2011 年 51 巻 3 号 p. 165-170
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/04
    ジャーナル オープンアクセス
    目的.病理病期IB~IIIB期非小細胞肺癌に対するcarboplatin(CBDCA)+weekly paclitaxel(PTX)併用化学療法の安全性を検討する.対象と方法.2003年4月より2008年10月までの5年7ヶ月間の肺癌手術症例で術後化学療法としてCBDCA+weekly PTXによる化学療法を行った症例を対象とした.CBDCAは第1病日に,PTXは第1,8,15病日に28日間隔で投与した.CBDCA AUC=5,PTX 60 mg/m2を投与量とし,4クールを標準治療とした.有害事象の評価は,Common Terminology Criteria for Adverse Events(CTCAE)version 3.0により行った.検討項目は,毒性,完遂率で,これらをレトロスペクティブに検討した.結果.29例で検討した.G3/4の血液毒性は,好中球減少8例(27.6%),貧血3例(10.3%),白血球減少2例(6.9%),血小板減少1例(3.4%),発熱性好中球減少症1例(3.4%)に認めた.G3/4の非血液毒性は,吐血1例(3.4%)に認めた.治療関連死は認めなかった.PTXの投与を中止した回数は11回(3.4%)でありPTXの投与完遂率は96.6%であった.結論.本治療法は副作用が軽微であり,安全に実施することができた.
  • 渡辺 尚宏, 谷口 博之, 近藤 康博, 木村 智樹, 片岡 健介
    2011 年 51 巻 3 号 p. 171-176
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/04
    ジャーナル オープンアクセス
    目的.間質性肺炎(interstitial pneumonia:IP)合併進行期非小細胞肺癌の臨床的特徴を検討した.方法.IP合併と診断された非小細胞肺癌の患者で進行期(stage IIIB,IV)かつ内科的治療対象となった37例をretrospectiveに検討した.結果.治療方法は化学療法29例,BSC(best supportive care)8例.化学療法施行症例のMST(median survival time)は11.9ヶ月で,BSC症例は2.1ヶ月であった.施行された1st line regimenの奏効率は44.8%であった.化学療法の総line数別では2nd lineまで施行された症例のMSTが10.3ヶ月であったのに対し,3rd line以上施行された症例のMSTは22.0ヶ月と有意に長かった(P=0.0019).一方,急性増悪は11例で発症し,発症例と非発症例のMSTには有意差を認めなかった.結語.IP合併非小細胞肺癌における化学療法による予後延長の可能性が示された.また,多くのlineの治療を受けた症例の方が予後が延長していた.
  • 上林 孝豊
    2011 年 51 巻 3 号 p. 177-181
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/04
    ジャーナル オープンアクセス
    目的.末梢小型肺病変の術中局在診断における,術前の臓側胸膜のバーチャル像の有用性を検討する.研究計画.2008年7月上旬から2010年4月下旬までの間に,術中に病変の局在を診断することの困難が予想された末梢小型肺病変に対して,術前に臓側胸膜のバーチャル像を作成・評価し,その後手術を行った12症例12病変を対象とした.術中の病変局在診断における術前の臓側胸膜のバーチャル像評価の有用性を検討した.結果.対象病変の大きさは10.5±4.36 mm,胸膜面からの距離は4.0±4.67 mmであった.病変の性状は充実性病変6例,GGO病変6例であった.最終病理診断は7例が肺癌で,それ以外は良性肺結節であった.全病変において術前の臓側胸膜のバーチャル像で胸膜変化を確認できた.術中の病変局在診断は7例で可能であったが,5例では不可能であった.不可能であった理由の内訳は,片肺換気不能や癒着のために観察が十分に行えなかったものが3例,胸膜変化が軽微なために認識できなかったものが2例であった.結論.末梢小型肺病変の術中局在診断に,術前の臓側胸膜のバーチャル像は有用な手段となる可能性がある.
症例
  • 河瀬 成穂, 服部 登, 藤高 一慶, 宮田 義浩, 岡田 守人, 河野 修興
    2011 年 51 巻 3 号 p. 182-187
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/04
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.小細胞肺癌の放射線化学療法後の瘢痕から発症する腺扁平上皮癌は稀である.症例.65歳男性.1995年,左肺上葉の限局型小細胞肺癌に対し,放射線化学療法が行われcomplete response(CR)を得た.2007年9月頃より嗄声が出現したため胸部CTが施行されたが,左肺上葉末梢の瘢痕化した陰影のみ認められた.当院耳鼻咽喉科にて喉頭癌と診断され,fluorodeoxyglucose-positron emission tomography(FDG-PET)で,喉頭および左肺上葉瘢痕部に一致してFDGの集積を認めた.瘢痕部における小細胞肺癌の再発が疑われたが,経気管支肺生検で扁平上皮癌が検出された.喉頭癌は放射線化学療法によってCRを得た.2008年1月,左肺上葉切除および胸壁合併切除術が行われ,病理組織検査の結果,腺扁平上皮癌であることが判明した.結論.本症例は,小細胞肺癌の再発や喉頭癌の転移例ではなく,放射線化学療法後の瘢痕組織を母地として発生した腺扁平上皮癌の1切除例であり,貴重な症例と考えられた.
  • 藤田 敦, 中里 宜正, 橘 啓盛, 風間 俊文, 佐藤 浩二, 湊 浩一
    2011 年 51 巻 3 号 p. 188-192
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/04
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.腸型肺腺癌は稀な組織型であり,大腸癌の転移性肺腫瘍との鑑別が重要となる.症例.74歳,男性.咳嗽を主訴に近医を受診したところ,胸部CTで右S3に57 mm大の腫瘍を指摘された.気管支鏡では右B3aから突出する腫瘍が認められ,組織学的には高円柱上皮が腺管を形成する病変であった.免疫組織化学的にはCK20(+),CK7(-),TTF-1(-)であり,大腸癌の転移が疑われた.上部内視鏡および下部内視鏡を行ったが肺野以外に病変がないため,原発性肺腺癌として右上葉切除術+ND2aを行った.永久標本の組織像も内視鏡下生検と同様で大腸癌に類似した組織像であり,CK20(+),CDX-2(+),MUC2(partly+),CK7(-),TTF-1(-),SP-A(-)から転移が疑われる所見であったが,臨床的な総合判断より腸型肺腺癌と診断した.結論.腸型肺腺癌は組織学的あるいは免疫組織化学的に確定診断が困難であり,消化管の精査が重要である.
  • 澤田 貴裕, 林 大久生, 熊坂 利夫, 武内 健一, 平野 春人, 大浦 裕之, 半田 政志, 冨地 信和, 小野 貞英
    2011 年 51 巻 3 号 p. 193-201
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/04
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.リンパ脈管筋腫症(LAM)は腫瘍抑制遺伝子TSC の異常によって発症し,リンパ管の新生能を有することが知られている.肺癌を合併するLAMは稀である.症例.症例1:64歳,女性.右上肺野に腫瘤影を指摘され,また両肺に多発性嚢胞陰影がみられた.切除肺組織では,右S1~S3の肺癌(腺癌)と2群リンパ節に転移を認めた.また,多発性嚢胞性病変はLAMと診断された.さらに,微小結節性肺胞上皮過形成(MMPH)の像もみられた.遺伝子解析では,LAMおよびMMPHの病変部にTSC1 遺伝子の異常が確認された.症例2:73歳,女性.左肺S3とS6に腫瘤影を認め,また両肺に多発性嚢胞陰影がみられた.切除肺組織では,肺の重複癌(いずれも腺癌)と2群リンパ節に転移がみられた.また,多発性嚢胞性病変はLAMと診断された.遺伝子解析では,一方の肺癌とLAMの病変部にTSC2 遺伝子異常を認めたが,それぞれの遺伝子パターンは異なっていた.結論.肺癌とLAMが併存した稀な2症例を報告した.肺癌の発症にTSC 遺伝子異常が関与している可能性は低かった.
  • 前倉 俊也, 中村 孝人, 丸山 博司, 時津 浩輔, 折野 達彦
    2011 年 51 巻 3 号 p. 202-206
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/04
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.胸腺癌や浸潤性胸腺腫では腫瘍浸潤による上大静脈(SVC)症候群を呈する報告例は比較的よく知られているが,下大静脈(IVC)症候群を呈する症例は稀である.症例.76歳男性.咳嗽を主訴として近医を受診し胸部X線写真にて異常陰影を指摘され,当院呼吸器科に入院した.CTガイド下生検にて胸腺癌と診断し,入院時より顔面,両上肢の浮腫があり胸部CTにて腫瘍浸潤によるSVC症候群と判明した.放射線療法にて上半身の浮腫は軽快したが,徐々に両下肢の浮腫が出現増強した.腹部造影CTにてIVCの血栓を疑い抗凝固療法を施行し,浮腫は著明に改善するも全身状態が増悪し入院後約7カ月で死亡した.剖検を施行し,右前縦隔から前胸部と横隔膜を超えて,肝臓背面に浸潤しIVCを巻き込みながら肝臓を圧排する巨大な胸腺原発扁平上皮癌が確認された.結論.胸腺癌の進展によりSVC症候群に引き続いてIVC症候群を呈した稀な1剖検例を経験したので報告する.
  • 藤原 隆行, 朝戸 裕二, 清嶋 護之, 佐藤 始広, 飯嶋 達生, 雨宮 隆太
    2011 年 51 巻 3 号 p. 207-211
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/04
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.骨髄脂肪腫は骨髄成分と成熟脂肪組織からなる稀な良性腫瘍である.副腎原発が多く,後縦隔原発例は稀である.症例.既往に多血症,高血圧症,糖尿病を有する71歳男性である.食欲不振を主訴に近医受診し,胸部X線および胸部CTにおいて肺および縦隔の異常陰影を指摘され,当院を紹介受診した.胸部CTにおいて,右肺S1に15 mm大の結節影,両側後縦隔の第3胸椎に接し腫瘤性病変を認めた.FDG-PETでは右肺S1結節にFDG集積を認めた.両側の後縦隔腫瘤はMRIのT1強調画像・T2強調画像において高信号を示し,T1脂肪抑制画像において低信号を示した.確定診断および治療目的に右肺上葉切除・縦隔リンパ節郭清術,右後縦隔腫瘍切除術を施行した.病理診断より右肺S1結節は低分化型腺癌,野口type D+F,pT1aN1M0,病理病期IIAの肺癌,また後縦隔腫瘤は骨髄脂肪腫と診断された.結論.肺癌に併発した後縦隔発生の骨髄脂肪腫の1例を経験した.縦隔内に脂肪含有腫瘍を認めた場合,鑑別として骨髄脂肪腫を挙げる必要がある.画像診断において骨髄脂肪腫と髄外造血巣との鑑別は困難であり,確定診断には臨床所見および病理学的診断が有用である.
  • 長神 康雄, 吉井 千春, 城戸 貴志, 石本 裕士, 矢寺 和博, 迎 寛
    2011 年 51 巻 3 号 p. 212-216
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/04
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.原発性肺癌の心臓への転移は稀に認められる.心臓転移の中でも心筋転移は頻度が低く,洞房結節転移に至ってはほとんど報告されていない.症例.81歳男性.2007年7月に右上肺野に腫瘤影を指摘され,経過観察されていた.2009年1月に血痰を認め,3月に気管支鏡検査を施行されたが確定診断には至らなかった.4月のPET/CTで右上葉の原発性肺癌が強く疑われ,放射線治療を施行された.外来で加療中に放射線肺炎を認めたため9月に入院した.放射線肺炎は軽快したが,第40病日に突然死した.剖検所見で右上葉に腺癌の成分を伴った多形癌を認め,洞房結節転移と多数の心筋転移を認めた.右肺中葉に2 cm大の細気管支肺胞上皮癌を認め,重複癌であった.結論.突然死の原因は肺癌の洞房結節転移による不整脈と考えられた.本症例の臨床経過は一般的な肺癌の臨床経過と比較し特異であり,肺癌の洞房結節への転移は極めて稀であり,貴重な症例と考えられた.
  • 上野 克仁, 田中 真人, 河野 千代子, 在間 未佳, 山田 嘉仁, 山口 哲生
    2011 年 51 巻 3 号 p. 217-221
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/04
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.肺ノカルジア症は比較的まれな非特異的臨床像を呈することから早期診断は必ずしも容易ではない.術後診断で肺腺癌を合併した肺ノカルジア症と判明したHIVキャリアという,稀少例を経験したので報告する.症例.59歳男性.健診発見の左肺上葉異常陰影.経過中発熱や炎症反応の上昇を認めず,精査にて起因菌は同定されなかった.細胞診は陽性であり左主肺動脈浸潤を伴う腺癌(cT4N1M0 stage IIIA)と診断された.化学療法を1コース施行後PRが得られycT2bN1M0 stage IIBの状態となり手術の方針とした.術直前にHIV陽性と診断されたが感染徴候なくCD4値は維持されていた.当初左上葉切除を予定していたが,主肺動脈中枢側や胸壁へ病変が浸潤していたために胸壁切除を伴う肺全摘とせざるを得なかった.病理検査並びに遺伝子解析にて,腺癌病変をわずかに認めるが大半はノカルジアに起因する壊死性肉芽腫であると診断された.結論.炎症,腫瘍の鑑別に難渋する肺病変に対しては,炎症と腫瘍の合併の可能性も考慮し治療開始前に組織診断を着実にすべきである.肺ノカルジア症の菌種同定には遺伝子解析が有用である.
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