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安田 真一, 嶋田 晃一郎, 三瓶 善康, 堀江 昌平
1988 年 28 巻 4 号 p.
433-439
発行日: 1988/08/20
公開日: 2011/08/10
ジャーナル
フリー
原発性肺癌患者の血清, 組織中および血球細胞上のシアル酸を, チオバビルツール酸法によって検討した.血清中のシアル酸量は健常者に比し, 患者に有意に増加していた (P<0.01).組織型では, 腺癌および扁平上皮癌で有意な高値を示した (P<0.01).また扁平上皮癌では臨床病期の進行とともに増加した.肺癌組織で高値を示すことから, 増加したシアル酸は, 癌細胞に由来するであろうと考えられた.以上の結果から, 血清中のシアル酸の測定は, 肺癌患者の腫瘍マーカーとして有用であろうと思われた.
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特に無菌的採取法について
佐藤 雅美, 小林 俊介, 斎藤 泰紀, 今井 督, 薄田 勝男, 佐川 元保, 永元 則義, 須田 秀一, 仲田 祐, 橋本 邦久
1988 年 28 巻 4 号 p.
441-447
発行日: 1988/08/20
公開日: 2011/08/10
ジャーナル
フリー
気管支鏡下に採取した肺癌細胞の培養を試みた.カブ付き気管内チューブまたは抗真菌剤をもちいることにより細菌真菌の混入増殖を防止しえた.生検と擦過を併用して細胞を採取した11例、及び擦過によって細胞を採取した14例のうち各々8例に癌細胞の生着ないし増殖がみられた.中心型肺癌14例中10例に、また末梢型肺癌の3例では1例に癌細胞の生着又は増殖が認められた。特に気管支鏡可視範囲内に腫瘍が直接露出している小細胞癌は本法の最も良い適応と考えられた.また, 気管支鏡下に採取した正常気道上皮細胞の培養も可能であった.組織片から上皮細胞が伸展し活発な線毛運動が観察された.
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山本 英彦, 福岡 正博, 根来 俊一, 楠 洋子, 松井 薫, 劉 震永, 瀧藤 伸英, 森野 英男, 古武 弥宏, 安光 勉
1988 年 28 巻 4 号 p.
449-455
発行日: 1988/08/20
公開日: 2011/08/10
ジャーナル
フリー
原発性肺癌患者で治療により2年以上非担癌状態であった213例 (外科切除196例, 非観血的治療17例) から発生した第2癌症例は11例 (外科切除7例, 非観血的治療4例) であった.第2癌の発生臓器は肺8例, 胃3例であり, 特に肺癌は発生期待数に比べ有意に高い頻度であった.組織型は第1癌, 第2癌 (肺) ともに扁平上皮癌が最も多かった.全例が喫煙係数400以上の重喫煙者であり, 喫煙と第2癌発生との関連性が示唆された.
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森 雅樹, 森 裕二, 山岸 雅彦, 宇野 英二, 浅川 三男, 名取 博, 鈴木 明, 草島 勝之, 森 拓二
1988 年 28 巻 4 号 p.
457-464
発行日: 1988/08/20
公開日: 2011/08/10
ジャーナル
フリー
原発性肺癌切除例86例において, CTによる縦隔リンパ節腫大及び転移の診断精度についてretrospectiveに検討した.腫大に関して, 10mm厚スキャンでsensitivityは49~55%, specificityは94~96%であった.スライス厚を変えても腫大の指摘率に差はなかった.pN2症例において, 転移の診断率は腫大よりも若干低値を示した.今後は, 原発巣の組織型, 発生部位を考慮するとともに, 縦隔の部位別の診断基準を確立することが必要と考えられた.
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堂坂 弘俊, 原田 真雄, 方波見 基雄, 宮本 宏, 川上 義和, 葛巻 暹
1988 年 28 巻 4 号 p.
465-471
発行日: 1988/08/20
公開日: 2011/08/10
ジャーナル
フリー
原発性肺癌の腫瘍最大径およびTNM分類と
ras癌遺伝子発現の関係を抗
ras p21モノクローナル抗体rp-35を用いて免疫組織学的に検討した.その結果, 原発巣腫瘍最大径が30mmを越える腺癌および扁平上皮癌はいずれも30mm以下のものに比べてrp-35に対して高反応性であった (P<0.01).TNM分類T因子では, T2およびT3症例はT1症例に比べてrp-35に対して高反応性であった (p<0-01).N因子およびM因子は明らかな関係を示さなかった.以上, 腫瘍最大径およびTNM分類T因子と
ras p21発現の間に相関を認めた.
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増田 博
1988 年 28 巻 4 号 p.
473-479
発行日: 1988/08/20
公開日: 2011/08/10
ジャーナル
フリー
癌性胸膜炎患者の胸水および肝硬変症で腹水および胸水のみられた患者の胸水より, それぞれ糖ぺプチドおよび酸性ムコ多糖を分離し, 分析して次の結論を得た.癌性胸膜炎患者の胸水中には肝硬変症患者のそれよりも大量の糖ペプチドおよび酸性ムコ多糖が含まれていた.この糖ペプチドはDEAEセルロースカラムクロマト法で3個の画分に分れ, 癌性胸水ではシアル酸含有量の多い糖ペプチド画分が最も多く, 又どの胸水のどの画分もヘキソースが主成分であった.
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柴 光年, 山川 久美, 山口 豊, 馬場 雅行, 斎藤 博明, 卜部 憲和, 大岩 孝司, 半沢 儁, 橋爪 一光
1988 年 28 巻 4 号 p.
481-489
発行日: 1988/08/20
公開日: 2011/08/10
ジャーナル
フリー
胸部疾患に対する経皮針生検の診断情報量の増大をはかるために, 従来の外径1mmの千葉大肺研式生検針を改良して, 組織診検体も同時採取可能な生検針を試作し, 胸部疾患症例33例に対して針生検を施行した.切除標本による直視下生検では, 10例中9例 (90%) に腫瘍組織が得られた.また, 縦隔病変7例を含む経皮針生検施行症例23例では, 組織診断可能な検体は20例 (87%) に得られ, 細胞診と併用すると22例 (96%) で組織型の推定が可能であり, 本生検針により組織診一細胞診の高い診断率が得られた.
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関 誠, 中川 健, 土屋 繁裕, 松原 敏樹, 木下 巌, 西 満正, 梶谷 鐶, 翁 秀岳, 土屋 永寿
1988 年 28 巻 4 号 p.
491-500
発行日: 1988/08/20
公開日: 2011/08/10
ジャーナル
フリー
過去10年間に切除された原発性肺癌のうち, 気管・気管支形成術施行51例を対象として, その術式ならびに治療上の問題点について検討した.絶対的非治癒切除9例のうち, 切除断端癌陽性が5例あり, その部位と術中診断につき考察を加えた.縫合不全が4例にみられ, 3例を気管支肺動脈痩にて失った.4例すべて術前合併療法施行例で, 3例は気管支切除範囲が長かった.
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斉藤 達也, 小林 英夫, 福島 鼎, 田中 修, 大澤 忠, 北村 諭
1988 年 28 巻 4 号 p.
501-506
発行日: 1988/08/20
公開日: 2011/08/10
ジャーナル
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縦隔腫瘍の切除例16例を対象とし, MRIの臨床的有用性について検討した.腫瘍の内部信号からの質的診断の推測は, 脂肪に富む腫瘍で可能であった.嚢胞性病変では, 内容物の相違により信号強度に差がみられた.隣接臓器との関連では, 気道・心血管系の圧排, 変位所見は容易に判断できたが, 血管浸潤, 胸壁浸潤については診断困難例がみられた.縦隔腫瘍におけるMRIは, 現時点では腫瘍の進展の立体的な評価に最も有用であった.
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和久 宗明, 安野 博, 小山 明, 水谷 清二, 宍戸 真司, 河端 美則
1988 年 28 巻 4 号 p.
507-512
発行日: 1988/08/20
公開日: 2011/08/10
ジャーナル
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症例は57才, 男性.5年前より緩徐な増大傾向が追え, 左胸腔の大半を占めるに至った巨大限局性胸膜中皮腫を報告する.血性胸水を伴っていた.CT像はよく濃染される不整の内部構造及び壊死部分を認め, 悪性の印象が強かったが,
67Gaシンチグラムは陰性であった.胸膜肺全摘術及び左横隔膜全摘術を施行した.腫瘍径は20×14cm, 重量は2000gであった.病理所見は良性であった.石綿汚染との関係は証明されなかった.
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磯辺 真, 中川 喜一郎, 西村 寛, 枝国 信三, 武田 仁良, 掛川 暉夫
1988 年 28 巻 4 号 p.
513-519
発行日: 1988/08/20
公開日: 2011/08/10
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症例は37才女性, 縦隔原発悪性奇形腫の疑いで左腕頭静脈と併に全摘出術を施行.術後の組織学的検索で奇形腫とともにPAP法によるAFP染色でyolksactumorの成分が確認されteratoma with yolk sac tumorの診断が得られた.縦隔yolk sac tumorは希な腫瘍で男性に好発し, 長期生存例は極めて少ないといわれている.本症例は術後5年経過後も再発なく健在であり, 本邦文献上初めての生存女性例と考えられる.
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久保 精志, 高橋 唯郎, 冨田 友幸, 船渡 忠男, 和田 知益, 亀谷 徹
1988 年 28 巻 4 号 p.
521-528
発行日: 1988/08/20
公開日: 2011/08/10
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アスベスト曝露の既往があり, 剖検にて肺にアスベスト小体が認められ, 胃壁への転移がみられた胸膜中皮腫の一例を経験した.症例は64歳男性.左側肩・肘・腰部の激痛を訴え, 胸部X線上左肺尖部・左S
10の腫瘤影および右胸水貯留を認めた.左肺底部腫瘤と右胸膜の生検所見は同一で, 臨床的に胸膜中皮腫の対側播種が強く疑われ, 剖検にて確診された.また, 経過中好酸球増多を伴う等, 稀有なる一例と考えられた.
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前部屋 進自, 西村 治, 瀧本 幹之, 後藤 融平, 内藤 泰顕, 西野 栄世
1988 年 28 巻 4 号 p.
529-535
発行日: 1988/08/20
公開日: 2011/08/10
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前縦隔海綿状血管腫の経過中に発生した縦隔脂肪内腫の一例を経験した.症例は, 30歳女性.17歳時に, 試験開胸にて前縦隔海綿状血管腫と診断された.本症例は2歳時に放射線療法を受けており, Cahanの診断基準を満たすことより, 放射線誘発性肉腫と考えられた.手術は不完全切除に終わったが, 腫瘍による圧迫症状の緩解がみられた.術後, 残存腫瘍に対して放射線療法を行ったが効果なく, 13ヶ月後の現在腫瘍は再び増大している.
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1988 年 28 巻 4 号 p.
537-547
発行日: 1988/08/20
公開日: 2011/08/10
ジャーナル
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