肺癌
Online ISSN : 1348-9992
Print ISSN : 0386-9628
ISSN-L : 0386-9628
50 巻, 7 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
委員会報告
  • 澤端 章好, 藤井 義敬, 淺村 尚生, 野守 裕明, 中西 洋一, 江口 研二, 森 雅樹, 奥村 明之進, 宮岡 悦良, 横井 香平
    2010 年50 巻7 号 p. 875-888
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/18
    ジャーナル オープンアクセス
    日本肺癌学会,日本呼吸器外科学会および日本呼吸器学会は,肺癌登録合同委員会を共同で運営し,2004年に切除された肺癌症例についての全国集計を2010年に行った.1例以上登録をした参加施設数は呼吸器外科専門医修練認定施設605施設中253施設(41.8%)で,症例数は11,663例,全体の5年生存率は69.6%であった.男性(7,369例)の5年生存率は63.0%,女性(4,294例)では80.9%であった.臨床病期別の5年生存率はUICC Ver. 6(1999年),UICC Ver. 7(2009年)でそれぞれIA期(n=6,295,6,295):82.0%,82.0%,IB期(n=2,788,2,339):63.4%,66.1%,IIA期(n=203,819):55.4%,54.5%,IIB期(n=899,648):48.6%,46.4%,IIIA期(n=940,1,216):43.3%,42.8%,IIIB期(n=407,90):41.6%,40.3%,IV期(n=131,256):29.1%,31.4%であった.病理病期別の5年生存率はUICC Ver. 6(1999年),UICC Ver. 7(2009年)でそれぞれIA期(n=5,611,4,978):85.9%,86.8%,IB期(n=2,398,2,552):69.3%,73.9%,IIA期(n=336,941):60.9%,61.6%,IIB期(n=977,848):51.1%,49.8%,IIIA期(n=1,354,1,804):41.0%,40.9%,IIIB期(n=799,106):36.7%,27.8%,IV期(n=188,434):27.8%,27.9%であった.組織型別5年生存率は腺癌74.9%,扁平上皮癌59.1%,大細胞癌53.3%,小細胞癌52.6%,腺扁平上皮癌50.8%であった.術死は48例(0.4%),在院死は46例(0.4%)に認められた.
総説
  • 間野 博行
    2010 年50 巻7 号 p. 889-893
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/18
    ジャーナル オープンアクセス
    我々は肺腺癌の4~5%において2番染色体短腕内に微小な逆位が生じた結果,新たな癌遺伝子EML4-ALK が生じることを発見した.この逆位により,受容体型チロシンキナーゼALKの細胞内領域が微小管会合タンパクEML4と融合したタンパクが産生されるが,EML4内の二量体化領域によりEML4-ALKは恒常的に二量体化・活性化され肺癌の直接的原因となるのである.EML4-ALK を肺胞上皮特異的に発現するトランスジェニックマウスは生後速やかに両肺に数百個もの肺腺癌を多発発症するが,同マウスにALK酵素活性阻害剤を投与すると肺癌は速やかに消失した.したがってEML4-ALK は同遺伝子陽性肺癌の本質的な発癌原因であり,だからこそその機能を阻害する薬剤は肺癌の全く新しい分子標的療法となることが期待されるのである.既に実際のEML4-ALK 陽性肺癌症例に対するALK酵素活性阻害剤による第I/II相臨床試験も終了し,その目覚ましい治療効果が確認され,現在日本を含む国際第III相臨床試験へと移行している.我々の発見により,今後世界中で何万人・何十万人の肺癌患者の生命予後が大きく変わろうとしている.
原著
  • 笠井 大介, 小谷 義一, 奥野 恵子, 小林 和幸, 船田 泰弘, 西村 善博, 大林 千穂
    2010 年50 巻7 号 p. 894-900
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/18
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.肺肉腫様癌は肺癌の中でも比較的稀な腫瘍である.今回我々は,2006年から2007年にかけて著明な白血球増多とG-CSFの高値を伴う3例の肺肉腫様癌を経験したためこれらを報告する.症例.56歳男性,57歳男性,70歳女性.いずれもstage IIIB症例でありG-CSFの高値と著明な末梢血白血球増多を認めた.化学療法と放射線照射の同時併用療法を行い,2例ではpartial responseの効果が得られ,治療後1年以上の無病再発期間が得られたが,1例では治療経過中に腫瘍の増大と全身状態の悪化を認め,1コース終了後に治療を中断した.3例ともに治療経過中の腫瘍の縮小,増悪に並行して末梢血白血球数の減少,増加を認め,白血球数の推移は病勢と強く相関していた.結論.一般的に肉腫様癌,G-CSF産生腫瘍では予後不良の症例が多いと報告されているが,化学療法と放射線照射の同時併用療法を行うことにより予後の改善が期待できるものと思われた.
  • 松浦 奈都美, 石川 真也, 中島 成泰, 井貝 仁, 垂水 晋太郎, 張 性洙, 三崎 伯幸, 呉 哲彦, 横見瀬 裕保
    2010 年50 巻7 号 p. 901-905
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/18
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.ベバシズマブは血管内皮成長因子に対するモノクローナル抗体であり,本邦では2009年11月に扁平上皮癌を除く切除不能な進行・再発非小細胞肺癌への使用が承認された.今回,2009年11月から2010年2月に当科でベバシズマブ併用抗癌剤治療を行った進行再発非小細胞肺癌連続4例について,その治療反応性と有害事象について報告する.症例.57~68歳(中央値:62.5)の女性2人,男性2人.全例腺癌.手術はIV期以外の3例に施行されており,いずれの症例も抗癌剤治療はこれまでに複数のレジメンが施行されている(4~7レジメン,中央値:5.5).ECOG PSはいずれも0~1と良好だった.カルボプラチン(AUC=6)+ドセタキセル(60 mg/m2)+ベバシズマブ15 mg/kgを2コース施行した.2コース目投与後3週間経過した胸部CTでは,2例で明らかな縮小を認め,残る2例は縮小傾向であった.有害事象については,Grade 4の好中球減少を3例に認め,Grade 1の鼻出血を3例に,Grade 1の血痰を1例に認めたが,いずれも許容可能だった.結論.ベバシズマブにカルボプラチンとドセタキセルを併用した抗癌剤治療を4例に施行し,2コース終了時点で速やかな治療効果を認めた.
症例
  • 原 丈介, 西 耕一, 西川 晋吾, 常塚 宣男, 笠原 寿郎, 藤村 政樹
    2010 年50 巻7 号 p. 906-911
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/18
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.胸膜および肺に原発する滑膜肉腫は非常に稀である.症例.35歳,男性.右肺の異常陰影の精査目的に当院に紹介された.胸郭内原発の悪性腫瘍が疑われ,当院呼吸器外科にて胸腔鏡を行った.右胸腔内は脆弱な腫瘍で埋め尽くされていた.病理学的に,腫瘍は密に増殖する紡錘形細胞から成り,多数の核分裂像を認めた.免疫組織化学的検索を行ったが,確定診断には至らなかった.腫瘍は急速に増大し,約2ヶ月後に呼吸不全にて死亡した.剖検時,右肺は腫瘍により圧排され,虚脱していた.外科切除標本からRNAを抽出し,reverse transcription polymerase chain reaction(RT-PCR)を行い,さらにダイレクトシークエンスを行い,PCR産物がSYT-SSX2 融合遺伝子転写産物であることを確認した.胸膜以外に腫瘍を疑わせる所見を認めなかった.以上より,胸膜原発の滑膜肉腫と診断した.結論.非常に稀な腫瘍である胸膜原発の滑膜肉腫の1例を報告した.
  • 松井 千里, 河野 朋哉, 寺田 泰二, 花谷 崇, 砂留 広伸, 野口 哲男
    2010 年50 巻7 号 p. 912-915
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/18
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.癌治療の進歩により,治療後の生存期間が延長し,第二,第三の癌に罹患する可能性が出てきた.中でも放射線治療後に出てくる第二癌である放射線誘発癌が報告されるようになってきた.症例.喫煙歴のある77歳女性.2004年7月に肺扁平上皮癌(cT4N2M0,stage IIIB)と診断され,carboplatin+paclitaxel(CBDCA+PAC)による化学療法4コースと63.6 Gyの放射線療法が施行された.治療の結果partial response(PR)であり,以後再燃なく外来で経過観察が行われていた.2009年6月に胸部X線写真および胸部CTで放射線治療後の器質化部分の拡大を認め,気管支鏡検査で肺小細胞癌と診断された.第一癌が再燃なく,組織型が異なり,放射線の照射野内に発生し,放射線照射から発癌までに5年経過しているということから,放射線治療後に発症した肺小細胞癌と診断し,放射線誘発癌である可能性が高いと考えられた.結論.放射線誘発癌は潜伏期間が長く,放射線治療症例は治癒症例でも長期の経過観察が必要である.
  • 清水 一範, 鈴木 秀和, 平島 智徳, 田宮 基裕, 松浦 由佳, 小林 政司
    2010 年50 巻7 号 p. 916-920
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/18
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.近年,化学療法の発達に伴い肺癌患者において長期生存例が増加してきている.一方化学療法後治療関連白血病を発症する例が報告されている.症例.64歳女性.2004年肺腺癌(T4N0M0 stage IIIB)の診断にて,プラチナ製剤を含む各種化学療法を2004年から2009年までの間に受けた.また2008年に転移性脳腫瘍に対する放射線療法を受けた.2009年1月微熱と倦怠感が続くため当院を受診し,遷延性の好中球減少を認めたため入院となった.入院後の末梢血で芽球の増加を認めたため骨髄穿刺を実施し,急性骨髄性白血病と診断した.本症例は長期間にわたる化学療法,放射線治療の経過中に白血病を発症したことから治療関連白血病と考えた.結論.治療関連白血病は肺癌患者において,治療が長期化する場合には留意すべきであると考えられる.
  • 高間 辰雄, 菅谷 将一, 黒田 耕志, 渡橋 剛, 町田 和彦, 松尾 正樹
    2010 年50 巻7 号 p. 921-925
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/18
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.肺原発MALTリンパ腫は比較的まれな悪性リンパ腫である.今回われわれはFDG-PETで集積を認めた塵肺合併MALTリンパ腫の1切除例を経験したので報告する.症例.76歳男性.20年前に塵肺症と認定され定期的に塵肺検診を受けていた.経過中の胸部CTで,右肺S6に胸膜陥入像とスピクラを伴う結節を認め,FDG-PETで同部に集積を認めた.肺癌疑いにて当科紹介となり右肺下葉切除を施行し,肺MALTリンパ腫と診断された.結論.本症例では,ヒュームや粉塵による慢性的な抗原曝露刺激がMALTリンパ腫の発生に関与した可能性がある.肺MALTリンパ腫ではFDG-PETでFDGの集積を認める報告もあり,FDG-PET陽性の肺腫瘤ではMALTリンパ腫も鑑別診断の一つとして考慮すべきである.
  • 川真田 修
    2010 年50 巻7 号 p. 926-931
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/18
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.びまん性悪性胸膜中皮腫は予後不良の疾患であり,標準的治療も定まっていない.しかし,びまん性悪性胸膜中皮腫は診断が難しい疾患であり,発見された時点で進行した症例が多いのも予後不良の原因と思われる.本症例は胸腔鏡による確定診断後抗癌剤治療を選択し,6年2か月経過後手術を施行した.症例.50歳代,男性.アスベスト曝露歴:あり.2001年春,検診で胸水貯留を指摘され初診医を受診,胸膜針生検で悪性胸膜中皮腫と診断されたが,セカンドオピニオンで中皮腫を否定され2002年秋に当科受診,2003年3月胸腔鏡下胸膜生検を施行し,上皮型悪性胸膜中皮腫(T1bN0M0 stage IB)と診断し化学療法を選択した.診断から6年2か月経過後胸膜肺全摘術を施行した.現在術後1年担癌生存中である.結語.本症例のように化学療法で長期生存がえられることもあり,早期症例の治療法別の効果判定には注意が必要であると思われた.
  • 川野 亮二, 儀賀 理暁, 長谷川 弥子, 吉村 雪野, 塙平 孝夫, 高尾 匡
    2010 年50 巻7 号 p. 932-936
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/18
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.MALTリンパ腫は近年提唱された疾患概念で種々の臓器に発生し得るが,胸腺発生した例はきわめて稀である.症例.59歳,男性.健診時の胸部CT写真にて最大径7.5 cmの境界明瞭,内部濃度均一な腫瘤を指摘され,胸腺腫の術前臨床診断のもとに胸腺全摘術を行った.肉眼的に腫瘤は周囲と明瞭に境界される弾性硬の充実性の性状を示し,組織学的には既存の胸腺組織内に小型のcentrocyte-like cells(CCL)細胞の増殖を認めた.これらの細胞は免疫組織化学的にCD20抗体,bcl-2抗体および免疫グロブリン軽鎖のλ型が陽性であったことから胸腺に発生したMALTリンパ腫(胸腺嚢胞が併存)と診断された.結論.前縦隔病変の診断および治療は,胸腺に発生するMALTリンパ腫も考慮しておく必要がある.
  • 猪俣 稔, 宮 敏路, 小久保 豊
    2010 年50 巻7 号 p. 937-941
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/18
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.Radiation recall pneumonitisは,放射線照射後にさまざまな薬剤で発現しうる照射想起反応のひとつであり,ゲフィチニブによるものは1例の報告のみである.症例.右上葉・中葉の重複肺腺癌術後に再発をきたした55歳の男性.右第6肋骨転移に対し疼痛コントロール目的で放射線治療(45 Gy/9 Fr)後に化学療法(カルボプラチン+ゲムシタビン)を施行したが胸水の増加を認めPDと判定した.この時点で放射線肺臓炎は認めなかった.胸水中の上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異は陽性(exon21:L858R)でありゲフィチニブ250 mg/日の内服を開始した.投与2週間後に乾性咳嗽および軽度の労作時呼吸困難が出現し,胸部X線写真およびCTで放射線照射野に一致したスリガラス影を認めた.ゲフィチニブによるradiation recall pneumonitisと診断し内服を中止した.プレドニゾロンの内服で改善傾向である.結論.本症例は放射線治療終了8ヶ月後に発現したradiation recall pneumonitisである.ゲフィチニブによる間質性肺疾患のモニタリングにおいては,先行する放射線照射にも配慮する必要がある.
feedback
Top