肺癌
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43 巻, 2 号
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  • 胸部異常陰影患者の不安テスト結果から
    谷口 直子, 大澤 仲昭, 福田 泰樹, 芥川 茂, 後藤 功, 閔 庚樺, 花房 俊昭
    2003 年 43 巻 2 号 p. 85-89
    発行日: 2003/04/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    目的. がん告知におけるかかりつけ医の重要性について, 段階的告知の観点から検証する. 方法. 1999年2月から2001年10月の間に, 胸部異常陰影の精査目的で大阪医科大学付属病院を受診した患者82名に不安テスト (state-trait anxiety inventory: STAI) を行い, 特性不安, 状態不安, さらにその差を不安増強指数として, 患者の性別, 年齢, 付き添いの有無, 最終診断 (肺癌であったか否か), 紹介元 (検診群{検診結果通知により直接受診} とかかりつけ医群 {かかりつけ医からの紹介受診}) について比較検討した. 結果. 不安増強指数の比較では, 性別, 年齢, 付き添いの有無, 最終診断については, 有意な差はなかったが, 紹介元では, 検診群7.6±8.8, かかりつけ医群3.5±8.6で, 有意差がみられた (p=0.0358). つまり, 病状について, 何の説明も受けずに受診した検診群に比べ, かかりつけ医からなんらかの説明を受けているかかりつけ医群の方が, 不安の増強が少なかった. 結論. かかりつけ医の説明が, がん告知に有効であると言われている段階的告知の一部となり, 患者の不安を軽減したものと思われ, かかりつけ医のがん告知に果たす役割は大きいと考えられる.
  • 聴診三角アプローチ法の妥当性の評価
    大浦 裕之, 石木 幹人, 広瀬 正秀, 武内 健一, 平野 春人, 守 義明, 宇部 健治, 冨地 信和
    2003 年 43 巻 2 号 p. 91-98
    発行日: 2003/04/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    目的. 聴診三角アプローチ法による胸腔鏡下肺葉切除術 (VATS lobectomy, 以下VL) の成績につきretrospectiveに検討した. 対象と方法. 平成10年2月から平成14年3月までに, 胸腔鏡下 (VL群, n=31) または標準開胸下 (ST群, n=28) に肺葉切除およびリンパ節郭清を施行した臨床病期1期の末梢型原発性肺癌計59例を対象とした. VL群では, 聴診三角上に約6cmの切開をおいて第4または第5肋間に主操作口を設置し, リンパ節を順次郭清した後, 肺動静脈, 気管支の順に自動縫合器を用いて切離し肺葉切除を完了した. ST群では, 後側方切開開胸下にVL群とほぼ同様の内容の手術を施行した. 結果. 手術時間はVL群が有意に長い結果となった. 術中出血量と縦隔郭清リンパ節個数に関しては両群間に有意差はなかった. 術後鎮痛剤使用期間および術後在院日数は各々VL群で有意に短い結果となった. 術後の血清CRP値では, 第2および第7病日においてVL群で有意に低値を示した. 現在 (平成14年9月) までVL群では4例, ST群では3例で再発を認めており追加治療後follow中である. 結論. 聴診三角アプローチによるVLは低侵襲かつ安全な手技と考えられたが, その予後については慎重な観察を要する
  • 主に長期予後の面からの検討
    富樫 賢一, 佐藤 和弘, 三上 理, 遠藤 禎郎
    2003 年 43 巻 2 号 p. 99-104
    発行日: 2003/04/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    目的. 高齢者の原発性肺癌に対する外科治療の有用性を長期予後の面から検討する. 方法. 1979年から2000年までに手術を施行した原発性肺癌患者1374例を対象とした. これらを年齢層により, 65歳以下の若年 (Y) 群578例, 66歳から75歳の中間 (M) 群629例, 76歳以上の高齢 (E) 群167例の3群に分けて比較検討した。結果. 背景因子の比較ではE群で縮小手術比率が高く (16%), Y群で扁平上皮癌比率が低く (25%), E群でI期比率が高かった (73%). 術後死亡はE群で高率だったが (3.5%), 1997年以降は3群とも0であった. 5生率と10生率は全体ではY群66%, 53%, M群60%, 45%, E群47%, 27%で, 3群間に有意差を認めたが (P<0.001), 生存率の年齢層別調整によりその差はなくなった. 非小細胞癌1期ではY群82%, 71%, M群70%, 54%, E群52%, 33%で, 3群間には有意差を認めたが (P<0.001), 年齢層別調整によりその差はなくなった. II, III期では3群間に差はなかった. 結論. 高齢者の外科治療後の長期予後は生存曲線上不良であったが, 年齢層別調整により他年齢層と遜色なくなるため高齢者でも同等の予後が期待できると思われる.
  • 鈴木 理恵, 山田 耕三, 野田 和正
    2003 年 43 巻 2 号 p. 105-112
    発行日: 2003/04/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    目的. 肺の異型腺腫様過形成 (AAH) のthin-section CT (TS-CT) 上での質的診断の確立を目的に, 画像所見との比較検討を行った. 対象・方法. 1996年1月から2002年8月までの術後の病理所見でAAHと診断された23症例26病変 (男性9例, 女性14例; 平均年齢59.5歳) を対象とした. CT撮影は術前1週間以内に施行し, TS-CT画像は1~2mm厚, 1~2mm間隔の高分解能条件にて再構成し, CT所見と病理所見の比較・検討を行った. CT所見は充実型と含気型に大別し, さらに含気型は肺野条件画像を縦隔条件画像に変換時に完全消失するもの (完全型) と一部残存するもの (不完全型) に分類した. 病変の内部構造, 辺縁の性状についても検討した. 結果. TS-CT画像において, AAHは全例が含気型であり, そのうち完全消失型が23病変 (88%), 不完全消失型が3病変であった. 内部構造は77%が純粋なすりガラス影 (GGA) を呈していたが, 23%の例では内部に明らかな濃度差を認めるGGAを呈していた. また, 胸膜陥入像が35%に, 肺血管の関与が85%に, 気管支透亮像が38%に認められた. 考察. AAHはTSCT上, 従来報告されていた画像所見より多彩な所見を呈しており, 画像的にGGAを呈する野口分類でのtype Aやtype B腺癌との鑑別の困難さが示唆され, 更なる症例の集積が必要である.
  • 飯島 京太, 中川 健, 奥村 栄, 佐藤 之俊, 土屋 繁裕
    2003 年 43 巻 2 号 p. 113-120
    発行日: 2003/04/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    目的. 現在の日本において, 原則として医療費は皆保険制度下の出来高払い方式で支払われるため, クリニカルパス (パス) 導入による経済的恩恵は望み得ないが, 診療体系の標準化や合理化, 診療における質の管理などの副次的な効果がパスには期待されている. 標準開胸下肺切除術に対するパスを導入し, その合理性と安全性について導入以前の症例と比較検討した. 方法. パス導入以前の141例を対照群, 導入以降の156例をパス群とし, 合理性と安全性に関する項目を両群間で比較した. 結果. 対照群vs. パス群で示す. 術後管理に関しては, 輸液日数5.2vs. 4.5, 抗菌薬投与回数5.6vs. 2.5, 血液検体検査回数5.1vs. 3.2, 動脈1血液ガス分析回数2.2vs. 0.1, 胸部単純レントゲン撮影枚数9.3 vs. 6.5, 心電図モニタリング時間139vs. 101, 酸素投与時間101vs. 74, 全ての評価項目においてパス群が有意に減少していた (全てp<0.0002). また, 術後合併症, 再入院, 総死亡の発生率は両群間に有意差は認めず, 手術死亡, 在院死亡は両群共に発生しなかった. 結論. パスの導入により術後管理の合理化が達成された. また, 安全面では従来の術後管理との差は認めなかった.
  • 縦隔最終リンパ節からみた両側縦隔郭清の意義
    矢野 真, 小川 伸郎, 石和 直樹, 伊藤 秀幸, 奥脇 英人, 森田 敬知, 佐藤 達夫
    2003 年 43 巻 2 号 p. 121-124
    発行日: 2003/04/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    目的. 左非小細胞肺癌N2症例を縦隔郭清の方法の違いによる予後の差を検討した. 方法. 完全切除された非小細胞肺癌N2症例を縦隔最終リンパ節 (上縦隔上部リンパ節, 気管傍リンパ節, 気管前リンパ節, 大動脈傍リンパ節) への転移のあるHigh level N2群とそれらに転移のないLow level N2群に分けた. それぞれの群において, 左肺癌で両側縦隔リンパ節郭清を行ったBilateral群, 側方開胸での標準郭清を行ったStandard群, 右肺癌Right群で, 予後を比較検討した. 結果. High level N2群では郭清法による予後の差はなかった. Low level N2群では, 5生率は60.6%(Bilateral群), 17.6%(Standard群), 55.0%(Right群) で, Standard群で有意に予後が悪かった. 結論. Low level N2群ではStandard群の予後が悪かったが, 気管周囲の郭清が行われていないため, High level N2群やN3症例が含まれていた可能性がある. 両側縦隔リンパ節郭清に診断的意義だけでなく, 治療的意義があるか否かは今後の検討が必要である.
  • 西海 昇, 阿部 良行, 中村 雅登, 井上 宏司
    2003 年 43 巻 2 号 p. 125-130
    発行日: 2003/04/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    目的. 小型肺腺癌に対し縮小手術の是非が論議されているが, 未だ一定の見解が得られていない. 正常の肺胞から胃腸型ムチンは分泌されないが, 胃腸型ムチンを分泌した肺腺癌は予後不良と報告されている. そこでわれわれは小型肺腺癌手術例のリンパ節転移と胃腸型ムチン産生との関係について研究を行った. 対象と方法. 1989年から1999年の11年間に肺葉切除とND2a郭清を行った2.0cm以下の肺腺癌79例を対象とした. 79例を, N陰性群 (pN0, 60例) とN陽性群 (pN1, 8例とpN2, 11例) の2群にわけ, 2群の胃腸型ムチン (HGM, MUC2, MUC5AC, MUC6) 産生能について, 免疫組織学的に比較検討した. 結果. HGMは全例陰性であった. MUC2の発現はN陰性群1例 (2%), N陽性群5例 (26%) で, p<0.001の有意差を認めた. MUC6の発現はN陰性群5例 (8%), N陽性群6例 (32%) で, p=0.006の有意差を認めた. MUC5ACの発現はN陰性群3例 (5%), N陽性群3例 (16%) で, 有意差を認めなかった. 結論. MUC2とMUC6陽性の小型肺腺癌は, リンパ節転移が高率であった. MUC2かMUC6が陽性の小型肺腺癌は縦隔郭清を伴う肺葉切除が必須である.
  • 佐野 由文, 安井 光太郎, 金澤 右, 永広 格, 青江 基, 伊達 洋至, 安藤 陽夫, 平木 祥夫, 清水 信義
    2003 年 43 巻 2 号 p. 131-136
    発行日: 2003/04/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    目的. 低侵襲, 機能温存局所療法の一つとして, ラジオ波焼灼療法 (RFA) を胸部悪性腫瘍治療に応用したので報告する. 対象. 2001年6月より2002年3月までに胸部悪性腫瘍に対してRFAを施行した7例を対象とした. 方法上全例CT透視下で, 腫瘍内に17G内部冷却式穿刺針を穿刺挿入し焼灼を行った. 効果判定は術前後のダイナミックCT, CTガイド下針生検, および腫瘍マーカーの推移によって行った. 結果. 7症例, 14回, 22病変に対しRFAを施行した. 症例の内訳は, 転移性肺腫瘍6例と胸膜播種1例であった. 焼灼した腫瘍は最大径8mmから55mmであった. 合併症としては, 疹痛, 発熱, 気胸, 胸水貯留などが認められたが, 1例において胸腔ドレーンの留置を要した他はいずれも軽度であった. 施術後のダイナミックCTで造影効果が認められるか, 同じく施術後の針生検でviableな腫瘍細胞を認めた4病変に対して再焼灼を行った. 1例を7ヵ月後他病 (肺炎) で失ったが, 6例は施術後3ないし9ヵ月後の現在担癌生存中である. 結論. 胸部腫瘍に対するRFAは, 効果判定が困難であり, また長期の効果についてはさらに検討を加える必要があるが, 低侵襲で比較的安全に施行可能で, 今後胸部腫瘍に対する新たな治療法となりうると思われる.
  • 野畑 浩一, 辻 博, 笠井 孝彦, 藤村 政樹, 石浦 嘉久, 中尾 眞二
    2003 年 43 巻 2 号 p. 137-141
    発行日: 2003/04/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    背景. 肺癌に膜性腎症を合併する症例はしばしば経験されるが, その因果関係については明確にされていない. 症例. 69歳, 男性. 右背部痛を主訴として来院した. 胸部X線写真にて右上葉に異常陰影を指摘され, 気管支鏡下生検にて低分化肺扁平上皮癌 (T2N3MO Stage IIIB) と診断された. また蛋白尿もみられ, 入院時の1日尿蛋白量は2.6gであった. cytokeratin 19 fragment (CYFRA21-1) は39.1ng/mlと高値であった. carboplatinとdocetaxel hydrateによる化学療法を5クール施行し, 腫瘍は縮小し, CYFRA21-1も低下 (7.1ng/ml) するとともに, 尿蛋白量も減少した (0.1g/day). 退院後, 肺癌は再び増大し, 最終的には呼吸不全に陥り死亡した. 剖検によって, 原発巣の組織型は腺扁平上皮癌, 腎病変は膜性腎症であることが示された. 結論. 自験例は尿蛋白の経過がCYFRA21-1の変化と一致した膜性腎症合併肺腺扁平上皮癌症例であり, 肺癌と膜性腎症との関係を考察する上で興味深い症例と考えられた.
  • 文献的考察を加えて
    桜井 裕幸, 鈴木 健司, 渡辺 俊一, 浅村 尚生, 土屋 了介, 前島 新史
    2003 年 43 巻 2 号 p. 143-147
    発行日: 2003/04/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    背景. 肺類上皮血管内皮腫は稀な肺腫瘍の1つであり, かつては血管内細気管支・肺胞細胞腫瘍 (intravas-cular bronchioloalveolar tumor: IVBAT) の名称で知られた疾患である. 今回我々は胸部X線写真で両肺野に多発小結節影を呈する肺類上皮血管内皮腫の1例を報告すると共に本疾患につき報告されてきた文献を集計検討した. 症例. 症例は63歳, 女性. 特記すべき職業歴なし. 背部痛を主訴に近医を受診した際に, 胸部X線写真上, 両肺野に多発する小結節影を指摘され当院紹介となった. 諸検査結果で特に異常を認めず, 確定診断目的に開胸肺生検を行った. 組織学的には腫瘍の中心部は硝子化様基質が多くを占め, 辺縁部で腫瘍細胞が肺胞充填性または胞巣状増殖を呈した. 免疫組織学的には腫瘍は血管内皮細胞マーカーである第VIII因子関連抗原およびCD31, CD34に陽性所見を呈し, 肺類上皮血管内皮腫と診断された. 結論. 本疾患はその報告例からも臨床経過は比較的緩徐であるとされているが, 確実に進行性で, 時に急速な経過をたどることがある. 有効な治療法は報告されていない. 本症例は肺生検後, 無症候に約1年5ヶ月を経過している
  • 安達 勝利, 高尾 仁二, 矢田 公, 保坂 直樹
    2003 年 43 巻 2 号 p. 149-152
    発行日: 2003/04/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    背景. 我々は心膜及び右肺上葉に浸潤した胸腺未分化癌の1例を経験したので報告する. 症例. 症例は61歳女性. 背部痛と胸部圧迫感を主訴として来院した. 胸部単純撮影, 胸部CT撮影で前縦隔に境界明瞭な腫瘤を認め, 縦隔腫瘤摘出術を施行した. 腫瘤は心膜及び右肺上葉に浸潤を来しており, 心膜に播種を認め, 心膜及び右肺上葉合併, 胸腺を含め腫瘤を切除した. 病理診断は胸腺未分化癌で, 免疫組織学的染色でbcl-2は陽性でp53及びki-67の陽性率は82%, 38%であった. 術後シスプラチン120mg×1 (day1), 塩酸ドキソルビシン40mg×1 (day 2), エトポシド120mg×3 (day3~5) を2クール施行した. 結論. 術後3年10ヶ月の現在再発を認めていない.
  • 2003 年 43 巻 2 号 p. 153-169
    発行日: 2003/04/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
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