肺癌
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51 巻, 6 号
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原著
  • 磯部 和順, 秦 美暢, 佐藤 敬太, 佐野 剛, 杉野 圭史, 坂本 晋, 高井 雄二郎, 本間 栄
    2011 年 51 巻 6 号 p. 689-693
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/10
    ジャーナル オープンアクセス
    目的.CellSearch® systemを用いた末梢血液中の循環腫瘍細胞(circulating tumor cells:CTCs)から上皮成長因子受容体(epidermal growth factor receptor:EGFR )遺伝子変異が検出可能か否かを明らかにする.方法.原発巣においてEGFR 遺伝子変異陽性が確認されている進行期肺腺癌10例の末梢血液検体から,CellSearch® system(Veridex)を用いてCTCsを抽出し,PCR-clamp法,またはcycleave法にてEGFR 遺伝子変異を解析した.得られたEGFR 遺伝子変異の結果について原発巣のものと比較検討した.結果.原発巣のEGFR 遺伝子変異はexon 19 deletion/exon 21 L858R/exon 21 L861Q/exon 19 deletion+exon 20 T790Mが4/4/1/1.CTCsは10例中6例(60%)に検出され,個数は1個/7.5 mlが2例,2個/7.5 mlが2例,4個/7.5 mlが2例であった.CTCsが検出された6例中,CTCsのEGFR 遺伝子変異陽性例はcycleave法による1例(17%)のみでexon 19 deletionであった.結論.CellSearch® systemとPCR-clamp法,またはcycleave法を用いた血液中CTCsのEGFR 遺伝子変異の検出率は17%と低く,今後検出技術の向上が必要である.
  • 近藤 哲郎, 村上 修司, 齋藤 春洋, 尾下 文浩, 伊藤 宏之, 坪井 正博, 中山 治彦, 横瀬 智之, 亀田 陽一, 山田 耕三
    2011 年 51 巻 6 号 p. 694-700
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/10
    ジャーナル オープンアクセス
    目的.小型肺腺癌における浸潤癌・非浸潤癌鑑別の評価方法としてthin-section CT(TS-CT)の肺野条件画像と縦隔条件画像の腫瘍長径の比率を用いる方法(消失率法)と,TS-CT縦隔条件画像の腫瘍長径のみを用いる方法(縦隔画像長径値法)との比較検討を行った.対象・方法.対象は1997年7月から2008年5月までに切除された病理腫瘍径20 mm以下の末梢小型肺腺癌430症例(441病変)で,リンパ節転移・胸膜浸潤・血管浸潤・リンパ管浸潤・術後再発のいずれも認めないものを非浸潤癌とし,いずれか1つでも認めるものを浸潤癌とした.方法は術前TS-CT画像を用いて,(1)消失率法:消失率=(1-縦隔画像長径/肺野画像長径)×100(%),および(2)縦隔画像長径値法:縦隔条件画像における縦隔画像長径(mm)を求め,非浸潤癌鑑別に関する消失率法と縦隔画像長径値法の有用性をROC解析とロジスティック回帰分析による多変量解析を用いて行った.結果.対象の性別は男性189例,女性241例であり,病理学的には非浸潤癌328病変,浸潤癌113病変であった.ROC解析では縦隔画像長径値法よりも消失率法がより良好な結果であり,ロジスティック回帰分析を用いた多変量解析では,女性であることと消失率が高値であることが非浸潤癌に関連する独立因子であった.結論.末梢小型肺腺癌における浸潤癌・非浸潤癌鑑別の評価方法としてTS-CT画像の縦隔条件画像を用いた評価方法よりも,その肺野条件画像の長径との比率を用いた方法がより有用な鑑別方法である.
症例
  • 島津 哲子, 吉田 憲生, 宮沢 亜矢子, 岡田 木綿, 鈴木 嘉洋, 松山 恭士
    2011 年 51 巻 6 号 p. 701-706
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/10
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.肺癌に膵腫瘍を併発した場合,膵癌との重複癌か,転移性膵腫瘍かの診断は極めて困難である.症例1.69歳,男性.2008年10月胸部X線異常で他院受診.胸部CT,気管支鏡下肺生検を行い,肺腺癌と診断した.12月当院へ紹介され,化学放射線療法を開始した.2009年4月のFDG-PET/CTにて,膵尾部に集積を認めたが,画像検索では原発性膵癌か転移性膵腫瘍か鑑別が困難であったため,ジェムシタビンやTS-1®での治療を施行した.その後閉塞性黄疸を発症し,病状悪化にて2010年4月に死亡した.病理解剖にて肺癌と膵癌の重複癌と診断した.症例2.83歳,男性.2009年10月,胸部X線異常影を指摘され当院受診.胸部CT,気管支鏡下肺生検にて肺扁平上皮癌と診断した.緩和治療を中心としていたが,2010年5月腹部CTにて膵腫瘍の出現を認めた.同時に縦隔リンパ節転移による食道通過障害を併発し,病状悪化にて同年9月に死亡した.病理解剖にて肺癌の膵転移と診断した.結論.今回,肺癌と膵癌の重複癌の症例と,肺癌からの転移性膵腫瘍の2症例の剖検を経験することができた.肺癌に膵腫瘍を併発した場合は,どちらの可能性も考慮しながら治療を行う必要がある.
  • 砂留 広伸, 花谷 崇, 野口 哲男, 松井 千里, 河野 朋哉, 寺田 泰二
    2011 年 51 巻 6 号 p. 707-711
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/10
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.肺扁平上皮癌は,画像上腫瘤状陰影を呈することが多いが,今回我々は,気道内進展により肺内転移を伴わずに多発結節影が認められた肺野型扁平上皮癌の症例を経験したので報告する.症例.81歳男性.健康診断で胸部異常陰影を指摘されて当科を受診した.CTでは右S2aに限局した複数の小結節影を認めた.まず感染症が疑われたが,喀痰検査などで有意な病原微生物は認められなかった.一方,喀痰細胞診で扁平上皮癌を認めた.咽頭癌や喉頭癌の所見はなく,肺内転移を伴う肺扁平上皮癌と考えて手術を行ったところ,結節影を呈したのは気道腔内に沿って連続的に進展する腫瘍であったことが病理結果で判明した.結論.非典型的なCT所見を呈した肺野型扁平上皮癌を経験した.画像上,多発小結節影を呈していても,悪性疾患を考慮する必要がある.
  • 伴 秀利, 西村 嘉裕, 梁 徳淳, 安光 勉
    2011 年 51 巻 6 号 p. 712-717
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/10
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.Solitary fibrous tumor of the pleura(SFTP)は比較的稀な疾患で術前の悪性度評価が困難である.症例.我々の経験した3症例のSFTPのMRI拡散強調画像において,53歳女性の低悪性度のSFTPでは無信号であり,66歳男性の低悪性度だが軽度の細胞増殖を呈したSFTPでは不均一な軽度高信号を認め,84歳男性のmalignant SFTPでは不均一な高信号を呈した.いずれもCTやMRI T1・T2強調画像では明確な差異を認めず,malignant SFTP症例においてはFDG-PETで軽度の集積率増加しか認めなかった.結論.SFTPの悪性度の術前評価にMRI拡散強調画像が有用である可能性が示唆された.
  • 川野 理, 水野 幸太郎, 深井 一郎
    2011 年 51 巻 6 号 p. 718-723
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/10
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.リウマチ治療薬であるメソトレキセート(MTX)の内服中にリンパ腫が発生することが知られている.肺癌と鑑別を要したメソトレキセート関連リンパ増殖性疾患(methotrexate-associated lymphoproliferative disorders:MTX-LPD)の1例を経験したので報告する.症例.50歳代男性.1991年から関節リウマチ(RA)の治療中,乾性咳嗽が出現し胸部X線で右肺門部の腫瘤影を指摘され紹介となった.CTで右肺門に6×5×5 cmの腫瘤と両側多発肺結節および両側多発腎結節を認めた.多発転移を有する右肺癌を疑ったが,PETで肺と腎のほか,胸壁,膵,腹膜,右顎下リンパ節にもFDGの集積を認め,肺癌以外の悪性疾患の可能性も考えられた.RA治療のためMTX内服中であったが,全身状態が悪化したため内服を中止したところ,MTX内服中止3週間後に全ての腫瘤影の縮小を認め,それらは最終的に消失した.以上の臨床経過より本症例はMTX-LPDと考えられた.結論.MTX内服中の患者に肺癌を疑う所見をみた場合,MTX-LPDを念頭においた検討が必要である.
  • 太田 英樹, 河合 秀樹
    2011 年 51 巻 6 号 p. 724-729
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/10
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.良性孤立性線維性腫瘍の術後肺転移再発はまれである.症例.75歳女性.1984年に右肺臓側胸膜由来良性孤立性線維性腫瘍の切除術を受けた.1994年に局所再発の切除術を受け,再発腫瘍は組織学的に良性と診断された.2005年より胸部X線写真で増大傾向のある左肺腫瘤を指摘され,2007年に当院に紹介された.腫瘤はCTとMRIで内部構造が不均一な境界明瞭の肺内腫瘍として描出された.肺楔状切除術を行い,えられた切除標本の組織像は前2回の切除標本と類似していたが,核分裂像とMIB-1陽性率の増加が認められた.以上より,本例を組織学的に悪性転化した術後肺転移性再発と診断した.術後4年経過するも再発は認められていない.結語.初回手術から21年後に転移性肺腫瘍として再発した,きわめてまれな経過をたどった良性孤立性線維性腫瘍の1例を経験した.悪性転化しているため,今後も厳重な経過観察が必要である.
  • 鈴木 妙子, 濱口 俊一, 神田 響, 須谷 顕尚, 久良木 隆繁, 礒部 威
    2011 年 51 巻 6 号 p. 730-735
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/10
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.脳神経症状を初発症状とした癌性髄膜症は非常にまれであるとされる.症例.89歳,男性.2007年秋より左難聴を自覚し,翌年1月より急激に悪化,右眼瞼下垂,眼痛も出現し,当院脳外科を紹介され受診した.頭部単純MRIで陳旧性脳梗塞と診断されたが,その後も右眼瞼下垂の進行と右眼球運動障害の出現を認め,Tolosa-Hunt syndromeの疑いでステロイド治療が開始された.しかしその後も症状は悪化し,頭部造影MRIを施行したところ,多発脳内転移巣を認め,さらに右動眼神経,左内耳神経に沿った淡い造影効果を認め,癌性髄膜症と診断した.その後全身検索で左肺S8に腫瘍を認め,喀痰細胞診で肺腺癌(cT4N2M1b,stage IV)と診断した.2月から全脳照射(30 Gy),全身化学療法(カルボプラチン+パクリタキセル)を開始したが,神経症状やMRI所見の改善は認めず,その後も嚥下障害や構音障害,難聴などが出現し,5月に永眠された.結論.脳神経症状で発症した肺癌による癌性髄膜症は非常にまれと考えられるため,これまでの報告とともに若干の考察を加え報告する.
  • 寺町 政美, 中川 正嗣
    2011 年 51 巻 6 号 p. 736-741
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/10
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.肝細胞癌の孤立性縦隔転移は稀である.症例.症例は51歳,男性.多発肝細胞癌に対する肝動脈塞栓療法中に,前縦隔の結節影を指摘された.胸部CTやMRIで周囲への浸潤を認めず,非浸潤性胸腺腫の術前診断で,胸腔鏡下胸腺右葉切除術を施行した.Hep Par 1を含む免疫染色の結果,肝細胞癌の縦隔転移と診断した.3ヶ月後に腹部大動脈周囲のリンパ節が孤立性に腫大したため,縦隔転移も前横隔膜リンパ節への孤立性転移であったと診断した.術後18ヶ月の現在,UFTを内服しながら担癌生存中である.肝細胞癌の孤立性縦隔転移は極めて稀であり,本邦での報告は本例を含めても11例に過ぎない.この11例中,局所のコントロールが良好であった5例は1年以上の予後が得られており,孤立性縦隔転移を摘出する意義は十分あると思われた.結語.肝細胞癌の孤立性縦隔転移に対して胸腔鏡下摘出術を行うことで,予後の改善が得られる可能性がある.
  • 山口 央, 大崎 敏弘, 大庭 ひろみ, 杉本 幸弘, 海老 規之, 山本 英彦
    2011 年 51 巻 6 号 p. 742-746
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/10
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.高分化胎児型腺癌(well-differentiated fetal adenocarcinoma:WDFA)は胎児肺の腺管に類似する稀な肺原発悪性腫瘍である.症例.15歳女性.高校入学時の健康診断で胸部異常陰影を指摘された.胸部CTで右肺下葉に境界明瞭な55×45 mm大の充実性腫瘤,また気管支鏡検査で右B9入口部に腫瘍性病変を認め,生検で腺癌と診断された.臨床病期IIA期(cT2bN0M0)の診断で胸腔鏡補助下に右中下葉切除およびリンパ節郭清を行った.病理診断は,WDFA,病理病期IIA期(pT2bN0M0)であった.結論.15歳で発見されたWDFAの1例を経験した.稀な腫瘍であり有効な治療法の確立には症例の蓄積が重要である.
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