肺癌
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63 巻, 2 号
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総説
  • 井上 匡美, 下村 雅律, 岡田 悟, 石原 駿太
    2023 年 63 巻 2 号 p. 77-83
    発行日: 2023/04/20
    公開日: 2023/04/27
    ジャーナル オープンアクセス

    縦隔原発悪性腫瘍の併存症を含めた病態は多様であり,その診断と治療戦略は疾患ごとの腫瘍学的特性により異なる.本総説では,外科治療を中心とした集学的治療を要することが多い悪性縦隔腫瘍である胸腺腫・胸腺癌・胸腺神経内分泌新生物,および悪性縦隔胚細胞性腫瘍に対する,それぞれの診断と外科治療,薬物療法,および放射線治療などに関して,診療ガイドラインや臨床試験,臨床研究の取り組みなどを解説し,特徴的な併存症についても述べる.

原著
  • 角本 慎治, 高山 裕介, 清家 廉, 矢野 潤, 三島 祥平, 庄田 浩康
    2023 年 63 巻 2 号 p. 84-90
    発行日: 2023/04/20
    公開日: 2023/04/27
    ジャーナル オープンアクセス

    背景・目的.ドライバーがん遺伝子変異/転座陰性の進行期非小細胞肺癌(NSCLC)に対する一次治療として,免疫チェックポイント阻害剤(ICI)+プラチナ製剤併用療法が推奨されている.当院での使用経験をもとに併用療法における効果予測因子として有用な炎症性マーカーを探索する.対象・方法.2019年1月から2021年7月までに当院でICI+プラチナ製剤併用療法を行った85例について,炎症性マーカーと治療効果との関係を後方視的に検討した.結果.無増悪生存期間に対する多変量解析の結果,mGPS(modified Glasgow prognostic score)=2(hazard ratio[HR]:1.76,p=0.004),AGR(albumin-globulin ratio)<1.4(HR:2.57,p=0.016),ALI(advanced lung cancer inflammation index)<10.1(HR:2.20,p=0.041)が独立した効果不良因子となった.結論.NSCLCに対するICI+プラチナ製剤併用療法において,mGPS,AGR,ALIは有用な効果予測因子となる可能性がある.

症例
  • Yuuki Kou, Nobuhisa Yamazaki, Yasuto Sakaguchi, Hirokazu Tanaka, Makot ...
    2023 年 63 巻 2 号 p. 91-94
    発行日: 2023/04/20
    公開日: 2023/04/27
    ジャーナル オープンアクセス

    Background. Axillary lymphadenopathy after COVID-19 vaccination have been frequently reported in the medical literature. This benign reaction can be confused with metastases of thoracic malignancies. We experienced three lung cancer cases with COVID-19 vaccine-related lymphadenopathy. Case presentations. Three patients were included. One was a pre-operative patient, and the others were post-operative patients. All of them were patients with lung cancer and had been vaccinated for COVID-19. They were found to have swelling of the axial lymph nodes on computed tomography several days after undergoing vaccination for COVID-19. Two patients underwent an axial lymph node biopsy. The results of biopsies and close follow-up revealed that none of them actually had metastasis. Conclusions. Invasive examinations should be avoided, but inappropriate upstaging and downstaging may result in miserable outcomes. We herein report three cases with imaging and pathological characteristics.

  • 橋本 鉄平, 井上 政昭, 名部 裕介, 吉田 順一
    2023 年 63 巻 2 号 p. 95-100
    発行日: 2023/04/20
    公開日: 2023/04/27
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.免疫チェックポイント阻害薬は非小細胞肺癌において病変ごとに異なる治療効果を示すことが知られている.症例.66歳,男性,両側上葉肺扁平上皮癌(同時性多発肺癌).心呼吸機能低下のため両腫瘍に対する根治手術は困難であり,免疫複合療法(CBDCA+nab-PTX+pembrolizumab)を選択.4コース投与後に両側腫瘍は縮小.Pembrolizumab単剤による維持療法23コース後のCTで左上葉肺癌は消失,肺門リンパ節と一塊となった右上葉肺癌原発巣は縮小を維持していたが,#4Rリンパ節のみが腫大.PET-CTでは同リンパ節と右肺門部病巣にFDG集積を認めた.経過から縦隔リンパ節転移と判断した.右肺門部に腫瘍の残存はあるが,縮小維持されていたため,病勢コントロール目的と遺伝子検査目的に縦隔リンパ節切除術を施行した.術後は維持療法を継続し初回治療から1年11ヶ月(術後4ヶ月)経過した現在無増悪生存中.結論.非小細胞肺癌に対するPD-1阻害薬治療において,個々の病変ごとに不均一な増悪パターンを示す場合は,増悪病変を外科的切除することで病勢をコントロールできる可能性がある.

  • 児玉 秀治, 吉田 正道, 三木 寛登, 後藤 広樹, 増田 和記, 寺島 俊和, 藤原 篤司
    2023 年 63 巻 2 号 p. 101-106
    発行日: 2023/04/20
    公開日: 2023/04/27
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.肺癌は骨転移を来すことが多い癌である.診断や評価に骨シンチグラフィが用いられ,治療には骨修飾薬が用いられる.骨修飾薬は重篤な有害事象として顎骨壊死を起こすことがあり注意を要する.症例1.72歳男性,肺腺癌で多発骨転移あり,ペメトレキセドとゾレドロン酸で治療中.症例2.62歳女性,肺腺癌術後再発で多発骨転移あり,オシメルチニブとデノスマブで治療中.症例3.73歳男性,肺腺癌で多発骨転移あり,オシメルチニブとデノスマブで治療中.これらの多発骨転移を伴う肺癌の3症例は,化学療法および骨修飾薬による治療中に顎骨壊死を来した.経過中に撮影した骨シンチグラフィ画像では,3例とも顎骨壊死の症状出現前の時点で下顎部に99mTcが集積していた.結論.顎骨壊死の早期発見,早期対応のため,骨修飾薬投与中に骨シンチグラフィを撮影した場合は,下顎部も注視すべきである.医科歯科連携を推進し,集積を認めた場合は早期に歯科へのコンサルテーションが望ましい.

  • 河口 洋平, 神澤 宏哉, 矢崎 裕紀, 松原 泰輔, 小野 祥太郎, 中嶋 英治, 青柴 和徹, 中村 博幸, 森下 由紀雄, 古川 欣也
    2023 年 63 巻 2 号 p. 107-110
    発行日: 2023/04/20
    公開日: 2023/04/27
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.空洞性病変の内部に菌球様の結節影を認める場合,単純性肺アスペルギローマが鑑別診断に挙がる.症例.58歳男性,1ヵ月以上続く咳嗽,呼吸困難,血痰を主訴に前医を受診した.胸部CTでは右S6に4.5 cmの空洞性の腫瘤影を認め,空洞内部に1.2 cmの類円形の結節を認めた.病変の末梢側は広範な肺炎像を呈しており,単純性肺アスペルギローマによる菌球形成と肺炎の診断で抗菌薬および抗真菌薬を開始した.その後通院が中断され,4ヵ月後自覚症状の増悪を認め再度前医を受診した.肺炎は改善していたが,右S6の空洞性病変は5.0 cmに増大し空洞壁の部分的な肥厚を認めた.また空洞内部の類円形の結節も1.2 cmから4.0 cmと増大し菌球形成を疑う所見であった.抗アスペルギルス抗原は陰性であったが,画像所見および臨床経過から単純性肺アスペルギローマの増悪が疑われ当院へ紹介となり症状コントロール目的に外科的切除を施行した.胸腔鏡下右下葉切除+ND1bを施行し,病理診断は肺腺癌pT2aN1M0 stage IIBであった.結語.菌球様陰影を呈する原発性肺癌は稀であるが報告されている.抗真菌薬に反応しない菌球様陰影を認めた際は原発性肺癌の可能性も念頭に置いて治療方針を考慮する必要がある.

  • 佐藤 宏樹, 岡部 直行, 髙木 玄教, 星野 実加, 鈴木 弘行
    2023 年 63 巻 2 号 p. 111-114
    発行日: 2023/04/20
    公開日: 2023/04/27
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.肺癌の咽頭転移は極めて稀である.症例.60歳代男性.右肺腺癌(pT2aNxM1a stage IVA)に対してcisplatin+pemetrexed+bevacizumabによる化学療法を6コース施行し,維持療法pemetrexed+bevacizumabを1 0コース施行後に右頚部腫脹および鼻閉感が出現した.造影C Tにて頚部リンパ節の腫大を認め,鼻咽頭ファイバーでは,上咽頭に腫瘤性病変を認めた.頚部リンパ節および上咽頭腫瘤性病変の生検を施行し,組織学的に肺腺癌の転移と診断した.同転移巣への放射線治療を施行した後にnivolumabを投与し,症状の改善と長期の局所制御が得られた.結論.非小細胞肺癌における上咽頭転移は極めて稀であり,治療中に上咽頭の病変が出現した場合は,上咽頭癌との組織学的な鑑別が重要である.

  • 井手 祥吾, 江口 隆, 松岡 峻一郎, 三浦 健太郎, 濱中 一敏, 谷 直樹, 大西 洋, 小泉 知展, 花岡 正幸, 清水 公裕
    2023 年 63 巻 2 号 p. 115-121
    発行日: 2023/04/20
    公開日: 2023/04/27
    ジャーナル オープンアクセス

    緒言.オリゴ転移を有する非小細胞肺癌において化学療法後の局所地固め療法(local consolidative therapy,LCT)の有用性が報告されている.副腎オリゴ転移を有する肺癌に化学免疫療法後のLCTを行った症例を経験したので報告する.症例.66歳男性,検診を契機に右肺上葉原発性肺癌(T3N1)および下大静脈内腫瘍栓を伴う右副腎転移(M1b)を発見された.化学免疫療法で副腎病変と右肺門転移リンパ節は縮小し,PETでのFDG集積も消失した.Partial responseと判断し,免疫関連有害事象の関節炎にステロイド治療を行った上で,LCTとして化学免疫療法最終投与から3カ月後に右肺上葉切除術,肺切除2カ月後に右副腎に対しサイバーナイフによる定位放射線治療を行った.治療開始から1年無再発生存中である.結論.LCTの治療選択・組み合わせ・順序はLCT選択前治療の効果に応じて多彩で,個々の症例蓄積・情報共有が重要である.副腎オリゴ転移に対するLCTとしてのサイバーナイフによる定位放射線治療は有効な選択肢のひとつと考えられた.また,免疫療法後に手術を検討する場合,免疫関連有害事象に注意が必要である.

  • Hirokazu Tokuyasu, Yuriko Sueda, Hiromitsu Sakai, Natsumi Omura-Tanaka ...
    2023 年 63 巻 2 号 p. 122-125
    発行日: 2023/04/20
    公開日: 2023/04/27
    ジャーナル オープンアクセス

    Background. Bronchopulmonary typical carcinoid tumors with distant metastasis and carcinoid syndrome are rare. Case. We report the case of a 77-year-old woman diagnosed with a bronchial typical carcinoid in the right middle lobe bronchus and multiple liver metastases. The patient presented with facial flushing and diarrhea, and the serotonin blood levels were elevated, indicative of carcinoid syndrome. Combination therapy with everolimus and octreotide maintained the patient in a healthy condition for approximately two years until she died in 2019. Conclusion. Bronchial typical carcinoids with multiple liver metastases and carcinoid syndrome in our patient was well-managed by combination therapy with everolimus and long-acting release octreotide.

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