肺癌
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50 巻, 3 号
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特別寄稿
原著
  • 吉井 千春, 井上 直征, 矢寺 和博, 野口 真吾, 清水 真喜子, 浦本 秀隆, 花桐 武志, 迎 寛, 安元 公正
    2010 年 50 巻 3 号 p. 272-279
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    目的.社会的ニコチン依存は,喫煙を美化,正当化し,文化性を持つ嗜好として社会に根付いた行為と認知する心理状態であり,加濃式社会的ニコチン依存度調査票(KTSND)で定量化される.今回,日本肺癌学会参加者の社会的ニコチン依存をKTSNDを用いて評価した.方法.第49回日本肺癌学会総会の参加者にKTSND(10問30点満点)を含むアンケートを配布し,460名の回答を解析した.結果.KTSND(平均値±SD)は,非喫煙者(295名)10.5±5.6,前喫煙者(141名)12.9±5.9,喫煙者(24名)19.0±4.6で,喫煙者では有意に高かった.また非学会員や若い年代の参加者で高い傾向を示した.日常的に肺癌治療を行っている回答者は353名であった.これらの回答者は,肺癌患者への禁煙指導について,A;禁煙を達成してから治療を行う(82名)10.3±6.6,B;禁煙指導はするが,禁煙の成否にかかわらず治療を行う(235名)10.9±5.6,C;喫煙と肺癌の関係は説明するが,禁煙指導は行わない(26名)14.5±5.9,D;喫煙のことには特に触れない(5名)17.4±8.0と回答し,禁煙指導に関心を持たない回答者ほど有意に高かった.結論.日本肺癌学会参加者のKTSNDはこれまでの報告と変わらない値を示し,また肺癌患者への禁煙指導の態度を良く反映した.
  • 横井 香平, 光冨 徹哉, 近藤 晴彦, 丹羽 宏, 吉田 和夫, 太田 伸一郎, 重光 希公生, 矢野 智紀, 田中 亨, 高尾 仁二
    2010 年 50 巻 3 号 p. 280-286
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    目的.2005年の肺癌診療ガイドライン改訂で,IB~IIIA期非小細胞肺癌・完全切除例に対しては術後化学療法を行うよう勧められると変更された.その後の術後化学療法の実態を知るため,今回中部肺癌手術研究会で日常診療における術後化学療法の施行状況を調査した.方法.2006~2007年の肺癌完全切除例について,患者背景,術後化学療法の有無,施行レジメン,施行回数,非施行例についてはその理由,および施設毎の術後化学療法の方針について調査した.結果.30施設から3237例(IA期1636例,IB期664例,II期418例,IIIA期358例,IIIB期161例)が集積された.術後化学療法はIA期12%,IB期48%,II期52%,IIIA期66%,IIIB期60%に施行され,用いられた主なレジメンは,I期UFT,II~IIIB期プラチナベース化学療法であった.UFT投与例の72%が1年以上継続され,プラチナベース化学療法は55%の患者に3コース以上施行されていた.IB~IIIA期非施行例の理由としては,全身状態不良が多く,患者の拒否も21~36%に認められた.結論.術後補助化学療法は肺癌診療ガイドライン通りに,比較的多くの患者に十分投与されていた.しかしIA期例への投与や,施行レジメンの選択,真の治療効果などについては,今後さらに検討していく必要があると思われた.
症例報告
  • 廣田 貴子, 濱崎 慎, 原田 泰志, 藤田 昌樹, 鍋島 一樹, 渡辺 憲太朗
    2010 年 50 巻 3 号 p. 287-291
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.肺原発の印環細胞癌は稀な腫瘍であり,予後がよくない.抗癌剤の効果についてもまとまった臨床研究はない.症例.38歳,男性.検診で右肺の異常陰影を指摘され,受診した.右上葉の無気肺があり入院となった.気管支鏡下洗浄液の細胞診で腺癌と診断された.右中葉・下葉には癌性リンパ管症を示唆する陰影に加え,小脳虫部に転移結節があり,全身化学療法を行った.ドセタキセル+シスプラチン,イリノテカン+シスプラチンはいずれも無効で,S-1を次に選択した.S-1開始後,後腹膜の左腸腰筋外側や右副腎の転移結節が一時的ではあるが,著明に縮小した.死後剖検が行われ,印環細胞成分を有する肺原発腺癌であった.結論.胃癌に有効性が確認されているS-1の治療効果を肺原発印環細胞癌で検討する意義がある.
  • 芦沼 宏典, 滝口 裕一, 岩澤 俊一郎, 多田 裕司, 中谷 行雄, 巽 浩一郎
    2010 年 50 巻 3 号 p. 292-296
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.WHO肺胸膜腫瘍分類では大細胞癌の特殊型としてラブドイド形質を伴う肺腫瘍がある.進行が速く予後不良とされており,治療法は確立されていない.症例.39歳男性,左肺上葉,頚部リンパ節,扁桃,副腎,骨に病変を認めた.扁桃より生検を施行,組織学的にラブドイド形質を伴う肺腫瘍と診断した.シスプラチン/イリノテカン,シスプラチン/エトポシドによる化学療法を施行したが効果なく,メスナ/ドキソルビシン/イフォスファミド/ダカルバジンの併用(MAID)療法に変更したところ一時的に病変の縮小,全身状態の改善を認めた.結論.ラブドイド形質を伴った肺腫瘍に対しては,肉腫に準じたMAID療法も選択肢の一つになると思われた.
  • 橋本 博史, 中岸 義典, 小原 聖勇, 大鹿 芳郎
    2010 年 50 巻 3 号 p. 297-302
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.Gefitinibは非小細胞肺癌の10~20%の症例で腫瘍縮小効果を示す.上皮成長因子受容体(epidermal growth factor receptor;EGFR)の遺伝子変異と密接な関係があるが,長期投与後にGefitinibに対する2次耐性が報告され,耐性化後の治療について明確な指針はない.我々はGefitinib長期投与後に耐性となった進行肺腺癌に対してGEM(塩酸ゲムシタビン)+VNR(ビノレルビン)の投与を行い奏効した1例を報告する.症例.症例は61歳女性.肺腺癌に対して導入化学療法を行った後,手術を施行,術中胸膜播種を認めたため試験開胸で終了,胸腔内CDDP(シスプラチン)投与を行い,化学療法を1クール施行,その後2002年10月よりGefitinib投与を開始し,腫瘍の縮小を認めた.投与開始5年半後2008年3月に明らかなPD(progressive disease)となったためGEM+VNRによる外来化学療法を開始,PR(partial response)を得た.結論.Gefitinib長期投与後に耐性化が疑われた進行肺腺癌に対してGEM+VNRの投与を行い奏効した1例を経験した.
  • 白山 敬之, 緒方 嘉隆, 南 誠剛, 岡藤 浩平, 辻本 正彦, 小牟田 清
    2010 年 50 巻 3 号 p. 303-307
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.消化器症状から肺癌の小腸転移が発見されることは極めて稀である.症例.71歳男性が下血を主訴に当院受診.上部・下部消化管内視鏡検査にて異常は認められなかった.胸部CTにて右上肺野に小結節影,腹部CTにて肝内に複数の淡いlow-density area(LDA)を認めた他,小腸の壁肥厚が認められた.FDG-PETの結果,同部位に一致してそれぞれ異常集積が確認された.下血の継続と出血源の精査目的でダブルバルーン小腸内視鏡検査を施行した結果,空腸に潰瘍を伴う腫瘤が多数認められた.小腸腫瘍生検の結果,中ないし低分化度を示す腺癌と診断された.小腸原発腫瘍と肺癌からの転移を鑑別する目的でthyroid transcription factor-1(TTF-1)免疫染色を行った.その結果TTF-1陽性が明らかとなり,肺癌の小腸転移の可能性が示唆された.気管支鏡検査にて右上葉の小結節影に対して生検施行し,肺腺癌(cT1N0M1:stage IV)と確定診断された.結論.消化器症状にて発見され,小腸内視鏡,FDG-PET,TTF-1免疫染色が診断に有用であった肺癌の小腸転移の1症例を経験した.
  • 竹中 賢, 花桐 武志, 平井 文子, 浦本 秀隆, 竹之山 光広, 安元 公正
    2010 年 50 巻 3 号 p. 308-312
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.同時性多発癌の一特殊型である肺衝突癌の2例を経験したので報告する.症例.症例1は,70歳,女性.咳嗽,喀痰を主訴に,近医を受診した.胸部CTにて右肺S8に6.0×3.2 cmの腫瘤を認めた.右肺管状中下葉切除術を施行し,病理診断は小細胞癌と扁平上皮癌の衝突癌であった.術後は,シスプラチン,エトポシドによる術後補助化学療法を5コース施行し,術後3年6ヶ月の時点にて再発を認めていない.症例2は,肺大細胞癌に対して,左舌区区域切除を施行した1年後の胸部X線で右肺結節を認めた.胸部CTにて右肺S3に2.0×1.5 cmのスピクラを伴う結節影を認めた.右肺上葉切除術を施行したところ,腺癌と扁平上皮癌の衝突癌と診断された.術後経過は良好に経過したが,術後6ヶ月後心筋梗塞にて他病死された.結論.肺衝突癌は比較的稀であり,術前診断は困難である.それぞれの生物学的悪性度や病理病期を考慮して術後の治療方針を決定すべきと考える.
  • 石田 博徳, 坂口 浩三, 二反田 博之, 山崎 庸弘, 清水 禎彦, 金子 公一
    2010 年 50 巻 3 号 p. 313-321
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.末梢肺に孤立性に発生した乳頭腫は稀であり,術前診断に難渋する.今回我々はその3切除例を報告する.症例.年齢は74,72,40歳の女性で非喫煙者であった.咳嗽1例,無症状2例で,CT画像ではそれぞれ径2.0,2.2,3.0 cmの比較的境界明瞭な充実性腫瘍であった.全症例で血中SCCの軽度上昇,1症例で血中CEAの軽度上昇を認め,FDG-PETを施行した2例とも異常高値を呈した.肺悪性腫瘍を疑い,肺葉切除を行った.病理では,3腫瘍とも扁平上皮成分と腺上皮成分に被われた線維血管性間質が乳頭状に増殖していたが,細胞異型はなく,最終診断は扁平上皮腺上皮性混合型乳頭腫であった.現在術後の再発はない.本邦における報告例15例を含めて検討した.結論.末梢肺発生の孤立性乳頭腫は,画像所見や生検による肺癌との鑑別は困難だが,腫瘍の完全切除により根治できると思われる.
支部会推薦症例
  • 植松 秀護, 鈴木 隆, 臼田 亮介, 野中 誠, 増永 敦子
    2010 年 50 巻 3 号 p. 322-323
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル オープンアクセス
    化生性胸腺腫(Metaplastic thymoma)は,多角細胞成分と紡錘形細胞成分が混在し,二相性を示す胸腺上皮性腫瘍であり,本邦での報告は少ない.症例は60歳代女性.検診の胸部X線検査にて,胸部異常影を指摘された.胸部CT,MRIで約6×4×3 cmの被包化した縦隔腫瘍を認め,胸腺腫,正岡病期分類I期と診断した.腫瘍随伴症状は認めず,抗Ach-R抗体は正常範囲内であった.また右S9に5 mmの結節病変を認めたことから,胸腔鏡併用による右小開胸下に縦隔腫瘍切除,また右S9部分切除を行った.肺の結節病変は肺内リンパ節であり,縦隔腫瘍は化生性胸腺腫であった.
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