肺癌
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58 巻, 2 号
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報告
  • 佐川 元保, 中山 富雄, 芦澤 和人, 遠藤 千顕, 小林 健, 佐藤 雅美, 澁谷 潔, 祖父江 友孝, 竹中 大祐, 西井 研治, 原 ...
    2018 年 58 巻 2 号 p. 73-76
    発行日: 2018/04/20
    公開日: 2018/05/10
    ジャーナル オープンアクセス

    肺がん検診は1987年に導入されたが,当初,多くの自治体や検診機関は「二重読影や喀痰細胞診の方法がわからない」状況であり,肺がん検診セミナーはそれらの需要に応えるものであった.それから30年以上経過し,「肺がん検診の方法を全国に広める」という本セミナーの当初の役割はほぼ達成され,同形態での実施の必要性は乏しくなった.精度管理の全国的な均てん化は不十分だが,セミナーという形態では改善できない.一方,肺癌診療医の読影技術向上への意識は高いが,学術集会においてそれに資するプログラムは少ない.また,学会員の多くが検診発見肺癌例の診療をしているにもかかわらず実際の検診に携わっていない現実を考えれば,「肺がん検診」の仕組みや現状に関する教育的な講座の必要性は大きい.そこで,2017年で「肺がん検診セミナー」を終了し,学会員対象で学術集会に組み込む以下の①②③と,地域での検診従事者を対象とした④へ移行することにした.①若手~中堅医師に対する「肺がん検診」のシステムや現状などについてのレクチャー.②気軽に参加できる読影セミナー.③必要時に,学術集会長に委員会企画枠を依頼.④検診技術・精度管理に関する地域での検診従事者講習会などの講師に委員を推薦.

総説
原著
  • 浅野 久敏, 尾高 真, 塚本 遥, 柴崎 隆正, 森 彰平, 山下 誠, 森川 利昭
    2018 年 58 巻 2 号 p. 83-87
    発行日: 2018/04/20
    公開日: 2018/05/10
    ジャーナル オープンアクセス

    目的.頭頚部癌の肺転移に対する胸腔鏡手術の治療成績を検討した.方法.2005年から2015年に頭頚部癌肺転移に対し肺切除術を施行した38例を対象とし,治療成績を調べた.結果.頭頚部癌の発生部位は咽頭癌17例,喉頭癌8例,舌癌8例であった.原発病変の病期は28例がstage III以上であった.頭頚部癌治療から2年以内に肺転移を来した症例が26例であった.頭頚部癌治療から肺転移発見までの期間(DFI)中央値は17か月(範囲:1~61か月)であった.全症例に対して胸腔鏡手術を行った.肺転移に対する肺切除術後の生存期間中央値は43か月(範囲:1~119か月),5年全生存率49.1%であった.DFI 17か月未満(p=0.0409),不完全切除(p<0.0003)症例で有意に予後不良であった.結論.頭頚部癌肺転移に対して完全切除が可能であれば,肺転移切除が予後を改善する可能性が示唆された.

  • 市川 紘将, 渡部 聡, 近藤 利恵, 庄子 聡, 青木 信将, 大嶋 康義, 坂上 拓郎, 茂呂 寛, 小屋 俊之, 菊地 利明
    2018 年 58 巻 2 号 p. 88-92
    発行日: 2018/04/20
    公開日: 2018/05/10
    ジャーナル オープンアクセス

    目的.サルコイドーシスやサルコイド反応は肺門・縦隔リンパ節腫大を呈し,これらを合併した肺癌症例には,リンパ節病変の評価が治療方針決定上で問題となる.本研究では,これらサルコイド反応合併肺癌症例の病期診断におけるEBUS-TBNAの有用性を検討した.対象と方法.2009年1月から2016年12月に気管支鏡検査を実施され,サルコイドーシス/サルコイド反応と肺癌の合併と診断された症例におけるEBUS-TBNAの有効性について検討した.結果.EBUS-TBNAにより,サルコイドーシス/サルコイド反応と肺癌との合併と診断された症例は4例であった.造影CT,FDG-PET/CTでは癌のリンパ節転移とサルコイドーシス/サルコイド反応の鑑別は困難であった.4例中3例はI期の非小細胞肺癌と診断され,2例は手術が施行された.術後検体でも転移はなく,granulomaが認められたことから,サルコイド反応と診断された.4例中1例は全身性サルコイドーシスに合併したIII期の肺癌症例であった.結論.サルコイドーシス/サルコイド反応合併肺癌症例におけるN因子の評価に,EBUS-TBNAは有用であると考えられる.

症例
  • 伊藤 温志, 高尾 仁二, 島本 亮, 新保 秀人, 内田 克典
    2018 年 58 巻 2 号 p. 93-98
    発行日: 2018/04/20
    公開日: 2018/05/10
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.小細胞肺癌の長期生存例における肺結節の出現は,肺転移の他に第二癌も鑑別となり,その診断は治療方針の決定に重要である.症例.67歳女性.縦隔リンパ節生検で小細胞肺癌(cTxN2M0)と診断され,化学放射線療法(CBDCA+VP-16計6コース,54 Gy/30 fr)と予防的全脳照射を施行.画像上完全寛解であったが,4年目のCTで右上葉に3個の結節(S1a:11 mm,S1b:5 mm,S2b:6 mm)が出現.CTガイド下針生検でS1a病変は肺腺癌と診断され,胸腔鏡下右肺上葉切除術+リンパ節郭清(ND1b)を施行.病理検査では組織亜型は異なるものの,いずれも腺癌であった.遺伝子変異解析では全てEGFR wild typeであったが,K-rasでS1aとS2bの腫瘍にコドン12に同一変異を認めた.以上より,肺内転移を伴う同一肺葉内多発肺腺癌(pT3N0M0,pStage IIB)と診断した.術後20ヶ月現在,無再発生存中である.結論.小細胞肺癌化学放射線療法後4年目に発症した同一肺葉内多発肺腺癌の症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

  • 磯野 泰輔, 湯浅 瑞希, 谷 まゆ子, 黒川 浩司, 西辻 雅, 西 耕一
    2018 年 58 巻 2 号 p. 99-104
    発行日: 2018/04/20
    公開日: 2018/05/10
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.非小細胞肺癌術後5年目までに再発を認めない例は予後が良好とされているが,anaplastic lymphoma kinase(ALK)融合遺伝子陽性肺癌では遠隔期の再発例が散見される.症例.56歳男性.45歳の時に右上葉切除術を施行され肺腺癌(pT1N0M0 Stage IA)と診断された.その後は再発なく経過していたが,術後11年目に血痰を自覚して受診し,胸部CTで切除断端の軟部影と右胸水を指摘された.気管支鏡による生検で腺癌が検出され,免疫染色ではALK陽性であり,初回手術の標本でもALK融合遺伝子を検出したことから肺癌術後再発と診断された.Alectinibを開始したところ腫瘍は縮小し,現在も治療継続中である.結語.ALK融合遺伝子陽性肺癌では術後の遠隔期再発に留意した経過観察が必要と考えられる.

  • 鈴木 克幸, 塩野 知志, 早坂 一希, 鑓水 佳, 遠藤 誠, 柳川 直樹
    2018 年 58 巻 2 号 p. 105-110
    発行日: 2018/04/20
    公開日: 2018/05/10
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.Remitting seronegative symmetrical synovitis with pitting edema(RS3PE)症候群は腫瘍随伴症候群の1つで,左右対称性で四肢末梢の圧痕浮腫を伴う滑膜炎をきたす.RS3PE症候群の10~40%に悪性腫瘍を合併するとの報告があるが,肺癌との合併は稀である.症例.67歳男性,検診を契機に右肺S2に0.9 cm(浸潤径0.3 cm)の結節をCTで指摘された.1年後のCTで同結節は1.1 cm(浸潤径0.7 cm)と増大し手術の方針にした.また手術の2カ月前より両側足背の著明な浮腫があり,精査を行うも原因は不明であった.手術は右S2区域切除術を施行,病理診断は微小浸潤性肺腺癌,pT1miN0M0 stage IA1であった.術翌日より浮腫の改善を認め,術後1カ月では完全に消失した.現在術後1年,肺癌及び浮腫の再発なく経過しており,後方視的ではあるがRS3PE症候群の合併が考えられた.結論.RS3PE症候群をきたした肺腺癌に対して切除術を施行し,症状軽快を認めた1例を経験した.肺癌に合併した急速に進行する浮腫を伴う関節炎を認めた場合には,RS3PE症候群を鑑別に挙げる必要がある.

  • 鳳山 絢乃, 菅 理晴, 康 あんよん, 中村 保清, 渡邉 千尋, 北 英夫
    2018 年 58 巻 2 号 p. 111-115
    発行日: 2018/04/20
    公開日: 2018/05/10
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.肺腺様嚢胞癌の有効な化学療法は確立されておらず,ペメトレキセドが長期間有効であった治療報告は現在まで認められていない.症例.症例は70歳女性.半年以上持続する咳嗽を主訴に当院を紹介受診,右肺全摘術を行い,肺腺様嚢胞癌と診断した.術後22カ月で再発し,シスプラチンとペメトレキセド併用化学療法を4コース行った後,ペメトレキセド単剤維持療法を3コース投与した.再発病変は著明に縮小し,本人の希望で休薬し経過をみていたが,休薬後18カ月で再発を認め,シスプラチンとペメトレキセド併用療法を再開した.1コース目で食思不振を認め,2コース目からはカルボプラチンとペメトレキセド併用化学療法に変更し3コース投与した.その後ペメトレキセド単剤維持療法を継続し,36カ月経過した現在も増悪を認めずに治療を継続している.結論.肺腺様嚢胞癌において,ペメトレキセドとプラチナ併用化学療法後のペメトレキセド維持療法が治療の選択肢の1つとなる可能性が示唆された.

  • 西岡 直哉, 金子 美子, 張田 幸, 中野 貴之, 千原 佑介, 髙山 浩一
    2018 年 58 巻 2 号 p. 116-121
    発行日: 2018/04/20
    公開日: 2018/05/10
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.原発性肺癌の臨床病期診断は主に全身の画像評価で行うが,転移病変の診断には苦慮することも多い.症例.54歳男性.健康診断の腹部超音波検査で肝結節を指摘され,胸腹部CTとPET-CTにおいて左肺病変と肝左葉結節を認め,進行期原発性肺癌症例として当院に紹介された.気管支鏡下肺生検で肺腺癌と診断されたが,PET-CT所見では,肝結節と原発巣ではFDG集積の程度が異なり,同一組織成分ではない可能性が示唆された.肝病変の診断目的に肝生検を施行し,病理組織ではリンパ球の集簇を認め,悪性所見は認めなかった.再検した腹部CTで肝病変の自然縮小を認め,総合的に肝炎症性偽腫瘍と診断した.肝転移が否定されたことから,治療方針を全身化学療法より化学放射線併用療法に変更した.結論.画像検査で肝炎症性偽腫瘍と転移病変との鑑別が困難な場合は,正確な病期診断のため,積極的な組織生検が望まれる.

  • 大橋 佳奈, 山本 美暁, 北園 美弥子, 和田 曉彦, 高森 幹雄
    2018 年 58 巻 2 号 p. 122-126
    発行日: 2018/04/20
    公開日: 2018/05/10
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.肺癌における皮膚転移発見後の生存期間は3~6ヶ月と予後不良であり,皮膚へは血流が少ないために,皮膚転移に対しては化学療法が効きづらいとされている.ニボルマブは免疫チェックポイント阻害薬である抗PD-1抗体であり,進行非小細胞肺癌の2次治療以降で行うよう勧められているが,EGFR遺伝子変異陽性の場合に効果が乏しいことが示唆されている.症例.57歳,非喫煙女性.EGFR遺伝子変異陽性の肺腺癌術後再発に対して化学療法や放射線療法を施行したが,経過中に前胸部に皮膚転移が出現し,徐々に増大した.5次治療としてニボルマブによる治療を開始したところ,前胸部の巨大な皮膚転移は著明に縮小した.結論.ニボルマブ投与により巨大転移性皮膚腫瘍の縮小を認めた,EGFR遺伝子変異陽性肺腺癌の1例を経験した.ニボルマブは皮膚転移に対して効果的な可能性があると考えられる.

  • 平生 敦子, 須﨑 規之, 永田 拓也, 丸川 將臣
    2018 年 58 巻 2 号 p. 127-131
    発行日: 2018/04/20
    公開日: 2018/05/10
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.2つの病変に分子標的薬が全く異なった効果を示した場合,腫瘍のheterogeneityによる転移巣か,あるいは多発肺癌か,その診断と治療に苦慮する.症例.63歳女性.健康診断で右肺野腫瘤影を指摘され当院を受診した.上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異陽性肺腺癌IV期と診断した.ゲフィチニブを開始し奏効した.一方,炎症後変化と考えていた左肺下葉の結節影が増大し,EGFR遺伝子変異陰性肺腺癌と診断された.ゲフィチニブを中止し,カルボプラチン+パクリタキセル併用化学療法を開始した.左肺病変は縮小したが右肺病変が増大した.そのため化学療法を継続したままゲフィチニブを再開した.右肺病変は再度縮小した.6コースのカルボプラチン+パクリタキセル併用療法後,左肺病変のみが再増大したため,ペメトレキセド単剤療法に変更し,一時的に効果を認めた.ゲフィチニブ併用投与による有害事象の増強は認めなかった.結論.腫瘍のheterogeneityによる転移巣か多発肺癌かは確定できなかったが,EGFRチロシンキナーゼ阻害剤と細胞障害性抗癌剤を併用投与し,有害事象の増強なく両腫瘍に縮小効果が認められた.

  • 小林 英里佳, 中西 雄, 堀益 靖, 岩本 博志, 藤高 一慶, 服部 登
    2018 年 58 巻 2 号 p. 132-137
    発行日: 2018/04/20
    公開日: 2018/05/10
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)は,ADHの不適切な分泌や腎集合管でのADH感受性の亢進による希釈性低Na血症に起因する症候群で,肺小細胞癌の合併症としてもしばしば経験される.今回,肺小細胞癌に対する化学療法とSIADHに対するモザバプタン内服が一時的に奏効したにも関わらず低Na血症が遷延し,塩分負荷やループ利尿薬も効果不十分な難治性SIADHに対し,トルバプタンが奏効した1例を経験した.症例.73歳男性.201X年5月に進展型肺小細胞癌(cT4N2M1b,Stage IV)とSIADHの合併と診断された.化学療法の抗腫瘍効果は部分奏効で,飲水制限,経口Na補充,フロセミド内服に加えモザバプタン内服で一時的に血清Na値は上昇したが,再度120 mEq/l台に低下した.化学療法5コース目に嘔気を訴え,血清Na 113 mEq/lと低下していたため入院した.入院後にトルバプタン内服を開始し,漸増しつつ7ヶ月にわたり内服を継続したが,明らかな有害事象なく血清Na 130 mEq/l台で安定した.結論.肺小細胞癌に伴う難治性SIADHに対し,トルバプタンは有効かつ安全な治療法となりうる.

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