肺癌
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47 巻, 2 号
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原著
  • 杉野 圭史, 本間 栄, 宮本 篤, 高谷 久史, 坂本 晋, 川畑 雅照, 岸 一馬, 坪井 永保, 吉村 邦彦
    2007 年 47 巻 2 号 p. 97-103
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/21
    ジャーナル オープンアクセス
    目的.肺結核と原発性肺癌の合併症例の臨床的特徴ならびに問題点を分析し,今後の対策について検討した.対象および方法.1985年から2005年までの21年間に当院に入院した活動性肺結核患者788例および肺結核治療後の患者240例の中で,原発性肺癌を合併した17例を対象とし,患者背景,画像所見,予後をretrospectiveに検討した.結果.17例の内訳は男性15例,女性2例,平均年齢は73.4歳であった.肺癌の組織型では,腺癌が10例と最も多く,病期では,同時型(活動性肺結核が肺癌と同時期に発症・発見されている症例)が5例で全例III期,IV期の進行例であったのに対し,異時型(肺結核後遺症あるいは,すでに化学療法が終了し排菌のない症例)12例では,4例(33%)においてI期の早期肺癌が発見された.両疾患の病巣が同側肺あるいは同一葉内に存在する割合は,同時型でそれぞれ4例(80%),3例(60%)で,異時型ではそれぞれ8例(67%),1例(8%)で,同時型の方が同一葉内に存在する傾向が高かった.考察.肺結核と肺癌が合併した症例のうち,とくに同時型では,進行肺癌で診断されることが多く,予後が不良である.注意深い観察と積極的な診断および治療へのアプローチが必要である.
症例
  • 津村 眞, 木村 圭吾, 武田 洋正, 永田 拓也, 荒木 雅史, 溝渕 光一
    2007 年 47 巻 2 号 p. 105-111
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/21
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.胸腺肉腫様癌は極めて稀な悪性腫瘍であり,未だ治療方法も確立されておらず,予後不良な疾患である.集学的治療を行った胸腺肉腫様癌の1例を経験したので報告する.症例.54歳男性.2002年10月胸部X線検査にて左胸部巨大腫瘤影を発見され入院となる.超音波下経皮針生検にて悪性奇形腫が疑われた.腫瘍が巨大なため,まず,化学療法を施行し,奏効度はpartial response(縮小率61%)であった.2003年2月肺・心膜部分切除を合併した腫瘍摘出術を施行し,完全に摘出し得た.組織学検査にて胸腺肉腫様癌と診断された.術後縦隔に放射線療法(60 Gy)を追加したが,2003年9月胸腔内播種性再発を認めたため,胸腔鏡下摘出術を行った.その後,後頭部(髄膜)に転移が出現したため,全脳照射(40 Gy)を施行した.続いて,再度左胸腔内再発が出現したため,化学療法を施行したが,効果なく,2004年12月(術後22カ月)永眠した.結論.胸腺肉腫様癌は極めて予後不良で稀な腫瘍である.全身検索と腫瘍生検による確定診断を行った後,放射線化学療法を第一選択とし,引き続き手術療法を付加すべきである.今後,有効な化学療法の確立が望まれる.
  • 蜂須賀 康己, 魚本 昌志
    2007 年 47 巻 2 号 p. 113-118
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/21
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.非乾酪性の類上皮細胞肉芽腫が,サルコイドーシスを合併しない悪性腫瘍の患者に認められる場合がまれに存在し,サルコイド様反応と呼称される.症例.症例は82歳の女性.拡張型心筋症にて当院循環器内科で経過観察中,2006年5月の胸部CTにて,右肺S4に径1.5 cmの腫瘤を指摘された.気管支鏡下に擦過細胞診を施行したが,確定診断はえられなかった.胸腔鏡下に腫瘤の切除生検を行い,術中病理診断にて肺腺癌との診断をえて,中葉切除とリンパ節郭清を施行した.切除肺の病理組織像において,癌病巣内に多数の小肉芽腫形成を認めた.この肉芽腫は肺癌に伴うサルコイド様反応と診断した.郭清したリンパ節には転移およびサルコイド様反応は認めなかった.結論.画像上悪性所見を呈する肺腫瘤に対し,気管支鏡下生検などで類上皮細胞肉芽腫のみが認められたとしても,本病態を念頭におき,さらなる経過観察または切除生検を行うべきである.
  • 中川 誠, 大崎 敏弘, 出水 みいる, 南 貴博, 末次 彩子
    2007 年 47 巻 2 号 p. 119-123
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/21
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.中枢気道と肺に多発するMALT(mucosa-associated lymphoid tissue)リンパ腫は稀である.症例.48歳女性.3ヶ月前より乾性咳嗽が出現,胸部異常陰影を指摘され来院した.胸部CTでは両肺野に大小多数のair bronchogramを伴う不整形結節を認めた.気管支鏡検査で,右中葉支入口部および左舌区支入口部が浮腫状に肥厚し狭窄しているのを認め,同部位の生検にてリンパ組織増殖性疾患が疑われた.確定診断のため胸腔鏡下に右上葉・中葉部分切除を行い,組織学的にMALTリンパ腫と診断された.現在,術後化学療法は行わず外来で経過観察中である.結論.両側の中枢気道と末梢肺に多中心性に発生したMALTリンパ腫の1例を報告した.
  • 石黒 卓, 笠原 寿郎, 木村 英晴, 安井 正英, 藤村 政樹
    2007 年 47 巻 2 号 p. 125-130
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/21
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.肺癌の脳転移は高い頻度で認められるが,下垂体に転移することはまれである.今回われわれは下垂体転移により中枢性尿崩症を呈した症例を経験したので報告する.症例.症例は78歳女性.1998年より糖尿病の加療のために近医へ通院していた.2006年2月,胸部X線写真で左上肺野に腫瘤影を指摘され,当科に紹介となった.3月に気管支鏡検査を施行し,経気管支鏡的生検によって肺腺癌と診断した.全身精査の結果,多発肺内転移,骨転移,および頭部MRI検査にて右後頭葉への転移を認め,病期はT4N3M1(IV期)であった.入院1週間前から食欲不振が強くなったため,4月に精査加療目的で入院した.患者は多尿,口渇,多飲を認め,血液検査や高張食塩水負荷試験,酢酸デスモプレシン投与後の反応および頭部MRI所見により,転移性の下垂体腫瘍および中枢性尿崩症と診断した.化学療法は尿崩症症状に対して改善を示さなかったが,酢酸デスモプレシン投与によって食欲不振および患者のQOLは著明に改善した.結論.尿崩症患者をみた場合には,転移性下垂体腫瘍を鑑別にあげることが重要で,これに対する適切な治療により進行癌患者のQOLを改善できることが示唆された.
  • 棚橋 雅幸, 山田 健, 森山 悟, 鈴木 恵理子, 丹羽 宏
    2007 年 47 巻 2 号 p. 131-136
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/21
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.局所進行肺癌に対する外科治療の成績は決して良好ではないため,種々の集学的治療による予後向上の試みがなされている.III期進行肺癌に対しcarboplatin(CBDCA)とpaclitaxel(PTX)を用いた術前化学療法を施行し,完全切除が可能となりEf3が得られた3例を経験したので報告する.症例1.65歳男性.右肺腺癌,cT4N0M0.化学放射線治療にてPRが得られ,右肺上葉切除,上大静脈腕頭動脈合併切除再建術にて完全切除し得た.症例2.72歳男性.右肺扁平上皮癌,cT4(PM1)N2M0.化学療法にてPRが得られ,右肺下葉切除術を施行した.症例3.57歳男性.縦隔腫瘍を指摘され摘出術を施行し腺癌の縦隔リンパ節転移と診断した.FDG-PETにて右肺尖部に異常集積のある小結節を認め,右肺腺癌,cT1N2M0と診断.化学療法にてCRが得られ右肺上葉切除術を行った.3例とも組織学的に癌細胞を認めずEf3が得られた.全例術後2年以上が経過したが無再発生存中である.結論.CBDCAとPTXによる化学療法が局所進行肺癌の術前治療として非常に有用であった.
  • 小澤 雄一, 須田 隆文, 長谷川 浩嗣, 野木村 宏, 永山 雅晴, 千田 金吾
    2007 年 47 巻 2 号 p. 137-142
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/21
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.心膜原発悪性中皮腫は全悪性中皮腫の0.7~2.0%と稀だが極めて予後不良の疾患とされる.今回,局所温熱化学療法及び全身化学療法を行い,2年以上無症状で生存した症例を経験したので報告する.症例.72歳女性.夜間就寝時の呼吸困難を主訴に来院した.胸部造影CTにて心基部に約10 cmの腫瘤が多量の心嚢液及び両側胸水とともに認められた.縦隔鏡による傍大動脈部リンパ節生検にて二相型悪性中皮腫と診断され,胸膜病変を認めないことより心膜原発と考えられた.心嚢液に対してはマイトマイシンによる心膜癒着術を行い,胸水に対してはシスプラチン(CDDP)を用いた温熱化学療法及びタルクによる胸膜癒着術を行った.また,その後ビノレルビン(VNR)の単剤投与(20 mg/m2,3週ごと)を行い,初診から約26ヶ月間無症状にて経過している.結論.心膜原発悪性中皮腫においても積極的に局所療法及び全身化学療法を行うことで2年以上の長期間生存する症例がある.今後その適応や手段について一層の検討が必要であり,症例の集積が望まれる.
  • 澤住 知枝, 相坂 治彦, 北田 順也, 高橋 弘毅, 阿部 庄作
    2007 年 47 巻 2 号 p. 143-147
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/21
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.ameloblastoma(エナメル上皮腫)は歯原性腫瘍の1つに分類され,良性腫瘍が大部分であり,悪性腫瘍や他臓器への遠隔転移は非常に稀であると言われている.多発性肺転移を伴う下顎骨ameloblastomaの1例を報告する.症例.65歳女性,既往歴として1965年8月,下顎骨ameloblastomaにて腫瘍摘出術施行された.1987年12月,胸部異常影にて当院受診し,胸部X線写真上両側全肺野に多発性結節影が認められた.精査されるも確定診断に至らず,その後著変なく経過していたが,2002年9月下旬より喀血出現したため10月上旬当院受診,入院となった.胸部画像所見上多発性結節影の増大が認められたため,診断確定目的に同年11月上旬胸腔鏡下右肺下葉S9部分切除施行された.術後病理組織診にてmetastatic ameloblastomaと診断され,既往にあった下顎骨ameloblastomaの肺転移によるものと考えられた.結論.ameloblastomaの肺転移は,原発巣摘出後10年以上の経過を経て発症することが多く,本症例は発症後,さらに15年以上の経過を観察できた大変貴重な症例と考えられる.
第32回画像診断セミナー
  • 大松 広伸
    2007 年 47 巻 2 号 p. 149-154
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/21
    ジャーナル オープンアクセス
    「東京から肺がんをなくす会」では,1993年に世界で初めて肺癌CT検診を開始して以来,現在も検診を継続している.CT導入前の18年間の発見肺癌症例数は43人(対10万人比163), CT導入後の11年間の発見肺癌症例数は76人(対10万人比436)であった.CT導入後の発見肺癌IA期の割合は74%,平均腫瘍径は17.3 mmであり,CT導入前の42%,30.4 mmと比較し,有意にIA期が多く,原発巣は小型であった.CT導入前に発見された肺癌43例中38例(88%)は,胸部X線にて指摘されているが,CT導入後に発見された肺癌76例中胸部X線で指摘されたのは19例(25%)であり,代わりにCTにて70例(92%)が指摘されている.CT導入後に胸部X線のみにて発見された肺癌症例は,現時点で皆無である.CT導入後複数回受診発見肺野型肺癌症例は52例あり,retrospectiveに過去のCT画像を見直した結果,prospectiveな検診の読影で指摘可能かどうかは別として,過去検診CT画像内に当該病巣を認めるものが41例(79%)あった.この画像診断セミナーでは,CT検診を複数回受診して発見された肺癌症例の過去画像を振り返り,どのような所見があったかを供覧し,より早期に肺癌を発見するための留意点などについて考察したい.
  • 栗山 啓子
    2007 年 47 巻 2 号 p. 155-159
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/21
    ジャーナル オープンアクセス
    CT検査で結節性病変を診断する機会は年々増加している.鑑別診断に際して,悪性である原発性肺癌や転移性肺腫瘍を正確に診断することが重要である.しかしながら,非常に多くの病変が結節や腫瘤影を呈し,鑑別診断が多岐にわたるためにHRCTで詳細な形態診断を行う必要がある.結節性病変のなかで動静脈瘻や粘液栓などの病変は特徴的な形態を呈するために,HRCTで診断が可能である.鑑別診断を絞り込むためにもHRCTによる形態診断は有用であり,結節の辺縁の性状,内部構造および周囲既存構造との関係で解析すると病変を絞り込むことができる.経過観察による腫瘍径や容積の変化もCTにより正確に行うことができる.
  • 大野 良治, 神山 久信, 野上 宗伸, 松本 純明, 竹中 大祐, 小谷 義一, 真庭 謙昌, 西村 善博, 大林 千穂, 吉村 雅裕, ...
    2007 年 47 巻 2 号 p. 161-167
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/21
    ジャーナル オープンアクセス
    近年のCTの技術進歩は急速であり,マルチスライスCTの臨床応用によりTNM診断における様々な情報を種々の再構成画像を駆使して供給することが可能になっている.しかし,それらを用いた場合に,従来のCT診断を中心とした形態診断に対してどのような有用性があるのか,或いは正診率の向上がみられるのかということに関しての知見はあまり得られていない.本稿においては近年の肺癌病期診断におけるマルチスライスCT診断における最新の知見とその限界に関しても述べたい.
  • 原 眞咲, 櫻井 圭太, 中川 基生, 小澤 良之, 芝本 雄太, 玉木 恒男, 西尾 正美
    2007 年 47 巻 2 号 p. 169-180
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/21
    ジャーナル オープンアクセス
    PET装置の導入がピークを迎え,2-[fluorine-18]fluoro-2-deoxy-D-glucose(FDG)を用いたpositron emission tomography(PET)に触れる機会が急速に増加している.PETとCTとを融合させたPET/CT装置が最近では主流となっており,読影法もこれまでの核医学的手法から,CTによる地図情報を加味したより正確な評価が可能となっている.一方,読影医には,CT,PET双方の読影能力が要求されることとなり,PET読影医を養成する教育環境を整備することが急務となっている.欧米に比べて,本邦では,放射線科内での核医学部門と画像診断部門の垣根は比較的低いが,それでも専門医レベルでは,両者に通じている画像診断医は少なく,CTからPET,PETからCT各々のアプローチを容易とする教育プロセスを構築する必要がある.CT撮影装置の改良に伴って,現在では16列型まで可能である.近い将来64列型多列CTが搭載され,心電同期,呼吸同期に対応した撮影が可能となり,より精密な形態機能融合情報を得られるようになる.FDG-PETの肺癌に対する診断能力は,導入当初非常に高く評価されていたが,報告が進むにつれて,有用性と問題点が明らかになってきた.本稿では,様々な場面におけるFDG-PETのピットフォールに付き症例を呈示しつつ概説する.
  • 富山 憲幸
    2007 年 47 巻 2 号 p. 181-185
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/21
    ジャーナル オープンアクセス
    1999年にWorld Health Organization(WHO)が胸腺上皮性腫瘍の病理組織分類(WHO分類)を発表した.このWHO分類が臨床病期分類である正岡分類とともに独立した有意の予後因子であることが報告され,注目されている.現在,多くの病院でこの病理組織分類が用いられている.胸腺上皮性腫瘍のWHO分類とCT画像との関連では,1)Type A腫瘍は円形で辺縁平滑なものが多く,均一に造影されることが多い,2)Type ABからB1,B2,B3腫瘍となるにしたがって腫瘍が扁平で辺縁が不整になり,石灰化が高頻度となる傾向がある,などが報告されている.術前に病変の悪性度をある程度推測できることから,治療方針を決定する際に,これらの画像の特徴を知っておくことが重要である.
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