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森田 克哉, 林 義信, 清水 淳三, 村上 眞也, 荒能 義彦, 徳楽 正人, 渡辺 洋宇
1994 年 34 巻 4 号 p.
453-459
発行日: 1994/08/20
公開日: 2011/08/10
ジャーナル
フリー
本研究では肺癌新鮮切除標本65例から計273個のサンプルを採取し, PCNAと核DNA量とを同時二重染色を施しフローサイトメーターを用いて定量的解析を行った. これにより今まで困難であったPCNA標識率の客観的評価を可能にし, さらにDNA heterogeneityを示す細胞集団のPCNA標識率も別個に検討可能となった. 核DNA量の評価では, 一症例から測定サンプル数が少ないほどDNA diploidと判定される割合が多かった. PCNA標識率は扁平上皮癌で腫瘍辺縁部で有意に高く, 腺癌では一定した値を示さなかった. 各DIごとのPCNA標識率の測定の結果, 同じDNA ploidy patternを呈していてもPCNA標識率が異なることが明らかとなった. PCNA標識率と核DNA量をフローサイトメーターで同時定量的解析することにより, その生物学的悪1生度の指標としての意義がより明らかになるものと思われた.
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山岡 憲夫, 内山 貴堯, 岡 忠之, 谷口 英樹, 村岡 昌司, 佐野 功, 辻 浩一
1994 年 34 巻 4 号 p.
461-468
発行日: 1994/08/20
公開日: 2011/08/10
ジャーナル
フリー
銀染色を用いて小型肺腺癌切除21例のargyrophilic nucleolar organizer regions (AgNORs, 核小体形成部位) を計測し悪性度との関連を検討した. 21例の平均AgNORs数は5.60個で, リンパ球の1.06個, 気管支上皮細胞の2.70個に比べ有意に多かった (p<0.01). 肺腺癌のAgNORs数と核DNA量は正の相関を認め, DNA aneuploid例はDNAdiploid例に比べ有意にAgNORs数が多かった (P<0.01). 進行例にAgNORs数が多い傾向があり, 再発の有無では再発9例のAgNORs数は6.54±2.00個, 非再発12例は4.91±1.06と再発例のAgNORs数は有意に多く, I期例でもAgNORs数が多い例に再発がみられた. 予後はAgNORs数が5個以上と多い例が5個未満と少ない症例に比べ有意に予後不良であった.
以上より, 核内のAgNORs数は小型肺腺癌の予後や悪性度を評価するうえで新しい有用な指標になりうると思われた.
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川村 光夫, 高橋 保博, 小林 新, 佐藤 幸美
1994 年 34 巻 4 号 p.
469-476
発行日: 1994/08/20
公開日: 2011/08/10
ジャーナル
フリー
1992年12月より1993年12月まで, 確定診断のつかなかった肺末梢腫瘤影を有する17例の患者に胸腔鏡下楔状切除, 迅速組織診を施行した. 17例の性別は, 男9, 女8で, 年齢は34-76歳 (平均56歳) であった. 最終病理診断は, 肺癌7 (腺癌4, 扁平上皮癌2, 小細胞癌1), 肺結核7, 肺化膿症1, 器質化肺炎1, 転移性肺癌 (腎細胞癌) 1であった. 肺癌7例のうち4例は開胸し, 定型的肺葉切除, 縦隔リンパ節郭清を追加したが, 3例はCOPDなどの合併症により部分切除のまま終了した. 肺結核と診断された例には抗結核剤の投与を追加した. 手技上の問題として自動縫合器のトラブルや切離断端からの出血の例を認めた. 胸腔鏡下懊状切除の適応は, 従来の開胸生検の適応としていたものと基本的に同じであるが, 創痛が軽く回復も速やかであることから, 開胸生検にとって代る診断手技と思われる.
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北見 明彦
1994 年 34 巻 4 号 p.
477-482
発行日: 1994/08/20
公開日: 2011/08/10
ジャーナル
フリー
胸腺腫の上皮細胞に起きていると思われる腫瘍性変化を評価する目的で, 癌抑制遺伝子産物p53に対する抗体を用いて免疫組織学的検討を行った. さらにp53の発現と細胞増殖能との関連を検するために, proliferating cellnuclear antigen (PCNA) に対する抗体を用いた免疫組織化学的検討もあわせて行った. 胸腺腫症例のホルマリン固定標本のp53免疫染色結果は, 正岡の分類でI期の11例, II期の3例, III期の6例は全例陰性であったが, IVa期は4例中2例, IVb期の2例中に1例が陽性であった. また肺転移巣は2例中2例, 胸腔内播種巣は3例中2例がp53陽性であった. 新鮮凍結標本ではI期の3例は全例p53陰性であったが, III期の2例, IVa期の2例, IVb期の1例, 肺転移巣の1例, 胸腔内播種巣の2例は陽性であった. 一方PCNA免疫染色では, 胸腺腫のほとんど全ての上皮細胞およびリンパ球の一部に陽性細胞を認め, 陽性細胞数と胸腺腫の臨床病期とのあいだに相関を認めることができなかった. これらの結果から, 胸腺腫におけるp53の発現は, 腫瘍の悪性度を反映するマーカーとなりうることが示唆された.
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赤荻 栄一, 三井 清文, 鬼塚 正孝, 石川 成美, 吉田 進, 稲垣 雅春, 間瀬 憲多朗, 山本 達生, 稲毛 芳永, 小形 岳三郎
1994 年 34 巻 4 号 p.
483-488
発行日: 1994/08/20
公開日: 2011/08/10
ジャーナル
フリー
原発巣と同側の肺内に転移を持つ肺癌切除67例の術後成績をみて, 同側肺内転移を遠隔転移ではなく腫瘍の局所進展と考えるAmerican Joint Committee on Cancer (AJCC) 新分類の妥当性を検討した. 原発巣と同一肺葉内に留まる肺内転移を持つ41例の術後中間生存期間は25.8カ月で, 他肺葉に及ぶ肺内転移を持つ例に比べて有意に良好であった. 同一肺葉内転移例につき, 肺内転移を除いた病期別にみると, I期11例では42.9カ月と他に比べて有意に良好で, IV期5例では9.6カ月と最も不良であった. AJCC新分類による中間生存期間は, I期とII期を合わせた4例が48.3カ月, IIIA期 21例28.3カ月, IIIB期34例22.2カ月, IV期8例11.1カ月であり, リンパ節転移がないかあっても肺門までに留まる例が最も予後良好で, 肺内転移以外に明らかな遠隔転移を持つIV期例は最も予後不良であった. これは, AJCC新分類が, より臨床に即した有用な分類であることを示すものと思われる.
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斉藤 吉弘, 早川 和重, 見供 修, 中山 優子, 片野 進, 古田 雅也, 三橋 紀夫, 新部 英男
1994 年 34 巻 4 号 p.
489-495
発行日: 1994/08/20
公開日: 2011/08/10
ジャーナル
フリー
非小細胞肺癌に対する術後照射の価値について検討した. 対象は, 治癒切除ができなかったために, 術後の放射線療法が施行された38症例である. 検討項目は, 局所制御率, 長期生存率を主体とした. 術後病期別症例は, I期3例, II期6例, III期29例で, 組織型別では, 類表皮癌24例, 腺癌11例, 大細胞癌3例であった. 手術根治度別では, 相対的非治癒切除 (相非) 15例, 絶対的非治癒切除 (絶非) 19例, 試験開胸4例であった. 放射線治療は, 腫瘍残存部位に60Gy以上照射することを目標とし, 化学療法は原則として併用していない. 全体の5年累積生存率は44%で, 手術病期別では, II期44%, III期39%, 手術根治度別には, 相非, 絶非でそれぞれ48%, 43%であった. 5年生存例は8例で, 類表皮癌と腺癌がそれぞれ4例ずつであった. 照射野内再発は2例に認められたにすぎず, 特記すべき放射線障害は認められなかった. 以上のことから, 非小細胞肺癌の術後照射は, 局所制御率ならびに長期生存率の向上に寄与することが示唆された.
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内田 和彦, 今田 肇, 山下 茂, 寺嶋 廣美, 欅田 尚樹, 中田 肇
1994 年 34 巻 4 号 p.
497-502
発行日: 1994/08/20
公開日: 2011/08/10
ジャーナル
フリー
根治的放射線療法を施行した80歳以上の超高齢者非小細胞肺癌患者10例の治療成績について検討した. 1年生存率は70.0%, 中間生存期間は19.6ヵ月と比較的良好であった. 治療成績に影響を与える重要な因子としては病期とPSがあり, 特にPSの良好な症例では長期生存も見られた. また肺癌による咳漱, 血痰, 胸痛等の呼吸器症状は, 放射線療法により明らかな改善が認められた. 副作用として3例に放射線肺炎を認め, うち1例はAdult respiratory distress syndrome (ARDS) を発症し死亡した. 超高齢者の肺癌においては, 手術適応と同様に, 放射線治療の適応についても十分な配慮が必要と考えられた.
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石倉 久嗣, 吉澤 潔, 森田 純二, 三浦 一真, 環 正文, 増田 栄太郎
1994 年 34 巻 4 号 p.
503-508
発行日: 1994/08/20
公開日: 2011/08/10
ジャーナル
フリー
胸腔鏡下手術は, Video-Assisted Thoracic Surgery (VATS) として, 最近急速に普及しつつある. 適応疾患は, 自然気胸や嚢胞性疾患, 肺腫瘍, 胸膜及び胸壁病変, 縦隔病変など, 広範囲にわたっている. しかし, 個々の症例の適応決定には慎重であらねばならない.そこで我々は, 当科において, 最近10年間に行った呼吸器外科手術症例を検討し, 現在であればVATSが可能であったと考えられる症例が, どの程度存在したかについて考察を行った. その結果, 画像診断上, VATSの適応症例は, 開胸肺生検例の73%に存在し, VATSのみでその目的を完遂し得たであろう症例は, そのうちの約半数であった. 現在までに施行したVATS症例と比較検討し, 報告する.
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臨床的治療効果と組織学的治療効果の検討
三村 文利, 高田 佳木, 大林 加代子, 加堂 哲治, 井上 竜治, 坪田 紀明, 吉村 雅裕, 室谷 陽裕, 宮本 良文, 指方 輝正
1994 年 34 巻 4 号 p.
509-515
発行日: 1994/08/20
公開日: 2011/08/10
ジャーナル
フリー
放射線化学療法同時併用を施行した後に切除した非小細胞肺癌12例に対し, その臨床的治療効果と組織学的治療効果を検討した. 臨床的治療効果は12例中PRが10例, NCが2例で奏効率は83.3%であり, 組織学的治療効果はEf.2+Ef.3が原発巣では12例中7例 (58.3%), リンパ節では9例中8例 (88.9%) に見られ, 放射線化学療法同時併用は, 臨床的治療効果のみならず組織学的治療効果も優れていると考えられた. しかし臨床的治療効果と組織学的治療効果は必ずしも相関せず, 腫瘍の縮小率のみならず内部性状を加味した臨床的治療効果判定が必要であると思われた.
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木村 丹, 松島 敏春, 小宮 武文, 小橋 吉博, 安達 倫文, 田辺 潤, 田野 吉彦
1994 年 34 巻 4 号 p.
517-523
発行日: 1994/08/20
公開日: 2011/08/10
ジャーナル
フリー
癌性胸膜炎31例に胸腔鏡下胸膜生検を施行し, 胸腔鏡下に観察された胸膜の肉眼所見と他の検査所見 (胸水細胞診, 胸水CEA値, 胸部X線写真でみた胸水量) との対比検討を行った. 併せて本検査のみで確定診断された5症例の臨床的特徴を検討した. 肉眼的にほぼ限局された隆起性病変を呈する例では, 胸水細胞診の陰性と陽性の割合は8:7, 胸水CEA値の30ng/ml以下と以上は9:6, 胸水量の少量: 中等量: 多量は5:7:3であった. 一方, 肉眼的にびまん性浸潤性病変を呈する例では, 胸水細胞診の陰性と陽性の割合は3:13, 胸水CEA値30ng/ml以下と以上は6:9, 胸水量の少量: 中等量: 多量は0:8:8であった. 即ち, 胸水細胞診が陰性, 胸水CEA値が低値, 胸水量が少ない癌性胸膜炎例では比較的限局された隆起病変を有する例が多く, 通常汎用されている壁側胸膜針生検では陰性となる可能性が高く, 胸腔鏡を使用した直視下生検が有用になると考えられた. また胸腔鏡下生検によってのみ確定診断された5例の検討では, 胸水量は少量から多量まで様々であったが, 胸水CEA値は全例15ng/ml以下で, またその後の平均生存日数は233日と長く, 癌性胸膜炎としては比較的早い段階で確診されたと考えられた.
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組織型と発生部位の推移について
前田 晃宏, 粟屋 幸一, 井原 義尚, 由田 康弘, 石岡 伸一, 稲水 惇, 米原 修治, 井内 康輝, 重信 卓三, 山木戸 道郎
1994 年 34 巻 4 号 p.
525-530
発行日: 1994/08/20
公開日: 2011/08/10
ジャーナル
フリー
広島県の大久野島に第二次世界大戦中設置されていた毒ガス工場の旧従業員 (以下毒ガス障害者) における肺癌剖検例について検討を行った. 対象は1952年から1990年末までの剖検例45例 (全て男性) で, 肺内多発癌を3例に認めたため, 発生部位, 組織型の検討にはこれを加えた. 毒ガス障害者における肺癌による死亡率が同期間の広島県男子と比べて有意に高かった1977年までの症例をI群, 有意差が認められなくなった1978年以降の症例をII群として比較した. I群において次の2つの特徴が認められた. 1) 58%(26病変中15病変) が0~I次の太い気管支に発生している. 2) 組織型は45%(31病変中14病変) が扁平上皮癌, 29%(9病変) が小細胞癌, 16%(5病変) が大細胞癌で腺癌は7%(2病変) であった. これらは, 職業性肺癌の特徴を満たしていたが, II群ではその特徴は明らかでなかった.
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川口 真平, 小林 英夫, 叶 宗一郎, 桐生 拓司, 永田 直一, 柴田 浩
1994 年 34 巻 4 号 p.
531-535
発行日: 1994/08/20
公開日: 2011/08/10
ジャーナル
フリー
症例は61歳の女性. 主訴は湿性咳噺, 労作時呼吸困難で, 胸部X線上両側中下肺野に広範な浸潤影を認め, 精査加療目的に入院. 入院時より黄色透明な喀痰が多く気管支漏の状態にあった. CTでは特徴的なCT angiogram signを認め, TBLBにより, 肺胞上皮癌と診断した. 一般状態不良のため, 化学療法は施行し得ず, 漸増し約500mlに達する気管支漏に対し, インドメタシン吸入を試行した. 痰量は減少しなかったが, 粘調度が増加したことにより喀出が容易となり, 呼吸困難の改善が得られた. 剖検にて両側肺にびまん性に拡がり多量の粘液を伴う肺胞上皮癌を確認した.
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南 寛行, 中村 譲, 糸柳 則昭, 荒木 潤, 増本 英男, 岩崎 啓介
1994 年 34 巻 4 号 p.
537-541
発行日: 1994/08/20
公開日: 2011/08/10
ジャーナル
フリー
発症より手術までに, それぞれ約2年の病悩期間のある19歳, 肺癌切除の2例を経験したので報告する. 症例1は咳嗽を主訴とした19歳女性. 右B
1原発の粘表皮癌で, 右上葉切除を行い, 術後病期は1期 (T
1N
0M
0) であった. 術後経過は良好で, 再発なく4年を経過している. 症例2は19歳女性. 喘息として経過観察がなされていたが, 気管支鏡検査により左主気管支を閉塞する腫瘤が発見され, 定型的カルチノイドの診断が得られた. 左下葉管状切除を行い, 摘出リンパ節,#7,#10に転移を認めた. 術後病期はIIIa期 (T
1N
2M
0) であった. 術後再発なく, 13カ月を経過している. 外科治療が行われた20歳未満の肺癌は稀であり, 文献的考察を加え報告した.
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日吉 晴久, 野口 雅之, 松野 吉宏, 加藤 治文, 下里 幸雄
1994 年 34 巻 4 号 p.
543-547
発行日: 1994/08/20
公開日: 2011/08/10
ジャーナル
フリー
症例は63歳男性. 検診にて左中肺野の2つの腫瘤陰影を指摘され肺結核の診断で経過観察されていたが, 経過中にこの2つの腫瘤陰影は急速に増大して衝突融合した. TV bru-shing cytologyにて肺癌と診断し左上葉切除術を施行した. 術後病理検索では2つの腫瘍はいずれも低分化型腺癌との診断で, これらが衝突癌かあるいは肺内転移か明確に鑑別できなかった. 両腫瘍のp53における遺伝子異常の検索をPolymerase chain reaction single-strand conformation polymorphism (PCR-SSCP) 法にて行ったところ, 両腫瘍はp53の互いに異なる部位に遺伝子異常が確認された. したがって両腫瘍は互いに独立した肺癌で, 本症例は肺衝突癌である可能性が極めて高いと考えられた. 以上よりp53遺伝子解析が肺衝突癌の診断に極めて有用な情報をもたらす場合があることが判明した.
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山根 喜男, 蓮池 美樹, 久保 裕司, 大沼 菊夫, 池田 道昭, 萩原 昇
1994 年 34 巻 4 号 p.
549-554
発行日: 1994/08/20
公開日: 2011/08/10
ジャーナル
フリー
遠隔転移をきたす事の比較的まれな後腹膜原発Paragangliomaの多発肺転移例を報告した. 69歳の女性. 毎年胸部の定期検診を受けていたが, 1992年の検診で初めて胸部異常陰影を指摘され精査目的で入院した. 既往歴として1986年に後腹膜のParagangliomaを摘出されている. 陰影は0.5から2.0cmぐらいまでの境界明瞭な銭型陰影であり両側肺野に多数認めた. 気管支鏡下擦過細胞診および気管支鏡下生検でも確診がつかず開胸肺生検を行った. 左開胸したところ, 肺表面に多数の腫瘤を認めた. S10表面の径8mmの腫瘤を楔状に切除した. 腫瘤はカプセルに包まれ弾性硬であり, 割面は黄白色均一でみずみずしく境界明瞭であった. 病理所見では, 核小体の明瞭な比較的大型の核と, 好酸性の顆粒を持つ豊かな細胞質を有する腫瘍細胞が血管性の間質を持ちながら充実性に増殖しており, 6年前のParagangliomaと同様の組織像であった.
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久保田 真毅, 坪田 紀明, 吉村 雅裕, 室谷 陽裕, 阪本 俊彦, 高田 佳木, 吉田 祥二, 大林 加代子, 加堂 哲治, 山本 裕之
1994 年 34 巻 4 号 p.
555-560
発行日: 1994/08/20
公開日: 2011/08/10
ジャーナル
フリー
症例は68歳男性. 術前診断はbulky N2を伴う腺癌で化学療法, 放射線療法同時併用3クールによってPRを得て5ヵ月後に右肺摘除術を施行した. 術後経過は良好で元気に退院したが, 外来にて経過観察中, 両前腕, 両下腿のアナフィラクトイド紫斑病, ついで左胸部の帯状庖疹と発熱を認め, 退院後2ヵ月で再び入院となった. 再入院後, 更に遅発性無瘻性膿胸や左側の間質性肺炎を次々に発症したが, ステロイドと抗生剤の投与の結果, 一旦は症状の改善をみた. しかし薬剤の慎重な減量にもかかわらず間質性肺炎の再燃とMRSA肺炎の増悪により死亡した. 本症例ではHBウイルス抗原が陽性で抗好中球細胞質抗体も陽性 (P-ANCA陽性, C-ANCA陰性) であった. これらの血清学的所見は術後に起こった一連の出来事の引き金になったと考えられた.
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服部 隆一, 林田 良三, 冨松 久信, 平木 啓正, 林 明宏, 掛川 暉夫
1994 年 34 巻 4 号 p.
561-564
発行日: 1994/08/20
公開日: 2011/08/10
ジャーナル
フリー
術後気管支断端瘻は, 肺切除後の合併症のなかで最も重篤なものの一つである. 治療法として胸腔ドレナージ, 洗浄, 再手術などがおこなわれるが, 今回我々は右肺全摘術後に合併した気管支断端瘻に対し, 早期に局麻下にて胸腔鏡による観察を行い, フィブリン糊の塗布により治癒した症例を経験した. この処置は侵襲も軽く, 種々の条件を満たせば, 断端瘻の治療法として有用な方法の一つになると考えられる.
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丸山 雄一郎, 近藤 良明, 曽根 脩輔, 百瀬 充浩, 西沢 延宏, 石亀 廣樹
1994 年 34 巻 4 号 p.
565-570
発行日: 1994/08/20
公開日: 2011/08/10
ジャーナル
フリー
縦隔のCastleman's diseaseは, 比較的まれな疾患であり, 本症のMR所見はこれまでにいくつか報告されているにすぎない. 我々は, 職場検診の胸部単純X線検査で発見され, 本症においては極めて稀とされる嚢胞を有する縦隔のCastleman's diseaseを経験したので報告する.
症例は, 47歳男性である. 術前のCTおよびMRIで, 縦隔中心部に嚢胞性の腫瘤を認めた. 外科手術が行われ, 摘出標本の病理診断は, Castleman's diseaseのhyaline-vascular typeであった. 病理組織学的検討から, 腫瘍内部の嚢胞は, 腫瘍内の小血管に生じた血栓による循環障害が原因であり, このために腫瘍の一部が液化変性して嚢胞を形成したと考えられた. MR像は, CT像より明確に縦隔腫瘍の進展範囲を表現し, また腫瘍内部の肉眼病理像をよく反映していた.
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1994 年 34 巻 4 号 p.
571-596
発行日: 1994/08/20
公開日: 2011/08/10
ジャーナル
フリー