肺癌
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48 巻, 3 号
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総説
  • 岸本 卓巳, 玄馬 顕一, 西 英行, 藤本 伸一, 清水 信義
    2008 年 48 巻 3 号 p. 165-170
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/04
    ジャーナル オープンアクセス
    胸膜中皮腫の診断には画像診断も重要であるが,確定診断は病理組織標本によって行われる.針生検や胸腔鏡下生検によって得られた腫瘍組織をHE染色のみならず免疫組織化学的な診断手法によって確定診断する.すなわち,上皮型中皮腫陽性マーカーとして,calretinin,WT-1などがあり,陰性マーカーとして,CEA,TTF-1がある.一方,肉腫型では陽性マーカーとして低分子ケラチン(AE1/AE3,CAM5.2),calretinin,陰性マーカーとしては真の肉腫の陽性マーカーであるdesmin,smooth muscle actinなどがある.臨床診断上,胸膜中皮腫と鑑別が必要な疾患として多形型肺癌,偽中皮腫様肺癌,線維性胸膜炎(良性石綿胸水)がある.胸膜中皮腫の治療については,放射線療法が単独では無効のため,治療方法が限定される.IMIG分類のstage IIIまでが胸膜肺全摘出術の適応ではあるが,stage IIIでもリンパ節転移のある症例の予後はよいとは言えない.stage IIIあるいはIVではcisplatin(CDDP)+pemetrexed併用療法が最も有効である.胸膜肺全摘出術,放射線療法,化学療法を組み合わせたtrimodalityの予後が最もよいと報告されているが,performance status(PS)のよい若年症例に限られる.その他に有効な治療方法はない.
原著
  • 笹野 進, 鳥居 陽子
    2008 年 48 巻 3 号 p. 171-175
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/04
    ジャーナル オープンアクセス
    目的.肺がん検診の経年受診における受診間隔のばらつきについて検討した.対象と方法.周辺10市町村からの委託により,2006年度に当施設で実施した胸部X線検査と高危険群に対する喀痰細胞診併用による肺がん検診を受診した40歳以上79歳以下の男女5,304名のうち,2,307名の経年受診者を対象とした.各市町村の肺がん検診の実施日程を調べ,年間実施回数により分類した.全員の受診間隔を計算し,全体集計,市町村別集計を行い,各分類の典型例について,受診間隔のばらつきの有無,程度を調べた.結果.年間実施回数による分類の結果,頻回型2市町村,年12回型2市町村,年4回型2市町村,年2回型3市町村,年1回型1市町村であった.全体集計の結果,受診間隔には大きなばらつきが存在し,最短130日,最長665日,351~380日の比率46.8%であった.市町村別集計の結果,頻回型の市町村Aでは受診間隔の最短295日,最長606日,351~380日の比率49.1%,市町村Bでは最短130日,最長528日,351~380日の比率28.0%で,ばらつきが大きかった.年12回型の市町村Cでも最短182日,最長665日,351~380日の比率31.2%で,ばらつきが大きかった.年4回型の市町村Eでは最短229日,最長524日,351~380日の比率68.5%,年2回型の市町村Gでは最短235日,最長494日,351~380日の比率66.4%で,351~380日の比率はやや高かったが,ピークを有するばらつきが存在した.年1回型の市町村Jでは351~380日の比率100%であった.結論.肺がん検診の経年受診における受診間隔には大きなばらつきが存在していた.肺がん検診の事業主体である各市町村は,実施日程の設定,受診勧奨を行う場合には,受診間隔が365日前後になるように十分考慮する必要がある.
  • 田中 悠子, 上甲 剛, 渡辺 俊一, 楠本 昌彦, 佐藤 嘉伸, 土屋 了介
    2008 年 48 巻 3 号 p. 176-184
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/04
    ジャーナル オープンアクセス
    目的.CT画像上で,縦隔内構造物の位置関係を観察し,各リンパ節領域の画像上の位置関係について検討すること.対象と方法.2005年4月上旬から2005年9月中旬までの期間に大阪大学医学部附属病院にて結節とびまん性肺疾患の疑いで胸部CTが施行された201例と,2005年5月中旬から2005年8月中旬までの期間に国立がんセンター中央病院にて肺癌の術前に胸部CTが施行された7例について,縦隔内構造物の位置関係を解析した.リンパ節領域分けの指標には,肺癌取扱い規約(第6版)を用いた.結果.隣接する2つのアキシャル方向の基準スライスを比較した場合,左腕頭静脈と気管正中線の交点(79%)と大動脈弓上縁(21%),奇静脈弓上縁(61%)と大動脈弓下縁(39%),奇静脈弓上縁(96%)と左主肺動脈上縁(4%),右主肺動脈上縁(70%)と気管分岐部(30%)の4組で上下関係に個体差が生じ(カッコ内は頭側となるスライスの割合),これにより#2~#4,#6のリンパ節領域の境界面に差異が現れ,各リンパ節領域の画像上の位置関係が異なることがわかった.結論.縦隔内構造物の位置関係には個体差が存在し,これにより#2~#4,#6の各リンパ節領域の境界面は変化する.したがって,縦隔リンパ節の正確な診断・治療,及び三次元的なリンパ節領域分け表示のためには,これらの位置関係を考慮する必要がある.
症例
  • 水谷 尚雄
    2008 年 48 巻 3 号 p. 185-190
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/04
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.肺癌肉腫は肺悪性腫瘍の中でも極めて稀である.今回,当院に通院中にエア・ブロンコグラムを伴う肺の濃厚影として発見され急速な経過をたどった超高齢者の肺癌肉腫の1例を経験した.症例.患者は85歳の男性で当院に通院中に定期X線撮影で右下肺野の異常影を認め,胸部CT検査を施行した.右下葉末梢にエア・ブロンコグラムを伴う濃厚影を認め,また中葉外側にも内部均一な陰影を認めた.肺炎様の画像であったが,症状に乏しく腫瘍も否定できないためCT下生検を施行した.病理診断では異型細胞の高密度浸潤増殖を認めた.FDG-PET/CT検査で右下葉及び中葉外側に強い集積を認めたが,その他に転移を疑う集積を認めなかった.手術を施行し迅速病理診断で悪性間葉系腫瘍と診断され,右下葉切除術と右中葉の腫瘍摘出術を施行した.病理診断は肉腫様の紡錘形腫瘍細胞の高密度増殖に加え,一部に骨肉腫,軟骨肉腫,横紋筋肉腫の部分の混在と扁平上皮癌の部分も認め癌肉腫と診断された.術後早期に再発し術後約3ヶ月で死亡した.結語.肺癌肉腫は生検での確定診断は困難で予後は不良である.本例は半年間隔での胸部X線検査を行っていたが,早期発見と治療が困難であった.
  • 飽浦 良和
    2008 年 48 巻 3 号 p. 191-196
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/04
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.真の肺癌肉腫は全肺腫瘍の約0.1%にみられ,重度喫煙者で高齢の男性に多い傾向がある.その腫瘍径は大きいものが多く,予後不良である.症例.74歳,男性.近医で胸部異常陰影を指摘された.胸部X線,CTでは両下肺野優位に蜂窩肺,肺線維症,肺気腫を認め,右下葉に約7.5 cmの腫瘍を認めた.CTガイド下肺生検にて肉腫様変化を伴う腺癌と診断され,右下葉切除術,ND2aを施行した.術後診断はT4N2M0 p-Stage IIIB,腫瘍径は主病巣8.5×8.0×5.3 cm,転移巣(右S6)4.0×2.6 cmであった.術後放射線化学療法を行ったが術後6か月目に腎不全,呼吸循環不全となり,死亡した.結論.真の肺癌肉腫の1例を経験し,報告した.
  • 神谷 紀輝, 本告 匡, 西 八嗣, 嶋根 正樹, 八十川 要平
    2008 年 48 巻 3 号 p. 197-201
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/04
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.縦隔に発生する嚢胞性病変には様々な疾患が存在するが,嚢胞壁に配列する上皮や構成成分を丹念に確認することが,病変の病理組織診断に役立つ.症例.胸部異常陰影で精査となった59歳,男性.画像では上縦隔の左右腕頭静脈に挟まれた領域に径4 cm大の単房性の嚢胞性腫瘤を認めた.右開胸アプローチにて,一部嚢胞壁が残存するも嚢胞摘出術を施行し,緊満した壁の薄い単房性の嚢胞が左右腕頭静脈血管に挟まれるように存在していた.病理組織学的には,嚢胞壁の内面は単層の線毛円柱上皮で覆われ,周囲の脂肪織内に一部退縮胸腺組織と思われる構造が認められた.免疫組織学的検索では,線毛円柱上皮の下層に血管・脂肪織に加え胸腺上皮細胞や未熟胸腺Tリンパ球を含む層が確認され,胸腺嚢胞との診断が可能であった.結論.ほとんどが線毛円柱上皮で裏打ちされ,気管支原生嚢胞との鑑別を要した胸腺嚢胞症例を経験し,(1)嚢胞壁における高度に菲薄化した胸腺組織は,薄い血管脂肪リンパ上皮層(vasculo-adipo-lympho-epithelial(VALE)layer)として存在すること,(2)胸腺組織の証明には免疫組織化学的な検索が有用であることを学んだ.
  • 瀧 玲子, 千葉 佐保子, 杉浦 真貴子, 返田 常広, 西条 直子, 吉澤 正文
    2008 年 48 巻 3 号 p. 202-208
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/04
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.傍腫瘍性神経症候群の一病型である傍腫瘍性辺縁系脳炎は,悪性腫瘍の稀な合併症であり,神経症状が先行することが多く,診断困難な場合が多い.症例.64歳男性.急速に健忘が出現したため来院した.脳MRI T2強調画像,fluid attenuated inversion recovery(FLAIR)像にて両側海馬に高信号域を認め,辺縁系脳炎が疑われた.原因を精査し,同時期の胸部CTで右肺S8に腫瘤影を認め,気管支鏡検査にて肺小細胞癌cT2N2M0,stage IIIA限局型と診断した.健忘については傍腫瘍性辺縁系脳炎と診断した.抗Hu抗体は陰性であった.化学療法と胸部放射線照射療法を同時併用し腫瘍の縮小を認め(partial response:PR),健忘症状もある程度改善した.発症後23ヶ月までPRを維持している.結論.本症例での傍腫瘍性辺縁系脳炎では,早期診断・治療及び抗Hu抗体が陰性であったことなどが症状の改善につながった要因と考えられる.原因不明の神経症状をみた場合,傍腫瘍性神経症候群である可能性も念頭に置き悪性腫瘍の有無を精査することが重要である.
  • 庄村 心, 高尾 仁二, 樽川 智人, 島本 亮, 山門 亨一郎, 新保 秀人
    2008 年 48 巻 3 号 p. 209-214
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/04
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.肺悪性腫瘍に対するRFA(Radiofrequency Ablation)治療は低侵襲治療として注目されているが,その病理学的治療効果に関する報告は少ない.今回,大腸癌肺転移に対するRFA後の局所再発に手術を施行したので報告する.症例.65歳,男性.1999年4月に単発S状結腸癌にて手術を施行され,2004年11月に左肺S6への転移を認め,全身化学療法が施行された,2005年4月に同部位の腫瘍が再増大し,患者の希望によりRFAが施行された.2006年5月には同部位の再発に対しRFAが再施行されたが,同年12月に再々発を疑われたため,当科を紹介され大動脈壁,軟部胸壁合併左肺下葉切除を施行した.RFAの焼灼部位は大動脈,胸壁と強固な線維性癒着を認めたが,腫瘍細胞は存在せず,再発巣には太い気管支と肺動脈が流入していた.術後9ヶ月目現在,再発はなく,外来通院中である.結論.ラジオ波の適応基準の決定のための局所再発の要因や機序に関して,より詳細な検討が望まれる.転移性肺癌に対するRFA後局所再発に対する根治手術例について報告した.
  • 正津 晶子, 前原 孝光, 足立 広幸, 石田 安代, 森川 哲行, 角田 幸雄
    2008 年 48 巻 3 号 p. 215-220
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/04
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.びまん性特発性肺神経内分泌細胞過形成(diffuse idiopathic pulmonary neuroendocrine cell hyperplasia:DIPNECH)は肺の稀な前浸潤性病変であり,末梢型カルチノイドおよびtumorletを合併することがある.症例.症例は52歳女性.胸部X線写真で異常影を指摘され当科を受診した.胸部CTでは左肺下葉に多発する小結節影,左肺上葉に1個の小結節影を認めた.胸腔鏡下に左肺上葉および左肺S8部分切除を行った.迅速病理診断で左肺上葉の病変は線維化と診断され,左肺S8の病変は腺癌が疑われたため左肺下葉切除を行った.永久標本において,左肺S8の結節は定型カルチノイドと診断された.切除した左肺下葉には定型カルチノイド,tumorlet,異型腺腫様過形成が混じて散在していた.また,クロモグラニンA陽性の微小な細胞増生巣が気管支粘膜内に散在性に存在し,DIPNECHと診断された.結論.神経内分泌細胞を起源とするDIPNECH,tumorlet,定型カルチノイドを合併した稀な症例を経験した.
  • 馬庭 知弘, 齊藤 朋人, 金田 浩由紀, 南 健一郎, 齊藤 幸人
    2008 年 48 巻 3 号 p. 221-226
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/04
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.外来抗がん剤治療中で軽度の呼吸器感染症状を認めることがあるが,重度の好中球減少を伴わない場合は抗菌剤投与で経過をみることが多い.今回,外来化学療法中の症例で突然の呼吸不全を生じた症例を経験したので報告する.症例.68歳男性.2007年7月中旬に右中葉肺扁平上皮癌(pT4N0M0)に対して右中葉切除術施行.術後補助療法として外来にてCBDCA+TXLを3コース施行中に,数日前より継続する咳,膿性痰の増悪,さらに早朝からの38℃の発熱のため外来受診.胸部CTでは末梢の気腫性病変周辺に淡い浸潤影を認め,白血球数3300/mm3,CRP値6.43 mg/dlであった.同日14時50分の時点では,著変なく経過していたが,15時15分より突然の呼吸苦,38.9℃の発熱,ピンク色の泡沫状痰が出現し,酸素を投与するも経皮的酸素飽和度は80~90%であった.ICUへ移室し気管内挿管施行.人工呼吸管理を含む集中治療にて救命しえた.結語.外来抗がん剤治療中に軽度の好中球減少や呼吸器感染を示す症例の中でARDSへ移行する症例があり,慎重な外来観察を要する.
  • 田宮 朗裕, 津谷 あす香, 高橋 利明, 遠藤 正浩, 山本 信之
    2008 年 48 巻 3 号 p. 227-230
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/04
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.悪性胸膜中皮腫は治療抵抗性で予後不良疾患であり,初回治療としてCisplatin+Pemetrexed(CP)の有効性と安全性が確認されているが,2次化学療法以降での有効性は確立されていない.今回我々は,2次化学療法以降としてCPを施行し,腫瘍縮小効果を認めた悪性胸膜中皮腫の1例を経験した.症例.73歳男性.2006年2月より,Cisplatin+Gemcitabine,局所放射線療法を実施するが腫瘍は増大.2007年4月から,CPを4コース施行.最良効果はSDであったが,腫瘍は縮小傾向であった.また,Grade 3以上の毒性は血小板減少のみであった.当症例は,治療開始後7ヶ月の経過観察胸部CTで腫瘍の増大傾向を認めたが,2008年2月現在も症状の出現なく無治療で経過観察中である.結論.本症例では,悪性胸膜中皮腫の2次化学療法としてのCPは毒性が軽度であり,腫瘍縮小効果も認められた.
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