肺癌
Online ISSN : 1348-9992
Print ISSN : 0386-9628
ISSN-L : 0386-9628
37 巻, 7 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
  • 瀬戸 貴司, 中山 富雄, 今村 文生, 中村 慎一郎, 楠 洋子, 宝来 威
    1997 年37 巻7 号 p. 961-966
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    肺腺癌の化学療法に対する効果と細胞形態像を検討した.対象とした原発性肺腺癌26例の化学療法2コース終了後の治療効果はPR9例, NC11例, PD6例であった.細胞形態学的検討には, 擦過あるいは穿刺吸引細胞診のパパニコロウ染色標本を用いて, 癌細胞の核の大きさと形態, クロマチンの染色性, 核小体の形状を観察した.PRが得られた症例に多く出現した腺癌細胞は, 細胞や核が大型で, 大小不同が強く, 核は類円形で微細クロマチンが増量していた.NC症例に多く出現した腺癌細胞は, 細胞および核が小型で, 核形は不整形, クロマチンが不均等疎に分布した.PD症例には粗顆粒状クロマチンを有する腺癌細胞の出現率が高かった.肺腺癌では細胞形態学的検討により, 抗癌化学療法の効果がある程度予想され得ると考えられた.
  • 鈴木 弘行, 川口 隆憲, 藤生 浩一, 管野 隆三, 大石 明雄, 井上 仁, Ryoichi Motoki
    1997 年37 巻7 号 p. 967-972
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    肺腺癌の遠隔転移および局所再発に関わる臨床病理学的因子を明らかとするため教室で切除した原発性肺腺癌131例を対象とし, 臨床病理学的因子と予後との関連および臨床病理学的因子の相互の関連を統計学的に検討し以下の結果を得た.
    5年生存率で有意差を認めた因子は, 腫瘍径 (3cm≥vs.3cm<), p-T因子, p-N因子, 病理病期, 分化度, ly因子, v因子であった.転移および局所再発と臨床病理学的因子の関連を検討すると遠隔転移とはp-N因子, ly因子, 分化度が, 局所再発とは腫瘍径, ly因子, v因子がそれぞれ関連を認めた.多変量解析にて検討すると遠隔転移においてはp-N因子が, 局所再発においてはv因子がそれぞれ独立した関連因子であり, 肺腺癌における転移, 再発を規定する重要な因子であると考えられた.
  • 藤田 昭久, 高畠 博嗣, 田垣 茂, 関根 球一郎
    1997 年37 巻7 号 p. 973-980
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    1986年7月から1994年12月までに当院に入院し化学療法を施行したIIIB, IV期肺腺癌146例の内, 2年以上の生存が得られた25例について, 背景因子と治療効果について検討した.背景因子ではPSのみが有意な因子であった.治療効果ではPRが17例と有効な症例が多く, 治療回数も中央値で7回と多いことが特徴であった.
    また2年生存例を対象にquality adjusted survival analysisを用いて, 化学療法が生活の質に及ぼす影響についても検討した.2年間の観察期間で, Utを0に近い値, すなわち化学療法の負の影響が大きいと仮定した場合, 2年生存例でもQ-TWiSTの平均値は健康時の70%程度であった.
  • 川波 祥子, 渡辺 秀幸, 青木 隆敏, 畑中 久実, 中田 肇, 城戸 優光, 中西 良一, 安元 公正
    1997 年37 巻7 号 p. 981-989
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    原発の悪性腫瘍が手術されその後の経過観察中に新たに出現して切除され組織診断の得られた孤立性肺結節28例についてそのCT所見および臨床的特徴を検討した.肺転移が15例 (53.6%) と最も多く, 肺癌6例 (21.4%), 転移か肺癌か鑑別不能であったもの2例と併せ, 23例 (82.1%) が悪性腫瘍であった.良性疾患は5例であった.肺転移の大多数は円~ 類円形で辺縁平滑であったが2例で不規則な形状を呈し, 5例で中等度以下の辺縁不整が見られた.肺癌では1例以外は不規則な形状および高度の辺縁不整を認めた.良性病変でも5例中2例が不規則な形状で辺縁平滑なものは1例のみであった.悪性腫瘍患者の経過中に出現する孤立性肺結節はCT上, 円~ 類円形の形状で辺縁に高度の不整がないものについては肺転移の可能性が高い.しかし肺癌, 良性疾患との鑑別困難な症例も含まれ術前の検査で診断不可能な場合には組織診断が必要である.
  • 森山 裕煕, 片岡 和彦, 松浦 求樹, 妹尾 紀具, 立山 義朗, 松浦 博夫
    1997 年37 巻7 号 p. 991-995
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    右B3aの入口部に存在する腫瘤に対し右上葉切除を行ったところ, 比較的稀な気管支内顆粒細胞腫であった1例を経験した.症例は57歳男性で, 盲腸癌の術後加療中に胸部異常影を指摘され, 近医で気管支鏡検査を2回受けているが, 確定診断がつかず当科紹介となった.再度気管支鏡検査を行ったところ, 右B3a入口部に内腔をほぼ占拠するポリープ状腫瘤を認めたが確定診断がつかず, 胸部X線写真でも以前に比べやや増大傾向を認め, 最終的に悪性腫瘍も完全に否定しきれなかったために右上葉切除術を施行した・術中迅速細胞診では過誤腫であったが, 手術材料のホルマリン固定標本にてPAS染色・S-100蛋白染色陽性であることなどより顆粒細胞腫と診断した.気管支原発の本症は稀で, 本邦では34例が報告されている.神経細胞由来と考えられており, 多くは良性であるが外科的切除が行われることが多い.
  • 局所進展様式の検討を中心に
    井上 準人, 中川 健, 土屋 繁裕, 奥村 栄, 西田 一典, 石川 雄一
    1997 年37 巻7 号 p. 997-1002
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    末梢発生小型肺小細胞癌に対し施行された化療後の1切除例につきその局所進展様式を画像および病理学的検索により検討した.症例は52才, 男性, SI: 480, 検診にて胸部異常影を指摘された.画像上, 第5次分枝に存在する腫瘍は気管支に沿い長軸方向に進展していた.化療後の切除検体でも線維化を示す気管支上皮下をびまん性に浸潤する腫瘍細胞を認めた.小型肺小細胞癌は臨床的に捉えられることは稀であるが, 早期の肺小細胞癌においても肺小細胞癌に特徴的とされる気管支長軸進展様式を取るものと考えられた.
  • 薄壁空洞形成機序についての考察
    三谷 桃子, 瀬戸 貴司, 千場 博, 深井 祐治, 吉松 俊治, 蔵野 良一
    1997 年37 巻7 号 p. 1003-1008
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    肺転移巣が薄壁空洞性病変をきたした類上皮肉腫の2例を経験した.症例1は30歳男性, 類上皮肉腫の診断で左大腿部の部分切除, 6年後に再発のため左下肢切断が施行された.下肢切断より10ヵ月目に両側気胸のため当センターに緊急入院した.症例2は45歳女性, 左前腕の腫瘍を摘出され, 類上皮肉腫と診断された.約14ヵ月後に血疾, 胸部異常陰影のため, 当センターに紹介された.2症例とも, 胸部X線写真, 胸部CT写真にて多発性の薄壁空洞性病変が認められ, 経気管支的空洞内壁生検の結果, 類上皮肉腫肺転移と診断された.類上皮肉腫の肺転移の特徴として, 薄壁空洞を呈することが考えられ, 空洞化の機序として腫瘍の遠心性増大に伴う中心壊死, 壊死物質が経気管支的に排出される過程があると考えられた.薄壁化には, チェックバルブ機構が関与していると考えられた.
  • 福田 実, 岡 三喜男, 寺師 健二, 楢崎 史彦, 長島 聖二, 河野 茂
    1997 年37 巻7 号 p. 1009-1015
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    症例は81歳, 男性.咳, 労作時呼吸困難のため, 近医を受診し胸部X線で両下肺野の網状影および右肺門縦隔リンパ節腫張を指摘され当科に入院した.入院後, 右S9原発の進展型肺小細胞癌 (T4N2M0) と診断した.高齢で肺気腫を伴い, 腎機能もクレアチニンクリアランス31ml/分と低下が認められたが, Chatelut式を用いてAUC=5を目標とした第1日のカルボプラチンと第1-3日のエトポシド75mg/m2による併用化学療法を行った.第1コース目に測定したカルボプラチンのAUCは目標よりやや低い4.42であったが, 血液毒性はG-CSFの併用で耐用可能で4コースが施行され, 効果は70%縮小の有効であった.自覚的な副作用も軽く, 高齢・腎機能低下例においてもChatelut式を用いたこの治療法はG-CSFを併用すれば安全に施行可能なことが示唆された.
  • 柴田 和彦, 金森 一紀, 吉見 雄三, 飯岡 壮吾, 藤村 政樹, 松田 保
    1997 年37 巻7 号 p. 1017-1022
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    69歳, 男性.大量心嚢水貯留のため入院.心嚢穿刺, 心膜生検で癌性心膜炎と診断, 原発巣は左上葉の肺癌と考えられ, T4N3M0, stage III Bと診断された.心嚢ドレナージ, 心嚢内抗癌剤注入, CDDP, VDS, MMC併用による全身化学療法3コースによって, 部分寛解を得, 以後病変の進行を認めなかった.初診から3年後に原発巣の増大を認め, リンパ節転移, 心嚢水の再発や他臓器転移を認めないことから, salvage surgeryとして左上葉切除術を施行した.病理組織所見は低分化腺癌で形態的に3年前の心膜生検の際の腫瘍細胞と共通性が見られた.リンパ節, 心膜には腫瘍の残存を認めなかった.
  • 申 東蘭, 木村 秀樹, 岩井 直路, 山本 直敬, 本橋 新一郎
    1997 年37 巻7 号 p. 1023-1028
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    症例は26才男性で1992年11月左上腕の滑膜肉腫にて上腕の切断術を行った.術前術後化学療法を実施したが無効で翌年2月胸部CTにて異常陰影が認められ, 手術目的で同年7月当科に紹介された.入院時胸部CTにて両側肺野に多発性腫瘤陰影を認めた.入院後, 抗癌剤化学療法および開胸術4回施行するも, 効果なく, 1994年2月よりIL-2, LAK細胞による養子免疫療法を追加した.その後1997年4月までに3回の開胸術と化学療法に加えて18クールのIL-2, LAK療法を施行し, 4年後の現在健在である.養子免疫療法の副作用は主に発熱, 悪寒, 戦慄であるが2~3日で回復する.術後の化学療法を含めた養子免疫療法により再発までの期間の延長と転移数の減少が期待できると考えられた.
  • 田中 博幸, 小林 英夫, 叶 宗一郎, 永田 直一, 相田 真介, 高木 啓吾
    1997 年37 巻7 号 p. 1029-1034
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    肺癌からの口腔内転移3例を報告する.症例1は45歳の男性で, 健診で右肺尖の異常影を指摘された.右S1の径5cm大の腺癌で, 4ヵ月後に扁桃転移が出現した.扁桃腫瘍摘出と放射線照射によりほぼ消失したが22ヵ月で死亡した.症例2は61歳の男性で, 歯肉腫瘤で発症し精査中に左肺門部の異常影を指摘された.長径6cmの大細胞癌の歯肉転移であった.歯肉部に30Gyの放射線照射を行い腫瘍は消失したが, 多発転移をきたし4ヵ月後に死亡した.症例3は40歳の男性で, 健診にて右上肺野に異常影を指摘された.右S3の長径8cmの大細胞癌で1ヵ月後に歯肉腫瘤が出現した.歯肉部に60Gyの放射線照射を行い腫瘍は消失したが, 肝・副腎転移を併発し4ヵ月後に死亡した.肺癌の口腔内への転移に対しては放射線治療が有効であるが多発遠隔転移を併発していることが多く予後は不良である.
  • 稲葉 浩久, 太田 伸一郎, 西村 俊彦, 高持 一矢, 石田 格, 本多 淳郎
    1997 年37 巻7 号 p. 1035-1040
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    悪性線維性組織球腫 (MFH) は, 四肢の軟部組織に好発する非上皮性の悪性腫瘍で, 胸郭内に発生することは稀である.今回, 原発性肺癌と縦隔原発MFHを同時に切除した四重複癌の1例を経験したので報告する.症例は67歳男性.58歳時に胃癌にて胃全摘術受け, 60歳時には腎盂癌にて右腎摘出術を受けている.今回, 左肺S3の原発性肺癌と, 大動脈弓上縁で縦隔と肺にまたがる径2cmの診断のつかない小腫瘤のため, 左肺上葉切除とリンパ節郭清術及び小腫瘤摘出術を施行した.小腫瘤は大動脈外膜に浸潤しており, これも合併切除した.病理組織診断は, pT2NOの肺腺癌と縦隔原発で肺に浸潤したMFHであった.切除断端への遺残は認められなかったが, MFHの再発予防のため, 上縦隔に60Gy術後照射を追加した.
  • 森田 祐二, 寺本 信, 西山 薫, 今田 彰浩, 平澤 路生, 阿部 庄作
    1997 年37 巻7 号 p. 1041-1045
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    喀痰中に腫瘍細胞の出現を認めた悪性胸膜中皮腫の稀な1例を報告した.症例は67歳男性で, 胸部X線写真上右側胸膜の不整肥厚像が次第に増強し, それに伴い咳, 疾, 右胸部痛がみられるようになったため当科に紹介され入院した.喀疾細胞診では腺癌に類似した腫瘍細胞が認められたことから肺腺癌が疑われたが, 経皮的生検材料の電顕像および特殊, 免疫染色所見から悪性胸膜中皮腫, 上皮型と診断した.
  • 澤藤 誠, 松隈 治久, 横井 香平, 井村 譲二, 宮沢 直人
    1997 年37 巻7 号 p. 1047-1051
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    15歳女子の原発性肺癌の1例を経験した.学校検診にて胸部X線写真上, 左下肺野に異常影を指摘され, 気管支鏡検査により腺癌と診断された.左肺癌の診断で1989年8月左下葉切除および縦隔リンパ節郭清を施行した。病理学的に気管分岐部リンパ節転移を認め, 中分化型腺癌, pTIN2M0, Stage III Aと診断された.術後補助療法は行わず経過を観察しているが術後8年の現在無再発生存中である.気管支腺由来の腫瘍を除いた小児肺癌は診断が難しく, 低分化なものが多いことなどから予後不良といわれているが, 本邦の5年以上の長期生存例の報告は本例を含め5例で, そのうち縦隔リンパ節転移が明らかであった症例は本例が初めてであった.
  • 1997 年37 巻7 号 p. 1052-1064
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
feedback
Top