肺癌
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47 巻, 6 号
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原著
  • 草間 由紀子, 小泉 知展, 伊東 理子, 神田 慎太郎, 山本 洋, 久保 恵嗣, 野村 洋, 江田 清一郎, 早坂 宗治, 五味 英一
    2007 年 47 巻 6 号 p. 689-694
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/10
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.Gefitinibは肺癌に対する分子標的治療薬で,有用性が高い患者群が明らかになってきている.Gefitinib有効例に対する再投与の臨床的有用性や意義は不明である.目的・方法.今回,当科および長野県内の関連病院においてgefitinibの再投与を試みた症例についてretrospectiveにその臨床的解析を行った.対象.Gefitinib初回投与が有効と判断され,その耐性獲得後に他の化学療法が施行され,その後gefitinib再投与が行われた症例を対象とした.結果.症例は49歳から77歳までの女性9例で全例組織型は腺癌であった.病期はIIIA~IV期,performance status(PS)は0~1であった.喫煙歴は1例(Brinkmann index:B. I. 100)に認められた.Gefitinibの初回投与は1st~4th lineで施行され,3rd~6th lineでgefitinibが再投与された.再投与時のpartial response(PR)は9例中3例(奏効率33.3%;95%信頼区間7.5~70.1%)でいずれも初回投与時PRが得られた症例で,再投与までの休薬期間は,6.5~11ヶ月であった.全生存期間は13.5~50ヶ月,生存期間中央値は24.6ヶ月で再投与後の生存期間中央値は7.4ヶ月であった.結論.Gefitinib初回治療で特にPRが得られた症例においては,一定の期間後のgefitinibの再投与は治療選択肢のひとつになると考えられる.
  • 畑山 佳臣, 青木 昌彦, 近藤 英宏, 川口 英夫, 阿部 由直
    2007 年 47 巻 6 号 p. 695-700
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/10
    ジャーナル オープンアクセス
    目的.放射線肺臓炎は放射線治療における重要な有害事象である.肺臓炎の発症を予測する因子として,線量容積ヒストグラム(DVH)より得られるV20(20 Gy以上照射される肺容積の全肺容積に対する割合),正常組織障害確率(NTCP)などの有用性が多く報告されている.これらの指標と異なり,加法則に従い,術式変更後も算出の容易な平均肺線量(MLD)の有用性を検討した.対象と方法.2001年10月から2005年12月の間に40 Gy以上の放射線治療を行った非小細胞肺癌104例.DVHからMLDの他,V20,NTCPを算出し,これらの指標と肺臓炎発症との関係を解析した.結果.肺臓炎はGrade 0~1が70例,Grade 2以上が34例であった.MLDなど各指標の平均値はGrade 2以上の肺臓炎発症例で有意に高く,単変量,多変量解析においても肺臓炎発症への関与が示唆された.MLDが13 Gy以下では重篤な肺臓炎が発症しなかった.結論.MLDは照射術式を途中変更することの多い日本の放射線治療の状況では,肺臓炎の発症予測に簡便で有用である.
  • 水野 幸太郎, 深井 一郎, 遠藤 克彦
    2007 年 47 巻 6 号 p. 701-705
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/10
    ジャーナル オープンアクセス
    目的.癌性胸膜炎は癌終末期の病態であるが,癌性胸水を完全に制御できればPSが保たれた癌の終末期状態となり,患者の享受できるメリットは少なくない.対象と方法.対象は9例の癌性胸水患者である.胸膜癒着術の成否は癒着剤(タルク)が万遍なく胸膜に散布されるか否かに依存する.そこで,われわれは胸腔鏡下に完全に癌性胸水を排除した後,任意の肋間から血管留置針を胸腔穿刺した.50 mlの注射器に5~10 gのタルクを入れておき,留置した針から胸腔内に空気とともに散布した.この操作を複数箇所から行うことで胸腔全体にタルクを散布できた.つづいて,ドレナージチューブを肋骨横隔膜洞と肺尖にそれぞれ1本づつ胸腔鏡下に確実に留置し,十分な陰圧をかけた.術後は7日間の持続吸引の後,ドレナージチューブを抜管した.全例で胸水の完全制御に成功している.しかしながら9例中1例は術後50日目に退院することなく死亡した.結論.本法は,分離肺換気麻酔下の胸腔鏡操作を必要とするが,確実に胸水を制御することが可能であった.本法は癌性胸水が確認されたら,なるべく早期に施行するべきであると考える.
  • 小田 純一, 秋田 眞一, 古泉 直也, 塚田 博, 谷 由子, 木原 好則, 森田 哲郎, 石川 浩志, 奥泉 美奈, 栗田 雄三
    2007 年 47 巻 6 号 p. 707-715
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/10
    ジャーナル オープンアクセス
    目的.間接読影から二次精検にいたるすべての検診プロセスで徹底した精度管理を実施してきた,新潟市の間接撮影による肺癌検診成績を解析し,精度管理が検診成績にあたえる効果を検証する.対象.新潟市地域肺癌検討委員会が本格的な精度管理を開始した1989~2003年までの,15年間の新潟市における胸部間接撮影による肺癌検診成績.結果.15年間の間接検診受診者総数は237,741名(男性/女性:0.30/0.70),有所見者数25,713名(10.8%),比較読影後の要精検者数12,765名(5.4%),精検受診率97.0%,発見肺癌288例(喀痰細胞診単独発見を除いた症例数),発見率10万対121,算出可能な1989~1999年までの11年間の肺癌標準化発見比0.91(男性0.72,女性1.39),発見肺癌の臨床病期I期症例数224例(78%),手術切除数220例(76%),完全切除数199例(69%),Kaplan-Meier法による5年生存率65.1%,10年生存率58.0%.結論.肺癌発見率,標準化発見比,I期肺癌割合,切除率,生存率などの検診の指標が従来の報告に比し良好であり,間接撮影による肺癌検診でも,精度管理を徹底することで,検診成績を向上させることができると考えられた.
  • 川野 亮二, 田川 公平, 横田 俊也, 池田 晋悟, 羽田 圓城, 藤井 晶子, 森 正也
    2007 年 47 巻 6 号 p. 717-721
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/10
    ジャーナル オープンアクセス
    目的.胸腺腫の治療におけるWHO分類の有用性について検討した.対象と結果.1990~2005年までに胸腺腫で切除を受けた51例(男性30例,女性21例)で,WHO分類別では,Type A-1例(2.0%), AB-18例(35.3%), B1-16例(31.4%), B2-11例(21.6%), B3-5例(9.8%)であった.なお,Type Cは本検討から除外した.正岡病期分類とWHO分類との関係は,病期I/II期ではType A/AB/B1群が81.1%を占めたのに対し,病期III/IV期ではType B2/B3群が64.3%を占めた.全症例の5年および10年生存率は,それぞれ90.8%,81.4%で,組織分類別にはType A-100%,100%,AB-100%,90%,B1-88.9%,88.9%,B2-83.3%,41.7%であり,Type B3は4年生存率で66.7%であった.Type A/AB/B1群とType B2/B3群の5年生存率は順に95.7%,77.4%,10年生存率は89.7%,38.7%となり,有意差はなかったが,Type B2/B3群が予後不良な傾向を認めた.完全切除47例中6例(12.8%)に再発を認めた.再発した6例はType A/AB/B1群34例中の1例(2.9%)に対し,Type B2/B3群では13例中5例(38.5%)と高かった.また,病期I/II期に限ると,Type A/AB/B1群とType B2/B3群間に予後に差はなかったが,病期III/IV期では,Type B2/B3群の予後がType A/AB/B1群よりも有意に不良であった(p=0.03).結論.WHO分類をType A/AB/B1とType B2/B3の2群に分ける方法は,胸腺腫切除例の再発および予後をみる上で有用であり,正岡分類の病期III/IV期においてWHO分類を行う意義が大きいと考えられた.
症例
  • 和田 啓伸, 柴 光年, 柿澤 公孝, 飯田 智彦, 田村 創, 須田 明
    2007 年 47 巻 6 号 p. 723-728
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/10
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.自然気胸を初発とする肺癌は稀であり,自然気胸を契機に発見された微小肺癌症例を経験したので報告する.症例.53歳,男性.2006年5月,呼吸困難感を自覚し,前医を受診した.左自然気胸と診断され,当院紹介となり,胸腔ドレナージが施行された.自然気胸は改善したが,胸部CTにて左S1+2胸膜直下に胸膜陥入を認め,周囲にGGOを伴った径10 mmの結節影を認めた.2ヶ月の経過観察にて結節影は消退せず,充実部分の増大および胸膜陥入の増悪傾向がみられたため,同年7月胸腔鏡下肺生検を施行し,肺腺癌と診断した.左肺上大区域切除およびリンパ節郭清術を引き続き行い,病理組織学的には腫瘍径7×7×5 mmの,高分化型腺癌pT1N0M0 stage IAと診断した.結論.近年,CT画像の向上とともに微小肺癌が発見される機会が増えつつあり,自然気胸症例といえどもCTの画像評価は,腫瘍性病変を見落とさないように慎重に行うべきである.周囲にGGOを伴う結節性小型病変は,悪性である可能性があり,経過観察にて消退しない場合,肺癌の可能性を念頭において精検すべきである.
  • 中村 孝人, 小川 修平, 水野 陽花, 三浦 幸子, 本津 茂人, 木村 弘
    2007 年 47 巻 6 号 p. 729-733
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/10
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.小細胞肺癌は化学療法と放射線療法に高い感受性を示し,初回治療においてはほぼ標準的治療が確立しているが,多くの場合は再発をきたす.その予後向上のためには初回治療のみならず,再発例に対する治療効果の改善が求められる.症例.74歳男性.肺小細胞癌(進展型)に対してシスプラチン・イリノテカン療法4コース施行後,すべての病変が消失した.しかし12ヵ月後,左大腿部痛が出現し,骨シンチで多発性骨転移を認めた.疼痛による歩行困難,経口摂取の低下があり,performance status 3の状態であった.また腎機能低下も認められ,sensitive relapse症例であったが,セカンドライン治療として塩酸アムルビシンによる単剤加療を施行した.投与後速やかに左大腿部痛は消失し,骨シンチにおいても著しい改善を認め,塩酸アムルビシン治療4コース終了後15ヵ月後も再発の兆候を認めていない.結論.現在,第II相臨床試験で塩酸アムルビシンがセカンドライン治療薬として有用であるとの報告がある.その報告も含め,検索した範囲では塩酸アムルビシン単剤投与が多発性骨転移に著効し,かつ長期の効果持続期間を得たとの報告はなく,興味深い症例と考えた.
第22回肺癌集検セミナー
  • 祖父江 友孝, 濱島 ちさと, 斎藤 博, 佐川 元保, 遠藤 千顕, 中山 富雄
    2007 年 47 巻 6 号 p. 735-741
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/10
    ジャーナル オープンアクセス
    がん検診によりがん死亡を減少させるためには,がん検診の死亡減少効果を科学的証拠に基づいて評価した上で(がん検診アセスメント),死亡減少効果の確立した検診を正しく実施する(がん検診実施マネジメント)必要がある.がん検診アセスメントについては,厚生労働省がん研究助成金「がん検診の適切な方法とその評価法の確立に関する研究」班(主任研究者 祖父江友孝)において手順を定式化し,この作成手順に基づいて肺がん検診ガイドラインを更新した.その結果,「非高危険群に対する胸部X線検査,及び高危険群に対する胸部X線検査と喀痰細胞診併用法」については,証拠のレベルは2+(死亡率減少効果の有無を示す,中等度の質の症例対照研究・コホート研究が行われている),推奨レベルをB(死亡率減少効果を示す相応な証拠があるので,実施することを勧める)と判断した.「低線量CT」については,証拠のレベル2-(死亡率減少効果に関する,質の低い症例対照研究・コホート研究が行われている),推奨レベルI(死亡率減少効果の有無を判断する証拠が不十分であるため,対策型検診として実施することは勧められない.任意型検診として実施する場合には,効果が不明であることと不利益について適切に説明する必要がある)と判断した.
  • 正影 三恵子, 西井 研治, 堀田 勝幸, 田端 雅弘, 瀧川 奈義夫, 木浦 勝行, 上岡 博
    2007 年 47 巻 6 号 p. 743-750
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/10
    ジャーナル オープンアクセス
    近年,岡山県においては大幅な検診受診者数の減少がみられている.このような状況が続けば,本来検診の目的である肺がん死亡率減少効果が弱まり,ひいては現行の肺がん検診の存続自体を危うくすることになり,その結果,将来肺がん検診実施市町村が大幅に少なくなってしまう可能性がある.現在でも肺がん検診未実施市区町村が全国には109(約5%)もあり,他のがん検診に比べて肺がん検診の必要度は低いとみなされ,予算配分で肺がん検診より優先すべき事業があるとまでいわれている.このような状況を踏まえて,現場の検診担当者の肺がん検診に対する率直な意見を収集し,問題点の把握を試みた.結果の集計をみると,専門的な検診に関する情報や知識が実際の現場に生かされていない,検診担当者が肺がんをほとんど知らない,検診担当者は精度管理の重要性を理解しているにもかかわらず,入札時の仕様書には精度管理項目が見当たらないなどの問題が認められた.結核検診と肺がん検診の違いが理解されていない面もあった.驚くべきことに,検診の目的そのものが回答できない担当者もあり,このような担当者ではがん検診の必要性を説いたり,住民に検診を勧奨したり,また厳しい財政状況の中,財務担当者に精度管理を重視した検診機関選定の方法を説得することは困難である.すべての肺がん検診に携わる行政機関の担当者は国が呼びかけている「精度管理の上に成り立つがん検診」が何かを理解し,住民に対して平等にしかも十分に検診機会を与えられるように努めねばならない.検診機関の職員も同様にその責任を果たすことで肺がん検診の受診率向上を目指さねばならないと思われた.
  • 遠藤 千顕, 近藤 丘
    2007 年 47 巻 6 号 p. 751-755
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/10
    ジャーナル オープンアクセス
    目的と方法.肺がん検診の精度管理状況を調査する目的で,全国の生活習慣病検診管理指導協議会肺がん部会にアンケート調査を行った.調査は肺がん検診の実施体制について肺がん部会がどの程度把握しているかを重点として平成18年9月に実施された.結果.平成19年2月までの集計で41都道府県より回答を得た(回答率87%).多くの肺がん部会では,市町村委託の検診機関の実施体制を把握していなかった.これは,平成9年度厚生省成人病検診管理指導協議会のあり方に関する研究班で報告された実態から何も改善されていないものと考えられた.一方,一部の自治体では老人保健事業報告後にも精検結果の追跡調査をしたり,精度管理指標を提示し,その達成率を点数化してホームページ上で公開したり,精度管理指標の数値にもとづいた指導がなされるチェックシートを利用したりと,積極的に取り組み始めていた.結論.肺がん検診の精度管理を行うべき生活習慣病検診管理指導協議会肺がん部会の活動内容は形式的であったが,取り組み始めた自治体も一部に認められた.都道府県レベルで精度管理についてさらに理解を深めるとともに,市町村を積極的に指導していくことが望まれている.
  • 中山 富雄
    2007 年 47 巻 6 号 p. 757-759
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/10
    ジャーナル オープンアクセス
    目的.現行の肺癌検診の精度管理の問題点を明らかにし,今後の精度管理の方向性を検討する.方法と結果.結核検診のフィルムを用いて医師が読影するというスタイルは,乳癌検診と比べれば,撮影や読影の質のバラツキを減らすことは困難である.対策として,(1)検診精度の情報公開,(2)都道府県成人病検診管理指導協議会の機能強化,(3)市町村と検診実施団体の契約条件への検診精度の導入,が考えられる.結論.検診精度を広く国民に知らしめるとともに,精度管理が重要であることを検診従事者自身が再認識する必要がある.
  • 中野 孝司
    2007 年 47 巻 6 号 p. 761-768
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/10
    ジャーナル オープンアクセス
    石綿(アスベスト)は珪酸塩よりなる6種の繊維状鉱物の総称であり,その構造はアスベストの毒性に関連している.高濃度の職業性曝露が少なくなった現在,多くの先進諸国では,肺線維症(石綿肺)が減少し,アスベスト関連胸膜疾患が増加している.中皮腫の発生とアスベスト曝露は深く関連し,最近,急増する傾向が見られ,今後10年以上はこの増加が続くと予想されている.アスベスト曝露はほとんどが職業上のものであり,青石綿を使用する造船関係やアスベスト工場周辺に中皮腫が多く発生する.2005年6月,兵庫県尼崎市のアスベスト取扱い工場において,多くの従業員のアスベスト関連癌死亡があり,工場周辺住民にも中皮腫が発生していることが公表され,一大社会問題となった.最も問題なのは,17%を占める曝露歴が明確でない中皮腫である.これらの原因にアスベスト工場周囲の環境曝露が関与しているのかどうかが問題であり,今,中皮腫の実態の調査が兵庫県尼崎市,大阪府泉南地方,佐賀県鳥栖市において行われている.中皮腫は治療に抵抗する極めて予後不良の悪性腫瘍である.びまん性発育を特徴とし,外科治療を困難にさせている.今までも標準的治療法の確立を目指す努力が続けられてきたが,最近,ペメトレキセドとシスプラチンの併用療法による良好な奏効率と生存期間の延長が明らかにされている.こられを背景に,多施設共同臨床試験が計画されているが,これらの全国規模の臨床試験は,科学的な中皮腫登録を積極的に進めることにつながる.
  • 芦澤 和人
    2007 年 47 巻 6 号 p. 769-776
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/10
    ジャーナル オープンアクセス
    肺癌検診へのCTの導入が世界的に広まり,高い肺癌発見率であることが明らかとなってきた.一方で,非常に高い有所見率,かつ高い偽陽性率が問題となってきている.受診者の30~70%に少なくとも1個の結節性病変が初回の検診CTで認められる.しかし,指摘された病変の約2~3%前後が肺癌であるに過ぎない.また,CT検診による肺癌の死亡率減少効果は,未だ証明されていない.このような状況で,低線量CT検診で発見される小病変の診断と経過観察基準の制定は非常に重要である.孤立肺結節の取り扱いのガイドラインは,費用―利益効果を十分に考慮したものでなければならない.我が国では,日本CT検診学会より「Single slice helical CTによる肺癌CT検診の判定基準と経過観察ガイドライン」の案が2005年1月に出された.本稿では,この案をもとに低線量CT検診における診断と経過観察の現状と問題点について述べる.
  • 花井 耕造, 柿沼 龍太郎, 江口 研二, 松本 徹, 長尾 啓一, 金子 昌弘, 村松 禎久, 山口 功, 中村 義正, 津田 雪之, 萩 ...
    2007 年 47 巻 6 号 p. 777-782
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/10
    ジャーナル オープンアクセス
    今後の受診者数の増加とそのニーズに対応して,低線量肺がんCT検診(以下,CT検診)を精度良くかつ能率的に行うためには,従来と異なる新しい検診システムの構築が不可欠となる.この課題に対し第3次対がん総合戦略研究事業「新しい検診モデルの構築と検診能率の向上に関する研究」土屋班の小班において,CT検診における認定技師(胸部CTスクリーナー)の検討がなされた.ここにその検討結果を報告し今後の展望について考察する.肺がんCT検診における認定技師の資格は,専門的なトレーニングを受けた後,認定試験によって与えられる.またその業務は今後,検討が予定されている肺がんCT検診画像読影の専門知識を持つ認定医師(肺がんCT検診認定医師)の下でのみ行われることを前提とする.認定技師の業務は,第1に被曝低減を目的として受診者に応じた最適スキャン条件による撮影を行うこと,第2に医師に対して最大限の画像情報を持つCT画像を提供すること,第3には1次読影として肺結節の拾い上げ(存在診断)を行うことである.肺がんCT検診認定医師,肺がんCT検診認定技師,認定施設の3つの制度を整備することにより,精度の高いCT検診を幅広く提供できる体制の構築を目指して行く.
  • 中川 徹
    2007 年 47 巻 6 号 p. 783-784
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/10
    ジャーナル オープンアクセス
    低線量肺癌CT検診の今後の受診者数の増加とそのニーズに対応して,費用や人材の効果的な投入が可能であるかは,検診の実行性において大きな課題である.医師,診療放射線技師を中心に,看護職や事務職で構成された検診チームが,それぞれの専門性を十分発揮できる仕掛けが検診の成功には欠かせない.第22回肺癌集検セミナーシンポジウムの「低線量CT検診における体制整備」において,教育と認定について,読影医の立場から提言をさせていただいた.読影医の認定に関して,肺癌CT検診というジャンルで単独に資格認定の枠組みを立ち上げ,維持することは困難が多いのではないか.そこで,各種医学会において,種々の認定医・専門医試験が実施されているが,CT検診にふさわしい資格について,日本肺癌学会において議論していただくことを提案した.また,教育研修については,時間や費用の制約より,パソコンやコンピュータネットワークなどを利用して教育を行うe-ラーニングの活用が有用ではないか.遠隔地にも教育を提供できる,時間的制約がない,読影トレーニングの教材も利用できるなど実施が容易である.課題はあるにしても,習熟度確認や質疑応答なども可能で,期間や人数を制限し,有料で運営することで実現性がさらに高まる.
  • 関 順彦, 江口 研二, 金子 昌弘, 大松 広伸, 柿沼 龍太郎, 松井 英介, 楠本 昌彦, 土田 敬明, 西山 祥行, 森山 紀之
    2007 年 47 巻 6 号 p. 785-789
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/10
    ジャーナル オープンアクセス
    肺癌CT検診の有効性は,肺癌死亡率の減少が証明されて初めて効果があると判断されるが,現在のところランダム化比較試験に基づく結果報告はなされていないため,肺癌死亡率の減少は証明されていない.2009年以降には現行のランダム化比較試験の結果が発表される予定であるが,それまでは症例研究の結果に基づいて繰り返しCT検診の有効性を推測せざるを得ない.このような中,「東京から肺がんをなくす会」による症例研究で初めて肺癌死亡率の減少を間接的に示唆するステージシフトの存在が示された.また,この研究結果からは,現行のランダム化比較試験の試験デザインが肺癌死亡率の減少を証明するための十分な検出力をもたない可能性についても示唆された.従って,ランダム化比較試験の結果がnegativeに終わってしまった場合でも,繰り返しCT検診が即有効でないと単純に結論するのではなく,試験デザインそのものを再検討するべき必要性についても,今から認識しておかなければならないであろう.
支部会推薦症例
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