目的. 印環細胞型腺癌成分を含む原発性肺腺癌について臨床病理学的な検討を行った.
対象・方法. 最近12年間で生検にて印環細胞型腺癌成分を確認した4例を対象とした. 臨床事項として, 年齢, 性別, 喫煙歴, 臨床もしくは病理病期, 手術適応, 予後, および画像病理学的事項として, サイズ, 局在, 病変の内部および辺縁性状, 血管集束の有無, 分化度, 隣接臓器への進展および遠隔転移の有無を検討した.
結果. 同時期の肺腺癌に占める頻度は, 0.82%(4/488) で, 性別は男性3例, 女性1例. うち1例は39歳の若年者であった. 2例は中枢発生, 2例が末梢発生であった. 画像上は, 充実性で境界は明瞭, 辺縁はnotchもしくはspiculaを呈し, 周囲にすりガラス状の領域はみられなかった. 4例中3例は検診指摘例であったにもかかわらず, いずれも隣接臓器への浸潤もしくは遠隔転移を伴い, 手術施行例は1例のみであった. 手術不適応例は数ヶ月以内に癌死し, 手術施行例も術後11ヶ月で癌死した.
考察. 今回の検討では, 症例数が限られているが, 画像上, 充実性, 境界明瞭, 辺縁不整な性状を呈し, 周囲にすりガラス領域はみられなかった. 所属リンパ節転移もしくは局所浸潤/遠隔転移を伴い, 悪性度の高い性格が示唆された. また生検組織診断の結果, 転移性肺腫瘍疑いとされ, 肺以外の全身検索を施行した. 印環細胞型腺癌は最近改訂されたWHO分類の肺腺癌Variantsの中にも記載されており, 正しい認識が必要であり, 今後の症例の蓄積と更なる臨床病理学的検討が望まれる.
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