肺癌
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56 巻, 1 号
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原著
  • 木村 文平, 中島 拓也, 草島 健二, 土屋 香代子, 丹内 則之, 布村 眞季, 高野 智子, 常見 安史, 加藤 冠, 宮岡 悦良
    2016 年 56 巻 1 号 p. 2-11
    発行日: 2016/02/20
    公開日: 2016/03/30
    ジャーナル オープンアクセス
    目的.地域医療機関における原発性肺癌診療の現状を調査,報告する.対象と方法.1991年から22年間に東京の地域病院にて病理学的に診断した原発性肺癌入院患者2039例を前期(1991~2000年)1135例,後期(2001~2012年)904例に分けて発見動機,組織型,病期,治療法,performance status(PS),生存率を比較検討した.結果.前期:後期について,発見動機は症状:検診:他疾患診療中各54.8%:18.2%:26.9%,46.2%:22.7%:30.9%であった.腺癌:扁平上皮癌各48.5%:30.7%,54.1%:22.9%,I期:IV期は各24.1%:36.6%,31.2%:39.7%であり,切除:化学療法and/or放射線療法(化/放):緩和治療は各36.7%:26.6%:34.5%,36.3%:33.0%:27.4%で,後期で無症状発見,腺癌,IおよびIV期,化/放が増加した.また,後期ではPS 0と4が増加した.5年生存率は各24.1%,32.5%で後期で上昇した.結語.検診および他疾患診療中の患者に発生する肺癌のI期での発見例を増加させることで,原発性肺癌の生存率を向上させることが可能である.
症例
  • Yoshimasa Tokunaga, Tatsuo Nakagawa, Masao Saitoh, Takeshi Kondo
    2016 年 56 巻 1 号 p. 12-16
    発行日: 2016/02/20
    公開日: 2016/03/30
    ジャーナル オープンアクセス
    Background. Glomus tumor of the trachea is a rare disease. Case. We herein describe a 56-year-old man with an asymptomatic glomus tumor of the trachea who underwent tracheal resection and reconstruction. Thirty months after surgery, bronchoscopy and imaging studies revealed no evidence of recurrence. Conclusion. The clinicopathological features are discussed in this case report.
  • 鈴木 仁之, 庄村 心, 井上 健太郎, 矢田 真希, 島本 亮, 近藤 智昭
    2016 年 56 巻 1 号 p. 17-21
    発行日: 2016/02/20
    公開日: 2016/03/30
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.肺の空洞性病変が感染をきたした際に,急速に壁肥厚や空洞が増大することは知られている.しかし,気管支鏡下の生検後早期に感染を形成して急速に増大することは稀である.今回我々は,気管支鏡下生検後の感染により急速に増大した転移性肺腫瘍の1例を経験したので報告する.症例.63歳,男性.直腸癌術後フォローアップCT検査で左下肺野に空洞を伴う結節を認めたため気管支鏡検査を施行したところ,直腸癌肺転移と診断された.検査後2日に発熱を認め,CT検査では腫瘍径は急速に増大し,空洞内部に液の貯留を認めた.空洞内感染の診断で抗菌薬治療を開始したが,敗血症性ショックに陥ったため緊急左下葉切除を施行した.結論.空洞を伴う径の大きな腫瘤に対する生検は慎重に行い,診断確定後には早期の手術を行う必要がある.
  • 上野 学, 阿部 貴紘, 佐藤 麻里, 原田 直之, 清水 雄至, 茂木 充
    2016 年 56 巻 1 号 p. 22-26
    発行日: 2016/02/20
    公開日: 2016/03/30
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.非喫煙女性肺扁平上皮癌の心筋転移は極めて稀である.症例.患者は73歳の女性.2014年4月に背部痛を主訴に前医に入院した.入院してまもなく心筋梗塞を発症したため,経皮的冠動脈形成術を施行した.胸部CTで左下葉に腫瘤影を認めたため,肺腫瘍の精査目的に当院に転院となった.CT・MRI検査では,心筋,脳,腎,骨,リンパ節に多発転移を認めた.心筋転移巣は心筋梗塞巣と関連していた.7月に癌の進行に伴う意識障害と循環不全のため永眠した.autopsyで扁平上皮癌と診断した.結論.非喫煙女性肺扁平上皮癌の心筋転移が心筋梗塞を誘発した可能性が示唆された.
  • 石橋 史博, 椎名 裕樹, 松井 由紀子, 守屋 康充, 飯笹 俊彦
    2016 年 56 巻 1 号 p. 27-32
    発行日: 2016/02/20
    公開日: 2016/03/30
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.縦隔を原発とする胚細胞腫瘍は比較的稀である.症例.症例は68歳男性.健診での胸部CTにて前縦隔に腫瘤影を認め,精査加療目的に当院紹介受診された.胸部CT上,縦隔腫瘍と同時に左第6肋骨頭にも腫瘍性病変がみられた.胸腺腫もしくは胸腺癌からの肋骨転移が疑われ,針生検を施行したが確定診断は得られなかった.縦隔腫瘍への生検も困難であり,確定診断および治療目的に手術を行うこととした.胸腔鏡補助下に手術を施行,左第6肋骨腫瘍の生検を行い迅速病理で悪性腫瘍の診断,縦隔腫瘍は左上葉の一部に浸潤していたため腫瘍摘出および左肺部分切除を施行した.最終病理にて縦隔原発の精上皮腫,成熟型奇形腫,胎児性癌の混在する混合性胚細胞腫瘍,肋骨転移と診断され,シスプラチン,エトポシド,イホスファミドによる化学療法を4コース施行された.結論.縦隔型胚細胞腫瘍は高齢男性の発症例の報告は少ない.また,本症例のように孤立性の肋骨転移を伴うことは稀な進展形式と思われ,貴重な症例と考えられた.
  • 松尾 はるか, 石橋 洋則, 馬場 峻一, 小林 正嗣, 明石 巧, 大久保 憲一
    2016 年 56 巻 1 号 p. 33-37
    発行日: 2016/02/20
    公開日: 2016/03/30
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.肺癌に合併した気胸は0.05~1.13%程度との報告があり,肺癌に合併した血胸は非常に稀である.症例.44歳男性.右胸背部痛,呼吸苦を主訴に近医を受診し,右血気胸と診断され当院紹介.気漏が継続し,胸腔鏡下右肺部分切除・血腫除去術を施行した.病理診断にて穿孔部の臓側胸膜下に扁平上皮癌を認めたため全身精査を施行し,胸腔鏡下右上葉切除およびリンパ節郭清を施行した.結論.高齢,重喫煙,気腫性肺嚢胞などの因子を有する自然気胸症例においては,肺癌の存在を念頭に慎重な検索が肝要と考えられた.
  • 水谷 尚雄, 栁沼 裕嗣, 西江 尚貴, 鈴鹿 伊智雄
    2016 年 56 巻 1 号 p. 38-42
    発行日: 2016/02/20
    公開日: 2016/03/30
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.肺内リンパ節の存在は肺癌の肺内転移と紛らわしいことがあるが,肺癌が肺内リンパ節に転移することは稀である.症例.症例は左上葉原発非小細胞肺癌の81歳女性で,同側上下葉の胸膜下の複数の結節が指摘されていた.適応が成立するならば,根治手術である左上葉切除を希望されたため,左下葉胸膜下結節の病理診断をつけるべく胸腔鏡手術を施行した.術中凍結診断で肺癌の肺内リンパ節転移であることが判明し,これ以上の手術は断念した.著者らが渉猟した限りでは,同側他葉内肺内リンパ節への肺癌転移の報告はなく,このような珍しいリンパ行性転移を来した機序につき文献的考察を加えた.結論.胸膜下結節に遭遇した場合,最も可能性の高い診断のひとつに肺内リンパ節が挙げられるが,当該癌腫が同リンパ節に転移する可能性が示された.呼吸器外科医は肺に存在する悪性疾患を扱う時に,胸膜下結節が生検しやすい局在である場合は,生検を躊躇すべきでない.
第30回日本肺癌学会ワークショップ
  • 中西 洋一
    2016 年 56 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 2016/02/20
    公開日: 2016/03/30
    ジャーナル オープンアクセス
    小細胞肺がんは増殖速度が速く転移しやすい一方で,薬剤感受性が高い.臨床的には限局型と進展型に分類される.明確な境界は定められていないが,治療方針と予後からすると限局型とは一側胸郭,縦隔,鎖骨上リンパ節に限局しており,かつ悪性の腔水症がないケース,すなわち放射線照射領域に腫瘍が限局しているものを指すことが多い.このような進展範囲の腫瘍は全小細胞肺がんの30%程度である.限局型小細胞肺がんは根治が期待できる疾患として,化学放射線療法が選択される.標準的治療は化学放射線同時併用療法である.併用する化学療法は,放射性肺臓炎を起こすリスクの少ないシスプラチンとエトポシドの併用療法が選択される.標準的治療を行った場合,中央生存が16~24ヵ月程度,5年生存率は14%程度である.一方,進展型小細胞肺がんは中央生存が6~12ヵ月程度で,長期生存はほとんど見込めない.進展型小細胞肺がんにおいては初回治療として薬物療法単独が選択される.我が国のガイドラインにおいては,耐用可能な症例に対してはシスプラチンとイリノテカンの併用療法が第一選択である.
  • 西尾 和人
    2016 年 56 巻 1 号 p. 48-54
    発行日: 2016/02/20
    公開日: 2016/03/30
    ジャーナル オープンアクセス
    背景・目的.肺癌薬物療法において,遺伝子異常を特定し治療選択を行う最適化医療が進んでいる.たとえばALK融合遺伝子の検出などの診断キットは,ALK阻害剤の適否に必須であり,コンパニオン診断薬と呼ばれる.今後複数のドライバー遺伝子の検出を行う必要があり,マルチ診断技術を用いたクリニカルシーケンスの実施が重要である.我々は,クリニカルシーケンシングの実施可能性,臨床的有用性を検討した.近畿大学医学部およびゲノムセンターにおいて,次世代シーケンサーを用い,マルチ診断薬のプラットフォームを構築し,その非臨床性能試験の後,臨床的な実施可能性を探るため,同附属病院受診の患者のうち,同意を得た患者のホルマリン固定パラフィン包埋腫瘍薄切を用いて,抽出した核酸を用い,各種ターゲットリーシーケンスを実施,標的となり得るドライバー遺伝子が陽性の患者は適応となる分子標的薬治療を受けた.結果.クリニカルシーケンシングによりドライバー遺伝子陽性で,対応する分子標的薬の治療を受けた患者は,そうでない患者に比し生存率が良好であった.結論.非小細胞肺癌患者において,ホルマリン固定パラフィン包埋腫瘍薄切を用いたクリニカルシーケンシングの有用性が示された.
  • 矢野 聖二
    2016 年 56 巻 1 号 p. 55-60
    発行日: 2016/02/20
    公開日: 2016/03/30
    ジャーナル オープンアクセス
    肺腺がんにおいて,EGFR遺伝子変異の発見を皮切りにALK融合遺伝子やROS-1融合遺伝子,RET融合遺伝子など,数多くのドライバー遺伝子異常が発見された.EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)とALK-TKIは既に認可されて,一般臨床の場で使用されている.それ以外のドライバーを有する肺がんに対しては,現在対応する分子標的薬による治験が行われており,有効性が検討されている.一方,EGFR-TKIやALK-TKIは,それぞれEGFR変異やALK融合遺伝子を有する肺がんに対し一旦奏効するが,数年以内に獲得耐性により再発することが次なる臨床的問題となっている.最も代表的な耐性機構は標的遺伝子の2次的変異である.2次的変異にも有効な次世代EGFR-TKIやALK-TKIも開発が進められている.アポトーシス抵抗性も重要な耐性機構の一つである.東洋人特異的なBIM遺伝子多型はEGFR-TKI耐性を惹起する.我々は,HDAC阻害薬ボリノスタットを併用することでBIM遺伝子多型に起因したEGFR-TKI耐性を解除しうることを明らかにし,現在EGFR-TKIとボリノスタット併用の医師主導治験(VICTORY-J)を行い,安全性と有効性を検討している.
  • 岩井 佳子
    2016 年 56 巻 1 号 p. 61-65
    発行日: 2016/02/20
    公開日: 2016/03/30
    ジャーナル オープンアクセス
    手術,化学療法,放射線療法に続く第4のがん治療として免疫療法が登場したが,その効果については長い間疑問視されてきた.1891年にWilliam Coley博士が腫瘍内に細菌を投与する治療を行ったのががん免疫療法のはじまりとされるが,このメカニズムが理解されるようになったのはごく最近で,樹状細胞の発見と病原体認識機構の解明まで約1世紀を要している.がん免疫療法は,がん抗原に特異的な免疫応答を誘導する「特異的免疫療法」と,がん抗原に非特異的に免疫応答を増強する「非特異的免疫療法」に分けられる.免疫システムには,免疫系を活性化するアクセル(共刺激分子)と抑制するブレーキ(共抑制分子)が存在して,免疫応答と免疫寛容のバランスを制御しており,従来のがん免疫療法ではアクセルを踏むことに重点が置かれてきたが,ブレーキ解除によって免疫系のアクセルが入るようにしたのが免疫チェックポイント阻害剤である.PD-1抗体をはじめとする免疫チェックポイント阻害剤はこれまでのがん免疫療法に対する評価を一変させ,有望な治療法として期待されている.
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