肺癌
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42 巻, 1 号
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  • 南 優子, 石川 成美, 斎田 幸久, 梶谷 元改, 野口 雅之, 山本 達生, 佐藤 幸夫, 鬼塚 正孝, 榊原 謙
    2002 年 42 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2002/02/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    目的. 胸部単純X線写真無所見肺門部肺癌の局在診断における高分解能CT (以下HRCT) の有用性を検討することを目的とした. 方法. 気管支鏡検査に先行して肺門部のHRCTを施行し読影した. 気管支病変の診断は白色光及び蛍光気管支鏡で観察し, 最終診断は内視鏡所見及び生検によった. 対象. 胸部単純X線写真上所見を認めず, 喀痰細胞診あるいは血痰から肺門部肺癌が疑われる19症例を対象とした. 結果. 19例中8例で肺門部扁平上皮肺癌が証明され, 11例は非悪性症例であった. HRCTで19例中13例に19部位の肺門部気管支に異常所見を認めた. このうち9部位が気管支鏡でも有所見であった. 悪性病変は全部で8病変であり, CTで描出できなかったのは1病変のみでそれは上皮内癌であった. 気管支鏡での有所見は全部で20部位であったが, 上記の上皮内癌を含む4部位 (20%) がCTで捉えられなかった. 結論. 胸部X線写真無所見肺門部肺癌の局在診断において, HRCTで気管支鏡有所見部位の80%を捉えることができた. 癌と診断された8病変中7病変 (87.5%) を指摘することが可能であった. 有用な補助診断法の1つとなり得ると考えられた.
  • 林 康史
    2002 年 42 巻 1 号 p. 7-15
    発行日: 2002/02/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    目的. papillaly adenocarcinomaの分類はWHOと日本肺癌学会分類ではbronchioloalveolar carcinoma (BAC) の扱いにおいて多少異なっている. そこで今回はpapillary adenocarcinomaおよびBACと診断された症例を臨床病理学的に検討し, WHO新分類の妥当性と問題点を検討した. 対象および方法. 1987年から1995年までに切除された肺癌の内, papillary adenocarcinomaおよびBACと診断された症例183例を対象とした. HE標本からこれらをBAC像のみしか認められない症例 (BAC群), 腫瘍辺縁部にはBAC像を認めるが腫瘍中心部にはpapillary adenocarcinomaの像を認める症例 (PB群), 腫瘍辺縁部にもBAC像を認めずpapillary adenocarcinomaの像のみを認める症例 (PA群) の3群に分けた. これら3群について臨床所見 (年齢, 性別, 喫煙歴), 病理学的所見 (p-TN因子, p-stage, 血管侵襲, リンパ管侵襲, 細胞亜型) および免疫組織化学染色にてki67抗原発現, vEGF発現, p53異常蛋白発現を, restriction fragment lengeth polymorphism-polymerase chain reaction (RFLP-PCR) 法にてk-ras codon 12変異を検索し, 比較検討した. 結果. BAC群とPB+PA群で分けると臨床的には性別でBAC群に有意に女性が多く (p=0.008), pT因子, pN因子, p-stageでも両者間に有意差を認めた. また, 病理学的にも血管浸潤, リンパ管浸潤, 分化度において有意差を認め, 今回検討したki67発現 (p=0.002), VEGF発現 (p=0.029), k-ras mutation (p=0.022) において有意差を認めた. 一方, PB群とPA群を比較すると, p-stageのみに有意差を認めその他の因子においては臨床的にも病理学的にも有意差は認められなかった. また予後においても同様で, 5年生存率および無再発期間を比較すると, BAC群はPB+PA群に比較し有意に予後良好であったが, PB群とPA群には差を認めなかった. 結論. 細胞亜型などから考慮すると発生学的にはPB群とPA群問には相違があるかもしれないが, 今回の検討からは臨床的にも病理学的にもPB群とPA群を区別することは困難であった. また, BAC群とPB+PA群問には, 予後も含め臨床的にも病理学的にも差が認められた. 従って現時点では, BACは肺胞上皮置換性にのみ増殖し間質浸潤を認めないものと定義して独立して分類し, その他は全てpapillary adenocarcinomaとして両者を区別することが臨床上合理的であると結論した.
  • 特に他疾患診療中の発見肺癌について
    松本 英彦, 小川 洋樹, 豊山 博信, 柳 正和, 西島 浩雄, 愛甲 孝
    2002 年 42 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 2002/02/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    目的・方法. 1973年より1999年までに当科において手術を施行した原発性肺癌636例について発見動機別に検診群 (258例), 症状群 (262例), 他疾患群 (116例) の3群に分類し各々の特徴について検討した. 結果. 検診群は症状群・他疾患群と比較して年齢が若く男性の割合・喫煙指数・術後の心・肺合併症の発生も少なく他病死例も低頻度であった. 一方症状群は検診群・他疾患群と比較して扁平上皮癌・進行癌・非完全切除例が多数で術後の心・肺合併症発生率が高く他病死例も多く, 他疾患群の特徴として患者側因子は症状群と類似し, 腫瘍側因子は検診群と類似していた. 全死因で検討すると検診群, 他疾患群, 症状群の順に予後は良好であったが他病死をうち切りとすると検診群と他疾患群との予後の差は消失したことから, 他疾患観察中の肺癌発見症例の中にも検診発見例と同頻度の治癒可能な症例が存在すると考えられる. しかし一方で検診群でも縦隔リンパ節転移陽性例, Stage III・IVの進行癌症例が存在していた. 結論. 今後は肺癌検診のいっそうの精度向上とともに, 日常診療における胸部写真を有効利用しわずかな異常も見逃さずCTを撮影するなどの一般の医療機関への啓蒙も重要と思われる.
  • 千田 雅之, 谷田 達男, 佐藤 雅美, 星川 康, 前田 寿美子, 遠藤 千顕, 半田 政志, 近藤 丘
    2002 年 42 巻 1 号 p. 23-27
    発行日: 2002/02/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    目的. 80歳以上の症例に対する標準手術 (肺葉切除+2群郭清)・郭清縮小手術 (肺葉切除以下+1群郭清以下) と予後の関係を検討した. 方法. 対象は, 1981-99年に当施設にて原発性肺癌に対し肺切除を施行した80歳以上の超高齢者35例 (男: 女=29: 6) である. 結果. 術式は, 標準手術 (ND2群) 22例 (肺摘除2例, 肺葉切除20例), 郭清縮小手術 (ND 0-1群) 13例 (肺葉切除11例, 区域切除以下2例) であった. 手術関連死はなかった. 全死因で検討した5年生存率は, 全体でND2群22.2%, ND 0-1群43.8%. I期でもND2群 (13例) 30.8%, ND 0-1群 (9例) 50.0%とND2群で予後不良であった. 長期予後ではND2群で他病死が多かった. 術後合併症はND2群で術後不整脈が有意に多かった (p<0.05). 結論. 80歳以上の高齢者では機能的に手術可能であっても, 標準手術 (縦隔郭清) で長期予後が不良である可能性があり検討を要する.
  • Ki-67による増殖能の検討
    南 健一郎, 齊籐 幸人, 大宮 英泰, 今村 洋二, 坂井田 紀子, 岡村 明治
    2002 年 42 巻 1 号 p. 29-33
    発行日: 2002/02/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    背景. 肺腺癌は組織亜型が多いが, 肉腫様変化を伴うものは比較的少なく, さらにこれらの細胞生物学的な性状を評価した報告例は我々が検索し得た限りではなかった. 著者らは肉腫様変化を伴った末梢型肺腺癌の1例を経験し, 増殖因子Ki-67を用いて, その細胞生物学的特徴について検討したので報告する. 症例. 症例は75歳, 男性. S5の末梢部の肉腫像を伴う肺腺癌 (日本肺癌学会), carcinoma with sarcomatoid elements, pleomorphic carcinoma (WHO) で, 葉問を越え上葉に直接浸潤しpT2N0M0, IB期であった. 組織学的には多彩で, 多くは紡錘細胞肉腫様像を呈していたが, 限局性に肺胞壁に沿った増殖を示す通常の中分化型腺癌が混在し, 両者の移行像もみられた. 免疫組織学的にはケラチンが肉腫様紡錘細胞および管腔形成を示す腺癌細胞に陽性であったが, 特異的なのはKi-67の標識率が分化型腺癌細胞と比べ肉腫様細胞で有意に高かった点である. なお, 本例は術後14ヶ月で多臓器転移のため癌死した. 結論. 本腫瘍は通常の腺癌がより低分化で増殖能の高い肉腫様に変異し, 腫瘍の大半を占め, 臨床的にも高悪性度を呈したと考えられた.
  • 稲毛 芳永, 角 昌晃, 藤原 正親, 山本 達生, 石川 成美, 鬼塚 正孝
    2002 年 42 巻 1 号 p. 35-40
    発行日: 2002/02/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    背景. 緩徐に増大し10年以上の長い臨床経過を有する肺腺癌は稀であり, これまでの報告例はいずれも粘液産生性の気管支腺型あるいは杯細胞型の腺癌症例である. 症例. 症例は75歳女性. 12年前に肺癌検診で異常を指摘されたが精査を受けなかった. 血痰を主訴に本院を受診. 左肺に6×4cmの浸潤影を認め, 精査治療目的で入院した.胸部CTでは左肺S4に7×4×3cmのconsolidationを認め, 精査にて左肺腺癌cT2N0M0, Stage IBと診断し, 左肺上葉切除術及び縦隔リンパ節郭清術を施行した. 切除標本では, 腫瘍細胞が肺胞置換性に増殖する細気管支肺胞上皮癌様の像を主体とする粘液産生に乏しいクララ細胞型及び気管支表面上皮細胞型の高分化乳頭型腺癌で, 病理病期はpT2N0M0, Stage IBであった. 結論. 本症例は, 手術までに12年という長い臨床経過を有したクララ細胞型及び気管支表面上皮細胞型の粘液非産生高分化乳頭型腺癌であり, 緩徐な増大を示す肺腺癌の中でも稀な症例と考えられた.
  • 南 誠剛, 小牟田 清, 浅井 光子, 岩堀 幸太, 内海 朝喜, 城戸 哲夫
    2002 年 42 巻 1 号 p. 41-44
    発行日: 2002/02/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    背景. 肺癌と肺梗塞の合併は稀でないが, 肺梗塞巣と肺内転移巣との鑑別は難しい.症例. 62歳女性. 胸部レントゲン異常を指摘されて当院受診. 胸部CT上, 左下葉に2つの腫瘤様陰影を認め, 中枢側腫瘤の気管支搾過細胞診より肺腺癌と診断された. 末梢側腫瘤に関しては同一肺葉内転移の可能性を考えてStage IIIB (T4N0M0) と判断した. 左下葉切除術を施行し, 切除標本より末梢側腫瘤は肺梗塞巣と判明し, 術後臨床病期はStage IA (T1N0M0) であった.結論.主病変以外に同一肺葉内に異常陰影を認める場合は, 肺梗塞の合併も念頭に置くことが大切と考えられた.
  • 藤永 一弥, 高尾 仁二, 渡辺 文亮, 金光 真治, 新保 秀人, 矢田 公
    2002 年 42 巻 1 号 p. 45-49
    発行日: 2002/02/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    背景.肺癌脳転移, 特に同時性肺癌脳転移は予後不良とされているが, 術後7年以上無再発生存中の1例を経験したので報告する.症例.60歳男性. 頭痛を主訴に, 当院脳神経外科を受診. 精査にて右頭頂後頭葉領域と, 右前頭葉に2つの腫瘍を認め多発性脳腫瘍と診断された. 手術目的で精査中, 右肺尖部に異常陰影を指摘され, 原発性肺癌の脳転移が疑われ, 平成6年1月に開頭下脳腫瘍摘出術を施行. 腫瘍は扁平上皮癌であった. 術後, 病巣は完全摘出され周辺の浮腫も改善し, また他の部位への転移は認めなかったため, 原発巣である肺癌に対して同年2月右上葉切除術+ND2bを施行した. 腫瘍は, 母趾頭大でS1にあり, 壁側胸膜と癒着していたため, 胸膜を一部合併切除した. 術後診断は肺扁平上皮癌 (T3N1M1) で, 脳腫瘍の原発巣と考えられた. 脳腫瘍摘出後は, 全脳照射を行ったが, 肺癌に対する補助療法は行っていない. 術後7年以上経過した現在再発の兆候はなく, 外来通院中である.結論.同時性肺癌脳転移においても全脳照射を併用した積極的なcombined resectionにより, 生命予後及びQOLの改善が期待できると考えられる
  • 細田 裕, 和泉 宏幸, 新 謙一, 篠原 直宏, 砂盛 誠
    2002 年 42 巻 1 号 p. 51-54
    発行日: 2002/02/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    背景.今回われわれは, 術前より病巣内に小石灰化を認めた原発性肺腺癌切除例の病巣内に骨形成を認めた症例を経験した.症例.66歳の男性で人間ドックの際に胃透視レントゲン検査で, 右肺底部背側の異常陰影を指摘され精査の後手術となった. 手術は右下葉切除と2群リンパ節の郭清を行い, 術後経過は良好である.結論.術後の病理組織像で, 腺癌の病巣中心部の間質に, 骨の形成を認めた.肺癌の細胞はTransforming growth factor beta (TGF-beta) ス-パ-ファミリ-に属するBone morphogenetic protein 2 (BMP2) が, 肺癌病巣の一部の細胞において陽性であった. 肺腺癌の骨形成は報告がまれであり, 本症例では, 骨新生の機転に対して, 癌細胞から産生された細胞増殖因子の関与している可能性が示唆された.
  • 中西 京子, 大崎 能伸, 中尾 祥子, 徳差 良彦, 三代川 斉之, 菊池 健次郎
    2002 年 42 巻 1 号 p. 55-59
    発行日: 2002/02/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    背景. 悪性腫瘍の自然退縮はまれな現象で, 原発性肺癌での報告は極めて少数である. 我々は, 自然縮小した肺小細胞癌の1例を経験したので報告する. 症例.65歳, 男性. 呼吸困難を主訴に前医を受診した. 胸部異常陰影を認め精査のため当科に紹介された. 胸部X線写真と胸部CTにて右S6の結節影と右肺門の腫瘤陰影を認めた. 経気管支擦過細胞診では悪性細胞を認めなかった. 臨床経過より悪性腫瘍を疑いCTガイド下で経皮的穿刺吸引細胞診を施行し, 肺小細胞癌と診断した. 放射線治療同時併用化学療法を予定し, 全身検索を行っていたところ4週間前の胸部X線写真, 6週間前の胸部CT写真と比較して, 結節影と肺門部腫瘤はともに縮小していた. 腫瘤縮小時の血液検査ではNK細胞活性が高値であった. 肺小細胞癌としては非定型的な経過のため本人の同意を得て右S6の結節影の胸腔鏡下生検を施行し, 病理組織学的にも肺小細胞癌と診断した. その後, 右肺門部リンパ節の増大を認めたため, 放射線治療同時併用化学療法を施行した. 縮小率は75%であり, 効果は有効であった. 現在も再発の徴候なく外来で経過観察中である.結論.悪性腫瘍の自然退縮の機序は未だ明らかではない. 本症例では, 宿主の免疫能, 穿刺検査や放射線の影響など様々な要因が重複し肺小細胞癌が自然に縮小したと考えられる. 悪性腫瘍の自然退縮例の機序の詳細な解析が今後の癌治療または予防の手がかりとなる可能性もあり得る.
  • 2002 年 42 巻 1 号 p. 60-67
    発行日: 2002/02/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
  • 2002 年 42 巻 1 号 p. 68-73
    発行日: 2002/02/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
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