症例は62歳, 女性で1991年3月13日に肺癌疑いにて右中下葉切除 (左房合併切除) を施行, 病理所見は非定型カルチノイドでpT4NIM1 (PUL) であった.術後4年3ヵ月に左乳房D領域に約1cm大の腫瘤を触知し, 乳癌の診断下に1995年8月3日にquadrantectomyを施行した.病理所見ではGrimelius及びchromogranin陽性の神経内分泌穎粒を認め, 肺カルチノイドの乳腺転移と診断した.術後3ヵ月頃より, 皮膚の紅潮, 喘鳴, 下痢などカルチノイド症候群を呈し, 血中セロトニン0.90μg/ml, 血中5-HIAA75.6ng/ml及び尿中5-HIAA17.3mg/dayと著増を示した.酢酸オクトレオチドの投与にて同症候群は軽快したが, 1996年4月には気管支断端再発, 1996年10月に腹壁, 1997年3月に右乳腺に転移を認め, 各々治療した.現在, 頭皮及び腹壁に転移を認め, 血中セロトニン2.86μg/ml, 血中5-HIAA 132.7ng/ml及び尿中5-HIAA34.8mg/dayとさらなる著増を認めているが, 原発巣術後6年9ヵ月の現在, 外来経過観察中である.
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