肺癌
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51 巻, 7 号
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委員会報告
  • 佐藤 雅美, 斎藤 泰紀, 渋谷 潔, 中山 富雄, 平野 隆, 近藤 丘, 馬場 雅行, 池田 徳彦, 佐川 元保, 伊豫 田明, 宝来 ...
    2011 年 51 巻 7 号 p. 777-786
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/02
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.喀痰細胞診は肺癌検診において,肺門部早期肺癌の発見のための唯一のスクリーニング法であるが,さまざまな問題点も存在している.このため3学会(日本肺癌学会,日本臨床細胞学会,日本呼吸器内視鏡学会)合同委員会において検討を重ね,アンケートを行った.目的.全国の肺門部(早期)肺癌の確定診断の実態を明らかにする.対象と方法.日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡認定施設・関連認定施設にアンケートを送付し,2006年,2007年の気管支鏡検査件数,肺癌切除例数,新規肺門部早期癌診断例数,その発見動機,組織型,治療法を,さらに可能な範囲で肺門部進行扁平上皮癌数,喀痰細胞診陽性・疑陽性による検査件数,喀痰細胞診による末梢型肺癌例数などに関して回答を求めた.結果.504施設にアンケートを送付し308施設より回答を得た.これらの施設は日本胸部外科学会全国集計の57.1%をカバーしていた.年間150例程度の肺門部早期肺癌が報告された.報告数とカバー率から肺門部早期肺癌の全国における初回診断数は年間154~270例程度と推定され,肺門部の扁平上皮癌に関しては全国で年間約4,000例の存在が推定された.しかし,早期癌の比率は肺門部扁平上皮癌全体の10%を下回っていた.さらに,その発見率には地域差が見られた.考察および結論.肺門部肺癌に関しては,現在診断されているよりも,さらに多くの症例で早期診断の機会があったと推測され,肺癌検診のさらなる精度管理や喀痰細胞診の受診勧奨など,検討すべき事項が存在するものと推定された.
原著
  • 加藤 雅人, 大西 秀哉, 鈴木 宏往, 鶴田 伸子, 樋口 和行, 片野 光男
    2011 年 51 巻 7 号 p. 787-792
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/02
    ジャーナル オープンアクセス
    目的.尿中ジアセチルスペルミン(DiAcSpm)の肺癌における腫瘍マーカーとしての有用性を検討する.対象と方法.2003年8月より2010年9月までに当院で治療を受けた肺癌の患者308例(非小細胞癌296例,小細胞癌12例)を対象とし,尿中DiAcSpmを測定した.結果.尿中DiAcSpmは肺癌308例中143例で陽性(46.4%)を示し,血清中のCEAの32.7%,CYFRA21-1の23.7%より有意に高い敏感度を示した.尿中DiAcSpmの腫瘍マーカーとしての特異度(90.6%)は,CEA(87.5%),CYFRA21-1(93.8%)とほぼ同じであった.肺癌の進行度別に各腫瘍マーカーを測定すると,進行度とともに腫瘍マーカーの陽性率は増加したが,尿中DiAcSpmはStage IA,IBにおいてCYFRA21-1と比較し,またStage IIIBおよびIVにおいてCEAと比較し,有意に高い陽性率を示した.特に,Stage IAおよびIB患者における尿中DiAcSpm陽性率は,各々25.5%および42.6%であり,同Stageの患者のCYFRA21-1陽性率(5.4%および18.5%)と比較し,有意に高い陽性率を示した.組織型別では尿中DiAcSpmは,腺癌(39.5%)でCYFRA21-1(17.3%)と比較し,また扁平上皮癌(62.0%)でCEA(33.3%)およびSCC抗原(49.0%)と比較し有意に高い陽性率を示した.結論.尿中DiAcSpmは肺癌の腫瘍マーカーとして高い敏感度を示し,肺癌の腫瘍マーカーとして有用であることが示唆された.
症例
  • 荒井 宏雅, 乾 健二, 西井 鉄平, 千葉 佐和子, 大城 久, 益田 宗孝
    2011 年 51 巻 7 号 p. 793-797
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/02
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.稀ではあるが,臓側胸膜浸潤のない肺癌症例でも,術中に存在する胸水中に癌細胞が証明されることがある.臨床病理学的にも病期診断に極めて重要な所見であり,癌進展の自然史としても興味深い病態であるが,その機序は明らかでない.症例.血痰を契機に発見された左上葉原発,肺腺癌の68歳・男性.臨床病期はstage IAであった.術中所見では,少量の漿液性胸水を認めた他は,臓側胸膜面の変化や播種巣などはなく,sT1bN0M0D0E1(+)少量・漿液性PL0PM0:stage IAと診断した.術後病理診断では葉気管支間リンパ節に転移を認めた.癌組織の臓側胸膜浸潤は認めなかったが,胸水細胞診にて癌性胸水と診断され,最終的にpT1bN1(#11)M1a(E+):stage IVの診断となった.結論.癌性胸水の存在は,病期診断,術後の治療戦略上,極めて重要な所見である.術中に臓側胸膜表面に変化のない症例であっても洗浄細胞診を,また少量でも胸水が存在すれば胸水細胞診を積極的に施行すべきである.
  • 鳴海 創大, 井上 彰, 柴原 泰三, 井草 龍太郎, 榊原 智博, 貫和 敏博
    2011 年 51 巻 7 号 p. 798-802
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/02
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.EGFR遺伝子変異を伴う小細胞肺癌の報告は非常に稀であり,EGFR-TKI使用を含めその治療は確立していない.症例.74歳女性.呼吸困難を主訴に近医を受診,胸部X線写真にて左大量胸水による縦隔右方偏位を指摘され当科へ紹介された.胸水排液後の胸部CTにて左下葉に腫瘤を認めたほか,脊椎・肋骨の破壊像,左胸壁に多発結節を伴っていた(cT4N2M1b).胸水細胞診にて小細胞癌と診断されたが,非喫煙者のためEGFR遺伝子変異を検索したところexon 18の置換型変異(G719C)が同定された.初回治療としてカルボプラチン,エトポシド併用療法を施行し腫瘍の縮小を認めた.その後,腫瘍増悪に伴い全身状態不良となった際,二次治療としてゲフィチニブ投与を行ったが反応なく,その後のアムルビシン投与も無効となり永眠された.結論.非喫煙者においてEGFR遺伝子変異陽性であった小細胞肺癌症例を経験した.EGFR遺伝子変異陽性の小細胞肺癌症例でのEGFR-TKIの有効性についてはさらなる症例の蓄積が求められる.
  • 冨地 信和, 小野 貞英, 八重樫 弘, 守 義明, 宇部 健治, 佐々島 朋美
    2011 年 51 巻 7 号 p. 803-808
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/02
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.気管支の孤立性乳頭腫は比較的稀な上皮性良性腫瘍であるが,その中で扁平上皮腺上皮性混合型乳頭腫は極めて稀で,これまで文献的に自験例を含めて13例の報告しかみられない.孤立性気管支乳頭腫の治療としては,これまで主に外科的切除術が実施されている.症例.84歳,女性.検診の胸部X線写真で右中肺野に異常陰影を指摘され,当院を受診.胸部CT画像では右肺S3に部分的無気肺と右主気管支内腔に突出する腫瘤陰影が認められた.気管支内視鏡検査では,中間幹の内腔にポリープ状の腫瘍が認められ,生検組織で混合型乳頭腫と診断された.腫瘍内における悪性化の合併の有無を検索するために,高周波スネアと半導体レーザーを用いて内視鏡的に腫瘍を切除した.摘出された腫瘍の病理組織学的検査で悪性化はみられず,孤立性気管支乳頭腫(扁平上皮腺上皮性混合型)と診断が確定できた.なお,免疫染色でヒトパピローマウイルスは陰性であった.内視鏡的治療後,2年6ヶ月の現在再発はみられない.結論.内視鏡的治療により切除された孤立性気管支混合型乳頭腫の1例を報告した.高周波スネアと半導体レーザーを用いての内視鏡的治療は,孤立性気管支乳頭腫に対して有用な治療法の1つと思われる.
  • 大薗 慶吾, 井上 政昭, 久保井 礼, 城戸 優光, 中西 良一
    2011 年 51 巻 7 号 p. 809-813
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/02
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.肺放線菌症は,口腔内や消化器の常在菌である嫌気性細菌Actinomyces israelii によって引き起こされる慢性化膿性肉芽腫性疾患であり,画像診断上,肺癌との鑑別が困難なことが多い.症例.61歳女性.血痰を主訴に受診した.胸部CTで右S2に空洞を伴う腫瘤性病変を認めた.気管支鏡下洗浄細胞診ではclass II,擦過細胞診でもclass IIであり悪性所見は認められなかったが,腫瘍マーカーはCEA 11.7 ng/mlと高値であり,PET-CTでもSUVmax 6.11と肺癌を除外できず血痰も続いていたことから,診断と治療を兼ねて,胸腔鏡下右肺上葉切除術,縦隔リンパ節郭清術(ND2a)を施行した.その結果,病理検査所見により肺放線菌症と判明した.結論.適切な治療を行うために手術などの侵襲的診断法も念頭におくことが重要と考えられる.
  • 佐藤 未来, 若林 修, 荒谷 義和, 吉田 史彰, 地主 英世, 石舘 卓三
    2011 年 51 巻 7 号 p. 814-819
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/02
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.肺紡錘細胞癌は紡錘形腫瘍細胞のみからなる低分化の非小細胞癌で稀である.また原発性肺癌の胃転移も稀とされる.症例.症例は65歳男性.咳・血痰が出現し当院入院.胸部CT上,右肺下葉の腫瘤影と縦隔浸潤像を認めた.気管支鏡下擦過細胞診により原発性肺癌(非小細胞癌,T4N2M0:stage IIIB)の診断で,化学療法cisplatin+vinorelbineを3クール施行したが腫瘍は増大.下部食道を狭窄し嚥下困難が出現したため食道ステントを留置.この時胃体部に粘膜下腫瘍様の隆起性病変及び潰瘍性病変を認めた.その後肺化膿症を発症し,入院より5カ月で永眠された.病理解剖にてcytokeratin 7,vimentinが陽性を示す紡錘形腫瘍細胞が肺及び胃に認められ,肺紡錘細胞癌及び胃転移と診断した.結論.胃転移を来した肺紡錘細胞癌の1例を報告した.肺紡錘細胞癌及び肺癌の胃転移は稀で予後不良である.今後さらなる症例の蓄積により本疾患の理解や,より有効な治療法確立が必要である.
  • 立原 素子, 渡邉 香奈, 横内 浩, 鈴木 弘行, 石田 卓, 棟方 充
    2011 年 51 巻 7 号 p. 820-824
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/02
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.小細胞肺癌の特殊型に混合型小細胞肺癌がある.長期にわたる小細胞肺癌の治療経過で,繰り返す局所再発・再燃に対し,外科切除を施行し混合型小細胞肺癌と診断した症例を経験したため報告する.症例.67歳男性.左S6に20 mm大の結節がみられ,気管支鏡検査を施行.キュレットによる細胞診で小細胞肺癌と診断した.全身精査を行い,原発性小細胞肺癌(cT1N2M0,IIIA)と診断,同時放射線化学療法(シスプラチン+エトポシド+放射線治療40 Gy/20 Fr)を施行後,カルボプラチン+エトポシドを4コース追加しCRを得た.その後2回にわたり,原発巣部位に一致し局所再発がみられたため,その度にカルボプラチン+エトポシドにて加療した.1度目の再発では化学療法により腫瘍は消失したが,2度目の再発時の治療効果はPRであった.しかし治療終了2ヶ月後に残存腫瘍の増大がみられた.FDG-PETを含めた再精査でリンパ節転移・遠隔転移を認めず,原発巣のみが毎回再発を繰り返したため,左下葉切除術を施行した.病理組織学的所見は,腺癌成分を含む混合型小細胞肺癌であった.術後化学療法としてアムルビシンを4コース施行した.現在,術後5年経過するが再発はみられていない.結論.小細胞肺癌は非小細胞肺癌成分を有する可能性があり,局所再発を繰り返す場合は,外科切除も選択の一つである.
  • 中道 真仁, 平野 聡, 朝尾 哲彦, 竹田 雄一郎, 杉山 温人, 小林 信之
    2011 年 51 巻 7 号 p. 825-829
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/02
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.全脳照射は非小細胞肺癌の転移性脳腫瘍に対して広く行われているが,照射後に多発脳出血を認めた症例の報告はない.症例.症例は63歳の女性.2006年に肺腺癌(T4N0M1a,stage IV)と診断され,以降は化学療法,ガンマナイフ療法を施行されてきた.脳転移の増悪に対して,2010年11月に全脳照射,同12月にドセタキセル単剤治療を施行された.全脳照射終了2週間後に構音障害が出現し,頭部MRIでは多発脳出血を認めた.慎重に経過観察したが,その後も脳出血を繰り返した.結論.転移性脳腫瘍に対しての放射線治療は出血のリスクを軽減するとされているが,本症例では多発脳出血を認めた.今後,症例を集積するとともに,原因の究明が必要であると考えられた.
  • 花田 庄司, 西山 典利, 永野 晃史, 泉 信博, 丁 奎光, 末廣 茂文
    2011 年 51 巻 7 号 p. 830-834
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/02
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.肺類上皮血管内皮腫(pulmonary epithelioid hemangioendothelioma:PEH)は血管内皮細胞の増殖を特徴とし,緩徐に経過する低および中間悪性度の血管性腫瘍であり,悪性腫瘍の多発肺転移などとの鑑別を要する.画像所見や,気管支内視鏡検査などで術前診断に至る症例は少なく,多くは外科的肺生検にて確定診断を得ている.今回我々は胸腔鏡下肺生検で確定診断を得たPEHの1例を報告する.症例.症例は33歳女性.検診で胸部X線異常陰影を指摘された.胸部CTで両側肺野の多発粒状陰影を認め,転移性肺腫瘍が疑われたため当科紹介となった.全身検索で明らかな原発巣は認めず,肺生検での診断が必要と考えられたため胸腔鏡下肺生検術を施行し,PEHとの診断を得た.結論.PEHは気管支鏡やCTガイド下肺生検では確定診断を得ることは困難であり,外科的肺生検が診断に有用となることが多いと考える.また,予後不良因子がない場合でも予後予測は難しく,治療方法も確立されていないことより長期にわたる定期的な経過観察が必要と考える.
  • 山根 弘路, 矢野 琢也, 梅村 茂樹, 塩手 康弘, 原田 大二郎, 亀井 治人
    2011 年 51 巻 7 号 p. 835-839
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/02
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.近年,我が国では地域基幹病院における進行がん患者のケアの充実を目的とした緩和ケアチーム(以下PCT)の創設が増加している.今回我々はPCTによる全人的緩和ケアの提供により,難治性の身体的癌性疼痛に対して良好なコントロールが可能となった進行非小細胞肺癌症例を経験したので報告する.症例.症例は56歳女性.進行非小細胞肺癌にて約2年間,多数回の化学療法を受けていた.最終の化学療法後から,右側胸部持続性疼痛を訴えるようになり,当院PCT紹介となった.身体的疼痛の原因は原発巣の胸壁浸潤によるものと判断され,フェンタニル増量・適正量のレスキューの使用などが施行されたが,十分な除痛は得られなかった.その後,患者自身に遺言書の作成希望があることが明らかとなり,霊的・精神的疼痛のコントロールを企図して行った遺言書作成後,急速に局所身体的疼痛スコアが減少し,亡くなられるまでの十数日間,良好な疼痛緩和が得られた.結論.本症例は霊的・精神的疼痛と身体的疼痛が密接に関連していた可能性が高く,PCT介入により全人的疼痛の把握/対処が可能となったことで,良好な疼痛緩和が得られたものと考えられた.
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