肺癌
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58 巻, 1 号
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総説
  • 奥村 明之進
    2018 年 58 巻 1 号 p. 2-7
    発行日: 2018/02/20
    公開日: 2018/03/02
    ジャーナル オープンアクセス

    胸腺上皮性腫瘍の臨床において国際的に最も一般的に用いられてきた病期分類は正岡病期分類であったが,その提唱後,30年以上が経過し臨床と研究の進歩により改善の余地も指摘されてきた.また胸腺上皮性腫瘍にはUICCによって認定された病期分類がなく,検討課題でもあった.2010年,胸腺腫瘍に特化した専門性の高い国際的な研究組織として,International Thymic Malignancy Interest Group(ITMIG)が発足し,現代の臨床状況を反映するTNM病期分類の確立のための国際データベースの構築事業が開始された.日本では日本胸腺研究会が主導して2013年に,1991年から2010年までの手術症例3033例の後ろ向きデータベースが完成し,国際データベースに貢献した.このデータベースをもとにTNM分類が提案され,2016年にはUICCに承認された.日本のデータベースは32の参加施設によって研究にも利用され,これまでに8編の英文論文として研究内容が発表されている.しかしながら,今回のデータベースは外科治療データベースであり,非切除症例は含まれていない.今後,前向きデータベースの構築により,TNM分類の検証と修正が必要である.

原著
  • 片岡 正文, 奧谷 大介, 奥谷 珠美, 小泉 匡司, 平松 登志枝, 茅原 路代, 仁熊 健文, 川井 治之, 渡辺 一彦, 馬場 三和
    2018 年 58 巻 1 号 p. 8-13
    発行日: 2018/02/20
    公開日: 2018/03/02
    ジャーナル オープンアクセス

    目的.肺癌術前患者に対する外来からの多職種サポートの効果を検討した.方法.当院では2013年より術前リハビリテーション外来での呼吸訓練指導を開始した.2014年より麻酔科,栄養科,薬剤科の介入,歯科紹介,看護外来を行う術前サポート外来を開始した.介入を行わなかった症例,リハビリテーションのみ介入を行った症例,術前多職種サポートを行った症例の3群を比較検討した.結果.術後在院日数に影響している項目を検討する目的で,単変量解析,多変量解析を行ったところ,年齢,出血量,発熱日数,術後歩行開始日,術前多職種サポートが最終的に有意変数として残り,術前多職種サポートが最も有意な因子であった(p=0.000377).1患者,1入院全期間の包括総収入はサポートを増やすに従い減少し,有意差を認めた.1日あたりの包括総収入(診療単価)はサポートの増加に従い,有意に増加した.術後の患者アンケートでは自己解決型コーピングが誘導され,納得の結果が得られたことを表す回答が多かった.結論.肺癌術前,外来からの他職種サポートにより,入院期間が短縮し医療コストが削減された.

  • 山道 尭, 堀尾 裕俊, 浅川 文香, 奥井 将之, 原田 匡彦
    2018 年 58 巻 1 号 p. 14-18
    発行日: 2018/02/20
    公開日: 2018/03/02
    ジャーナル オープンアクセス

    目的.骨軟部悪性腫瘍は肺転移頻度が高く,同転移に対する治療は予後を左右する重要な因子である.今回,我々の施設における骨軟部悪性腫瘍肺転移切除例の臨床病理学的検討を行った.方法.2003年1月から2015年12月までに当科にて切除した骨軟部悪性腫瘍肺転移例28例(延べ38回の手術)の患者背景,病理学的因子,予後についてretrospectiveに解析した.結果.症例の内訳は,男性17例,女性11例,年齢は13~82歳.原発巣の内訳は骨肉腫11例,悪性線維性組織球腫12例,滑膜肉腫3例,脂肪肉腫2例であった.術式は楔状切除を基本とし,1手術あたりの切除病巣数は1~7個,肺転移の大きさ0.1~8.0 cmであった.手術関連死亡,術後合併症は認めなかった.骨軟部肉腫全体の術後成績は5年生存率47.9%であり,予後因子解析では年齢(60歳以下,p=0.026)および原発巣治療開始から肺転移が発見されるまでの期間(365日以上,p=0.021)に有意差を認めた.結語.骨軟部悪性腫瘍肺転移症例は依然として予後不良であるも,外科的切除により長期生存を認める症例もあり,今後さらなる検討を行うことが重要である.

  • 猪又 峰彦, 岡澤 成祐, 神原 健太, 今西 信悟, 山田 徹, 三輪 敏郎, 山岸 健太郎, 野村 邦紀, 林 龍二, 戸邉 一之
    2018 年 58 巻 1 号 p. 19-23
    発行日: 2018/02/20
    公開日: 2018/03/02
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.局所進行肺癌に対する放射線治療の合併症として放射線性肺臓炎が挙がる.我々はKL-6値と放射線性肺臓炎発症割合との関係を解析することを目的として後ろ向き観察研究を行った.方法.2004年から2015年の間に定位照射を除く胸部放射線治療を受けた肺癌症例を対象とした.X線ならびにCT所見から既存の線維化病変を評価し,血清KL-6値500 U/mlをカットオフ値とし2群に分類した.結果.69例を解析した.単変量解析において線維化を伴わない症例ではKL-6上昇群と非上昇群との間で放射線性肺臓炎発症割合に差は認められなかったが,線維化を伴う症例ではKL-6上昇群において放射線性肺臓炎の発症割合が高い結果が得られた(P = 0.029,Fisherの正確検定).線維化の有無,V20,KL-6を独立変数とした多変量解析では,KL-6の100 U/ml上昇による放射線性肺臓炎発症に対するオッズ比(95%信頼区間)は1.0(0.7~1.2)であった.結語.肺の線維化を有する症例においてKL-6が放射線性肺臓炎発症に関係している可能性が示唆された.

  • 松井 優紀, 坂巻 靖, 寛島 隆史, 田中 諒, 小牟田 清, 辻本 正彦, 安岡 弘直
    2018 年 58 巻 1 号 p. 24-28
    発行日: 2018/02/20
    公開日: 2018/03/02
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.肺原発多形癌は予後不良とされる稀な肺癌である.当科で手術した肺原発多形癌症例について,その臨床像と組織学的特徴を検討した.対象と方法.2005年1月から2015年12月までに当科で手術を施行し,肺原発多形癌と診断された14例.結果.男性12例,女性2例で平均年齢69.5歳.術式は区域切除1例,葉切除13例であった.病理病期はI期4例,II期6例,III期以上4例であった.8例に再発を認め,全例原病死で失った.治療成績は5年生存率が21%と,予後は不良であった.また,分子学的療法のコンパニオン診断について,12例にprogrammed cell-death ligand 1(PD-L1)の発現を認め,うち5例が高発現であった.肺多形癌の詳細解明に今後も症例の蓄積が望まれる.

症例
  • 本田 宏幸, 森 裕二, 石川 立, 小野 貴広, 中田 尚志, 高橋 弘毅
    2018 年 58 巻 1 号 p. 29-34
    発行日: 2018/02/20
    公開日: 2018/03/02
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.気管支鏡検査が悪性胸膜中皮腫の診断契機となることは少ない.症例.70歳代男性.労作時呼吸困難,右背部痛,発熱を訴え受診した.胸部CTで右胸水貯留,右中下葉の虚脱,右壁側胸膜の全周性肥厚,疼痛部に一致した第9肋骨の骨破壊像を認めた.胸水細胞診で悪性細胞はみられず,経皮胸膜生検で病理組織診断を得られなかった.しかし,胸膜病変の肺浸潤が疑われたため経気管支生検を施行し,悪性胸膜中皮腫の診断を得た.線維性結合織中に異型紡錘形細胞を認め,線維形成型悪性胸膜中皮腫(desmoplastic malignant mesothelioma:DMM)が疑われた.病理解剖でDMMと診断し,肺実質への浸潤と胸膜外への広範な転移を確認した.結論.悪性胸膜中皮腫の組織型は様々であり,多彩な画像所見を示す.胸膜病変の肺実質への浸潤が疑われる場合には,経気管支生検の適応も考慮すべきと思われる.

  • 宮脇 美千代, 安部 美幸, 内匠 陽平, 小副川 敦, 荒金 茂樹, 杉尾 賢二
    2018 年 58 巻 1 号 p. 35-40
    発行日: 2018/02/20
    公開日: 2018/03/02
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.肺癌肉腫は肺悪性腫瘍の中でも稀で診断の難しい,予後不良な疾患である.症例.77歳男性.検診で右下葉に粗大な石灰化を伴う約7 cmの腫瘤を指摘された.気管支鏡下肺生検を2回施行されたが確定診断に至らなかった.3回目の気管支鏡検査の待機中,腫瘍は急速に増大し,血胸を発症し,さらに急性呼吸不全となり死亡した.検診発見から死亡まで3ヶ月と急速な経過をたどり,剖検で肺癌肉腫と診断された.結論.粗大な石灰化を伴い急速に増大する腫瘍は,肉腫成分を有する腫瘍の可能性を疑い,早急に治療方針をたてる必要がある.

  • 田中 悠祐, 高橋 守, 橋本 みどり, 本田 泰人, 山田 玄, 高橋 弘毅
    2018 年 58 巻 1 号 p. 41-45
    発行日: 2018/02/20
    公開日: 2018/03/02
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.有瘻性膿気胸は難治性であり,ドレナージと抗菌療法では十分な改善が得られないことが多い.症例.82歳男性.左下葉に空洞性病変を認め精査を行った.胸部CTではS6に径60 mmの腫瘍を認め,生検で肺扁平上皮癌(cT2bN0M0,stage IIA)の診断となった.積極的な治療は希望しなかったため,経過観察を行ったが,肺炎の合併を契機に腫瘍の空洞と胸腔が連続し有瘻性膿気胸を発症した.胸部CTでは瘻孔は径10 mmと推定された.全身状態が不良で外科治療は困難と考えられたため,局所麻酔下胸腔鏡による瘻孔閉鎖術を施行した.鏡視下に鉗子を用いてフィブリン隔壁を可及的に除去した後に,瘻孔から空洞内部に自己血を充填し,フィブリンシートで被覆した.本治療により左気胸は改善した.抗菌薬により肺炎が改善した後に短期間ではあるが自宅に退院することができた.結論.本法は,全身状態の低下などにより外科治療が困難な空洞を伴う有瘻性膿気胸に比較的有効な対処方法になりうると思われた.

  • 中橋 健太, 大泉 弘幸, 加藤 博久, 鈴木 潤, 濱田 顕, 渡會 光
    2018 年 58 巻 1 号 p. 46-49
    発行日: 2018/02/20
    公開日: 2018/03/02
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.癌胎児性抗原(CEA,carcinoembryonic antigen)は,多くの悪性腫瘍の診断や治療,経過観察において重要な腫瘍マーカーである.今回我々は,非小細胞肺癌の術後経過観察中に,CEA値が冬季に上昇し夏季に下降を繰り返した非再発症例を経験したので,報告する.症例.64歳,女性.右中葉の肺腺癌に対して胸腔鏡下右中葉切除術およびリンパ節郭清を施行した.術後診断は腺癌,pT2a(pl2)N0M0-IBで,補助化学療法としてUFTを, pl2に対して予防的温熱化学療法を施行した.同年の冬にCEAの上昇を認め,精査を施行し再発を認めなかった.翌年の夏にCEAの下降を認め冬に再度上昇し精査を施行したが,再発や転移を認めなかった.その後も夏にかけてCEAが下降し冬に上昇したが,精査で明らかな再発を認めなかった.術後8年経過した現在も再発なく経過中である.結論.肺癌症例でCEA値が季節変動を示す可能性があることを念頭に置く必要がある.

  • 鑓水 佳, 塩野 知志, 早坂 一希, 鈴木 克幸, 遠藤 誠, 栁川 直樹
    2018 年 58 巻 1 号 p. 50-54
    発行日: 2018/02/20
    公開日: 2018/03/02
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.肺癌の指趾への転移は0.1~0.3%と極めて稀である.症例.70歳男性.検診で左上肺野の結節影を指摘された.CTでは左S1+2に径32 mmの腫瘤を認めた.経気管支肺生検では扁平上皮癌と診断され,cT2aN0M0,Stage IBの診断で左上葉切除および左S6部分切除術,リンパ節郭清ND2a-1を施行した.病理診断は間質性肺炎合併角化型扁平上皮癌で,pT2aN0M0,Stage IBと診断した.背景肺に間質性肺炎を認めたため,術後補助療法は行わない方針にした.術後約2か月で右第5趾に腫脹と疼痛があり,皮膚生検で肺扁平上皮癌の転移が疑われた.肺癌の既往があること,右肺門部リンパ節転移,左副腎転移を合併していたことから,足趾転移を含む肺癌再発と診断した.足趾転移は急速に増大しQOLを保つため右第3~5趾の切断術が施行された.その後化学療法を施行したが病状は進行し,現在は緩和療法中である.結論.悪性腫瘍の指趾転移は,肺癌が50%と最も多く予後は不良とされる.肺癌症例のうち肺扁平上皮癌の足趾への転移は極めて稀で皮膚癌との鑑別が必要であり,術前からの詳細な臨床所見を加味した対応が必要である.

支部会推薦症例
  • 荻原 哲, 井坂 珠子, 前田 英之, 板垣 裕子, 石﨑 海子, 山本 智子, 坂井 修二, 神崎 正人, 横瀬 智之
    2018 年 58 巻 1 号 p. 55-56
    発行日: 2018/02/20
    公開日: 2018/03/02
    ジャーナル オープンアクセス

    腸型肺腺癌は稀な組織型であり,大腸癌に類似した免疫組織学的形態を示すことより,大腸癌肺転移との鑑別が困難な場合がある.今回我々は,術前の経気管支肺生検で大腸癌肺転移が示唆され,胸腔鏡下右上葉部分切除術を施行し,免疫組織学的検査で,CK7・CK20・CDX-2陽性,TTF-1・Napsin A陰性.β-cateninが細胞膜に陽性であることより,腸型肺腺癌との確定診断を得た症例を経験したため報告する.

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