昭和50年から52年の3年間に, 7名の肺炎様陰影を呈する肺癌患者が, 川崎医科大学呼吸器内科へ入院した.多くは徴熱, 咳噺があり, 肺炎, 肺結核などと診断されていた.その胸部X線像は, 均等性陰影あるいは細葉大, 小葉大の硬化像の混在を基本とし, それにある例では, air bronchogram, 無気肺像, 撮影の方向によっては腫瘤様にみえること, などの所見があった.肺に転移が現われた場合のX線像も, 肺炎様であった.組織型はすべて腺癌であり, 細胞診が陽性に出やすく, 7例中4例は1回目の細胞診で陽性であった.早期から胸郭外転移の認められた症例の予後は悪く, 一方, 肺内にのみ転移する例の進行は緩徐であった.胸部X線像や発熱から, 肺炎との鑑別診断は重要であり, 鑑別のためには, 末梢血白血球数が正常であること, 喀疾細胞診が陽性に出やすいこと, X線像の詳細な観察, などが参考となる.
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