肺癌
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42 巻, 7 号
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  • 肺縦隔接合線の成り立ちとその異常の意義について
    楠本 昌彦
    2002 年 42 巻 7 号 p. 681-685
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    単純X線写真での各種肺縦隔接合線はそのすべてが常に観察できるとは限らないが, 肺縦隔接合線として観察可能な場合, その異常を的確にとらえることで肺縦隔境界面近傍における病変の存在診断に寄与する. また肺縦隔接合線の異常所見をとらえることで単純X線写真での縦隔リンパ節腫大の診断を可能にする場合があり診断的価値が高い. さらにこれら肺縦隔接合線の変化でとらえることのできる腫瘍病変に対しては, 逐一CTを撮影することなく単純X線写真で簡便なモニタリングが可能であり, 臨床的有用性が高い.
  • 松本 常男
    2002 年 42 巻 7 号 p. 686-697
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    水平断のCTによる画像診断での典型的所見やピットフォールを呈示した. 存在診断では, 小さな淡い陰影以外に, 他に重大な病変があった時 (satisfaction-of-search error), また中枢気道内の病変や肺門周囲で大きな血管・縦隔構造に近接した病変が部分容積減少を伴って, false-negative診断となる可能性がある. 辺縁平滑で境界明瞭な円形・楕円形結節は良性を示唆するが, 石灰化や脂肪濃度の存在, 乏しい造影効果の所見は良性の確信度は高める, 軽度の凹凸を示す場合は, 血管との関連を検討することが悪性結節との鑑別において重要である. 一方, 辺縁にスリガラス濃度があったり, 細かいspiculationのある結節は悪性病変が多いが, 同様な所見を示す良性病変の診断に散布巣や気管支血管束の肥厚が役立つ. スリガラス濃度のみを示す結節では, 境界の明瞭性やノッチの所見が悪性を示唆する所見として重要である. 結節の性状は, 既存構造や気腫性変化により影響を受けるため, 結節の辺縁や内部構造だけでなく, 結節周囲や肺野全体の所見に注意することも重要である. 症状の有無など臨床情報も鑑別に役立つ場合がある.
  • 右上葉肺動脈について
    室田 真希子
    2002 年 42 巻 7 号 p. 698-701
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    目的. Multidetecter-row CT (以下MDCT) では従来の横断面と同じ解像力でmultiplanar reconstruction (以下MPR) で矢状断や冠状断など任意の断面の画像が得られる. MPR像により右上葉動脈, A2, A3の分岐様式を検討した. 方法. 胸部に病変が疑われた症例及び正常ボランティアでMDCTによる検査を施行し, 肺野条件によりA2ai, A2aii, A2bi, A2bii, A3ai, A3aii, A3bi, A3biiの走行について, 上幹動脈から分岐する回帰型か, 中間肺動脈幹から分岐する上行型かを検討した. 結果. 通常, 右上葉の肺動脈は上幹動脈から分岐し, 気管支の上方に接して走行する. しかしA2あるいはA3の区域枝や亜区域枝は中間肺動脈幹から分岐し上行して上葉に入り, 気管支の下方に接して走行する. このような気管支と動脈の関係が逆になって走行するものもいくつか認められた. 結論. 動脈の分岐の検討や気管支の分岐をMPR像で検討することにより, 病変に対して詳細な情報や術前の既存構造の情報を提供し, 読影医の読影技術の向上にも非常に有用である.
  • 渡辺 秀幸, 青木 隆敏, 松木 裕一, 中田 肇
    2002 年 42 巻 7 号 p. 702-709
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    目的. CTによる肺結節の良悪性に寄与する所見の分析, 気管支鏡下肺生検の陽性率に寄与するCT所見, およびANNのHRCTにおける肺結節良悪性の鑑別診断に対する有用性. 方法. 肺結節の良悪性の鑑別および気管支鏡下肺生検の陽性率については長径3cm以下の孤立性肺結節66症例を対象とし, そのCT所見を検討した. ANNを用いた良悪性鑑別については3cm以下の孤立性肺結節155症例を使用してANNの構築を行い, 読影実験を行った. 結果. 原発性肺癌で多い所見として結節内air bronchogram/bronchiologram像, 辺縁の全周性不整, 末梢肺静脈の結節内進入像が挙げられ, 良性結節に多い所見として, 結節辺縁の直線化もしくは結節中心部方向への凹面要素, 散布巣の存在が挙げられた. 気管支鏡下肺生検の陽性率については, 中枢部結節およびpositive bronchus sign陽性例で生検診断可能な症例が多かった. またANNについてはこれを用いることで, 経験年齢に関わらずその正診率が高まることが確認された.
  • 大城 康二
    2002 年 42 巻 7 号 p. 710-716
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    最近導入されつつある多検出器CTにより, 全肺野が一回息止めにて得られ, 日常臨床で高分解能の三次元画像が容易に作成できるようになった. MPR, 最大値投影法などの三次元画像は, 転移性肺腫瘍と既存構造との関係を評価する上で有用である. 転移性肺腫瘍は一般的には円形の境界明瞭な結節影や腫瘤影として見られるが, 非典型的な画像所見を呈することがあり, 非腫瘍性病変や原発性肺癌と鑑別が問題となる. これらの非典型像を呈する転移性肺腫瘍を熟知することでより正確な診断が可能となる.
  • 久場 睦夫, 仲本 敦, 大湾 勤子, 喜屋武 邦雄, 宮城 茂, 川畑 勉, 大田 守雄, 国吉 真行, 石川 清司, 源河 圭一郎
    2002 年 42 巻 7 号 p. 717-728
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    目的. 肺癌診断における気管支鏡の意義を理解するため, 気管支鏡検査法の概略を述べると共に, 肺癌の内視鏡所見を供覧した. 方法および結果. 気管支の解剖等, 気管支鏡検査に関わる基本的事項と検査法の実際について概述すると共に, 非早期肺門部肺癌および内視鏡的早期肺癌の症例を日本肺癌学会内視鏡所見分類に準じて供覧した. 即ち非早期肺癌は1. 粘膜型: a) 肥厚型, b) 結節型, c) ポリープ型, 2. 粘膜下型, 3. 壁外型, の3型, 内視鏡的早期肺癌は1. 無所見型, 2. 肥厚型, 3. 結節型, 4. ポリープ型の4型について, それらの代表的症例の内視鏡所見を供覧した. その他, 比較的希な低悪性腫瘍および良性腫瘍の症例も内視鏡的診断の参考に供覧した. 肺癌の内視鏡所見を腫瘍増殖形態からみた分類に基づいて理解する事は, 組織型の推定や癌の組織学的伸展度を推定・確定する上に重要である. 結論. 肺癌診療において気管支鏡検査は, 組織病理学的診断および進展度把握等のため必須といえる.
  • 肺腫瘤性病変のMRI
    藤本 公則
    2002 年 42 巻 7 号 p. 729-734
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    胸部領域の疾患におけるMRIは多くの経験が得られてきたが, 肺癌の病期診断におけるその役割は限られている. 胸壁や縦隔浸潤, 胸郭入口部腫瘍, 肺門部腫瘤と末梢性二次性変化との鑑別などの評価の際, CTで充分な判定ができない場合に行う価値がある 最近では, 造影ダイナミックMRIを用いた肺腫瘤の良, 悪性の鑑別や病理像との比較といった腫瘍そのものの評価に関しても報告されているが, 臨床的有用性はまだ限られている. 本稿では, 肺腫瘤性病変におけるMRIの臨床的有用性について画像を呈示し概説する.
  • 下方 薫
    2002 年 42 巻 7 号 p. 737
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
  • 富永 祐民
    2002 年 42 巻 7 号 p. 739-740
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
  • 佐川 元保, 杉田 真, 佐久間 勉
    2002 年 42 巻 7 号 p. 741-745
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    RCTは症例対照研究よりエビデンスの質は高いが, RCTであれば真実を反映しているはず, というのは事実の一面のみを捉えている. 検診に関わるRCTは実施の困難さからRCTとしての質が低くなりがちであるのはやむを得ないが (例としてMayo Lung ProjectではComplianceが75%, Contaminationが73%と報告されている), 低いという事実には目を向ける必要がある. 主として1970年代に行われた肺がん検診を評価したRCTは, いずれも肺癌死亡減少に関して有効性を証明しえなかった. 1980-90年代に行われた検診を評価した症例対照研究は4つあり, 1つでは有効という結果で, 2つでは有効性は見いだされず, 残りの1つでは有効性を示唆する結果であった. 1990年代の検診を評価した症例対照研究が本邦から4つ報告され, うち3つは検診が有効という結果で, 残りの1つも有意ではなかったが類似した結果であった. 複数の研究で類似した結果が得られていることからも, この結果は現代の検診の評価として信頼できるものと考えられた. これらの結果をもとに, 現状における問題点と今後の方向性に関しても論じた.
  • 祖父江 友孝
    2002 年 42 巻 7 号 p. 746-749
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    胸部X線検査による肺癌検診は, 1970-80年代に欧米にて行われたランダム化比較試験にて肺癌死亡減少効果が確認できなかったことから, 欧米のガイドラインでは推奨されていない. わが国では1987年にX線と喀痰細胞診による肺癌検診が老人保健事業に導入されたが, その後, 主として症例対照研究により, 死亡減少効果を示唆する成績を得ている. しかし, 症例対照研究には種々のバイアスの影響を受けやすい研究手法である点などの問題がある. また, 年齢調整罹患率と死亡率の次推移をみると, 男女とも両者はほぼ平行に推移しており, これまでのところ早期発見による死亡減少効果は全国レベルではほとんど観察されていない. 死亡率と罹患率の年次推移に乖離が拡大する傾向がはっきり確認されない限り, 有効性が証明されたと明言することは危険である.
  • 秋田 弘俊
    2002 年 42 巻 7 号 p. 751-752
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    癌の分子生物学的研究の進歩によって, 癌の発生, 浸潤, 転移のメカニズムが解明された. 同時に, 肺癌においても種々の遺伝子や分子の異常が明らかにされた. その成果は臨床的には, 治療標的の探索・同定とともに, 分子マ-カ-に応用されることが期待される. 臨床試験でその有用性が証明され, 実地臨床に供している分子マ-カ-は少ないが, proGRPのような例もある. またthyroid transcription factor 1 (TTF1) は, 腺癌のうち肺癌と甲状腺癌で陽性であり, 病理診断において腺癌の原発臓器推定マ-カ-として用いられている.
    本「Pro and Con」では,「Pro」として分子マ-カ-研究者の立場から光冨徹哉先生 (愛知県がんセンタ-胸部外科) に, また「Con」として癌治療の臨床試験研究者の立場から大江裕一郎先生 (国立がんセンタ-中央病院肺内科) に, 分子マ-カ-の臨床的有用性について現在の状況を概説し, さらに今後の可能性と方向性を展望していただいた.
    表1に, 分子マ-カ-研究の意義と臨床応用の可能性を示したが, その中から予後因子と分子標的治療マ-カ-を取り上げて, 司会者の導入とした.
  • 光冨 徹哉
    2002 年 42 巻 7 号 p. 753-757
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    癌は後天的な多遺伝子病と理解することができ, 分子病態に根ざした医療は, それ以前のものより潜在的に優れているといえる. 分子マーカーの肺癌の臨床への意義については, これまでに, SNP解析による肺癌高感受性集団の同定, PCRの感度を生かした微小量のがん細胞検出による早期診断や病期診断への応用, 遺伝子異常による肺癌の分類や予後・治療感受性の予測因子としての応用, クローナルマーカーとしての応用, 等について多くの成果が報告されている. しかし, 残念ながら現時点では質の高い臨床試験によって確立したようなエビデンスはない. 単一や少数の遺伝子の解析では, 予後や治療感受性の予測が難しくても, 近年開発された発現プロファイリング等による網羅的, 包括的な解析では可能であろうと考えられるようになった. EGFRの特異的阻害剤であるイレッサは肺癌の期待される分子標的薬である. しかし, その抗腫瘍効果の予測もまた現時点では困難であるが, 近い内に可能になると思われる. 今後のこの分野の発展については方法論の開発とともに, 一定のプロトコールで治療された質のよい検体の蓄積が非常に重要であり, 臨床医の寄与と責任は大きい.
  • 大江 裕一郎
    2002 年 42 巻 7 号 p. 758-762
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    肺癌診療での分子マーカー解析の意義は, 予後因子, 抗がん剤感受性の予測, 診断などであろう. 分子マーカーと予後との相関を調べた報告は数多い. しかし, 臨床的に有用な予後因子と統計学的に有為な予後因子は区別して考える必要がある. 予後因子として臨床的に意義のある差とは, 病期やPSのように疑う余地のない違いであり, metaanalysisなどによつてはじめて証明される僅かな違いには統計学的に有意な差であっても予後因子としての臨床的意義は見出せない. 分子マ-カ-の状態により抗がん剤の感受性が異なるとの報告は数多い. しかし, 分子マーカーの状態を調べて抗がん剤を選択するいわゆるオーダーメイド治療が従来の治療法と比べて優れていることを証明する為には比較試験が必要である. また, 近年の分子標的治療薬の進歩はめざましく分子マーカーそのものが治療の標的となっている. 肺がんに対してもEGFRのチロシンキナーゼ阻害剤であるゲフェニチブ (Iressa: ZD1839) が注目されているが, 現在のところEGFR発現と抗腫瘍効果に関連があるか否かは明らかでない. ゲフェニヂブの治療効果を予測する分子マーカーの開発は医療経済の観点からも非常に重要と考えられ, 近い将来, 実用化することを期待したい.
  • 一瀬 幸人
    2002 年 42 巻 7 号 p. 763
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
  • 田中 文啓, 和田 洋巳
    2002 年 42 巻 7 号 p. 765-770
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    目的. 完全切除された病理病期IB-IIIA期非小細胞肺癌に対する術後補助化学療法の有効性を検証し, その臨床実地における妥当性を明らかにすること. 研究方法. 100例以上の非小細胞肺癌患者に対して施行されたすべての術後補助化学療法に関する前向きの無作為化抽出試験の結果を検討した. 結果. シスプラチンを含む併用静脈内化学療法を含めてほとんどの化学療法レジメンは完全切除された非小細胞肺癌患者の術後成績改善には寄与しなかった. しかしながら, 進行癌に対しては明確な抗腫瘍効果を示さないUFTとUbenimexという2つの経口剤が, 術後補助療法として有効かもしれないとの結果がいくつかの臨床試験において示された. このような結果は, 術後には, 必ずしも抗腫瘍効果にすぐれた薬剤ではなくむしろ術後長期にわたって投与可能な薬剤を投与すべきであることを示している. 結論. 病理病期IB-IIIA期非小細胞肺癌に対して確立された術後補助療法は存在しないが, UFTとUbenimexといった良好な服薬コンプライアンスが期待しうる薬剤を術後に使用することは, 臨床実地上妥当である.
  • 國頭 英夫
    2002 年 42 巻 7 号 p. 771-774
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
  • 多田 弘人
    2002 年 42 巻 7 号 p. 775
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
  • 坪井 正博, 加藤 治文
    2002 年 42 巻 7 号 p. 777-781
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    IIIA期非小細胞肺癌 (NSCLC) に対する外科治療成績は, 臨床病期で5年生存率34%, 病理病期のそれは28%であり, 極めて不良である. 特に縦隔リンパ節転移陽性例の多くは遠隔転移で再発し, この病期における集学的治療の確立は急務である. 90年代前半までの抗がん剤を用いた化学療法や放射線療法が, 術後補助療法として生存期間の延長に寄与するという明らかなデータはない. 一方, IIIA期NSCLCに対する術前化学療法の有用性が60例規模の2つの臨床第III相試験で示されている. また, フランスから報告されたIB~III期NSCLC, 335例を対象とする術前化学療法の比較試験では統計学的な有意差はなかったものの, 化学療法群が長期生存率を改善する傾向が報告された. 外科切除に勝る局所療法はないとする観点と現在のevidenceに基づけば, N2 diseaseに対する治療戦略は導入化学療法+外科手術という集学的治療が最もpromisingであり, この病期の治療成績向上のbreakthroughとなりうる. 今後は導入療法として有用な戦略は, 化学療法なのか, 放射線化学療法なのかを検証することなどが肝要である.
  • 山本 信之, 浅井 暁, 海老沢 雅子, 遠藤 正浩, 高橋 利明
    2002 年 42 巻 7 号 p. 782-785
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    米国のPDQやNCCNのガイドラインを見るとIIIA期N2非小細胞癌の標準的治療がinduction chemotherapy+surgery記載されているが, 私は, わが国ではまだ標準的治療として確立されていないと考えている. その理由としては, 本邦で十分な症例数を有した臨床試験が行われていないことや, 唯一行われた無作為化比較試験ではその結果がnegativeであったことが挙げられる. また, 最近報告されたDepierreらの大規模な比較試験においてもN2非小細胞癌に術前化学療法を追加する意義は認められず, 術前化学療法はより早期のものに有効である可能性が示唆されている. 現在, 米国などで, IIIA期N2非小細胞癌に対して手術療法の意義を検討する比較試験が行われており, その結果次第では, 手術可能IIIA期N2非小細胞癌の標準的治療として化学放射線療法が追加される可能性もある. わが国で手術可能IIIA期N2非小細胞癌の標準的治療がinduction chemotherapy+surgeryとなるためには, その有効性を示し評価に耐えうる臨床試験の結果が, 少なくとも1報は必要であると考える.
  • 田村 友秀
    2002 年 42 巻 7 号 p. 787
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
  • 瀬戸 貴司
    2002 年 42 巻 7 号 p. 789-795
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    1995年に出されたmeta-analysisの結果, Cisplatin (CDDP) を中心とした化学療法により, 進行非小細胞肺癌患者のquality of lifeは向上, 予後は改善することが示された. しかし, CDDPは強い毒性, 輸液の必要性などから, Carboplatin (CBDCA) を化学療法の中心に位置付ける方向にある. 今回, その妥当性を比較臨床試験に基づいて奏効率, 1年生存率をmeta-analysisで解析した. CDDPとCBDCAに併用される薬剤が統一された8の比較試験での検討では, 腫瘍縮小効果は統計学的な有意差をもってCDDPが良かったが, 1年生存率はCDDP対CBDCAが38.9%対36.8%で差は認められなかった. 併用薬剤を90年以降の新規抗癌剤に限定した6試験の検討では腫瘍縮小効果にも差は認められず, 1年生存率はCDDP対CBDCAが37.7%対36.8%であった. 新規抗癌剤をkey drugとする治療ではCDDPとCBDCAの生存に対する効果に差はなく, 毒性の差を考慮するとCBDCAが好ましいと言ってもよい.
  • 塚田 裕子
    2002 年 42 巻 7 号 p. 796-801
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    目的. シスプラチン(CDDP)の腎毒性・神経毒性・催吐作用を軽減した誘導体として開発されたカルボプラチン(CBDCA)が, 進行非小細胞肺癌化学療法においてCDDPと同等の効果があるか否かを検討する. 研究方法. 対象が進行非小細胞肺癌で,併用化学療法におけるCDDPとCBDCAの比較がなされている無作為化比較試験のうち, 併用薬が共通である7つの試験をとりあげ, 両者の奏効率・生存期間・毒性について検討した.結果.毒性の面では悪心・嘔吐がCDDP群で多かったが神経毒性. 重篤な腎毒性では差がなく血小板減少はCBDCA群の方で発現頻度が高かった. 奏効率はすべての試験でCDDP群が上回っており, 生存期間では同等または有意差はないもののCDDP群が長い傾向がみられた. 結論. 進行非小細胞肺癌の化学療法においてCBDCAがCDDPと同等であるとはいえない. 今後のより有効な治療法の開発をめざす臨床試験においては現時点ではCDDPを含む併用療法を基本としていくことが望ましいであろう. しかし実地診療においては患者の腎機能・心機能,簡便性などを考慮して選択するのが適切と考えられる.
  • 根来 俊一
    2002 年 42 巻 7 号 p. 803
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
  • 上岡 博
    2002 年 42 巻 7 号 p. 805-811
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    PCIに関するこれまでの報告をreviewすることにより, 小細胞肺癌 (SCLC) に対する予防的脳照射 (PCI) の有用性を検証する. 結果. 1970年代より1980年代にかけて多くの比較試験が行われ, PCIによる脳転移の抑制効果が示されたが, 生存への有意な寄与を証明した報告はなく, またPCIによる遅発性の神経障害の可能性なども報告され, この時点ではSCLCに対するPCIの意義は確立されたものではなかった. その後Auperinらは, 7つの比較試験のメタアナリシスを行うことにより, CR例ではPCIにより脳転移の抑制のみならず, 生存率の有意な改善効果 (3年生存率: 20.7% vs 15.3%, P=0.01) が得られることを証明した. 一方, Arriagada, Gregorらの比較試験では, PCI群と非PCI群との間に精神, 神経症状, CT scanにおける脳萎縮の発現頻度などに差を認めなかった. 結論. 導入療法によりCRが得られたSCLC症例に対してPCIは行うべきであるが, 今後解決すべき課題としてPCIの線量, 分割用式, タイミング, および遅発性の有害反応の検討などが残されている.
  • 石倉 聡
    2002 年 42 巻 7 号 p. 812-814
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    小細胞肺癌は限局期 (LD-SCLC) であればシスプラチンを含む化学療法と放射線治療の組み合わせで20~25%の5年生存率が期待できる. 近年の治療成績の向上および局所制御の改善により脳転移が再発形式の多くを占めるようになり, 予防的脳照射 (PCI) の適応が検討されてきた. PCIが臨床的に有用である条件は, 再発形式として脳転移のみが問題となっていること, PCIが微視的転移の制御に有効であること, PCIによる毒性が軽微であること, PCIにより生存率が向上することである. 1999年に報告されたメタアナリシスによりCRが得られた症例においてはPCIを追加することが標準的治療とされたが, CR判定に用いるモダリティ, PCIの至適線量および施行時期, 遅発性神経毒性の評価など未解決の点も残されている. ここでは上記PCIが成り立つための条件を吟味し, 未解決の課題および今後の方向性について述べる.
  • 藤澤 伸光, 林 真一郎, 太田 善郎, 工藤 祥
    2002 年 42 巻 7 号 p. 817-822
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    目的. 佐賀県総合保健協会における肺がん検診の読影は, 読影班1班2名, これら2班による二重読影方式を採用し, さらに各班が独立して比較読影を行い, 最終判定までを行っている. 精度管理指標は全国値に比し, 陽性反応的中度, 精検受診率ともに上回り, 要精検率は低く, がん発見率は同等かそれ以上であり, 精度管理は比較的適切に行われているものと考えられた. 今回, 読影技術における精度管理の更なる向上を目的として, 1999年度より読影委員全員の参加による肺がん検診症例検討会を開催した. 方法. 症例検討会において. 読影委員に種々の情報を還元し, 共有することによって, 読影技術の標準化を図った. 結果. これにより, がん発見率は全国値を上回り, 要精検率も上昇傾向となった. 陽性反応的中度はやや低下傾向となったが全国平均を大きく上回っており, 精検受診率の上昇傾向も含めて更にバランスがとれてきたものと考えられる. 結論. 新しい方式による肺がん症例検討会は, 読影技術の精度管理に有用であることが示唆された.
  • 熊本県成人病予防協会の成績を中心に
    田中 不二穂, 泉 薫子, 中村 郁夫
    2002 年 42 巻 7 号 p. 823-828
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
  • 早田 宏, 富田 弘志, 早田 みどり, 岡 三喜男, 河野 茂
    2002 年 42 巻 7 号 p. 829-831
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    目的. 長崎県における胸部X線と喀痰細胞診を用いた肺癌住民検診の効果について, 会議録として予備報告を行う. 方法. 地域がん登録のデータを用い, 検診の効果を評価した. 結果. 検診の効果は組織型や性別で異なっていた. 結論. 肺癌検診の効果を評価する場合には, 肺癌の多様性を考慮すべきである.
  • 小泉 孝子
    2002 年 42 巻 7 号 p. 832-834
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    目的.「健康宝珠山村21」の計画策定を前に, 資料づくり及び保健事業の見直しを考え, 肺がん検診の問題点を把握し, 今後の事業推進に生かすことを目的としています. 研究計画 (方法). 1) 宝珠山村人口動態調査死亡票, 2) 宝珠山村疾患別医療受診統計 (毎年5月分診療費), 3) 宝珠山村肺がん検診受診状況, 上記3項目の1994年から, 2001年までを調査し分析しました. 結果・結論. 35%の高齢社会の宝珠山村では, 脳血管障害等の予防に追われるうちに, 肺がんが高齢者に増加しています. 生活習慣が山村も都市化したことが考えられますが, 70歳以上の高齢者は, 農林業の傍ら炭鉱と関わっていたことが原因ではないかと考えます. 今後聞き取り調査等で分析が必要と考えます. 受診率を高くするには, 各種団体と連携をとり効率的な検診の実施と, 住民と十分な協議を重ね, 検診受診の環境づくりが必要と感じます.
  • 集検喀痰細胞診検査18年間の歩み
    井手 律子, 西村 祐司, 古賀 純子, 森内 真由美, 岡 智子, 栗田 幸男
    2002 年 42 巻 7 号 p. 835-845
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    目的. 昭和59年度より開始した集検喀痰細胞診検査18年間の実績の検討を基に現在の間題点を明らかにし, 今後の課題を考察する. 方法. 18年間の受診対象者の分析 (性別, 年齢, 喫煙指数, ハイリスクグループの割合) と成績・追跡調査結果の検討. 結果. 18年間の受診者総数は, 延べ30,019名で, 発見された癌は, 15件, 癌発見率は, 10万対50であった. 対象者の内訳は, 性別では,「男性」, 年齢では,「50歳以上」が多かったが, 喫煙指数B. I. では,「600未満」が過半数を占め, ハイリスクグループ以外の受診者も少なくなかったことが示唆された. 成績は, 判定A348件 (1.16%), 判定B 29,390件 (97.91%), 判定C 253件 (0.84%), 判定D 25件 (0.08%), 判定E 3件 (0.01%) であった. 結論. 今後の課題は,(1) 喀痰細胞診検査の対象をハイリスクグループに絞ること,(2) 見落としのない, スクリーニングに適した標本作製技術の習得,(3) 早期肺門部肺癌の細胞像に習熟すること,(4) 精度管理にフィードバックできるフォローアップ体制づくり,(5) 福岡県全体をカバーする精度管理体制の構築と思われる.
  • 佐川 元保, 杉田 真, 佐久間 勉
    2002 年 42 巻 7 号 p. 846-850
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    肺がん検診の有効性評価に関しては, 1970-1980年代初頭の検診・診断・治療水準を評価した無作為化比較試験では有効性を証明できなかったが, 1990年代の水準を評価した4つの症例対照研究では検診受診により30-60%救命可能なことが判明した. しかし, 全国的に見れば, 精検受診率が低い自治体もある. 県の成人病検診管理指導協議会が中心となって, 精度管理の水準を地区ごとに評価し公表することが必要である. 胸部CT検診では, 肺癌発見率と生存率は驚異的に高いが, シミュレーションによれば発見数は急速に低下するはずであり, 多数の発見が続くならば, それは「死に至らない肺癌」すなわちOverdiagnosis biasによる可能性が示唆された. 剖検例のCT所見の検討によると, 死亡前に診断されず剖検で診断された肺癌が相当な比率に上り, 剖検でチェックされずCTでは指摘できた肺腫瘤はさらに多数であり, Overdiagnosis biasは胸部CT検診の結果に重大な影響を与えている可能性がある. 真に有効性を証明するためには無作為化比較試験を行うのが望ましい.
  • 九州地区から
    柏原 光介
    2002 年 42 巻 7 号 p. 851-858
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    目的.low-doseヘリカルCTを用いた胸部検診の有用性について検討した. 対象・方法.1996年4月より2001年3月までの6年間にヘリカルCT検診が施行された2,013名と, 胸部X線検診の要精査患者でヘリカルCT精検およびフォロ-アップCT検診が施行された1,300名が対象であり胸部異常陰影の画像所見と原発性肺癌の発見率が検討された. 結果.ヘリカルCT検診では4例の原発性肺癌が発見され肺癌発見率は0.2%であった. 胸部X線検診受診者195,123名中要精査患者は3,361名であり当院を受診した1,300名にヘリカルCT精検が施行され61例の原発性肺癌が発見された (4.7%). これに対して当院以外を受診した要精査患者は2,061名であり41例の肺癌が発見され (2.0%), ヘリカルCT精検が施行された当院での肺癌発見率との間には有意差が認められた (p<0.0001). ヘリカルCTにて発見された373部位の異常陰影に関して, 単発性結節陰影238部位中61部位 (26%), 斑状陰影53部位中1部位 (2%), 結節性スリガラス様陰影11部位中3部位 (27%) に計65例の肺癌が発見された. 65例中50例は初診時に組織学的診断がついたが, 15例 (23%) はフォロ-アップCT検診で陰影変化が経過観察されたのちに経気管支的もしくは経皮的アプロ-チが施行された. 結論.ヘリカルCT検診は早期肺癌の可能性のある小結節に対して高い感受性を持ち肺癌発見率を上昇させることから検診手段として非常に有用であるが, 良性疾患への無用な生検の危険性が指摘される. さらにヘリカルCT検診を住民検診レベルで施行するには未だ問題は多く, 現段階では胸部検診での要精査患者に対しては, ヘリカルCT精検を行った上でフォロ-アップCTで陰影変化を追跡する努力が必要と思われる.
  • 金子 昌弘
    2002 年 42 巻 7 号 p. 859-862
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
  • 日本肺癌学会集団検診委員会で検討されている肺癌集団検診の手引き改定の要点概要について
    江口 研二
    2002 年 42 巻 7 号 p. 863-865
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
  • 2002 年 42 巻 7 号 p. 866-869
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
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